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異世界探査1ー2
怒VS狂 七 枠外の干渉者
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西街道が目覚めると、先程と変わらずそこはただ白さが支配する世界だった。ボーとした頭で周りを見回すと、ある一点の場所に数人の男女が倒れていた。初めはよく顔が見えずに誰かわからなかったが、頭が段々と正常に活動していくにつれてやっと彼らが誰かというのに気付いた。
「みんな!」
倒れている彼らの方へ行こうとするが、ギシッという音ともにそれは止められる。
「な、なんだこれは。」
彼の体は縄でぐるぐる巻きにされた。体を左右に動かして解こうとするがギシギシいうだけでビクともしない。
「くそっ、どうなっているんだ!」
目覚めたら仲間たちが倒れていて自分は縄で縛られている。手も足も出ないこの状況で何をしたらいいか、西街道にはわからなかった。
「やっと目が覚めたか」
すると、目の前に彼をこの状況に追い込んだ張本人である男が目の前にいた。
「お、お前!」
西街道が怒りをあらわにする。しかし、そんな彼を見て目の前にいる男はため息を漏らした。
「はぁ、本当に最近の若者は礼儀がなってないな。今回はちゃんと私が何者か伝えたはずなんだけどな。これは少し民たちの気を引き締めさせたほうがいいな。今度何かしておくか。」
西街道の怒りをサラリと流し、男は彼の目の前まで行くと頭を鷲掴みにした。
「一応起きてから話を聞こうと思っていたが、もうめんどくさいから直接見るか。」
「何をするつもりだ!」
男の手が赤く発行する。それに伴い、頭の中が開かれていく様な感覚がした。まるで自分の中身を見られている気がしてとても気持ちが悪い。
「な、何をしているんだ!やめろ!」
幾ら彼が叫んでも目の前にいる男は止めずにそのまま続ける。そして1分くらい経ってからようやくその手を離した。
「お前、僕に何をした!」
未だ怒鳴り散らす彼に対し、男はひどく冷たく鋭い声で答えた、
「黙れ」
「っっ!」
たったその一言で彼の口は重りが付けられたみたいに重くなり、開かなくなってしまう。その代わりに全身の毛穴が開いて大量の汗が出る。動いてもいないのに汗が出たのは初めての経験だった。
「貴様、よもやこんな下らない理由で彼奴らにたいしあんなことをしたのか?」
そこには怒りに染まった顔をした男がいた。この辺りの空気がガラリと変わり、濃密な波動が男を中心として発せられている。それを間近に受けている彼は意識を手放す寸前だった。
「どうやら私はお前を過大評価していたようだな。私が選ばなかったとはいえ、良い人選だと思っていたが、最悪のハズレだったようだ。」
西街道は産まれたての子鹿の足以上にブルブルと震えている。男が何を言っているのかはわからないが、怒っているというのは嫌という程感じた。
「な、な、な、な、な、ななんのことだ?」
震える口から言葉が飛び出した。自分でもまさか出るとは思わなかったが、咄嗟に意思とは関係なく体が勝手に動いていた。
男はその言葉を聞くとより一層顔を険しく曇らせた。
「なんことだと?貴様、自分が彼奴ら3人と 佐藤翔に何をしたか忘れたのか?」
「・・・・・・」
佐藤翔という言葉が出た途端、震えが止まった。彼がなぜ怒っているのかに気付いたと共に、自分の心の奥底にあるどす黒い感情が出てきたからだ。
「・あ・つ・・・が・るい。ぼ・・・る・・・ない」
西街道はポツポツと口から言葉を漏らす。初めは蚊の羽音位の小さな声だったが、段々と大きくなっていく。
「あいつが・・・悪い。僕は・・・俺は悪くない。」
「あ?」
やっとまともに喋ったと思ったら、西街道は下らない自己の話を事を語り出した。
「あいつが全部悪い。何もできないくせに、努力だけを周りからは認められて。僕が幾ら活躍しても、周りのやつらあいつのフォローで手一杯。誰も僕を見てくれない。なんで何も持ってないあいつが、全てを持っている僕より認められているんだ。なんで那須さんが全てを持っている僕よりあんなダメ男なんかを。そんなのはおかしい、間違っている。」
彼が佐藤翔を殺そうとした理由、それは傲慢と嫉妬だった。才能がない彼が才能のある彼の欲しいものを持っていた。自分への傲慢と他者への嫉妬、それが互いに悪感情を高め合い、優しかったはずの彼の人格を崩した。
「僕は認められず、あいつは認められるなんておかしいに決まっている。だが、そんな時に女性の声が聞こえた。気味の悪い声だった。でも、彼女その言葉全て事実だった。僕の事を知った上でそれは間違ってないと教えてくれた。そして、一つの約束と共に僕に力をくれた。その力はすべてを元に戻してくれた本来あるべき姿に。才能のある者が認められ、才能の無き者が捨てらるそんな世界に。だから僕は悪くない。たとえ悪かったとしても、ハキヤに騙されっ!?」
西街道の言葉は男の腹パンによって途中で遮られた。
「いたい!痛い痛い痛い痛い痛い!
どうして僕ばっかりこんな目に会うんだ!これも全部あいつがいっ!?」
また腹を、今度は鳩尾を殴った。それにより、苦しみで言葉が話せなくなる。
「ぼ、ぼく、は、わる、く、悪く、ない」
鳩尾を殴られた痛みの中、西街道は未だに自己中の発言を続ける。
「ぼくは、悪くっ」
男はまた西街道の溝を殴った。しかし、今度は1発ではない。何発も殴り続ける。
「うっ!やっ!あっ!がっ!ひっ!」
声にならない悲鳴が辺りに響き渡る。他に聞こえるのはゴスッという鳩尾を殴る音だけだ。ただただ殴られ続
続ける。しかも、男は力加減を調節して西街道が意識を失わない様にしている。
「がっ!ぎっ!っ!」
そして最後にここ一番で強力な拳をお見舞いされた。それにより、目の前が一瞬ブラックアウトする。
「っ!っ!」
何度も鳩尾を殴られていたことで、息が出来ずにさらに苦しくなる。声なき声で何度も叫ぶが誰も彼を助けてはくれない。
「そんなに自分を見て欲しいのなら、お望み通りにしてやるよ。」
苦しみで消えそうな意識の中、最後に聞こえた男の声はとても冷え切った物だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると、そこは先程までいた所とは打って変わり、真っ暗な空間だった。
「ここは、どこだ?」
辺りを見回しても何も見えない。そして体を動かそうとして気づく。どうやら、縄は解かれた様だ。暗闇の中、手探りで辺りを触っていくと何本もの上まで伸びた何か冷たい棒の様なものに触れる。それを杖代わりに立ち上がろうとすると、頭を何かにぶつけた。
「イテッ、なんだこれ?」
今度は天井に触れてみる。天井も先程触れた棒の様な物と同じ手触りがした。そして調べていくと、天井と棒の様な物は繋がっており、そこに閉じこめられていることに気づく。
「ここはまるでうわっ」
言い終わる前に、自分の周りに明かりがついた。とても眩しく、慣れるまでに少し時間がかかる。
「な、なんだ?ここはいった!?」
やっと目が慣れて辺りを見回すと、そこには人が沢山おり、じっとこちらを覗いていた。
「な、なんだお前ら!」
特に何もすることなく、こちらを覗いている人たち。とても気味が悪るい。
「あはっ、あははっ。」
すると、突然1人がこちらを見て笑い出した。そして、それに触発されたように辺りの者も笑い始める。
「あはははっ!」
「わっはっはっ!」
「あはっあははは!」
「きゃっ、きゃっ、きやっ、」
「ふふふふふふふっ」
「な、何なんだお前ら!こっちを見て笑うな!」
目を逸らそうにも、辺り一面囲まれており、どうやっても彼らが目についてしまう。ならばと、目を瞑ってみると今度は耳が引きちぎれんばからりの大声で笑い出す。
「やめろ!こっちをみるな!僕を笑うな!やめろ!やめてくれ!」
どんな事を言っても彼らは笑うのをやめない。西街道の精神がゴリゴリという音を立てて磨り減っていく。
「僕が悪かった!謝るから!だから、ここから出してくれ!」
西街道の訴えは彼らの笑い声に掻き消される。幾ら謝罪しようが、幾ら後悔しようがそれを聞くものはいない。こんなに沢山人がいて、皆んな彼を見てるのに、彼は一人ぼっちだった。それに気づいた時、ようやく自分のした罪の重さに気づいた。しかし、それはあまりにも遅すぎた。もう、彼は弁解の余地もなく、ましてや、する事も出来ないのだから。
「だのむがら!ここから、だじてぐれ~!」
「「「あはははは!」」」
西街道の泣き声が彼らの笑い声と重なる。この涙は罪の意識かそれともただ彼らの怖さによるものか。それは西街道本人にもわからなかった。
「みんな!」
倒れている彼らの方へ行こうとするが、ギシッという音ともにそれは止められる。
「な、なんだこれは。」
彼の体は縄でぐるぐる巻きにされた。体を左右に動かして解こうとするがギシギシいうだけでビクともしない。
「くそっ、どうなっているんだ!」
目覚めたら仲間たちが倒れていて自分は縄で縛られている。手も足も出ないこの状況で何をしたらいいか、西街道にはわからなかった。
「やっと目が覚めたか」
すると、目の前に彼をこの状況に追い込んだ張本人である男が目の前にいた。
「お、お前!」
西街道が怒りをあらわにする。しかし、そんな彼を見て目の前にいる男はため息を漏らした。
「はぁ、本当に最近の若者は礼儀がなってないな。今回はちゃんと私が何者か伝えたはずなんだけどな。これは少し民たちの気を引き締めさせたほうがいいな。今度何かしておくか。」
西街道の怒りをサラリと流し、男は彼の目の前まで行くと頭を鷲掴みにした。
「一応起きてから話を聞こうと思っていたが、もうめんどくさいから直接見るか。」
「何をするつもりだ!」
男の手が赤く発行する。それに伴い、頭の中が開かれていく様な感覚がした。まるで自分の中身を見られている気がしてとても気持ちが悪い。
「な、何をしているんだ!やめろ!」
幾ら彼が叫んでも目の前にいる男は止めずにそのまま続ける。そして1分くらい経ってからようやくその手を離した。
「お前、僕に何をした!」
未だ怒鳴り散らす彼に対し、男はひどく冷たく鋭い声で答えた、
「黙れ」
「っっ!」
たったその一言で彼の口は重りが付けられたみたいに重くなり、開かなくなってしまう。その代わりに全身の毛穴が開いて大量の汗が出る。動いてもいないのに汗が出たのは初めての経験だった。
「貴様、よもやこんな下らない理由で彼奴らにたいしあんなことをしたのか?」
そこには怒りに染まった顔をした男がいた。この辺りの空気がガラリと変わり、濃密な波動が男を中心として発せられている。それを間近に受けている彼は意識を手放す寸前だった。
「どうやら私はお前を過大評価していたようだな。私が選ばなかったとはいえ、良い人選だと思っていたが、最悪のハズレだったようだ。」
西街道は産まれたての子鹿の足以上にブルブルと震えている。男が何を言っているのかはわからないが、怒っているというのは嫌という程感じた。
「な、な、な、な、な、ななんのことだ?」
震える口から言葉が飛び出した。自分でもまさか出るとは思わなかったが、咄嗟に意思とは関係なく体が勝手に動いていた。
男はその言葉を聞くとより一層顔を険しく曇らせた。
「なんことだと?貴様、自分が彼奴ら3人と 佐藤翔に何をしたか忘れたのか?」
「・・・・・・」
佐藤翔という言葉が出た途端、震えが止まった。彼がなぜ怒っているのかに気付いたと共に、自分の心の奥底にあるどす黒い感情が出てきたからだ。
「・あ・つ・・・が・るい。ぼ・・・る・・・ない」
西街道はポツポツと口から言葉を漏らす。初めは蚊の羽音位の小さな声だったが、段々と大きくなっていく。
「あいつが・・・悪い。僕は・・・俺は悪くない。」
「あ?」
やっとまともに喋ったと思ったら、西街道は下らない自己の話を事を語り出した。
「あいつが全部悪い。何もできないくせに、努力だけを周りからは認められて。僕が幾ら活躍しても、周りのやつらあいつのフォローで手一杯。誰も僕を見てくれない。なんで何も持ってないあいつが、全てを持っている僕より認められているんだ。なんで那須さんが全てを持っている僕よりあんなダメ男なんかを。そんなのはおかしい、間違っている。」
彼が佐藤翔を殺そうとした理由、それは傲慢と嫉妬だった。才能がない彼が才能のある彼の欲しいものを持っていた。自分への傲慢と他者への嫉妬、それが互いに悪感情を高め合い、優しかったはずの彼の人格を崩した。
「僕は認められず、あいつは認められるなんておかしいに決まっている。だが、そんな時に女性の声が聞こえた。気味の悪い声だった。でも、彼女その言葉全て事実だった。僕の事を知った上でそれは間違ってないと教えてくれた。そして、一つの約束と共に僕に力をくれた。その力はすべてを元に戻してくれた本来あるべき姿に。才能のある者が認められ、才能の無き者が捨てらるそんな世界に。だから僕は悪くない。たとえ悪かったとしても、ハキヤに騙されっ!?」
西街道の言葉は男の腹パンによって途中で遮られた。
「いたい!痛い痛い痛い痛い痛い!
どうして僕ばっかりこんな目に会うんだ!これも全部あいつがいっ!?」
また腹を、今度は鳩尾を殴った。それにより、苦しみで言葉が話せなくなる。
「ぼ、ぼく、は、わる、く、悪く、ない」
鳩尾を殴られた痛みの中、西街道は未だに自己中の発言を続ける。
「ぼくは、悪くっ」
男はまた西街道の溝を殴った。しかし、今度は1発ではない。何発も殴り続ける。
「うっ!やっ!あっ!がっ!ひっ!」
声にならない悲鳴が辺りに響き渡る。他に聞こえるのはゴスッという鳩尾を殴る音だけだ。ただただ殴られ続
続ける。しかも、男は力加減を調節して西街道が意識を失わない様にしている。
「がっ!ぎっ!っ!」
そして最後にここ一番で強力な拳をお見舞いされた。それにより、目の前が一瞬ブラックアウトする。
「っ!っ!」
何度も鳩尾を殴られていたことで、息が出来ずにさらに苦しくなる。声なき声で何度も叫ぶが誰も彼を助けてはくれない。
「そんなに自分を見て欲しいのなら、お望み通りにしてやるよ。」
苦しみで消えそうな意識の中、最後に聞こえた男の声はとても冷え切った物だった。
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目を開けると、そこは先程までいた所とは打って変わり、真っ暗な空間だった。
「ここは、どこだ?」
辺りを見回しても何も見えない。そして体を動かそうとして気づく。どうやら、縄は解かれた様だ。暗闇の中、手探りで辺りを触っていくと何本もの上まで伸びた何か冷たい棒の様なものに触れる。それを杖代わりに立ち上がろうとすると、頭を何かにぶつけた。
「イテッ、なんだこれ?」
今度は天井に触れてみる。天井も先程触れた棒の様な物と同じ手触りがした。そして調べていくと、天井と棒の様な物は繋がっており、そこに閉じこめられていることに気づく。
「ここはまるでうわっ」
言い終わる前に、自分の周りに明かりがついた。とても眩しく、慣れるまでに少し時間がかかる。
「な、なんだ?ここはいった!?」
やっと目が慣れて辺りを見回すと、そこには人が沢山おり、じっとこちらを覗いていた。
「な、なんだお前ら!」
特に何もすることなく、こちらを覗いている人たち。とても気味が悪るい。
「あはっ、あははっ。」
すると、突然1人がこちらを見て笑い出した。そして、それに触発されたように辺りの者も笑い始める。
「あはははっ!」
「わっはっはっ!」
「あはっあははは!」
「きゃっ、きゃっ、きやっ、」
「ふふふふふふふっ」
「な、何なんだお前ら!こっちを見て笑うな!」
目を逸らそうにも、辺り一面囲まれており、どうやっても彼らが目についてしまう。ならばと、目を瞑ってみると今度は耳が引きちぎれんばからりの大声で笑い出す。
「やめろ!こっちをみるな!僕を笑うな!やめろ!やめてくれ!」
どんな事を言っても彼らは笑うのをやめない。西街道の精神がゴリゴリという音を立てて磨り減っていく。
「僕が悪かった!謝るから!だから、ここから出してくれ!」
西街道の訴えは彼らの笑い声に掻き消される。幾ら謝罪しようが、幾ら後悔しようがそれを聞くものはいない。こんなに沢山人がいて、皆んな彼を見てるのに、彼は一人ぼっちだった。それに気づいた時、ようやく自分のした罪の重さに気づいた。しかし、それはあまりにも遅すぎた。もう、彼は弁解の余地もなく、ましてや、する事も出来ないのだから。
「だのむがら!ここから、だじてぐれ~!」
「「「あはははは!」」」
西街道の泣き声が彼らの笑い声と重なる。この涙は罪の意識かそれともただ彼らの怖さによるものか。それは西街道本人にもわからなかった。
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