世界の全て

ケーキ

文字の大きさ
45 / 77

気まぐれ

しおりを挟む
あれから本多さんは家から姿を見せていない。

加木さんは「すぐに戻ってくる」と言っていたが、それを言ってからもう1週間も経っている

彼女に何があったのだろうか?

私はその事が頭から離れなかった。きっと、宗多さんが絡んでいるんだろう。

私は深くその事について聞けない自分が居た。

口に出してしまえば、傷付けてしまうような気がして。

───────

今日、変わったことがあった。

自分の住むアパートの前に、男の人が立っていた。結構年上で、30代後半~40代くらいだろう。

彼はなんだか顔を隠していて、周りをとても気にしている。

こんな時、普通だったら、警察に電話するところだろう。

しかし、私は何故か、引き寄せられるように、その人に話しかけた。

何をしているのか?と。

すると、彼は、人に追われていると言った。

ちらりと彼の持っていたバックを覗くと、沢山の紙が入っている。

警察に言った方がいいのではと聞くと、彼らは信用ならないと言った。

私は「匿って欲しい。」と言われ、何故か、彼を自分の家に泊めることにした。

いつもだったら、こんなことはしないのに。どんな心境の変化だろうか…?

私はふと本多さんのことが浮かんだ。

それを振り払って、泊めた男を見ていた。

彼はいつも、机や、テーブルに向かってただひたすらに何かを書いている。

時間があれば、ただそれをひたすらにしているのだ。

たまに話しかけると、いつも変わったことを言った。

偉人と呼ばれたい、有名人と呼ばれたいそんなことがあるだろう。

しかし、私は、そうは思わない。

称号や、分類はそれだけでしかない。自分よりもなし得ていない人間も同じように呼ばれる。

だからこそ、私は、名前で呼ばれる人間でありたい。

ある日は、天才について、天才とは過程であり、その人に一緒についてまわるものではない。

何か素晴らしい建造物を思いついた人がいる。けれども、その人は思いつき終わってしまえば、もう天才ではない。

その途中、考えている時こそが天才だからだ。


など、まるで、加木さんのような変わったことを言う。

少し面白い人だと心の中で思った。

またある日、彼は加木さんの思想について尋ねてきた。

「この世に間違いはあると思いますか?」

僕はとても驚く。何故、彼の思想を知っているのかと。

けれども、まずは、その返答について考えた。

私の立場からしては、彼の考えは、申し訳ないが、肯定できない。

勉強は確かに、完全なものでは無いかもしれない。けれども、多くのことを教えてくれるそれであるからだ。

その中には、間違いというものが必ず存在しなければいけない。多くの見方を教えてくれるそれは、自分にとても大きなものを与えてくれる。

だが、否定もできない。新しい発想をする時、必ず、間違いと思われているものすらも、そのきっかけになり、そして、今、正しいと思われているものすらも、未来には否定されることであるからだ。

「分かりません…」

私はそう答えると、彼は「そうですよね。」と言って続けた。

「私はその考えを、ある男から聞いたのですが、そんな訳がないと否定したくなりました。」

「しかし、最近、気付いたんです。私は間違いのない世界というものに生かされていることに。」

彼はそう言って、彼はまた何かを書き始めた。

ある男とは加木さんのことではないか…?私はそう思ったが、邪魔しては悪いと思い外に出た。

今、無性に、加木さんに会いたい気分になっている。

彼は、今、何をしているのだろうか…?

しかし、もう前のように、どこかへ行けば会えるなんて場所はない…。

私がそう思いながら歩いていると、前から加木さんがやってきた。

私は少し驚く。困っていたらやってくる特撮や、アニメのヒーローのよう思えた。

私は彼に挨拶すると、何も言わずに一緒に行くあてもなく歩いた。

───────
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...