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第1章 萌芽
5 アンナマリーの向かった先は…
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「ばあや!!馬車を出して!!」
「どこへ行かれるのです?」
ばあやと呼ばれた乳母は、慌てつつも、支度を整えようとする。
「マリアの所へ行くわ!!すぐに用意して!!」
「ダメです!!ご主人様より絶対に…お嬢さまを外に出すなと仰せつかっています。
この前のように攫われたら、どうするおつもりですか!!」
乳母は…アンナマリーには甘いようだが、ここだけは譲れない…と、言わんばかりに、拳を
にぎり、訴える。
するとアンナマリーは考えて、
「……マルク来てるよね。マルクと一緒なら、いいでしょう!!」
「そ、それは…」
マルクは…現在この家にいる、一人だけの護衛騎士だ。
だが、デラズヴェル男爵家の家臣というわけではない。
付き合いのある男爵家の3男で…アンナマリーが攫われたことを受け、暫く臨時で来てもらう事になったのだ。家族ぐるみの付き合いがあるため、一応お互いを小さいころから知っている。
そしてアンナマリーに根負けしたばあやが…マルクを呼んでくる。
「いったい何事ですか?アンナマリー嬢…」
爵位的にはデラズヴェル男爵家より下の家ゆえ、敬語になる。
年は…アンナマリーより2~3歳上に見える。
騎士らしく、髪を短髪に借り上げた、茶髪と茶色い目。
顔は…引き締まっているが、どこにでもいる…と言うような、印象に残りにくいような造詣である。
「マルク!!マリアの所に行きたいの!!護衛お願い!!」
「旦那様の許可は?」
一番大事な所を、冷静に突っ込む。
「これからとるわ!!」
「なら、取ってから言ってください!!」
かなり…杓子定規だった。
呆れてもいるよう。
「あと…付け加えさせていただきますが…」
マルクは…ため息つきつつ、
「マリア嬢…。ここ最近、評判が良くなくて、付き合う人間がだいぶ減ったようですよ。
付き合うのは…これを機に辞めた方がよろしいかと…」
「何言ってんのよ!!私の…数少ない友達なんだから!!悪く言わないで!!」
「だったら…少しぐらい社交界に出て、新しい友達を作った方がいいです。
そもそも…今までさぼってきたのも、昨今認められなかった理由でしょう?
コツコツと地道にやるのが、結局は一番の近道だと思いますけど」
エドガーがどこまで話しているかはわからないが…。
それなりには、アルフレッドとの騒動を、知っているようだ。
「だから!!!社交界にしっかりとデビューを果たすためには、マリアの所に行く必要があるの!!」
「なぜですか?」
「それはまだ言えない!!」
「それじゃ、護衛はできません」
マルクも…家臣じゃないからこそ、かなりはっきり言う。
そして必要以上の気遣いもしない。
「そんな事言わないでお願いよぉ~」
途端に泣き出すアンナマリー。
するとマルクは…わかりやすいくらい大きなため息をつき、
「幼馴染みとして、これも言わせていただきますけどね。
アナタはオルフィリア公爵夫人のようには、なれませんよ」
「や、やってみなきゃ、わからないじゃない!!」
泣きじゃくりつつも、それだけは…と否定する。
「いいえ。この世には、残念ながらやってみなくても、わかることも多いんです。
私が…いくら努力したところで、ギリアム公爵閣下のようになれないのと一緒です。
この世には…努力だけで埋めようのない、紛れもない不世出の天才がいるんです。
下手に凡人がその真似をすれば、待っているのは破滅ですよ」
諭すようにゆっくりと、マルクは言葉を紡ぐのだが、
「アンタと一緒にしないでぇ~」
結局…アンナマリーがビービー泣きながら、ずっと訴えるものだから…。
根負けしたばあやとマルクが…エドガーに許可を取り、3人で行くことになった。
こうして…アルフレッドが帰ってから暫くして、アンナマリーは…馬車を走らせ、あるお屋敷にたどり着いた。
ヴィタルス男爵家…。
デラズヴェル男爵家と同じで、男爵家の中では、だいぶ由緒ある家である。
商売を手広くやっており、規模がそれほど大きくはないが、顔はだいぶ広い。
もっともそれは…あくまで男爵という位の中での話だが…。
「久しぶりね、アンナマリー。
留学はどうだった?元気にしてた?
……あんまり、元気そうじゃないわね…」
マリア・ヴィタルス男爵令嬢。
ヴィタルス男爵家は…上が男3人で彼女は末娘だ。
アンナマリーと同い年の彼女は、商会の仕事に精を出しており、婚約者も恋人もいない。
美人ではないが、控えめな目が顔全体の品を良くしており、どこにでもいる普通の令嬢に見える。
体の線も、気を使っているのか、ほっそりしており、スタイルは良い方だろう。
「マリア!!前に…ウチの商会と共同で、商品開発しようって話があったわよね!!
私が成人してすぐに、持ちかけてきた奴!!」
するとマリアは瞳を輝かせ、
「やる気になったの!!」
「ええ!!それが成功すれば…かなりのお金が手に入るって言っていたでしょう?」
「そうよ。貧乏生活とはおさらばできるわ!!」
マリアはデラズヴェル男爵家の内情を知っているようだ。
アンナマリーの手を掴み、眼をじっと見て訴えている。
「お父様を説得できたの?」
「う…それは…。私を商会の仕事に、関わらせたくないのは、変わらずで…。
でも…私一人でも良いって、前に言っていた気がしたから…」
「まあ…できれば、アンナマリーのお父様の商会にも協力してもらいたいけど…。
アンナマリー1人でも、共同事業の形にはできるわ!!」
「ありがとう!!」
「でも…」
マリアはここで少し顔を曇らせ、
「そんなに生活が厳しくなったの?アナタ一人も養えないくらい?」
「それは…」
アンナマリーが下を向いたから、
「ああ、ごめんなさい。別に…出資金を出せなんて、言うつもりはないんだけど…。
パートナーになるなら、知っとかなきゃと思っただけよ」
それを聞いてアンナマリーは再度顔を上げ、
「せ、生活のため…っていうより、実績を作りたいの!!
お父様とお母様に…あと、みんなに認めてもらえるための…。
その新商品…人々が求めてやまないって、言っていたでしょ!!」
本当はお金も欲しいだろうが…。その辺までは、話せないようだ。
「そうよ!!人を引き付ける物よ!!」
「一体何?」
「植物よ!!」
「植物?」
「そう。その植物はね…。一風変わった薬草なの。人の苦痛を取って…幸せな気分になれる」
「そうなのね…。だったら需要は多そう…」
「でしょ!!一緒にやりましょう!!」
「わかったわ!!」
「あ、でも、一個条件!!」
「なに?」
「代表者はアナタにしてくれない?
私も…今回の商品は自信があるから、ウチの商会は使わずに出したいのよ。
実績積みたいのは、私も同じ!!
でも…ウチのお父様もお兄様たちも…過保護なせいかうるさくてさ…」
「そっか…。1人だけの女の子だもんね。
わかった!!いいよ。もちろん、収入は折半ね!!」
「あはは、話しが早くて助かるぅ~」
その後…笑いながら契約書を作成するのだった…。
-----------------------------------------------------------------------------------------
「ベティニア夫人にお願いするなんて、一体何を考えているの!!」
ガルドベンダに帰って来たアルフレッドに対し、アイリンのきつーい一言。
「だ、だって…あの方の指導を受けられれば、箔がつくし…最短でモノになると…。
それに…お父様とお母様が、いつも…教育は最高の物を受けるべきだと言っていたではありませんか!!」
アルフレッドとしては、当然だと言いたげだが、
「全く…何てこと…」
アイリンはめっちゃ頭が痛そうに、顔を抑えている…。
「あのね!!私は…無名でもいい講師はいっぱいいるんだから、相性のいい方を付けてあげなさいって、言ったでしょ!!なのに何で…ベティニア夫人にするの!!」
アルフレッドは…その反応が、何を意味したのか、分かったのかわからないのか、
「で、でも!!アンナマリーは本当に、ガッツがあって、頑張り屋なんですよ!!真面目だし…。
それをわかってもらえれば!!」
ひとまず訴えたいことを、言ったようだ。
「そんなの、上昇志向があれば、誰でもそうよ!!
その上で…モノになるかどうか…を、見られるの!!
習うための標準に達していない人を紹介すれば、かなり嫌悪感を抱かれるだけ!!
アナタも勿論、アンナマリー嬢もね!!それはわかっていたの?」
「何が言いたいんですか?お母様…」
アルフレッドはアイリンの言葉に、別の意図をくみ取っていた。
「これよ!!」
ばさり…と、出された書類は、アンナマリーのアカデミーでの成績表。
こんなものが簡単に手に入るのは、ガルドベンダならではだろう。
「行儀作法…。筆記は満点だけど、実技が落第すれすれじゃない。
この状態でよく、ベティニア夫人に持って行こうと思ったわね」
アカデミーの行儀作法は、むしろ最低限度のものだ。
それさえ落第すれすれでは…下手をすると、アカデミー入学前の子供以下と言う事だ。
「あのね!!アルフレッド…。仮にもあなたは、お父様の手伝いで、アカデミーの仕事を沢山して来たでしょう?
標準に達しない人間を、落第させるのはどうしてだと思う?
それ以上の事をしても、ついてこれないからよ。だからもっと下で勉強しなさい…でしょう?」
つまりベティニア夫人に習った所で、ついていけない、卒業できない…という事だろう。
「そ、そんなの、やって見なければ、わからないじゃないですか!!
実技は筆記のように、正解不正解が分かれるものでは…」
「一体アナタはどうしたの?アルフレッド!!」
ちょっと心配そうな顔になる。
「現実を見ない…。これは一番やってはいけない事だと、お父様は散々言ってきたでしょう。
アンナマリー嬢という人物の、現状をしっかりと見なさい!!
そうじゃないと、対策も取れないわよ!!」
アルフレッドは…この言葉に下を向くしかできない。
現時点での成績表は、嘘をつかないから。
アイリンは長いため息をつき、
「オルフィリア公爵夫人も言っていたけどね!!覚悟が足りなければ、最悪処刑コースになるのよ!!
ガルドベンダはそういう家なのよ!!
まずそこを、よく言って聞かせたの?」
アルフレッドがぎくりとし、
「いや…。最初にそんなこと言ったら…」
「それで逃げるようなら、それこそ務まらないわよ!!」
追い詰めるアイリン。
「あのね、アルフレッド…。
アナタの気持ちもわかるし、大切にしてあげたいけど…これは一歩間違うと、アンナマリー嬢を潰してしまう問題なのよ。
その事をよく頭に置いて、現実を見なさいな!!しっかりと!!」
アイリンの言葉に…アルフレッドは何も言い返せず、その場に佇むしかないのだった…。
「どこへ行かれるのです?」
ばあやと呼ばれた乳母は、慌てつつも、支度を整えようとする。
「マリアの所へ行くわ!!すぐに用意して!!」
「ダメです!!ご主人様より絶対に…お嬢さまを外に出すなと仰せつかっています。
この前のように攫われたら、どうするおつもりですか!!」
乳母は…アンナマリーには甘いようだが、ここだけは譲れない…と、言わんばかりに、拳を
にぎり、訴える。
するとアンナマリーは考えて、
「……マルク来てるよね。マルクと一緒なら、いいでしょう!!」
「そ、それは…」
マルクは…現在この家にいる、一人だけの護衛騎士だ。
だが、デラズヴェル男爵家の家臣というわけではない。
付き合いのある男爵家の3男で…アンナマリーが攫われたことを受け、暫く臨時で来てもらう事になったのだ。家族ぐるみの付き合いがあるため、一応お互いを小さいころから知っている。
そしてアンナマリーに根負けしたばあやが…マルクを呼んでくる。
「いったい何事ですか?アンナマリー嬢…」
爵位的にはデラズヴェル男爵家より下の家ゆえ、敬語になる。
年は…アンナマリーより2~3歳上に見える。
騎士らしく、髪を短髪に借り上げた、茶髪と茶色い目。
顔は…引き締まっているが、どこにでもいる…と言うような、印象に残りにくいような造詣である。
「マルク!!マリアの所に行きたいの!!護衛お願い!!」
「旦那様の許可は?」
一番大事な所を、冷静に突っ込む。
「これからとるわ!!」
「なら、取ってから言ってください!!」
かなり…杓子定規だった。
呆れてもいるよう。
「あと…付け加えさせていただきますが…」
マルクは…ため息つきつつ、
「マリア嬢…。ここ最近、評判が良くなくて、付き合う人間がだいぶ減ったようですよ。
付き合うのは…これを機に辞めた方がよろしいかと…」
「何言ってんのよ!!私の…数少ない友達なんだから!!悪く言わないで!!」
「だったら…少しぐらい社交界に出て、新しい友達を作った方がいいです。
そもそも…今までさぼってきたのも、昨今認められなかった理由でしょう?
コツコツと地道にやるのが、結局は一番の近道だと思いますけど」
エドガーがどこまで話しているかはわからないが…。
それなりには、アルフレッドとの騒動を、知っているようだ。
「だから!!!社交界にしっかりとデビューを果たすためには、マリアの所に行く必要があるの!!」
「なぜですか?」
「それはまだ言えない!!」
「それじゃ、護衛はできません」
マルクも…家臣じゃないからこそ、かなりはっきり言う。
そして必要以上の気遣いもしない。
「そんな事言わないでお願いよぉ~」
途端に泣き出すアンナマリー。
するとマルクは…わかりやすいくらい大きなため息をつき、
「幼馴染みとして、これも言わせていただきますけどね。
アナタはオルフィリア公爵夫人のようには、なれませんよ」
「や、やってみなきゃ、わからないじゃない!!」
泣きじゃくりつつも、それだけは…と否定する。
「いいえ。この世には、残念ながらやってみなくても、わかることも多いんです。
私が…いくら努力したところで、ギリアム公爵閣下のようになれないのと一緒です。
この世には…努力だけで埋めようのない、紛れもない不世出の天才がいるんです。
下手に凡人がその真似をすれば、待っているのは破滅ですよ」
諭すようにゆっくりと、マルクは言葉を紡ぐのだが、
「アンタと一緒にしないでぇ~」
結局…アンナマリーがビービー泣きながら、ずっと訴えるものだから…。
根負けしたばあやとマルクが…エドガーに許可を取り、3人で行くことになった。
こうして…アルフレッドが帰ってから暫くして、アンナマリーは…馬車を走らせ、あるお屋敷にたどり着いた。
ヴィタルス男爵家…。
デラズヴェル男爵家と同じで、男爵家の中では、だいぶ由緒ある家である。
商売を手広くやっており、規模がそれほど大きくはないが、顔はだいぶ広い。
もっともそれは…あくまで男爵という位の中での話だが…。
「久しぶりね、アンナマリー。
留学はどうだった?元気にしてた?
……あんまり、元気そうじゃないわね…」
マリア・ヴィタルス男爵令嬢。
ヴィタルス男爵家は…上が男3人で彼女は末娘だ。
アンナマリーと同い年の彼女は、商会の仕事に精を出しており、婚約者も恋人もいない。
美人ではないが、控えめな目が顔全体の品を良くしており、どこにでもいる普通の令嬢に見える。
体の線も、気を使っているのか、ほっそりしており、スタイルは良い方だろう。
「マリア!!前に…ウチの商会と共同で、商品開発しようって話があったわよね!!
私が成人してすぐに、持ちかけてきた奴!!」
するとマリアは瞳を輝かせ、
「やる気になったの!!」
「ええ!!それが成功すれば…かなりのお金が手に入るって言っていたでしょう?」
「そうよ。貧乏生活とはおさらばできるわ!!」
マリアはデラズヴェル男爵家の内情を知っているようだ。
アンナマリーの手を掴み、眼をじっと見て訴えている。
「お父様を説得できたの?」
「う…それは…。私を商会の仕事に、関わらせたくないのは、変わらずで…。
でも…私一人でも良いって、前に言っていた気がしたから…」
「まあ…できれば、アンナマリーのお父様の商会にも協力してもらいたいけど…。
アンナマリー1人でも、共同事業の形にはできるわ!!」
「ありがとう!!」
「でも…」
マリアはここで少し顔を曇らせ、
「そんなに生活が厳しくなったの?アナタ一人も養えないくらい?」
「それは…」
アンナマリーが下を向いたから、
「ああ、ごめんなさい。別に…出資金を出せなんて、言うつもりはないんだけど…。
パートナーになるなら、知っとかなきゃと思っただけよ」
それを聞いてアンナマリーは再度顔を上げ、
「せ、生活のため…っていうより、実績を作りたいの!!
お父様とお母様に…あと、みんなに認めてもらえるための…。
その新商品…人々が求めてやまないって、言っていたでしょ!!」
本当はお金も欲しいだろうが…。その辺までは、話せないようだ。
「そうよ!!人を引き付ける物よ!!」
「一体何?」
「植物よ!!」
「植物?」
「そう。その植物はね…。一風変わった薬草なの。人の苦痛を取って…幸せな気分になれる」
「そうなのね…。だったら需要は多そう…」
「でしょ!!一緒にやりましょう!!」
「わかったわ!!」
「あ、でも、一個条件!!」
「なに?」
「代表者はアナタにしてくれない?
私も…今回の商品は自信があるから、ウチの商会は使わずに出したいのよ。
実績積みたいのは、私も同じ!!
でも…ウチのお父様もお兄様たちも…過保護なせいかうるさくてさ…」
「そっか…。1人だけの女の子だもんね。
わかった!!いいよ。もちろん、収入は折半ね!!」
「あはは、話しが早くて助かるぅ~」
その後…笑いながら契約書を作成するのだった…。
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「ベティニア夫人にお願いするなんて、一体何を考えているの!!」
ガルドベンダに帰って来たアルフレッドに対し、アイリンのきつーい一言。
「だ、だって…あの方の指導を受けられれば、箔がつくし…最短でモノになると…。
それに…お父様とお母様が、いつも…教育は最高の物を受けるべきだと言っていたではありませんか!!」
アルフレッドとしては、当然だと言いたげだが、
「全く…何てこと…」
アイリンはめっちゃ頭が痛そうに、顔を抑えている…。
「あのね!!私は…無名でもいい講師はいっぱいいるんだから、相性のいい方を付けてあげなさいって、言ったでしょ!!なのに何で…ベティニア夫人にするの!!」
アルフレッドは…その反応が、何を意味したのか、分かったのかわからないのか、
「で、でも!!アンナマリーは本当に、ガッツがあって、頑張り屋なんですよ!!真面目だし…。
それをわかってもらえれば!!」
ひとまず訴えたいことを、言ったようだ。
「そんなの、上昇志向があれば、誰でもそうよ!!
その上で…モノになるかどうか…を、見られるの!!
習うための標準に達していない人を紹介すれば、かなり嫌悪感を抱かれるだけ!!
アナタも勿論、アンナマリー嬢もね!!それはわかっていたの?」
「何が言いたいんですか?お母様…」
アルフレッドはアイリンの言葉に、別の意図をくみ取っていた。
「これよ!!」
ばさり…と、出された書類は、アンナマリーのアカデミーでの成績表。
こんなものが簡単に手に入るのは、ガルドベンダならではだろう。
「行儀作法…。筆記は満点だけど、実技が落第すれすれじゃない。
この状態でよく、ベティニア夫人に持って行こうと思ったわね」
アカデミーの行儀作法は、むしろ最低限度のものだ。
それさえ落第すれすれでは…下手をすると、アカデミー入学前の子供以下と言う事だ。
「あのね!!アルフレッド…。仮にもあなたは、お父様の手伝いで、アカデミーの仕事を沢山して来たでしょう?
標準に達しない人間を、落第させるのはどうしてだと思う?
それ以上の事をしても、ついてこれないからよ。だからもっと下で勉強しなさい…でしょう?」
つまりベティニア夫人に習った所で、ついていけない、卒業できない…という事だろう。
「そ、そんなの、やって見なければ、わからないじゃないですか!!
実技は筆記のように、正解不正解が分かれるものでは…」
「一体アナタはどうしたの?アルフレッド!!」
ちょっと心配そうな顔になる。
「現実を見ない…。これは一番やってはいけない事だと、お父様は散々言ってきたでしょう。
アンナマリー嬢という人物の、現状をしっかりと見なさい!!
そうじゃないと、対策も取れないわよ!!」
アルフレッドは…この言葉に下を向くしかできない。
現時点での成績表は、嘘をつかないから。
アイリンは長いため息をつき、
「オルフィリア公爵夫人も言っていたけどね!!覚悟が足りなければ、最悪処刑コースになるのよ!!
ガルドベンダはそういう家なのよ!!
まずそこを、よく言って聞かせたの?」
アルフレッドがぎくりとし、
「いや…。最初にそんなこと言ったら…」
「それで逃げるようなら、それこそ務まらないわよ!!」
追い詰めるアイリン。
「あのね、アルフレッド…。
アナタの気持ちもわかるし、大切にしてあげたいけど…これは一歩間違うと、アンナマリー嬢を潰してしまう問題なのよ。
その事をよく頭に置いて、現実を見なさいな!!しっかりと!!」
アイリンの言葉に…アルフレッドは何も言い返せず、その場に佇むしかないのだった…。
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