ぽっちゃり?令嬢は可愛がられる

紫乃

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せっかくやって来た王都だったがレイラは邸宅にすっかり引きこもっていた。

幼い頃母に連れられてきた以来の王都での自室。部屋は整えられ幼い頃からの名残りはあるが年頃となった今の自分好みの家具や装飾でレイアウトされている。

有力な辺境伯家としての格質と上品さを保ちつつもなんだか少女らしさを残した可愛らしい部屋であり、飴色に磨かれたテーブルや鏡台、丸みを帯びたフォルムはつい思わず手を伸ばして撫でてしまう。


いつ来たかも覚えていないくらい久しぶりに来たはずなのになぜか落ち着くこと、
家具を撫でると指紋が残るほど綺麗に整えられていること、クローゼットはシーズン中に使い切れないほどのドレスや髪飾り、装飾品で満たされていることに使用人たちや家族の愛情を感じてしまう。



そのことにいつもの自分だったら無邪気に喜べたのだろう。



「酷いわ。みんな…。みんなが正直に言ってくれないから、私勘違いしていたわ。発育がいいっていうのは褒め言葉じゃなくてぽっちゃりさんへの遠回しなお世辞だったなんて。」ふぅとため息を一つつくとさらに落ち込んでしまう。



王都ではほっそりとした美人ばかり。背が高くてすらりと柳のような細い手足にストンと落ちるスタイリッシュなデザインのドレスが人気だったのだ。
領地で姉や母に見立ててもらったドレスはこちらでは流行とは逆行しているようだ。


せっかく仕立ててもらったけれど、ドレスを着ると生地は素敵なのにあのぽっちゃりさんではね。
とクスクス笑われた思い出からすっかり袖を通すのも怖くなり、行儀が悪いとは思いつつも寝間着で過ごし日がな一日部屋の家具を撫で回したり、ベッドの中で神話の一場面が描かれた天井画をぼんやり眺めて過ごすようになっていた。

両親や使用人たちも何かいいたげに心配そうにしていたが、今まで本当のことを教えてくれていなかったこともあり、話をしたい気分でもなく声をかけられないようさらにさらに引きこもっていく。



「舞踏会は楽しみだったけれど、せっかくお姉様とお母様が仕立ててくれたドレスを馬鹿にされるのは悲しいわ。素敵なドレスなのに私のせいでそれを損なうのは可哀想だもの。」


海を隔てた隣国の最新の技術でコーンフラワーブルーに染められた最上級のシルクにそれを彩る東国からもたらされたオートクチュールのシルクのレース。

どれも自分にはもったいないものだ。
せっかく仕立ててもらったけれど、舞踏会に参加するのはやめよう。

そのことを2つ年上の侍女マリアに伝えると、何か言いたげではあったが、分かりましたと部屋から出て行く。




しばらくベッドでごろごろと過ごしていたが、
コンコンというノックの音で目を覚ました。
気分が良くないと家族もマリア以外の侍女たちも王都にきて以来面会を断ってきた。
たぶん両親に不参加を伝えたマリアが戻ってきたのだろう。

「マリア?どうぞ、お入りになって。」




「お邪魔するわね?レイラ。」ふわりと微笑んではいるがどこか迫力を滲ませる。指の先まで洗練された立ち姿。
そこには月の女神の生まれ変わりと称される美貌の母が立っていた。




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