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8:公爵令嬢と聖女、試行錯誤する。

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「いじめ作戦はうまくいったけど……、城に引き篭もられるとは思ってなかったよ」

 あのクズ令嬢、サイテー。
 せっかくあんなに手を尽くしていじめてやったっていうのに、なんで王子様を諦めないわけ?

「あたくしなんて放火までしましたのよ? なのにあの女!」

「それが逆効果だったんだよ。むしろ王子様に近づけちゃったじゃん」

「ま、まさか生き残るだなんて思わなかったですもの!」

 そう叫ぶのは銀髪縦ロールの美少女――公爵令嬢のリーズ様。ダコタのライバル。
 ダコタは元平民だから、身分的には比べ物にならないけど……王子様への愛なら別。
 例え、王太子でなくなろうとも、王子様の魅力は絶大。断じてあんなクズ女に取られていいもんじゃない。

 あのクズ女の腹が立つところは、悲劇のヒロインぶってるところ。
 「しようがなかったんです」って声が今にも聞こえてきそう。選んだのは自分なのに、人のせいばっかりにして。

 リーズ様の手下に屋敷が燃やされた時、死んじゃえば良かったのに。
 クズは焼却処分にしようってアイデアまでは良かったんだけど、結局失敗したんだよね。

 それからもずっとずっと学園でいじめ続けてたんだけど。
 諦めるどころかさらに王子様にベタベタになって、しまいには「疲れました……」で退学。
 なんだよそれ!? 平民のダコタがどれだけ頑張ってしんどい思いして学園に通ってると思ってんの!? ほんと呆れたよ。

 それで城に引き篭もりやがって、手出しができなくなっちゃった。
 どうやってあそこから引き摺り出してやろうか?ってのが今の課題。休戦協定を結んでる今だからこそ、リーズ様の知恵が借りられる。

「……そうですわね。なら、『お見舞い』のお手紙など寄越すのはいかが?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 大失敗だった!
 あのクズ令嬢のところに罵倒雑言の手紙を送りつけてやったら、王子様に読まれちゃったよー!

 普通貴族へ向けてのお手紙は、その人自身しか読まないのがルール。
 なのに王子様ったらクズ令嬢宛ての手紙を我先に読んじゃったみたい。

 それでお城は大騒ぎさ。
 誰が手紙を送ったかで議論が繰り広げられちゃってもう大変。幸いなことに罪はリーズ様が他の令嬢になすりつけたみたいだけど、全然クズ令嬢にダメージを与えられないどころか逆に王子様に怪しまれたよ。

 次の策を考えて、ダコタは頭を悩ませた。孤児院育ちだからあんまり頭は良くないのは自覚してる。
 リーズ様の方を見たけど、彼女もどうやら良案はないみたい。あんただけが頼りなんだからしっかりしてよね!

「――とにかくゴミクズは処分が一番ですわ。あたくしの使いの者に頼んで、殺して差し上げるのなんていかが?」

「でも、王子様が」

「大丈夫ですわよ。本物を雇いますから」

 つまり、殺し屋ってことだよね?
 ダコタは一応聖女。押し付けられてるだけの役目なんだけど、それでも神に認められし子って設定なわけだし、あんまり直々に人殺しを推奨したくはないけど。
 でもまあ、放火しちゃってる時点で一緒だよねー。

「じゃ、それでお願い」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ほんと最悪!
 この世の地獄を味わせてやりたい気分だよ、あの女。

 せっかく殺し屋を送ったっていうのに、クズ令嬢ったら王子様を横に従えちゃってさ。
 それで王子様が怒り狂って、殺し屋をまんまと撃退しちゃったってわけ。逆に殺し屋が殺されちゃって可哀想。

 まあそういうわけで。
 またまたまたまた失敗。ちょっと見苦しいくらいの失敗だよね。

 もう、リーズ様に頼るのやめよう。
 ダコタはこれでも元平民。住んでた孤児院が結構過酷だったから、体力にはかなりの自信がある。だからこそ打てる手を一つ思いついた。

「こうなれば実力行使だ! リーズ様、ダコタが直接お城に乗り込むよ」

「……? あなたごときが城へ行って無駄死にをして一体何の意味がありますの?」

 いちいちムカつくなあ。でも我慢しなきゃ。

「リーズ様は王子様を呼び出してなんか話でもしといて時間稼ぎ。その間にダコタが密入城して、クズ令嬢をゴミ箱に入れてこようってわけ」

「ゴミ箱? ――ああ、それはいいアイデアですわね」

 リーズ様は悪役っぽく笑う。多分ダコタも同じ顔で笑ってるんだろうなと思った。
 クズはゴミ箱に入れて処分しなくっちゃね。ゴミ箱ってのはつまり汚物処理場――奴隷商人に売りつけるとか、だね。

 よしそうしよう。
 ダコタは聖女、リーズ様は公爵令嬢。何も怖がらなくたって大丈夫。

 そして無事にクズ令嬢を処分できたら、ダコタが王子様のお嫁さんになるんだもん!
 よーし。絶対に今度こそ失敗なんてしてやらないんだから。クズ令嬢、あんたのブス顔が歪むのが今から楽しみで仕方ないよ。

 クズの分際で出しゃばったこと、ダコタたちがたっぷり後悔させてあげる。
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