【R18】魔族で魔眼な妹は、勇者な兄とお付き合いしたい!

ドゴイエちまき

文字の大きさ
11 / 48
盲目乙女は拗らせ剣士に愛されたい

11.一話クロウside

しおりを挟む
 僕が森でうとうと微睡んでる時に、キアラが寄ってくるのは珍しいことじゃない。いつだってキアラは僕を見つけるのが上手い。いつもそっと寄っては嬉しそうな笑顔を見せるキアラを見ていると、つい触れてしまいそうになる。

 なのに、真っ直ぐに気持ちをぶつけてくるキアラと違って上手く言葉を伝えられない僕は、いつも悲しい顔をさせてしまう。

 キアラは可愛い。感情がそのまま出る大きな瞳も、サラサラ流れる桜色の明るくて長い髪も、僕を呼ぶ甘くて柔らかな声も、何もかも。何より裏表なく、いつでも真っ直ぐに僕を求めてくる健気さが、時々たまらなくなるほど、可愛い。

 魔族でなければ多分、好きになっていたと思う。そう考える時点でもうダメなんだろうけど。だから僕のことなんか見ないで、他に目を向ければいい。

 なるべく関わらないようにと思いながらも、なんとなく寂しそうなキアラを見て、つい手を差し伸べてしまった。小さな体は予想より軽くて、まさか抱き止めることになるとは思わなかった。しかも、壊れそうに頼りなくて、柔らかくて、おまけにいい匂いもして、理性より先に抱きしめてしまった。

 一瞬でもキアラを求めてしまったことに、自分でも驚いた。抱きしめた華奢な感触を思い出して、つい両腕を眺める。
「小さかったな……」

 キアラが来て暫くは警戒心を剥き出しに邪険に扱ったが、健気に慕ってくるキアラを何だか放っておけなかった。母を思い出しては泣きじゃくる小さな頭を落ち着くまで撫でてやったり、何度か抱きしめて宥めた事もある。でもそれも最初の半年だけで、年々距離を取るようになったここ数年、スキンシップは一切しないようになった。キアラから寄ってくるのは置いといて。

 咄嗟に抱きしめてしまったけど、これはもう健全な男子だから仕方ない多分。妹だけど血の繋がりはないからセーフ……多分。いや、むしろアウトか。

 誰といてもこんな風に衝動的になる事はないのに、たまに自制より先に動いてしまう事があるのは、キアラがあまりにも無防備だからだろうか。一瞬だったけど、気付いていないことを願う。僕は兄で、キアラは妹だ。いくら可愛くても、それ以上になるつもりはない。

 剣の師でもある母さんの事は尊敬しているし、感謝もしている。けれど自分の中に流れる魔族の血は正直好きじゃない。なるべく考えないようにしているけど、僕は魔力を持っていない。父さんのような光の魔力がないから剣を抜けないんだとしたら……。どういう訳か光の魔力は人間のみに宿るもので、魔族には宿らない。ただでさえ人間の魔力持ちは少ないから、実はかなり希少な力だ。

 魔力は突然変異を除き、血筋で受け継がれるものなので、本来なら息子である僕にも受け継がれるはずだ。だけど、混血であるこの身には宿らなかった。やはりそこも魔族の血を疎ましく思ってしまう。魔力の問題になると、どう足掻いても剣を使うことはできない。

 そう思うとさっさと諦めるべきだけど、なんせ物心ついたときから固執している剣なので、もう半分意地になってしまっている。最近はいい加減、自分でも馬鹿みたいだと他人事のように思う。

 でも、もしかすると自分から魔族の要素をなるべく遠ざけて、剣の持ち手に相応しい技量に追いついたら……なんて馬鹿な事を考えて、今に至る。昔は何とも思わなかったけど、聖剣を抜けなかったあの日からどれもこれも魔族の血のせいにしてしまう僕は、ものすごく子供で格好悪いんだろう。

 聖剣なんて使わなくても今まで十分にやってこれたし、そろそろ潮時かもしれない。何より魔族嫌いだなんて母さんに申し訳ないし、最低だ。それでもそこを超えることが出来る程、僕にはまだ割り切る事が出来ない。

 出会った頃は禁術とされる、人の心に干渉する魔法と同じ効力を持つらしい瞳に、単純に嫌悪を覚えた。今は魅了されて、キアラに跪く自分を想像すると尚更怖い。キアラがうちに来てからもう五年にもなるけれど、いまだに僕はあの瞳をまともに見れないでいる。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...