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本編

最終話 私たち、幸せになります!

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「本日はお集まり頂きありがとうございました――」

 アベルが壇上で謝辞を述べている。まもなくパーティーが終わる。家族の別れ、なんかを惜しむつもりは私には更々なく、アベルの元へちょこちょこ様子を見に行きながら1人でパーティーの食事を満喫していた。

 にしても、これで家族との関係も終わらせられる、と考えると何だか感慨深いものがある。今日は濃い一日だったな――と1人で思い返す。

 婚約者を妹に取られて両親がそれを当たり前のように認めて、今日初めて会ったような公爵と結婚の約束をして明日からは公爵夫人だなんて、まるで物語の世界だ。

 そんなことを考えていると、アベルが一礼して壇から降りて来た。参加者たちが徐々に散り始める。いよいよ最後の時間だ。

「パブロ=シューリース子爵。フラン夫人。アランくん。サラ嬢。今日は僕のパーティーに来てくれてどうもありがとう」
「本当にセリアとご結婚なさるんですか?」

 アランがアベルに問う。私に未練がある――というわけではないだろう。しかし、つい先日まで自分のものだった女がいきなり赤の他人のものになったとなればアランとしては面白くないだろう。

「うん。僕は彼女と話をして、より一層彼女の人柄に惹かれたんだ。はじめは一目惚れだったけど、彼女は容姿だけでなく内面まで美しい。まさに最高の女性だと思うよ。そんなセリアを譲ってくれてどうもありがとう」

 アベルは少し赤面しながら、まるで真実かのように語りながら皮肉げに笑った。アランは悔しそうに顔を歪めるが、だからといって何にもならない。

「セリア。お父さんは嬉しいぞ! お前がアベル公爵に見初めて頂けただなんて私も鼻が高いぞ!」
「ありがとうございますお父様! アランではなく彼との結婚をお許し頂けて私も嬉しいです!」

 私もまた、笑顔の裏に皮肉を込めて嬉しそうに話した。サラとお母様はもの言いたげな目で私を見ているが気にする必要はないだろう――

 何故なら私は、否私達は――

「それでは皆様御機嫌よう! 私たち、幸せになります!」
 
 私はそう言うとアベルにそっと口づけをした。アベルは一瞬驚いたような表情になったがすぐに微笑んでくれた。家族とアラン、それからまだ残っていた参加者たちの視線が刺さる、がアランに婚約を解消されたときのようないたたまれなさは感じなかった。

 これにて、私たちの虚飾に彩られた茶番は幕を閉じた。後ろから声が聞こえるがもう気にしない。互いに体裁は整えられた。私たちは二人で、それぞれ幸せになるのだ――

 Fin
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