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4.二つの仕事7
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「ではしばらくそのままでいなさい。張り型が抜けないように留意して」
「はい……」
また後で来る、と言ってリゲンスはケネルの部屋を出て行った。
「おうボウズ!」
「ヨンドさん!」
昼食を終えて畑に向かうと、ヨンドが地面に膝をつき、小さな鍬(くわ)で作業をしていた。
「何を――あ」
覗き込むと、昨日撒いた馬糞堆肥が元の土に混ざっていた。水やりで土が濡れて柔らかくなっているうちに一度苗を引き抜き、土を混ぜてから植え直しているのだ。
「やらないよりはマシかと思ってな」
「僕も今日、これをしようと思ってたんです」
リゲンスによる口淫と絶頂なしで貞操帯を嵌められたせいで、昼食を食べてもケネルの心と体はぐずぐずしたままだった。だからしばらく床で丸まっていたのだが、どれほど陰部に手を伸ばそうと金属が無慈悲にそれを阻み、体は苦しくなるばかり。それならいっそのこと体を動かそうと思ってここへ来たのだ。
「じゃあここを頼んでもいいか? 俺は他の畑にも撒いてくる」
「はい。ありがとうございます」
広大な畑だ。村人向けに作るのとは規模が違う。しかし改めて見回してみると、畑にいる全員が馬糞入りの土を運んだり、混ぜたりしているようだった。
(うまくいくといいな……)
もう実がつき始めているものもあるので、すべてが村のものほど大きくなることはないだろう。しかしやらないよりは絶対にやった方がいい。
せっせと土を掘り返していると、背後から声を掛けられた。
「成長具合はどうだ?」
振り返るが、そこにいたのは知らない顔だった。中年の男性で、柔らかい顔立ち。染み一つない白い衣服を着ている。偉い人だろうか。
「こんにちは。あの、えっと」
「ああ、新入りか。今日は何が採れたんだい」
「あ――」
もしかして調理人だろうか。そう尋ねようとした時、遠くからヨンドが走ってくるのが見えた。
「おおい! ルカ! どうした!」
「ああ、ヨンド」ルカがケネルを見てからヨンドに尋ねた。
「新人が入ったのか」
「彼はケネル。仕事が午前中しかないとかで、野菜の育ちが悪いのを見て協力してくれてるんだ」
「そうか。ありがとう、ケネル」
「いえ! 僕、村で畑仕事もしていたので」
「ほお」ルカの視線が再度ケネルに移った。品定めするように全身をじっとりと見られる。「ふむ……」
「なんだよ、じろじろ見て。お前の好みか?」
ヨンドが笑うと、ルカもいたずらに口角を上げた。
「ああ、悪くないな」
「えっ」
「冗談だ。来たのは最近か?」
「はい。数日前です」
この手の話はしたくない。リゲンスから、仕事内容は人に言わないようにと言われているのだ。しかしケネルは自分でもわかるほど嘘をつくのが下手だった。
(何しに来たって訊かれたらどうしよう……)
農業、と言ったらヨンドは話を合わせてくれるだろうか。でもそうすればヨンドに嘘をつかせることになってしまうし――。
「そういえば、ケネルは何の仕事をしにきたんだ?」
しかし、そう尋ねてきたのはルカではなくヨンドの方だった。突然のことに、思わず「あ、その、えっと……」と呟くことしかできない。
「すまない、ヨンド。仕入れについて相談したいんだ」
ルカが割って入ると、ヨンドはハッとした表情をした。
「ああ、そうか。悪い」
二人はケネルに片手を上げると小屋の方へと歩いていった。
(危なかった……)
今回はルカのおかげで免れたが、次こそ答えるまで逃げられないだろう。しかしなんと返せばいいかわからない。
(夕食の時にリゲンス様に相談してみよう)
今考えていても仕方ない。
「はい……」
また後で来る、と言ってリゲンスはケネルの部屋を出て行った。
「おうボウズ!」
「ヨンドさん!」
昼食を終えて畑に向かうと、ヨンドが地面に膝をつき、小さな鍬(くわ)で作業をしていた。
「何を――あ」
覗き込むと、昨日撒いた馬糞堆肥が元の土に混ざっていた。水やりで土が濡れて柔らかくなっているうちに一度苗を引き抜き、土を混ぜてから植え直しているのだ。
「やらないよりはマシかと思ってな」
「僕も今日、これをしようと思ってたんです」
リゲンスによる口淫と絶頂なしで貞操帯を嵌められたせいで、昼食を食べてもケネルの心と体はぐずぐずしたままだった。だからしばらく床で丸まっていたのだが、どれほど陰部に手を伸ばそうと金属が無慈悲にそれを阻み、体は苦しくなるばかり。それならいっそのこと体を動かそうと思ってここへ来たのだ。
「じゃあここを頼んでもいいか? 俺は他の畑にも撒いてくる」
「はい。ありがとうございます」
広大な畑だ。村人向けに作るのとは規模が違う。しかし改めて見回してみると、畑にいる全員が馬糞入りの土を運んだり、混ぜたりしているようだった。
(うまくいくといいな……)
もう実がつき始めているものもあるので、すべてが村のものほど大きくなることはないだろう。しかしやらないよりは絶対にやった方がいい。
せっせと土を掘り返していると、背後から声を掛けられた。
「成長具合はどうだ?」
振り返るが、そこにいたのは知らない顔だった。中年の男性で、柔らかい顔立ち。染み一つない白い衣服を着ている。偉い人だろうか。
「こんにちは。あの、えっと」
「ああ、新入りか。今日は何が採れたんだい」
「あ――」
もしかして調理人だろうか。そう尋ねようとした時、遠くからヨンドが走ってくるのが見えた。
「おおい! ルカ! どうした!」
「ああ、ヨンド」ルカがケネルを見てからヨンドに尋ねた。
「新人が入ったのか」
「彼はケネル。仕事が午前中しかないとかで、野菜の育ちが悪いのを見て協力してくれてるんだ」
「そうか。ありがとう、ケネル」
「いえ! 僕、村で畑仕事もしていたので」
「ほお」ルカの視線が再度ケネルに移った。品定めするように全身をじっとりと見られる。「ふむ……」
「なんだよ、じろじろ見て。お前の好みか?」
ヨンドが笑うと、ルカもいたずらに口角を上げた。
「ああ、悪くないな」
「えっ」
「冗談だ。来たのは最近か?」
「はい。数日前です」
この手の話はしたくない。リゲンスから、仕事内容は人に言わないようにと言われているのだ。しかしケネルは自分でもわかるほど嘘をつくのが下手だった。
(何しに来たって訊かれたらどうしよう……)
農業、と言ったらヨンドは話を合わせてくれるだろうか。でもそうすればヨンドに嘘をつかせることになってしまうし――。
「そういえば、ケネルは何の仕事をしにきたんだ?」
しかし、そう尋ねてきたのはルカではなくヨンドの方だった。突然のことに、思わず「あ、その、えっと……」と呟くことしかできない。
「すまない、ヨンド。仕入れについて相談したいんだ」
ルカが割って入ると、ヨンドはハッとした表情をした。
「ああ、そうか。悪い」
二人はケネルに片手を上げると小屋の方へと歩いていった。
(危なかった……)
今回はルカのおかげで免れたが、次こそ答えるまで逃げられないだろう。しかしなんと返せばいいかわからない。
(夕食の時にリゲンス様に相談してみよう)
今考えていても仕方ない。
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