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後日譚
元婚約者アランのその後
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「ねぇアラン聞いてる? ねぇアラン! アランってば!」
「ん……? あぁ。悪い、ぼーっとしていたよ」
セリアがアベルと結婚したあのパーティーの日から数日経ったとある日の昼下がり、子爵家の令息――アランと、同じく子爵家の令嬢――サラは、2人で並んで茶を嗜んでいた。
彼らの婚約はつい先日成立したばかりであり、彼らは今までとは違い、表立って人目をしのぶことなく会うことが出来た。本来なら大いに喜んでいただろう。けれども、2人の表情は晴れない。
サラは、唯一の姉であるセリアがアベルのもとに嫁いでしまったことを寂しく思っていた。願わくば、もう一度セリアに会って彼女に謝らせてほしい、と思っていたのだ。自分の過ちを悔いることが出来る程度には、サラも大人だった。
そして、表情が晴れないのはアランも同じだった。セリアとの婚約を解消して、サラと婚約したのは果たして正しかったのか、と考えていたのだ。
アランは別にサラのことを不満に思っている訳では無い。わがまま放題の令嬢、ということならきっとアランも困り果てていただろうが、サラには人並みには常識も良識も備わっていた。
それがセリアに対しては正常に働かなかった訳だが、アランにとっては大きな問題ではなかった。
彼が思い詰めているのは、セリアがアベルと結婚したことが原因だった。もしアランがあの場で婚約を破棄しなければ、セリアとアベルが結婚することはなかっただろう。
その事を考えると、アランは複雑な気持ちに囚われた。別に、セリアがアベルと結婚したことが不満な訳では無い。アランはセリアのことを嫌っていたわけでも無かった。
むしろ、元婚約者であるセリアの幸せは祝福するべきだということを頭では良く理解していた。
――それでも、セリアが最後に見せたあの幸せそうな笑顔を思い返すと、アランの胸は苦しくなった。
自分と一緒にいる時、セリアがあんな表情をしたことは1度としてなかった。初対面である公爵に、何年もセリアと婚約していた自分が負けたように思えた。それが悔しくて、何故だか認められなかった。
アラン自身が気付いているかどうかは定かではないが、少なからずセリアに未練はあったのだろう。だから、ぽっと出の見知らぬ公爵にセリアを取られたように感じ、彼の心は晴れないでいたのだ。
もっとも、セリアが最後にみせたのはセリアのとびっきりの演技――作り物の笑顔だったのだが、アランがそれを知ることはこの先もずっと無いだろう。
アランはセリアへの複雑な思いを抱えたままきっとこの先、サラと幸せになろうとするだろう。それが彼にとって幸せな道となるかどうかはまだ誰にもわからない――
「ん……? あぁ。悪い、ぼーっとしていたよ」
セリアがアベルと結婚したあのパーティーの日から数日経ったとある日の昼下がり、子爵家の令息――アランと、同じく子爵家の令嬢――サラは、2人で並んで茶を嗜んでいた。
彼らの婚約はつい先日成立したばかりであり、彼らは今までとは違い、表立って人目をしのぶことなく会うことが出来た。本来なら大いに喜んでいただろう。けれども、2人の表情は晴れない。
サラは、唯一の姉であるセリアがアベルのもとに嫁いでしまったことを寂しく思っていた。願わくば、もう一度セリアに会って彼女に謝らせてほしい、と思っていたのだ。自分の過ちを悔いることが出来る程度には、サラも大人だった。
そして、表情が晴れないのはアランも同じだった。セリアとの婚約を解消して、サラと婚約したのは果たして正しかったのか、と考えていたのだ。
アランは別にサラのことを不満に思っている訳では無い。わがまま放題の令嬢、ということならきっとアランも困り果てていただろうが、サラには人並みには常識も良識も備わっていた。
それがセリアに対しては正常に働かなかった訳だが、アランにとっては大きな問題ではなかった。
彼が思い詰めているのは、セリアがアベルと結婚したことが原因だった。もしアランがあの場で婚約を破棄しなければ、セリアとアベルが結婚することはなかっただろう。
その事を考えると、アランは複雑な気持ちに囚われた。別に、セリアがアベルと結婚したことが不満な訳では無い。アランはセリアのことを嫌っていたわけでも無かった。
むしろ、元婚約者であるセリアの幸せは祝福するべきだということを頭では良く理解していた。
――それでも、セリアが最後に見せたあの幸せそうな笑顔を思い返すと、アランの胸は苦しくなった。
自分と一緒にいる時、セリアがあんな表情をしたことは1度としてなかった。初対面である公爵に、何年もセリアと婚約していた自分が負けたように思えた。それが悔しくて、何故だか認められなかった。
アラン自身が気付いているかどうかは定かではないが、少なからずセリアに未練はあったのだろう。だから、ぽっと出の見知らぬ公爵にセリアを取られたように感じ、彼の心は晴れないでいたのだ。
もっとも、セリアが最後にみせたのはセリアのとびっきりの演技――作り物の笑顔だったのだが、アランがそれを知ることはこの先もずっと無いだろう。
アランはセリアへの複雑な思いを抱えたままきっとこの先、サラと幸せになろうとするだろう。それが彼にとって幸せな道となるかどうかはまだ誰にもわからない――
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感想ありがとうございます!
シューリース家の人達は少しズレてただけで根が悪い人って訳じゃなかったんです(*´艸`)
これから悔い改めた姿を見せてくれるのか……
後日譚はもう少しだけ続きます……
嬉しい感想ありがとうございました!
感想ご指摘ありがとうございます!
完全に誤字です!序盤グダグダだったので……修正しときます!
嬉しい感想ありがとうございました!