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乙女ゲーム本編突入です。
第49話:プレゼント
しおりを挟む大分寒くなりました。そろそろ雪が降りそうです。
「そういえば、今頃だったからしら?
サプリが雪の中クルクル踊り狂ってたの」
ジェラールがカフェオレを飲みながら、窓の外を見る。
「あぁ、ミリフィールが豆と婚約破棄したあの事件ね」
後頭部を叩かれた。なぜ?
「痛いよ、マシュマロマン」
相変わらずのモコモコ加減ですな、ミリフィール様。
「誰がマシュマロマンだ」
フンっと胸を張るが、モコモコでやはりマシュマロマン。いや……これは!
「ミシュランマン?」
「マイナーで判り辛いわ!」
素早いツッコミありがとう。
その後、首を傾げるサラとジェラールの為に、ミリフィールが一生懸命にマシュマロマンとミシュランマンの絵を描いて見せてた。
自分が笑い者になる為に、ご苦労様です。
マシュマロマンとミシュランマンを見て爆笑しそうなのを、必死に抑えて窓の外に目を向けたサラが、私の背中をバンバン叩く。
いや、マジで痛いから!
怒りながらもサラの指差す方を見ると……?
チョコアの肩に、バカ殿下がコートを掛けてやっているところでした。
**ピンポーン**
<イベントが一つ解放されました>
<設定ページ一部閲覧可能になりました>
思わずミリフィールを見ると、彼女もこちらを見ていた。
おそらく、ゲーム内でのイベントに心当たりがあるのだろう。
「何かあるの?」
私達の様子に気付いたジェラールが声を顰めて聞いてくる。
見えないと解っているが、周りから見えないようにこっそりと『甘王公式本』をテーブルの上に広げた。
『昨年はビタールに先を越されて悔しい思いをしたマカディーアは、ショコラにコートをプレゼントしてくれるよ!
お礼を言おう!
⬜︎ありがとう!とクルクル回る
⬜︎ありがとうございます、とカーテシー
⬜︎ありがとうございました、とお辞儀
どれを選ぶ?
コートを着るショコラを見て、シフォンティーヌが怒れば最高だね。
「私にさえその様な贈り物をした事が無いのに、なぜ平民の娘に王室御用達の仕立てのコートを!」ってね!』
うわぉ、ゲームの私、激しい。
お礼の仕方で好感度が変わるのはわかるけど、とりあえず悪役令嬢としてはクルクル回られるのが1番ムカつくかな!
小声で記事を読み上げると、ジェラールが不満そうな顔をする。
「別にビゼタール先生がプレゼントしたわけではありませんわ」
うん。現実では、手続きしただけだもんね。
「あくまでもゲームの中の話だから」
ミリフィールが苦笑する。
ジェラールとビゼタールは、相思相愛で婚約した珍しいパターンである。
微笑ましい。
私達がジェラールを見て、ウフフと生暖かい笑顔を浮かべていると、食堂の扉の開く音がした。
貰ったばかりのコートを着て、キャッハウフフしている頑丈女と、どこか疲れた表情の三馬鹿トリオである。
「わ、私、文句言いに行った方が良いのかな?えっと、台詞なんだっけ?」
『甘王公式本』を見ながらワタワタしていると、サラが笑う。
「思った事言えば良いんじゃない?」
確かに。
「じゃあ、言う事ないわ」
座り直して、冷めてしまったカプチーノを飲む。
『甘王公式本』では、王室御用達の仕立てのコートとなっているけど、今チョコアが着ているコートは、とてもそんな高級品には見えない。
路面店の吊るしがいいところだろう。
肩のサイズは合ってないし、胸は合ってそうだけど、ウエストのボタンは留まらなそうだ。
全体的にサイズが一回り小さそうで、とても滑稽である。
王室御用達で仕立てたなら、アレはないわ。
「何アレ。サイズ合ってないし」
ミリフィールが声を殺して笑う。
「肩が合ってなくて、腕が真っ直ぐ下りないじゃない。操り人形みたい」
ジェラールも顔を伏せて呟く。
声、震えてますよ。
「操り人形ってか、案山子ね」
こっそり呟いたけど、意味がわかるのは多分ミリフィールだけだろうな。
「かかし?」
ジェラールの問いに、笑いながらへのへのもへじ顔の案山子を描いて説明しているミリフィール。
話に加わらず、いまだにキャッキャはしゃいでいるチョコアを見ているサラ。
「ねえ、物は良さそうよ?生地も青味がかった白で、縫製自体は綺麗だし。
あれ、フィオへのプレゼントだったんじゃない?」
サラちゃん、爆弾投下です。
応援ありがとうございます!
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