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決戦のグレイス城編

第216話 こいつは神殺しの怪物だからな

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ムーの転移魔法によりグレイス城屋上にある空中庭園へとやってきた。

トゥール「危なかったなぁ」

ムー「まだ脅威は去っていない。久しぶりだな怪物、僕の目の前で寝ているなんていい度胸してやがる」

ツグル「久しぶりなのに随分な挨拶だな。元気そうで何よりだよ」

ツグルはゆっくりと立ち上がった。

トゥール「ツグルが立ち上がったのは良いけど、ここからどうするか」

ムー「ここに僕らがいるということは何か意味があるはずだ、そう思わないか?」

トゥール「言っておくけどムー任せになるよ。例え意味があったとしても」

ムー「ふん、そんなことは分かっている。僕に秘策がある」

パタパタパタパタ

その時、上空からヘリコプターが下降してきた。

リリ「最終決戦の進捗はどんな感じだい?」

ヘリコプターから出てきたリリに続いて、巨体を縮めてタクティスが出てきた。

リリ「タクティスも一緒だよ」

タクティス「皆無事か」

トゥール「ムーの秘策によって、もう少しで勝てそうだ」

ムー「簡単に言ってくれるな、でも期待には応える主義でね」

リリ「よ!ツグル、セリアちゃん!!久しぶり」

セリアは久々の再会に目が潤んでいる。

セリア「皆さん!!会えて嬉しいです」

ツグル「久しぶり、あんた達が見てるなら尚更負けるわけにはいかないな」

タクティス「ピンチの時は助ける。安心しろ」

ムー「僕達が無の神に近づくのは大きなリスクになる。直接助けることなんて出来ない」

タクティス「そうか、、、、」

セリア「私に何か出来ることはありますか?」

ムー「残魔力のない奴に出来ることはねぇが、最悪ツグルが死にかけた時は死に物狂いで歌いやがれ」

セリア「でも私が歌えば漆黒の騎士が、、、」

トゥール「ああ、そういやあれは俺達が倒したよ」

セリア「そうなんですか!?」

セリアは大きく息を吸い込んで歌おうとした。

ムー「まぁ待て、歌うにも魔力が必要なはずだ。無駄に喉を使うな」

セリア「分かりました!!」

セリアは両手で口を塞いだ。

トゥール「ところでムー、何をするつもりだい?」

ムー「せっかくなら六人全員集まっていた方が良かったが仕方ねぇ。僕達の魔力を怪物へと送る」

リリ「魔力量が増えただけじゃ大した戦況は変わらないんじゃない?」

ムー「ただの魔力じゃねぇ、核となる最深部の魔力には戦闘経験が宿る。どれだけ魔力を消費しても、スッカラカンになるまで使おうと核の魔力を使うことは出来ねぇ」

リリ「ふーん、何だかよく分かんないけど。その核とやらを渡しちゃっても良いものなの?」

ムー「全てを渡すのは無理だ、断片を渡すだけになるが、そうすれば僕達は一時的に木偶の坊になるだろうな」

タクティス「魔法が使えなくなるということか?」

ムー「正確には使えるがほぼ安定しないってところか」

トゥール「どちみちここで無の神を倒さなきゃいけない。それがムーの思うベストならよろしく頼む」

トゥールはツグルを見つめた。

ツグル「もちろん俺は異論はないよ。無の神を倒すためなら何だってやってみせる」

大穴から無の神が上昇してきて空中庭園へと降り立った。

無の神「次から次へと、小賢しい」

ムー「僕が来たからにはもう遊びは終わりだ。覚悟した方が良いんじゃないか?」

無の神「お前達雑兵の攻撃は俺には効かない。結局のところそこにいる未熟な小僧と未完成な女神が俺を超えるしかない。だがそれは不可能だ」

トゥール「確かになぁ」

ムー「なに納得してやがる」

トゥール「いやいや、俺が納得したのはツグルとセリアが無の神より強くなきゃいけないってところのみだよ。だとしたら勝てるなぁって」

ムー「同意見だ、こいつは神殺しの怪物だからな」

ツグル「期待には応える主義でね」

ツグルとムーは互いにニヤリと笑った。

ムー「よく言った」

ムーの紫のオーラが辺りを包み込んだ。

トゥール、ムー、リリ、タクティスの胸から丸い光が抜け出て、ツグルの中へと入って行く。

トゥール「あれ、もう終わったの?」

リリ「全然実感ないんだけど、、、」

ムー「ああ、終わった。無の神を殺せ、怪物」

ツグル「任せろ」

ツグルは黒い刀を納刀した。

ツグル「居合、、、曲闇、、、」

トゥール「あの構えは!」

ツグル「菊姫!!」

捻れた螺旋状の闇の斬撃が無の神へと飛んだ。

無の神は爪で防ぐが、闇の斬撃の勢いは衰えず無の神を貫こうと前進を続ける。

無の神「甘い!!」

無の神は鋭い爪で闇の斬撃を消し去った。

しかしツグルの姿はなかった。

振り返った無の神の頭上から黒い巨大な斧を振りかぶったツグルが現れた。

タクティス「俺のレオニダスを持っているのか?」

トゥール「流石に重過ぎて上から落下することしか出来なかったんだな」

巨大な黒斧はその重さを力に変えて強烈な一撃で無の神の爪を叩き割った。

無の神はその力に驚き、背後へと飛び退く。

黒斧は床を叩きつけると地面から黒い光が湧き出て無の神を追い詰める。

無の神「その程度で我を倒せると思うなよ」

ツグル「いや、ここでお前を仕留める。来い!!オロチ!!!」

ツグルの前に巨大な黒い魔法陣が現れた。

トゥール「おいおい、まさか」

黒い魔法陣から現れたのは巨大な黒い蛇だった。

ムー「流石に八本も首はないみてぇだな。月魔法を使えないくせに僕のニュアンスを引き出したってわけか」

巨大な黒い蛇に飲み込まれる前に、無の神は全身に闇の魔力を滾らせる。

無の神「ハァァア!!!!」

無の神の黒い波動が周囲の黒い光と巨大な蛇を消滅させた。

無の神は疲弊した様子で床に膝をついていた。

ツグル「強力な闇の魔力を使うと身体が動かないよな」

無の神「、、、、、、」

ツグル「これで終わりだ」

ツグルは再度刀に変形させ、鞘へと納めた。

ツグル「居合、、旋闇、、」

トゥール「行け!!!!ツグル!!!!」





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