86 / 117
第二部 高校生編
実際作者の転寝の世界だからねしょうがないね
しおりを挟む
死ぬかと思った。
マジで一発一発がシャレにならん威力な上、どういう理屈か弾丸に念力が籠っていたので普通に超能力者にも効くようだった。『対化け物用』の名は伊達じゃない。
しかも明らかにリロードがその時の気分でしか行われておらず、百万発入りのコスモガンと言われても納得できるマガジン容量だったもんだから常に死線をくぐった。
島崎さんの来訪を救いに感じる時が来るとは思わなんだ。
というか折角超能力者なんてファンタジーな存在なのに近代火器で武装するとかどういう神経してるんだ。そしてその近代火器より強いっていうのもどうなんだ。
後で渡辺に聞いたら、どうも夜狐はダンマニストというか、トリガーハッピーな性質らしい。
ああやって銃火器を自分で作って自分でぶっ放すのが彼女の趣味の一つだそうだ。
人様の趣味にケチを付ける程野暮になった覚えもないが、少なくともあんなにエロい雰囲気になる必要はないと思う。
神の定めし安息日たる日曜日になぜああも疲弊するイベントを詰め込まれなければならないのか。
よく考えたらここにいるの邪神ぐらいじゃねーか。そりゃ疲弊もさせてくるわな。
図書館の書架を整理しつつ、はあ、と溜息を一つ。
全く、俺は単になじみと一緒に生きていたいだけだ。
だというのに、どうしてこう・・・ままならないというか。
カウンターの方には相も変わらず微と、微目当ての雄大が並んで座っている。
おかげで俺は何の気兼ねもなく、返却本の整理に勤しめるわけだ。
超能力の云々で疲弊した精神だが、こうして日常を過ごすことで回復できる。
なんだか連中が神話生物みたいな扱いだが、多分そんなに間違ってない。いあいあ。
実際『この世界は邪神の夢見る転寝の世界』と言われても納得できてしまうしな。いあいあ。
ていうか超能力とかぶち込んできたの邪神じゃねーか。
全部の元凶アイツじゃん。マジかよ邪神最低だな。
「しっかし、この学校の図書館・・・奇書っつーか、妙な本が多いな」
今返した本の隣にある本など。
「『モハエ・イア・トゥ・ロンゴロンゴ』? 何語かもわからん」
ロンゴは、論語か?
道教かなんかの教本、だったか。確か福沢諭吉とかが愛読していたはず。
しかしでは前半部分が意味不明だ。大体、ロンゴ=論語だとしても二つ重なってる時点で意味不明。
なんとなく気になってロンゴロンゴを手に取る。
パラパラとめくってみた感じ、ロンゴロンゴと呼ばれている暗号についての解読覚書って所か。
最後まで見たが、結局『モハエ・イア・トゥ』の部分については何も書かれていなかった。
じゃあマジでなんなんだコイツ。
「イカンイカン。片付けの最中に気になった本を開いて読みふけって時間が潰れるなんざよくある事だが、仕事の最中にやることじゃない」
かぶりを振って本を戻す。
まだ未整理の書架はあるのだ。来客は少ない割になんでこんな仕事が多いんだか。大量の本でも一気に運べるのは超能力者になった恩恵の一つだが、割に合わないと思うのは俺だけだろうか。
「超能力者、か」
夜狐は言っていた。
『私はもう千年この仕事をやっている。超能力者は物理現象に囚われない。極一部だが、不死身になる程に』と。
夜狐の超能力がどんなものであるかはまだ分からない。しかしあの言いぶりからするに、多分超能力の内容と不死性に相関関係は無い。
なら、俺はどうだ?
仮にも連中と同じ超能力者の俺は、渡辺が引っ張ってきた計器でも測定しきれない地力を持つ俺は、夜狐と同じ不死身なのか?
もし不死身であるというのなら・・・俺は、なじみを看取るのだろうか?
老いてしわくちゃになったなじみの枕元で、若く瑞々しいままの俺が。
その後俺はどうするのだろう。
その時に泣きはらすのはわかるが、その後は。
無気力に腑抜けたまま、化石の様に過ごすのだろうか。それとも別の何か、例えば今読んだような本に没頭するのだろうか。それともその場で腹でも掻っ捌いて自害するのだろうか。
夜狐の銃火器という趣味は、二つ目の選択肢を取った末なのだろうか。
いっそなじみも超能力者なら。
「・・・いや、何を考えているんだ俺は」
あんな奇妙奇怪危険奇天烈な世界に、なじみを巻き込めるわけが無いだろう。
それが出来ないから、いやしたくないから、その辺りの事を言っていないのだ。
「はあ、駄目だな。まだSAN値が回復していないらしい」
「サンチって何だい?」
「まそっぷ!?」
油断していたところにいきなり話しかけられてまるで漫画の誤植の様な声を出してしまった。
振り返った先には、先には・・・。
「誰も、いない?」
「いるよッ! 君の視点が高すぎるだけだッ!」
見下げてみれば、そこにはいつもの合法ロリが。
「なんだ部長ですか」
「なんだとはなんだ」
我が軽音部部長、利根川 梅雨先輩が居た。
「あまりに驚いたもので。ちなみにいつから?」
「本当にさっきだよ。サンチがどうこうって所」
「そうでしたか」
超能力者云々が聞かれていたら・・・別にいいのか。
俺が痛い奴と思われて終わりだ。決定的な所を見たわけでもないのに実在すると考えるやつはいないだろう。本を一気に運ぶのだって一応はバランスを取っている風を装っていたし、重量はこの筋肉が説得力を生んでくれる。
まこと、筋肉はすべての解決策である。
「それで、サンチってのはどういう意味だい?」
「え? ああ・・・SAN値っていうのはちょっとしたゲームの用語でして。正気度、とでも言えばいいんですかね」
「・・・すまない、よくわからないから、色々教えてくれ」
「あー、どこから説明すればいいやら・・・」
そもそも俺もそこまで詳しいわけでもないし。
*
「つまり、だ。TRPGというゲームの専門用語で、プレイヤーステータスの一つ。何らかのイベントでランダムに上下し、下がりすぎるとキャラは発狂しゲームオーバー。こんなところかい?」
「多分そうです」
半端な知識と語彙ではこの程度の要約が限界でした。
「現実に例えると・・・『意中の男性が他の女性と談笑しているところに遭遇しました。SAN値チェックです』って感じかな?」
「嫉妬に狂って刺しに来そうな順当さが良いですが、生々しいですね」
「パッと思いつくのがこれくらいでね」
そんな修羅場をパッと思いつかないで欲しい。
「なんか流しちゃいましたけど、部長はなぜ図書館に? 何か借りたい本でもあったので?」
「ん、ああ・・・」
「ちなみにレシピ本なら四つ隣です」
「んえ!?」
「なんですその声」
実家が洋食屋だから何か新メニューの開発をするにあたっての参考資料でも探しに来たのかと思ったが、そうでもないらしい。
「い、いや、何・・・つかぬことを聞くが、女性というのはやはり料理が出来た方が良いと思うかい?」
「そりゃまあ、料理に限らず出来る出来ないなら出来る方が良いでしょう。女性男性も区別ない話です」
「ああ、うん、そりゃそうだ。君がそういう男だという事を忘れていた」
今何かを侮辱された様な気がする。
「で、来た理由は何なんです?」
相手が部長でなければ『質問を質問で返すなァー!』とキレても良かったが、部長が相手なので個々は穏便に済ませようじゃないか。
やはり悪ふざけに大切なのはTPOだからな。
「そりゃまあ、君に会いにね」
「・・・で、今度はどんな事情が飛び出してくるので?」
「やっぱわかっちゃうかー」
「裏事情もなくほっぽる様な人じゃないんですから、後はナンプレですよ」
そもそも部長は部活を含めた学校活動が終了したら家に帰り、実家の洋食屋の手伝いをするというのが日課である。
では学校活動が終わった時点で校内にいるというのはその日課から外れた行為。習慣とは怖いもので、一度慣れてしまうとわざわざ意識しない限りその行動をとってしまう。わざわざ意識して図書館に来たと言うなら、その時点で日課から逸脱する『何か』の存在が示唆される。
さて、この場合一番大切なのは日常を奪ったその何かであるわけだが、まず部長に原因は無いだろう。五体満足でこの場にいる時点で確定だ。次に考えるべき候補は部長以外の部分。
つまりは。
「父がね、盛大に腰をやってしまった。今日一日は安静に、という事らしいから店は緊急閉店。お手伝いさんの僕もこうして暇になった。そこで、君が水曜日は図書委員をしているという話を思い出したのさ」
こんなところである。
「他に友達いないんですか」
「いるともさ。だが僕の狭い交友関係ではNOがダダ被りすることはままある。今日がちょうどその日だったというわけだ。全く、薄情者め」
「女の友情、ハムより薄い」
「ローストビーフぐらいの厚さはあって欲しいもんだが、これではその厚さを疑ってしまうよ」
「で、委員として仕事をしていて、まず捕まるだろう俺のところに来たと」
「そう言う事。顧問の先生帰っちゃったから部室の鍵も開けられないし、どこぞで雲を眺めて時間を潰すよりは有意義だろう?」
「そりゃ過分な評価を頂けたようで何よりですな」
「実際、ほんの僅か有意義だった。SAN値とかいう新しい概念も獲得できたしね」
「おおよそ人生で役立つ機会はないであろうって代物ですが」
「そうでもないさ。おかげで君と楽しくお喋りできた。それだけで十分、僕の役に立ったよ」
書架の整理をしながら歩いていたので本棚の森を抜けエントランス。
カウンターのちょうど目の前に出た。
「ほうら部長、出口はあちらですよ」
「君はそんなに私に帰って欲しいのかい?」
「そうでもないですけど、流石に一人娘さんをいつまでも借りてるわけにはいかないでしょう。看病の一つでもしたらどうですか?」
「・・・ふむ、君の言にも一理あるか。わかったよ、じゃあ今日は帰るとしよう」
部長は玄関に向かって数歩歩き、何かに気付いて足を止め、踵を返して俺の方へ戻ってきた。
「ほら安心院君、ちょっとかがんで」
「はあ」
言われた通りにかがむ。
耳元で部長が一言囁いた。
「またね」
「そうですね」
だから一言返した。
「じゃあ今度こそ帰るよ。バイバイ」
「また明日とか~」
そうして挨拶を終えた俺には微の冷え込む視線が突き刺さっていた。
マジで一発一発がシャレにならん威力な上、どういう理屈か弾丸に念力が籠っていたので普通に超能力者にも効くようだった。『対化け物用』の名は伊達じゃない。
しかも明らかにリロードがその時の気分でしか行われておらず、百万発入りのコスモガンと言われても納得できるマガジン容量だったもんだから常に死線をくぐった。
島崎さんの来訪を救いに感じる時が来るとは思わなんだ。
というか折角超能力者なんてファンタジーな存在なのに近代火器で武装するとかどういう神経してるんだ。そしてその近代火器より強いっていうのもどうなんだ。
後で渡辺に聞いたら、どうも夜狐はダンマニストというか、トリガーハッピーな性質らしい。
ああやって銃火器を自分で作って自分でぶっ放すのが彼女の趣味の一つだそうだ。
人様の趣味にケチを付ける程野暮になった覚えもないが、少なくともあんなにエロい雰囲気になる必要はないと思う。
神の定めし安息日たる日曜日になぜああも疲弊するイベントを詰め込まれなければならないのか。
よく考えたらここにいるの邪神ぐらいじゃねーか。そりゃ疲弊もさせてくるわな。
図書館の書架を整理しつつ、はあ、と溜息を一つ。
全く、俺は単になじみと一緒に生きていたいだけだ。
だというのに、どうしてこう・・・ままならないというか。
カウンターの方には相も変わらず微と、微目当ての雄大が並んで座っている。
おかげで俺は何の気兼ねもなく、返却本の整理に勤しめるわけだ。
超能力の云々で疲弊した精神だが、こうして日常を過ごすことで回復できる。
なんだか連中が神話生物みたいな扱いだが、多分そんなに間違ってない。いあいあ。
実際『この世界は邪神の夢見る転寝の世界』と言われても納得できてしまうしな。いあいあ。
ていうか超能力とかぶち込んできたの邪神じゃねーか。
全部の元凶アイツじゃん。マジかよ邪神最低だな。
「しっかし、この学校の図書館・・・奇書っつーか、妙な本が多いな」
今返した本の隣にある本など。
「『モハエ・イア・トゥ・ロンゴロンゴ』? 何語かもわからん」
ロンゴは、論語か?
道教かなんかの教本、だったか。確か福沢諭吉とかが愛読していたはず。
しかしでは前半部分が意味不明だ。大体、ロンゴ=論語だとしても二つ重なってる時点で意味不明。
なんとなく気になってロンゴロンゴを手に取る。
パラパラとめくってみた感じ、ロンゴロンゴと呼ばれている暗号についての解読覚書って所か。
最後まで見たが、結局『モハエ・イア・トゥ』の部分については何も書かれていなかった。
じゃあマジでなんなんだコイツ。
「イカンイカン。片付けの最中に気になった本を開いて読みふけって時間が潰れるなんざよくある事だが、仕事の最中にやることじゃない」
かぶりを振って本を戻す。
まだ未整理の書架はあるのだ。来客は少ない割になんでこんな仕事が多いんだか。大量の本でも一気に運べるのは超能力者になった恩恵の一つだが、割に合わないと思うのは俺だけだろうか。
「超能力者、か」
夜狐は言っていた。
『私はもう千年この仕事をやっている。超能力者は物理現象に囚われない。極一部だが、不死身になる程に』と。
夜狐の超能力がどんなものであるかはまだ分からない。しかしあの言いぶりからするに、多分超能力の内容と不死性に相関関係は無い。
なら、俺はどうだ?
仮にも連中と同じ超能力者の俺は、渡辺が引っ張ってきた計器でも測定しきれない地力を持つ俺は、夜狐と同じ不死身なのか?
もし不死身であるというのなら・・・俺は、なじみを看取るのだろうか?
老いてしわくちゃになったなじみの枕元で、若く瑞々しいままの俺が。
その後俺はどうするのだろう。
その時に泣きはらすのはわかるが、その後は。
無気力に腑抜けたまま、化石の様に過ごすのだろうか。それとも別の何か、例えば今読んだような本に没頭するのだろうか。それともその場で腹でも掻っ捌いて自害するのだろうか。
夜狐の銃火器という趣味は、二つ目の選択肢を取った末なのだろうか。
いっそなじみも超能力者なら。
「・・・いや、何を考えているんだ俺は」
あんな奇妙奇怪危険奇天烈な世界に、なじみを巻き込めるわけが無いだろう。
それが出来ないから、いやしたくないから、その辺りの事を言っていないのだ。
「はあ、駄目だな。まだSAN値が回復していないらしい」
「サンチって何だい?」
「まそっぷ!?」
油断していたところにいきなり話しかけられてまるで漫画の誤植の様な声を出してしまった。
振り返った先には、先には・・・。
「誰も、いない?」
「いるよッ! 君の視点が高すぎるだけだッ!」
見下げてみれば、そこにはいつもの合法ロリが。
「なんだ部長ですか」
「なんだとはなんだ」
我が軽音部部長、利根川 梅雨先輩が居た。
「あまりに驚いたもので。ちなみにいつから?」
「本当にさっきだよ。サンチがどうこうって所」
「そうでしたか」
超能力者云々が聞かれていたら・・・別にいいのか。
俺が痛い奴と思われて終わりだ。決定的な所を見たわけでもないのに実在すると考えるやつはいないだろう。本を一気に運ぶのだって一応はバランスを取っている風を装っていたし、重量はこの筋肉が説得力を生んでくれる。
まこと、筋肉はすべての解決策である。
「それで、サンチってのはどういう意味だい?」
「え? ああ・・・SAN値っていうのはちょっとしたゲームの用語でして。正気度、とでも言えばいいんですかね」
「・・・すまない、よくわからないから、色々教えてくれ」
「あー、どこから説明すればいいやら・・・」
そもそも俺もそこまで詳しいわけでもないし。
*
「つまり、だ。TRPGというゲームの専門用語で、プレイヤーステータスの一つ。何らかのイベントでランダムに上下し、下がりすぎるとキャラは発狂しゲームオーバー。こんなところかい?」
「多分そうです」
半端な知識と語彙ではこの程度の要約が限界でした。
「現実に例えると・・・『意中の男性が他の女性と談笑しているところに遭遇しました。SAN値チェックです』って感じかな?」
「嫉妬に狂って刺しに来そうな順当さが良いですが、生々しいですね」
「パッと思いつくのがこれくらいでね」
そんな修羅場をパッと思いつかないで欲しい。
「なんか流しちゃいましたけど、部長はなぜ図書館に? 何か借りたい本でもあったので?」
「ん、ああ・・・」
「ちなみにレシピ本なら四つ隣です」
「んえ!?」
「なんですその声」
実家が洋食屋だから何か新メニューの開発をするにあたっての参考資料でも探しに来たのかと思ったが、そうでもないらしい。
「い、いや、何・・・つかぬことを聞くが、女性というのはやはり料理が出来た方が良いと思うかい?」
「そりゃまあ、料理に限らず出来る出来ないなら出来る方が良いでしょう。女性男性も区別ない話です」
「ああ、うん、そりゃそうだ。君がそういう男だという事を忘れていた」
今何かを侮辱された様な気がする。
「で、来た理由は何なんです?」
相手が部長でなければ『質問を質問で返すなァー!』とキレても良かったが、部長が相手なので個々は穏便に済ませようじゃないか。
やはり悪ふざけに大切なのはTPOだからな。
「そりゃまあ、君に会いにね」
「・・・で、今度はどんな事情が飛び出してくるので?」
「やっぱわかっちゃうかー」
「裏事情もなくほっぽる様な人じゃないんですから、後はナンプレですよ」
そもそも部長は部活を含めた学校活動が終了したら家に帰り、実家の洋食屋の手伝いをするというのが日課である。
では学校活動が終わった時点で校内にいるというのはその日課から外れた行為。習慣とは怖いもので、一度慣れてしまうとわざわざ意識しない限りその行動をとってしまう。わざわざ意識して図書館に来たと言うなら、その時点で日課から逸脱する『何か』の存在が示唆される。
さて、この場合一番大切なのは日常を奪ったその何かであるわけだが、まず部長に原因は無いだろう。五体満足でこの場にいる時点で確定だ。次に考えるべき候補は部長以外の部分。
つまりは。
「父がね、盛大に腰をやってしまった。今日一日は安静に、という事らしいから店は緊急閉店。お手伝いさんの僕もこうして暇になった。そこで、君が水曜日は図書委員をしているという話を思い出したのさ」
こんなところである。
「他に友達いないんですか」
「いるともさ。だが僕の狭い交友関係ではNOがダダ被りすることはままある。今日がちょうどその日だったというわけだ。全く、薄情者め」
「女の友情、ハムより薄い」
「ローストビーフぐらいの厚さはあって欲しいもんだが、これではその厚さを疑ってしまうよ」
「で、委員として仕事をしていて、まず捕まるだろう俺のところに来たと」
「そう言う事。顧問の先生帰っちゃったから部室の鍵も開けられないし、どこぞで雲を眺めて時間を潰すよりは有意義だろう?」
「そりゃ過分な評価を頂けたようで何よりですな」
「実際、ほんの僅か有意義だった。SAN値とかいう新しい概念も獲得できたしね」
「おおよそ人生で役立つ機会はないであろうって代物ですが」
「そうでもないさ。おかげで君と楽しくお喋りできた。それだけで十分、僕の役に立ったよ」
書架の整理をしながら歩いていたので本棚の森を抜けエントランス。
カウンターのちょうど目の前に出た。
「ほうら部長、出口はあちらですよ」
「君はそんなに私に帰って欲しいのかい?」
「そうでもないですけど、流石に一人娘さんをいつまでも借りてるわけにはいかないでしょう。看病の一つでもしたらどうですか?」
「・・・ふむ、君の言にも一理あるか。わかったよ、じゃあ今日は帰るとしよう」
部長は玄関に向かって数歩歩き、何かに気付いて足を止め、踵を返して俺の方へ戻ってきた。
「ほら安心院君、ちょっとかがんで」
「はあ」
言われた通りにかがむ。
耳元で部長が一言囁いた。
「またね」
「そうですね」
だから一言返した。
「じゃあ今度こそ帰るよ。バイバイ」
「また明日とか~」
そうして挨拶を終えた俺には微の冷え込む視線が突き刺さっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
田舎に帰ったら従妹が驚くほど積極的になってた話
神谷 愛
恋愛
久しぶりに帰った田舎には暫くあっていない従妹がいるはずだった。数年ぶりに帰るとそこにいたのは驚くほど可愛く、そして積極的に成長した従妹の姿だった。昔の従妹では考えられないほどの色気で迫ってくる従妹との数日の話。
二話毎六話完結。だいたい10時か22時更新、たぶん。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる