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「それなら都合がいい。俺の帝国に来いナフティリア。俺はお前が欲しい!」
「なっ! ‥‥‥こんなところでなにを馬鹿なことを言ってるの! あなたまで、不敬罪で逮捕されて処刑されるわ」
「帝国の皇太子の俺を罰すると? 面白い話だ」
「こんな馬鹿なことをやる連中だもの。なにをしでかすか分からないじゃない」
だから、あなたを巻き込みたくないからここから出て行って。
ナフティリアが指さしたその先には、テラスの出口が待っていた。
その向こうにはこのやりとりを固唾を飲んで見守る学友たちと、いつのまにやってきたのか講師や学院が雇っている衛士たち、教授連まで顔をそろえていた。
「私のことを婚約破棄するのは合法でも、この場所から連れ出すことは多分、違法だわ。たとえあなたが帝国の皇太子でもこの国の法律は曲げられない、でしょ? 私は婚約破棄されて貴族じゃなくなっても、まだこの国の国民なんだから」
「随分と潔い決断をするんだな。じゃあその後にお前はどうする?」
「別に。出て行けといわれたら出て行くし、捕まるならそれまで」
「おいおい、頭は大丈夫か。ひどい目にあって判断が鈍っているのは分かるが、今は俺に従った方がいい」
「無理よ‥‥‥多分さっき名前の出た公爵っていうのは、私のお父様のことだと思うから。ねえ、殿下。そうなのでしょう?」
このやり取りを聞いていたエリオスは、そう指摘されてびくっと肩を震わせた。
まったく、情けない男だわ。
ナフティリアは心でそう嘆いてしまう。
なにか陰謀を企むにせよもっとまともな方法があったろうに。
少なくとも、この場に皇太子がいることは事前に調べがついただろうし。
何よりもこの場で婚約破棄をする必要はなかったのだ。どうしてもそれをしなけれないけない理由?
そんなもの、どこに――。
「ああ、そういうこと」
「なんだ?」
「いいの。それより、一つだけお願い事を聞いてくれない?」
小さく、そう耳打ちされて、ゼフェトは顔をしかめた。
本気かと訊ねるも、ナフティリアの意思は決まっているらしい。
ちっ、と舌打ちして、彼は彼女に、求められたものをそっと手渡した。
「ありがとう。あなたはもう行ってちょうだい。そして、二度と戻ってこないで」
「助ける努力はしてみる」
「先にこの国を去ったほうか懸命よ」
「かもな」
囁くようとその会話を中断させる声が上がった。
エリオスだ。
彼は学院の衛士たちに命じて、ナフティリアの周りに彼らを配置させようとしていた。
どうやら、捉えるつもりらしい。
どういう名目でそんな風になるのか全く理解が及ばない。
とりあえず彼は、自分という邪魔な存在を消したいのだと、ナフティリアの心は呆れていた。
「なっ! ‥‥‥こんなところでなにを馬鹿なことを言ってるの! あなたまで、不敬罪で逮捕されて処刑されるわ」
「帝国の皇太子の俺を罰すると? 面白い話だ」
「こんな馬鹿なことをやる連中だもの。なにをしでかすか分からないじゃない」
だから、あなたを巻き込みたくないからここから出て行って。
ナフティリアが指さしたその先には、テラスの出口が待っていた。
その向こうにはこのやりとりを固唾を飲んで見守る学友たちと、いつのまにやってきたのか講師や学院が雇っている衛士たち、教授連まで顔をそろえていた。
「私のことを婚約破棄するのは合法でも、この場所から連れ出すことは多分、違法だわ。たとえあなたが帝国の皇太子でもこの国の法律は曲げられない、でしょ? 私は婚約破棄されて貴族じゃなくなっても、まだこの国の国民なんだから」
「随分と潔い決断をするんだな。じゃあその後にお前はどうする?」
「別に。出て行けといわれたら出て行くし、捕まるならそれまで」
「おいおい、頭は大丈夫か。ひどい目にあって判断が鈍っているのは分かるが、今は俺に従った方がいい」
「無理よ‥‥‥多分さっき名前の出た公爵っていうのは、私のお父様のことだと思うから。ねえ、殿下。そうなのでしょう?」
このやり取りを聞いていたエリオスは、そう指摘されてびくっと肩を震わせた。
まったく、情けない男だわ。
ナフティリアは心でそう嘆いてしまう。
なにか陰謀を企むにせよもっとまともな方法があったろうに。
少なくとも、この場に皇太子がいることは事前に調べがついただろうし。
何よりもこの場で婚約破棄をする必要はなかったのだ。どうしてもそれをしなけれないけない理由?
そんなもの、どこに――。
「ああ、そういうこと」
「なんだ?」
「いいの。それより、一つだけお願い事を聞いてくれない?」
小さく、そう耳打ちされて、ゼフェトは顔をしかめた。
本気かと訊ねるも、ナフティリアの意思は決まっているらしい。
ちっ、と舌打ちして、彼は彼女に、求められたものをそっと手渡した。
「ありがとう。あなたはもう行ってちょうだい。そして、二度と戻ってこないで」
「助ける努力はしてみる」
「先にこの国を去ったほうか懸命よ」
「かもな」
囁くようとその会話を中断させる声が上がった。
エリオスだ。
彼は学院の衛士たちに命じて、ナフティリアの周りに彼らを配置させようとしていた。
どうやら、捉えるつもりらしい。
どういう名目でそんな風になるのか全く理解が及ばない。
とりあえず彼は、自分という邪魔な存在を消したいのだと、ナフティリアの心は呆れていた。
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