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番外編:トゥルーエンド分岐(枯れた涙と、冷たい心)※Hあり

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※ 注意 ※
 この回はトゥルーエンドルートです!不快に感じる方などは見ないようにお願いします!

 先程から机に両肘を付け、両手を祈る様に組み、額に押し当て沈黙を続けるエルフィンにどう声をかけようか、悠人は悩んでいた。


 「……貴方はもう十分に頑張ったのです。そんなに自分を責めないで下さい」


 悠人はエルフィンの頭を優しく撫で、大きな背中をそっと抱き締めた。


 「うっ……うっ……俺はお前に辛い思いをさせてしまった。そして、自分の事も何もかも……分からなくなった」


 エルフィンは肩を震わせながら、泣いていた。そんなエルフィンを見て、悠人はエルフィンの隣に座り、頭を優しく撫でた。すると、突然エルフィンは悠人に抱きついた。


 「……お前はなんでそんなに優しいんだ。そんなに優しくされると、悍ましい悪魔の血が疼いてくる……」
 「もう自分を隠さなくていいの。ほら見て」


 悠人はエルフィンの姿勢を正し、顔を両手でそっと包み込んだ。


 「今、貴方は僕と同じように漆黒の瞳をして、血の涙が流れているわ」


 悠人はエルフィンに微笑みかけ、エルフィンの赤黒く流れる涙を親指で拭き取った。


 「……お前も辛かったな」


 エルフィンは悠人の顎に手を当て、舌を絡ませながらキスをした。


 「んっ! ……エルフィン様、あちらのベッドへ行きましょう」


 悠人はエルフィンの手を引き、小屋にある小さなベッドがある部屋へ向かった。


 「私はエルフィン様の事が最初見た時から放っておけない存在でした。……地下牢に居て気付きました。貴方の事が好きだという事を」
 「……俺もお前の事が好きだ」


 エルフィンはそう言うと、悠人をベッドに押し倒し、服を手で切り裂き、胸を愛撫しながら、耳朶を甘噛みしたり、ねっとりとした舌遣いで舐め回した。


 「──っ、……くぅ……っ、んん……」
 「お前が好きだ。……愛おしくて堪らない」


 エルフィンは悠人の首筋の薄い皮膚を強く歯を立てたり、吸い付いたり、自分のものである印しを沢山つけた。そして、エルフィンは顔を上げ、悠人にねっとりとした舌遣いで舌と舌を絡ませながら、長いキスをした。
 エルフィンは悠人の乳首を指で抓り、反対の乳首は舌でもって愛撫する。悠人はビクビクと体を震わせる。


 「──んぁっ、……乳首……気持ち良ぃ」


 そして、エルフィンは乳首を舌で転がしたり、吸ったりしながら、反対の手をするりと下へ下へと滑らせ、悠人のモノを触り始めた。


 「んぁあッ!」
 「……やらしい音がするぞ。そんなに乳首が気持ち良かったか?」


 エルフィンは鼻で笑い、悠人のモノを上下に擦りながら、わざと厭らしい音をたてるように擦った。


 「……んん、あっ! くちゅくちゅするの、気持ちいい!」
 「先っぽを弄るだけでこんなに体をビクつかせて、シュライツの兵士から聞いた通り、かなりの淫乱だな」


 エルフィンは一度手を止め、息を荒げながら、軍服を脱ぎ捨てた。月夜の灯りで照らされたエルフィンの逞しく彫刻のような体に悠人はごくりと生唾を呑んだ。


 「お前が愛おしい。今すぐ俺のでお前を穢したい」
 「エルフィン様なら穢されてもい……んっ!」


 エルフィンは悠人を強く抱き締め、息が出来ない程に舌を絡ませ、熱いキスをした。舌同士が絡み合い、口の中を舐め回され、悠人はまるで口の中で犯されているような気分になり、自身のモノから透明な汁が溢れ出てきた。


 「悠人、お前のがビクビクして、ぐちょぐちょになっているぞ」


 エルフィンが悠人の口から唇を離すと、唾液が糸を引き、月夜の灯りで怪しげに輝く。


 「エルフィン様のもズボン越しでも分かる位……辛そうになってます」


 悠人はエルフィンのモノをズボン越しに足の指で上下に擦る。擦る度に、脈を打つかのようにビクビクとしていた。


 「くっ! そんな下品な足遣いまでするのだな。そういう奴にはお仕置きが必要だな」


 エルフィンはニヤリと笑い、悠人の秘部を丹念に舐め始めた。


 「ああっ! そ、そこは……汚いから、舐めないでぇ」
 「やはり、慣れているのか、ヒクヒクとしていて、舌が持って行かれそうだ」


 エルフィンは厭らしい音を立てながら、悠人の秘部を舐め、ゴツゴツとした太い指をそっと挿入した。中を確かめる様にエルフィンは悠人の中をゆっくりと掻き回した。


 「ああん! ううっ、エルフィン様の指がゴリゴリしてて、気持ちひぃ。んあっ!」
 「あっという間に、二本も入ったよ。しかも、吸い付いてくる。そんなに欲しいか?」


 エルフィンはニヤニヤしながら、悠人の中を執拗に掻き回した。


 「んああああっ! そこはだめっ! ビクビクしちゃうっ!」


 悠人は良い所に当たったのか、腰を大きく反り上げた。それを見たエルフィンはそこばかりを執拗に突き始めた。


 「ここか? ここが良いんだな。悠人の淫らな顔をもっと見せてくれ」


 エルフィンは体勢を直し、悠人の顔を見える位置に行き、再び指を上下に動かした。


 「んひぃ! そんなに動かしたら、イッちゃいますっ!」
 「いいぞ、俺にイく顔を見せろ、強請れ!」
 「エ、エルフィン様ぁ、イかへてくらはい! あっ、イッちゃう! イッちゃっ! うあっ!」


 悠人は全身をビクつかせ、白濁液を顔に届くまで飛び散らした。


 「はぁはぁ……、エルフィン様ぁ、エルフィン様ぁ……」


 悠人はエルフィンの顔を両手で包み込み、とろんとした顔で物欲しそうに訴えた。


 「悠人、エルと呼べ。その方が俺も気持ちが良い。ほら、触ってごらん。俺のが疼いてるのが分かるだろう?」


 エルフィンはズボンのチャックを開け、自身のモノを取り出し、悠人の手をそこに当てた。


 「あ……すごく熱くてドクドクしてます。早く僕の中に入れて、エルので中を滅茶苦茶にしてください」


 エルフィンは悠人の額に軽くキスをし、悠人の股を広げ、両足を持ち、自身の熱く逞しいモノを秘部にあてがう。


 「悠人、入れるぞ」
 「んっあ! エルのがどんどん入ってくるぅ。おっきい……」


 エルフィンの熱く逞しいモノはするりと悠人の秘部に入り、奥へ奥へと飲み込まれていく。エルフィンは全部入った所で悠人と舌を絡ませながら、キスをする。


 「上も下も涎垂らして、厭らしいな。兵士達にもこんな淫乱な姿を見せていたと思うと腹が立つな」


 そう言うと、エルフィンは腰を動かし、悠人の秘部の奥を責め立てる。責め立てる度に、ベッドは軋み、秘部からは淫猥な音がにゅちょにゅちょと聞こえ、静かな部屋に響く。


 「あっ、あっ、気持ちひぃ。エルの逞しいのが出たり入ったりしてるぅ」
 「気持ち良いか? これはすごいな……腰が止まらん。俺のがどんどん飲み込まれていく感じがする」


 エルフィンは汗を垂らしながら、腰を激しく動かした。動かす度に汗が悠人の体に垂れ、月夜の灯りで宝石のように光る。悠人は突かれる度に腰をビクビクさせながら、淫らに啼いた。


 「悠人、お前、完全に雌の顔になってるぞ。その顔も可愛くて、堪らない。……んっ、俺も流石にお前の中が気持ち良すぎて、イキそうになる」


 エルフィンは悠人の良い所に向けて、自身の熱くはち切れそうなモノで容赦なく突き始めた。


 「んっ! そこ、だめっ、だめぇ! 出ちゃうからぁ!」
 「いいぞ、俺もそろそろイキそうだ。悠人、一緒にイこう」


 エルフィンのピストンは徐々に速くなり、悠人はピンポイントに訪れる刺激で軽く意識が飛びそうになる。


 「んぁ! あぁん! 出ちゃう、出ちゃっ! エルッ、イク、イクぅう!」
 「悠人、悠人っ! 俺もイクッ!」


 エルフィンは腰をグッと悠人に押し当て、ドクドクと脈打ちながら、今まで溜め込んでいた白濁液を悠人の奥へぶちまけた。悠人は足先を痙攣させながら、自分のお腹の上に白濁液をまた飛び散らした。そして、お互いに荒い呼吸をしながら、舌を絡ませながらキスをした。


 「……エル、愛してる」
 「……愛してる、悠人。すまんが、まだ治まりそうにない。……すまん」
 「あん! 気持ちひぃ……まだおっきい。いっぱいエルのを注いでぇ」
 「煽るな。お前を壊してしまいそうだ」


 エルフィンは悠人を貪り、獣のように腰を動かし、何度も悠人の中に自身の熱い白濁液を注ぎ込んだ。





 ……どの位の時間が経ったのであろうか、月もすっかり沈み、太陽が昇り始めていた。エルフィンは悠人を抱き寄せ、横になっていた。


 「ねぇ、エル。いっそ悪魔にならない?」
 「っ! 悠人、お前……正気か?」


 エルフィンは悠人の発言に驚いた。そして、悠人は起き上がって、エルフィンを見つめる。


 「エル……気付いていないけど、片目が完全に悪魔の瞳になってるよ、ほら」


 悠人はエルフィンの手を引き、一緒にベッド近くの姿鏡に隣り合って立った。


 「……貴方なら優しい悪魔になれるわ。僕が導いてあげる、ずっといつまでも」
 「悠人がずっといるなら、俺は……もう何もいらない」


 悠人はエルフィンをそっと優しく抱き締めた。


 「ずっと一緒。指切りしよ」


 悠人とエルフィンは指切りをした。そして、悠人はエルフィンの剣で自分の人差し指に傷をつけて、血を垂らす。


 「悪魔になるなら、僕の血を飲み込んで。ちょっと辛いかもしれないけど、エルならきっと大丈夫。僕を信じて」


 悠人はニッコリと微笑み、エルフィンに血が流れている人差し指を差し出す。エルフィンは少し戸惑うも、悠人が言った通りに指を舐め、悠人の血を飲み込んだ。それを見た悠人は床に紫色の魔法陣が出現させ、詠唱を始めた。


 「我が名は悠人。汝、ネメシスに命ず。この者エルフィンに漆黒の地への許しを請う。インディグネーション!」


 紫色の魔法陣は一層に光り輝き、天から禍々しく赤黒い剣が飛んできて、エルフィンの心臓を貫いた。


 「うがぁーーーーーーーっ!うぐぐぐっ、あぁーーっ!」


 エルフィンは叫び、床にのたうち回る。悠人はエルフィンから剣を抜き去る。エルフィンの叫び声を聞いて、アスターが部屋に入ってきた。


 「っ!悠人様、なんとこれは……。その剣、もしかして」


 アスターは開いて塞がらない口を手で覆って、膝から崩れ落ちた。


 「あ、アスター。ごめんね。僕はもう天使なんかじゃない、天使の力も持っている悪魔なんだよ。悪魔の君が分かっていなかったとは思っていなかったけど。……そうだ、君もこの国を救うためには一度滅ぼさないといけないってずっと考えてるんでしょ?」
 「……さ、流石に悠人様にはお見通しだったのですね、恐れ入ります」
 「ははっ。でもね、別に無差別にやる訳じゃないよ。僕だって考えがある。そろそろ目覚めるかなぁ」
 「はぁはぁ……おお、力がみなぎってくる! これが本当の俺か! はははははっ!」


 エルフィンはゆっくりと立ち上がり、漆黒の翼を大きく広げ、高笑いをした。


 「さて、この剣はエルの剣だよ。まずは肩慣らしにヘレボルスの森へ行こうかなぁ」
 「ゆ、悠人様。あそこは今、シュライツ様の騎士団がいる場所でございます……っ!」


 悠人はアスターの背後に瞬間移動して、耳元で囁いた。


 「何? 止める気なの?」
 「い、いえ……滅相もございません」
 「だったら、皆で行きましょう! 僕、まだ城外から出た事ないし、気分転換しないと」


 悠人はエルフィンと腕を組み、縋りついた。


 「私はご遠慮させて頂きます。地下牢で生きていた者の世話をしなければならないので……」


 アスターは目を泳がせながら、悠人とエルフィンにお辞儀をする。


 「じゃあ、エルがヘレボルスの森まで案内してよ! 僕らの初デートだよ! エルの頑張ってる姿見たいなぁ」
 「ああ、分かった。俺のかっこいい姿を見てくれ!」


 そう言うと、窓をぶち抜き、悠人は純白の翼と漆黒の翼を広げ、エルフィンは漆黒の翼を広げ、ヘレボルスの森へ飛んでいった。
 森ではシュライツの騎士団が魔物と交戦しているのが上空から見えた。悠人はシュライツに向けて、手を振った。それに一人の兵士が気が付き、急いでシュライツに報告した。


 「シュライツ様! 大変です! あそこをご覧ください!」
 「……聖人だと!? 確か『絶望の間』に閉じ込めていたはずなのに! え、消えた?」


 シュライツは上空を見渡すが、悠人を探す事が出来なかった。次の瞬間、背後でドサッという音がして、振り向いた。その光景を見て、シュライツは血の気が引いた表情をして、絶句した。


 「シュライツ様、お元気ですか? やっと会えましたね! 僕はとっても嬉しいです」


 悠人は血しぶきが散った顔を手で拭い、その血を舐めながら、シュライツに対して微笑みかけた。


 「おまっ、おまっ、お前! 何をしている!」
 「え? 何って? 天罰に決まってるでしょ? 今からエルとデートなの。メインディッシュの貴方はそこで静かにしててもらってもいいですか?」


 悠人はシュライツの頭を持ち、近くの木に打ち付け、指を鳴らし、赤黒い紐で縛り付けた。


 「がはっ! 天罰とはどういう意味だ!」
 「もうこれだから……人間は低俗って言われるんだよ。さぁ、エル。かっこいい所を見せてね」
 「悠人の仰せのままに」


 エルフィンは剣を構えると、横にひと振りした。一瞬、時が止まったように静寂となり、次の瞬間、疾風のごとく、木々は切り倒され、兵士達も崩れ落ちた。逃げようとする兵士を一人も残さず、兵士を追いかけるエルフィンの高笑いが響き渡る。


 「……ひぃ」


 そして、森はどんどん赤黒く染まり、小さな湖も血で赤く染まった。その残酷な光景を見て、シュライツは思わず漏らしてしまった。


 「エル、すごい! ますます好きになっちゃう!」
 「悠人のお陰だよ」


 エルフィンは剣から滴る血を振り落とし、鞘に納めた。そして、悠人はエルフィンに駆け寄り、エルフィンに抱きかかえられ、キスをした。


 「お前達、何をしているのか分かってるのか!」
 「シュライツ様。今まで貴方がやってきた事……分かってます? それでも分からないなら、お話にならないので、ここで魔物と一緒に消えて下さい。エルは僕の後ろに下がってて」


 悠人は胸元に手を突っ込み、白銀と漆黒が纏った剣を体から抜き出した。


 「そ、それはなんだ!」
 「これ? これは審判の剣だよ」


 悠人が手を挙げて、詠唱をし始めると、審判の剣は空高く上がり、無数の剣に分離した。空は剣で埋め尽くされた。


 「……我が名は悠人。我、ここに来たれし者達に善悪の秤を持ちて根絶す! ユーディキウム!」


 詠唱後、挙げてた手を勢いよく下げると、剣が一斉に目標へ向かって、風を裂く音を響かせながら、目にも止まらぬ速さで魔物達やシュライツもろとも串刺しにした。そして、瘴気は消え、森は澄みきった風と小鳥がさえずる声が聞こえ始めた。悠人はシュライツの拘束を解き、剣を一本一本ゆっくりと抜いた。


 「やっぱり、審判下っちゃいましたね、シュライツ様。貴方の罪は一生償ってくださいね。今まで貴方の趣味で何人の者が亡くなっているか、その低能な頭でよく考えて下さいね」


 悠人はしゃがんで、屍となったシュライツの頭を指で突っつき、不適な笑みを浮かべる。そして、悠人はエルフィンが近付いてくるのが分かると、次は満面の笑みで振り返った。


 「よし、討伐終わり! 楽しかったぁ。大好きなアルと一緒に闘う事が出来て、僕は本当に嬉しいよ」
 「俺もです。見事な剣術魔法でした。さて、馬を二頭準備出来たので、城へ戻りましょう」
 「とりあえずエルは翼を仕舞って、いつもの状態になって。ほら、僕とキスして。私は聖人の装いにならなきゃ」


 エルフィンは悠人と舌を絡ませながらキスをした。そうすると、エルフィンは青の騎士団長エルフィンの姿に戻った。悠人は予め鞄に用意しておいた聖人の服を着た。
 エルフィンに先導してもらい、悠人はシュライツを抱きかかえ、馬の手綱を持ち、城門に向かった。
 城門の兵士はエルフィンの軍服や悠人の聖人の服に血しぶきなどが飛んでいる事に驚きながら、急いで城門を開けた。


 「ああ、ああ、シュライツ様が、シュライツ様がぁ……兵士の皆さんも……到着した時にはもう」


 悠人は抱きかかえていたシュライツをさらに抱き寄せ、嘆き悲しんだフリをした。


 「ひぃ……、は、早く王宮に。シュライツ様は私達で運びます」


 悠人は担架にシュライツを下ろし、自分も馬から降りた。そして、運ばれようとするシュライツに駆け寄り、何度も名前を呼び、嘆き悲しむ姿をした。大通りを歩いている民にわざと聞こえる様に泣き叫んだ。そして、エルフィンに目で合図をし、悠人の首根っこを掴み、引き留めさせた。


 「ああ、シュライツ様がぁ。私が聖人として、きちんと学んでいれば、こうならなかったのに……。国王様が地下牢に閉じ込めて、他の奴隷達と一緒に……ああ、思い出しただけで身震いがして……あ、眩暈が」


 大通りで一際目立つ場所で迫真の演技をし、国民達は騒然としていた。そして、悠人は眩暈の演技をしながら、エルフィンの手を取り、乗馬した。エルフィンの前に座り、両手で顔を隠し、肩を震わせ、泣いた。その演技している悠人を後ろからそっと抱き締めた。


 「さ、玉座の間までエスコートさせてください」


 エルフィンは馬を走らせ、王宮に入り、新しい服に着替え、玉座の間へ向かった。扉の向こうでは国王が凄い剣幕で怒り狂っていた。国王はエルフィンと悠人に罵声を浴びせた。


 「どういう事だ! 説明しろ!」
 「説明? シュライツは死んじゃいました、兵士も全員。もちろん魔物も倒しましたよ、エルと僕の二人で。森にあった瘴気は無くなりましたよ」
 「えぇい、国王様の前だぞ。口の利き方に気を付けろ」
 「え? ここにいらっしゃる一部の方々もご存知かと思いますが、国民を拉致し、地下牢に監禁し、自分達が遊んだ後はポイするか、他国に売りつける。魂なき者はそのまま放っておいて……いつかゾンビになりますよ。そんな外道な事をしている人に対して、口の利き方なんて関係ないです」


 国王と言い争っていると、玉座の間の扉が勢いよく開いた。


 「緊急です! 兵士達と国民達が王宮の広場に集まって、暴動を起こしています!」
 「なんだと! 分かった。広場が見えるバルコニーへ向かおう」


 国王の後を追いながら、エルフィンと悠人、あとは呼び寄せたアスターと一緒に走った。王宮の広場では皆が声を荒げて、国王に対する不平不満を言い、プラカードを掲げて訴えていた。


 「こ、これは……なんという屈辱」
 「屈辱? 国王様、何をおっしゃってるんですか。今から真実を話せばいいじゃないですか」
 「……我が名は悠人。汝、テミスに命ず。剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力である。正しき裁きを受けよ! コンフェス!」


 国王の足元が白く輝き、国王の目の前には白銀に輝く剣が国王の心臓の位置で空中に浮いている。


 「国王様、真実を全て話さないと、嘘の程度で剣が徐々に近付いてきて、心臓を貫きますからね」
 「……ちっ、分かった。国民に話す」


 国王は広場にいる兵士や国民達に真実を話した。内容はこうだ。アーベルトビッツ王国の財政が厳しくなり、その時に奴隷売買の話を持ち掛けられ、無差別に国民を拉致し、地下牢に閉じ込めた。鬱憤を晴らすため、奴隷に鞭で叩いたり、足で蹴ったり、更には犯していた事。それには、シュライツやその騎士団も加担していた事。悠人の事も喋った。聖女を召喚するはずが、聖人だっただけの理由で地下牢に閉じ込め、薬漬けにし、犯しに犯した事。


 「アスター、牢獄されてて生きてた人をここに呼んで。私は亡骸を拾ってくるから、他の貴族にも目を光らせて」
 「承知いたしました、悠人様」


 アスターは以前に助けた三人を呼び戻した。アスターのお陰で地下牢にいた時より随分元気になっていた。悠人は転送魔法を使い、地下牢へ行き、一人ひとり丁寧に白い布に包み、広場に並べた。どうやら家族や恋人だった者が駆け寄り、大事そうに抱きかかえ、すすり泣いていた。生きている三人の家族も見つかり、久々の再会に肩を組んで、泣きながら喜んだ。


 「さて、このような外道な行為をした国王様はどうすべきでしょうか?」


 悠人は広場にいる皆に質問をした。当然の通り、国民は『死刑』を望んだ。


 「国王様、これが答えです。……それでは、これより罪の償いをしていただきます」
 「死刑執行! ……謝罪も出来ない国王は人間以下ですよ、さようなら」


 白銀に輝く剣が勢いよく国王様の心臓を貫き、白色のバルコニーに血が飛び散った。


 「アスター、この汚いの城外で木っ端微塵にしてきなさい。これ以上素敵な城を汚したくない。あと、関係ある貴族もお願いね。遠慮しなくていいから、貴方は優しいお方だから」
 「優しいなど……滅相も無い。ご命令に関しては承知いたしました。では、先に失礼させて頂きます」


 アスターは国王と奴隷売買に関わった貴族を捕え、転移魔法で城外まで飛んでいった。そして、終始無表情でいる王妃に声をかける。


 「王妃様、次の国王は勇敢なエルフィンなんていかがでしょうか?」
 「……そ、そうよね。ゴホンッ! 皆の者、よく聞け! 聖人様の有り難きお言葉を頂戴した。これよりこの国の王はエルフィン・アーベルトビッツとする事をここに宣言する!」


 王妃の力強い声が広場に響く。そして、兵士や国民達は拍手し、歓声を上げる。


 「エル、おめでとう!」
 「ありがとう、悠人!」


 二人は抱き合って、笑い合った。


 「あとは……宮廷魔導師セレスト様に、宮廷召喚士グラント様だ。まぁ、あの二人を手懐けるのは簡単かなぁ。ふふふっ」


 悠人はセレストには魔力の補給という名目で、グラントには召喚の儀での体力づくりを名目に、それぞれを誘惑し、体の関係となった。エルフィンには勿論その旨を伝え、良いようにさせてもらっている。
 新国王に就いたエルフィンは執務も良くこなし、青の騎士団の隊長も兼務し、日々鍛錬している。時折、差し入れを持って行ったり、兵士達とも色んな意味で仲良くさせてもらっている。


 「エル……世界で一番愛してる」
 「悠人、俺も世界で一番愛してる。堪らない位に」


 薔薇が咲き誇る庭園でエルフィンと悠人は熱いキスをした。
 私達は今までで一番幸せだ。そして、ずっと一緒に歩んでいくと誓った。
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