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5 メイドのメイ
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それから俺は昼飯を食べ終えて先程のメイドの元へ向かった。
人目に見つからない様に、と、俺はメイドの部屋でマナーを習う事になったのだ。
「じゃあ早速教えてくれ!」
「は、はい!
頑張ります!」
そうして俺とメイドの秘密の個別レッスンが始まった。
「先ずは歩き方からですね」
「歩き方?」
てっきりテーブルマナーや上品な会話なんかから教えて貰えるかと思っていたが、まさか歩き方から注意されるとは。
「その、今のライラお嬢様の歩き方は、あまりにも歩幅が大きすぎますし、それにガニ股になっていますので……」
歩き方なんてろくに気にもしていなかったが、そうなのか。
というか、ずっと言いたかったんだけれど、このスカートといい、ヒールといい、どれも歩きづらい。
よく世の女性達はこんな物を履いてずっと歩いていられるなと感心すら思う。
そのせいで男の頃より歩幅は小さくなったと思っていたが、それでもまだ駄目らしい。
「ま、先ずは、姿勢は真っ直ぐ、胸を張って、お腹に力を入れて上半身を支える様に……」
「こ、こうか?」
俺は言われた通りに立ってみる。
「あ、背中が丸まっているので、もうちょっと真っ直ぐ……」
そう言いながらメイドが俺の背中に手を当ててくる。
フワッと、メイドからいい香りがした。
シャンプーの匂いだろうか、とってもフローラルな感じの匂いに、俺は思わず赤面してしまう。
「あ、ライラお嬢様、そんな感じです。
それから、歩く時は、歩幅を小さく、足はガニ股にならない様真っ直ぐ向けて……」
「な、中々難しいな……」
俺は何とか言われた通りに歩いてみるも、妙にギクシャクした動きになる。
「あ、ライラお嬢様、そこは腰をこう動かす感じで……」
メイドはそう言って、俺の腰に手を添えてくる。
やばい、やばい。近い近い、距離が近い。
しかも、む、胸が、このメイドも中々ある。
ていうか何でモブのメイドですら胸がまあまああるのに、俺だけ無いんだよ。
百歩譲って正規ヒロインのルナはともかく、モブのメイドにすら負けるとは。
「分かりましたか?」
そうメイドに尋ねられるも、おっぱいが気になって中々集中が出来ない。
「あの、まあ、もう一回教えてもらってもよろしいでしょうか?」
俺はつい敬語になってしまう。
「ライラお嬢様、私なんかに敬語なんて使わなくて良いのですよ!?」
メイドはあたふたとしだす。
というか、このメイドやっぱり可愛い。
こんな可愛い子と2人で秘密のレッスンって、実はかなりエロいのでは?
悪役令嬢になって人生ハードモードと嘆いていたが、案外悪く無いかもしれない。
俺は鼻の下を伸ばしながらそんな事を考えていた。
「ライラお嬢様、流石です!
綺麗に歩けています!」
それから1時間ほど、俺はみっちり歩き方を指導され何とかコツを掴んできた。
しかし、何というかまあ、この歩き方をずっとかと思うとしんどくなる。
「これ結構大変だな……」
俺がそう愚痴ると、メイドは苦笑いでフォローする。
「慣れないうちは大変でしょうけれど、慣れると楽になるそうですよ?」
「ふーん、そんなもんか」
まあ、これで先ずは第一歩といったと所か。
「じゃあ次は何だ?
テーブルマナーとか?」
「あ、えーと、それよりそろそろ家庭教師のご予定が入っております」
「え?
そうなんだ」
そうだ、俺は悪役とはいえ令嬢なのである。
つまり、令嬢としての生活もしなければならない。
マナーを習いつつ他の習い事も平行でやりつつ誰かを攻略しなければならない。
「中々大変だな」
お嬢様ってもっと遊んでるイメージがあったけど、全然そんな事はないらしい。
こうして慌ただしく一日が終わっていった。
そして次の日の朝。
「はあぁ~。
やっぱり戻れてねーか」
俺は今日こそ目覚めたら現実世界に戻っているかもと淡い期待を抱いていたのだが、現実は非情である。
俺はまたアーリーモーニングティーなる物を飲み、朝食を食べる。
「ライラ、そんなにがっついて食べるとはしたないわよ」
そう母親に怒られる。
「え、ごめん……なさい」
そして相変わらず周りがざわついている。
一体なんだってんだ。
朝食を食べ終えると、どうやらルナは外出したらしい。
「俺はまたメイドにマナーを教わるか」
そう思い、メイドの部屋へと向かう。
「今日もよろしく!」
「は、はい!
頑張ります!」
メイドは相変わらずあたふたしながらそう答えた。
「あ、今日はまず俺……私のこの喋り方なんだけど、お嬢様的な喋り方を教えてくれないか?」
「あ、はい、分かりました!
ま、先ずは、挨拶は基本的にご機嫌よう、です。
それから、丁寧な言葉遣いを心掛けましょう」
「うーん、丁寧か……」
俺は割と普段からガサツな方なので、中々難しそうである。
「分かった……じゃなくて、分かりましたわ」
「そうです、そういう感じです!」
そうして俺の言葉遣いを、メイドはどんどんと訂正していってくれた。
「あ、そう言えば」
俺は、ふと会話しているうちに、このメイドの名前を聞いていなかった事を思い出す。
やはり名前を知らないと何とも会話し辛い。
「お前、じゃなくて、貴女のお名前は何でしょうか?」
「え? 私ですか?」
ふと質問してみたが、そういえばモブのメイドにそもそも名前なんてついているのだろうか?
「えーと、あの……その……。
私特に名前が無くて……」
やっぱりな。
「うーん、でも名前が無いと呼び辛いな……。
そうだ、お、じゃなくて私が名前をつけてやろう!
じゃなくてつけてあげるわ!」
良い感じにカッコつけたかったのに、言い間違いだらけでいまいち決まらない。
「え? 名前をですか?
そ、そんな! 私なんて適当で良いですのに!」
「まあまあ、お世話になっているし、そうだな……。
メイドだから、メイとか?」
流石に安直過ぎるかな? とメイドの方を見ると、何やら嬉しそうな顔をしている。
「メイ……そんな可愛い名前、ありがたいです」
そうニコリと微笑む。
唐突のデレに、俺は心臓が持っていかれそうになった。
「あ、ああ、喜んでもらえて良かった」
「はい!
ありがとうございます!」
ヤバい、イケメン野郎なんかより、この子を攻略したい。
しかし悲しい事に何度も言うが俺は今女なのである。
悪役令嬢なのである。
「あ、そ、それじゃあ続けようか」
「はい!
それではこう言う時の言い回しは……」
こうして俺とモブメイドもといメイとのマナーレッスンをまた再開した。
「こ、こうでしょうか?」
「そうです!
笑顔を絶やさない事も大事ですから!
可愛いですよ、ライラお嬢様!」
口調だけではなく表情まで指摘されるとは。
しかし、大体読めてきた。
まず女口調は、男が思い描く理想の女子が喋りそうな事を言えばいいのだ。
自分がその理想の女子になる、みたいな感じで。
そこに更にお嬢様口調として言い方をマイルドにする。
「ありがとう、メイのお陰で大分コツが掴めてきたわ」
俺はそうニコリと微笑みながら礼を言う。
「わあ、素敵です。お嬢様」
メイも褒めてくれた。
よし! これなら何とかいける!
「あ、そろそろランチの時間ですね」
「え?
ああもうこんな時間か……」
俺は時計を見やると、時刻は12時に差し掛かろうとしていた。
「急いで準備をしてきますね」
そう言ってメイは急いで広間の方へと向かっていった。
俺もメイの部屋を出て、準備が出来るまで部屋で待つ事にした。
すると、客間の方から何やら声が聞こえてくる。
ルナと、もう一人は聞き覚えのある男性の声だ。
こ、この呼吸が使えそうな声は!
CV花○ 夏樹!
そう、攻略キャラの3人目、通りすがりのイケメンタイプ、ウィリアム!
因みにこのゲームとは全く関係ない余談だが、俺はあの人気の鬼狩りの話はアニメから入った口である。
「いやぁ、すみません。
家にまで招待してくれて」
「いえいえ、こちらこそすみません!
私が傘を忘れてしまったせいで、お洋服を汚してしまって……」
あー、確かこいつは……。
俺は3人目の攻略キャラであるウィリアムの事を思い出す。
人目に見つからない様に、と、俺はメイドの部屋でマナーを習う事になったのだ。
「じゃあ早速教えてくれ!」
「は、はい!
頑張ります!」
そうして俺とメイドの秘密の個別レッスンが始まった。
「先ずは歩き方からですね」
「歩き方?」
てっきりテーブルマナーや上品な会話なんかから教えて貰えるかと思っていたが、まさか歩き方から注意されるとは。
「その、今のライラお嬢様の歩き方は、あまりにも歩幅が大きすぎますし、それにガニ股になっていますので……」
歩き方なんてろくに気にもしていなかったが、そうなのか。
というか、ずっと言いたかったんだけれど、このスカートといい、ヒールといい、どれも歩きづらい。
よく世の女性達はこんな物を履いてずっと歩いていられるなと感心すら思う。
そのせいで男の頃より歩幅は小さくなったと思っていたが、それでもまだ駄目らしい。
「ま、先ずは、姿勢は真っ直ぐ、胸を張って、お腹に力を入れて上半身を支える様に……」
「こ、こうか?」
俺は言われた通りに立ってみる。
「あ、背中が丸まっているので、もうちょっと真っ直ぐ……」
そう言いながらメイドが俺の背中に手を当ててくる。
フワッと、メイドからいい香りがした。
シャンプーの匂いだろうか、とってもフローラルな感じの匂いに、俺は思わず赤面してしまう。
「あ、ライラお嬢様、そんな感じです。
それから、歩く時は、歩幅を小さく、足はガニ股にならない様真っ直ぐ向けて……」
「な、中々難しいな……」
俺は何とか言われた通りに歩いてみるも、妙にギクシャクした動きになる。
「あ、ライラお嬢様、そこは腰をこう動かす感じで……」
メイドはそう言って、俺の腰に手を添えてくる。
やばい、やばい。近い近い、距離が近い。
しかも、む、胸が、このメイドも中々ある。
ていうか何でモブのメイドですら胸がまあまああるのに、俺だけ無いんだよ。
百歩譲って正規ヒロインのルナはともかく、モブのメイドにすら負けるとは。
「分かりましたか?」
そうメイドに尋ねられるも、おっぱいが気になって中々集中が出来ない。
「あの、まあ、もう一回教えてもらってもよろしいでしょうか?」
俺はつい敬語になってしまう。
「ライラお嬢様、私なんかに敬語なんて使わなくて良いのですよ!?」
メイドはあたふたとしだす。
というか、このメイドやっぱり可愛い。
こんな可愛い子と2人で秘密のレッスンって、実はかなりエロいのでは?
悪役令嬢になって人生ハードモードと嘆いていたが、案外悪く無いかもしれない。
俺は鼻の下を伸ばしながらそんな事を考えていた。
「ライラお嬢様、流石です!
綺麗に歩けています!」
それから1時間ほど、俺はみっちり歩き方を指導され何とかコツを掴んできた。
しかし、何というかまあ、この歩き方をずっとかと思うとしんどくなる。
「これ結構大変だな……」
俺がそう愚痴ると、メイドは苦笑いでフォローする。
「慣れないうちは大変でしょうけれど、慣れると楽になるそうですよ?」
「ふーん、そんなもんか」
まあ、これで先ずは第一歩といったと所か。
「じゃあ次は何だ?
テーブルマナーとか?」
「あ、えーと、それよりそろそろ家庭教師のご予定が入っております」
「え?
そうなんだ」
そうだ、俺は悪役とはいえ令嬢なのである。
つまり、令嬢としての生活もしなければならない。
マナーを習いつつ他の習い事も平行でやりつつ誰かを攻略しなければならない。
「中々大変だな」
お嬢様ってもっと遊んでるイメージがあったけど、全然そんな事はないらしい。
こうして慌ただしく一日が終わっていった。
そして次の日の朝。
「はあぁ~。
やっぱり戻れてねーか」
俺は今日こそ目覚めたら現実世界に戻っているかもと淡い期待を抱いていたのだが、現実は非情である。
俺はまたアーリーモーニングティーなる物を飲み、朝食を食べる。
「ライラ、そんなにがっついて食べるとはしたないわよ」
そう母親に怒られる。
「え、ごめん……なさい」
そして相変わらず周りがざわついている。
一体なんだってんだ。
朝食を食べ終えると、どうやらルナは外出したらしい。
「俺はまたメイドにマナーを教わるか」
そう思い、メイドの部屋へと向かう。
「今日もよろしく!」
「は、はい!
頑張ります!」
メイドは相変わらずあたふたしながらそう答えた。
「あ、今日はまず俺……私のこの喋り方なんだけど、お嬢様的な喋り方を教えてくれないか?」
「あ、はい、分かりました!
ま、先ずは、挨拶は基本的にご機嫌よう、です。
それから、丁寧な言葉遣いを心掛けましょう」
「うーん、丁寧か……」
俺は割と普段からガサツな方なので、中々難しそうである。
「分かった……じゃなくて、分かりましたわ」
「そうです、そういう感じです!」
そうして俺の言葉遣いを、メイドはどんどんと訂正していってくれた。
「あ、そう言えば」
俺は、ふと会話しているうちに、このメイドの名前を聞いていなかった事を思い出す。
やはり名前を知らないと何とも会話し辛い。
「お前、じゃなくて、貴女のお名前は何でしょうか?」
「え? 私ですか?」
ふと質問してみたが、そういえばモブのメイドにそもそも名前なんてついているのだろうか?
「えーと、あの……その……。
私特に名前が無くて……」
やっぱりな。
「うーん、でも名前が無いと呼び辛いな……。
そうだ、お、じゃなくて私が名前をつけてやろう!
じゃなくてつけてあげるわ!」
良い感じにカッコつけたかったのに、言い間違いだらけでいまいち決まらない。
「え? 名前をですか?
そ、そんな! 私なんて適当で良いですのに!」
「まあまあ、お世話になっているし、そうだな……。
メイドだから、メイとか?」
流石に安直過ぎるかな? とメイドの方を見ると、何やら嬉しそうな顔をしている。
「メイ……そんな可愛い名前、ありがたいです」
そうニコリと微笑む。
唐突のデレに、俺は心臓が持っていかれそうになった。
「あ、ああ、喜んでもらえて良かった」
「はい!
ありがとうございます!」
ヤバい、イケメン野郎なんかより、この子を攻略したい。
しかし悲しい事に何度も言うが俺は今女なのである。
悪役令嬢なのである。
「あ、そ、それじゃあ続けようか」
「はい!
それではこう言う時の言い回しは……」
こうして俺とモブメイドもといメイとのマナーレッスンをまた再開した。
「こ、こうでしょうか?」
「そうです!
笑顔を絶やさない事も大事ですから!
可愛いですよ、ライラお嬢様!」
口調だけではなく表情まで指摘されるとは。
しかし、大体読めてきた。
まず女口調は、男が思い描く理想の女子が喋りそうな事を言えばいいのだ。
自分がその理想の女子になる、みたいな感じで。
そこに更にお嬢様口調として言い方をマイルドにする。
「ありがとう、メイのお陰で大分コツが掴めてきたわ」
俺はそうニコリと微笑みながら礼を言う。
「わあ、素敵です。お嬢様」
メイも褒めてくれた。
よし! これなら何とかいける!
「あ、そろそろランチの時間ですね」
「え?
ああもうこんな時間か……」
俺は時計を見やると、時刻は12時に差し掛かろうとしていた。
「急いで準備をしてきますね」
そう言ってメイは急いで広間の方へと向かっていった。
俺もメイの部屋を出て、準備が出来るまで部屋で待つ事にした。
すると、客間の方から何やら声が聞こえてくる。
ルナと、もう一人は聞き覚えのある男性の声だ。
こ、この呼吸が使えそうな声は!
CV花○ 夏樹!
そう、攻略キャラの3人目、通りすがりのイケメンタイプ、ウィリアム!
因みにこのゲームとは全く関係ない余談だが、俺はあの人気の鬼狩りの話はアニメから入った口である。
「いやぁ、すみません。
家にまで招待してくれて」
「いえいえ、こちらこそすみません!
私が傘を忘れてしまったせいで、お洋服を汚してしまって……」
あー、確かこいつは……。
俺は3人目の攻略キャラであるウィリアムの事を思い出す。
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