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盲目乙女は拗らせ剣士に愛されたい
11.一話クロウside
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僕が森でうとうと微睡んでる時に、キアラが寄ってくるのは珍しいことじゃない。いつだってキアラは僕を見つけるのが上手い。いつもそっと寄っては嬉しそうな笑顔を見せるキアラを見ていると、つい触れてしまいそうになる。
なのに、真っ直ぐに気持ちをぶつけてくるキアラと違って上手く言葉を伝えられない僕は、いつも悲しい顔をさせてしまう。
キアラは可愛い。感情がそのまま出る大きな瞳も、サラサラ流れる桜色の明るくて長い髪も、僕を呼ぶ甘くて柔らかな声も、何もかも。何より裏表なく、いつでも真っ直ぐに僕を求めてくる健気さが、時々たまらなくなるほど、可愛い。
魔族でなければ多分、好きになっていたと思う。そう考える時点でもうダメなんだろうけど。だから僕のことなんか見ないで、他に目を向ければいい。
なるべく関わらないようにと思いながらも、なんとなく寂しそうなキアラを見て、つい手を差し伸べてしまった。小さな体は予想より軽くて、まさか抱き止めることになるとは思わなかった。しかも、壊れそうに頼りなくて、柔らかくて、おまけにいい匂いもして、理性より先に抱きしめてしまった。
一瞬でもキアラを求めてしまったことに、自分でも驚いた。抱きしめた華奢な感触を思い出して、つい両腕を眺める。
「小さかったな……」
キアラが来て暫くは警戒心を剥き出しに邪険に扱ったが、健気に慕ってくるキアラを何だか放っておけなかった。母を思い出しては泣きじゃくる小さな頭を落ち着くまで撫でてやったり、何度か抱きしめて宥めた事もある。でもそれも最初の半年だけで、年々距離を取るようになったここ数年、スキンシップは一切しないようになった。キアラから寄ってくるのは置いといて。
咄嗟に抱きしめてしまったけど、これはもう健全な男子だから仕方ない多分。妹だけど血の繋がりはないからセーフ……多分。いや、むしろアウトか。
誰といてもこんな風に衝動的になる事はないのに、たまに自制より先に動いてしまう事があるのは、キアラがあまりにも無防備だからだろうか。一瞬だったけど、気付いていないことを願う。僕は兄で、キアラは妹だ。いくら可愛くても、それ以上になるつもりはない。
剣の師でもある母さんの事は尊敬しているし、感謝もしている。けれど自分の中に流れる魔族の血は正直好きじゃない。なるべく考えないようにしているけど、僕は魔力を持っていない。父さんのような光の魔力がないから剣を抜けないんだとしたら……。どういう訳か光の魔力は人間のみに宿るもので、魔族には宿らない。ただでさえ人間の魔力持ちは少ないから、実はかなり希少な力だ。
魔力は突然変異を除き、血筋で受け継がれるものなので、本来なら息子である僕にも受け継がれるはずだ。だけど、混血であるこの身には宿らなかった。やはりそこも魔族の血を疎ましく思ってしまう。魔力の問題になると、どう足掻いても剣を使うことはできない。
そう思うとさっさと諦めるべきだけど、なんせ物心ついたときから固執している剣なので、もう半分意地になってしまっている。最近はいい加減、自分でも馬鹿みたいだと他人事のように思う。
でも、もしかすると自分から魔族の要素をなるべく遠ざけて、剣の持ち手に相応しい技量に追いついたら……なんて馬鹿な事を考えて、今に至る。昔は何とも思わなかったけど、聖剣を抜けなかったあの日からどれもこれも魔族の血のせいにしてしまう僕は、ものすごく子供で格好悪いんだろう。
聖剣なんて使わなくても今まで十分にやってこれたし、そろそろ潮時かもしれない。何より魔族嫌いだなんて母さんに申し訳ないし、最低だ。それでもそこを超えることが出来る程、僕にはまだ割り切る事が出来ない。
出会った頃は禁術とされる、人の心に干渉する魔法と同じ効力を持つらしい瞳に、単純に嫌悪を覚えた。今は魅了されて、キアラに跪く自分を想像すると尚更怖い。キアラがうちに来てからもう五年にもなるけれど、いまだに僕はあの瞳をまともに見れないでいる。
なのに、真っ直ぐに気持ちをぶつけてくるキアラと違って上手く言葉を伝えられない僕は、いつも悲しい顔をさせてしまう。
キアラは可愛い。感情がそのまま出る大きな瞳も、サラサラ流れる桜色の明るくて長い髪も、僕を呼ぶ甘くて柔らかな声も、何もかも。何より裏表なく、いつでも真っ直ぐに僕を求めてくる健気さが、時々たまらなくなるほど、可愛い。
魔族でなければ多分、好きになっていたと思う。そう考える時点でもうダメなんだろうけど。だから僕のことなんか見ないで、他に目を向ければいい。
なるべく関わらないようにと思いながらも、なんとなく寂しそうなキアラを見て、つい手を差し伸べてしまった。小さな体は予想より軽くて、まさか抱き止めることになるとは思わなかった。しかも、壊れそうに頼りなくて、柔らかくて、おまけにいい匂いもして、理性より先に抱きしめてしまった。
一瞬でもキアラを求めてしまったことに、自分でも驚いた。抱きしめた華奢な感触を思い出して、つい両腕を眺める。
「小さかったな……」
キアラが来て暫くは警戒心を剥き出しに邪険に扱ったが、健気に慕ってくるキアラを何だか放っておけなかった。母を思い出しては泣きじゃくる小さな頭を落ち着くまで撫でてやったり、何度か抱きしめて宥めた事もある。でもそれも最初の半年だけで、年々距離を取るようになったここ数年、スキンシップは一切しないようになった。キアラから寄ってくるのは置いといて。
咄嗟に抱きしめてしまったけど、これはもう健全な男子だから仕方ない多分。妹だけど血の繋がりはないからセーフ……多分。いや、むしろアウトか。
誰といてもこんな風に衝動的になる事はないのに、たまに自制より先に動いてしまう事があるのは、キアラがあまりにも無防備だからだろうか。一瞬だったけど、気付いていないことを願う。僕は兄で、キアラは妹だ。いくら可愛くても、それ以上になるつもりはない。
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