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乙女ゲーム本編突入です。
第74話:悪役令嬢化
しおりを挟む憩いの場が、戦いの場に変わった。
空気がね。
「行きましょうか」
3人娘を皆のいる場所へと誘導する。
躊躇する雰囲気がヒシヒシと伝わってくるけど、馬鹿女と残されるよりは良いでしょ?
私に完全に無視されたチョコアは、羞恥なのか怒りなのか、顔を真っ赤にしている。
「ちょっとアンタ達!何、無視してんのよ!アタシの話を聞いてんの?」
女王様かよ。
皆の所へ行くと、いつの間にか3人娘の分の席とデザート、そしてお茶が用意されていた。
「リュオ様の国のお菓子ですわよ。滅多に食べられませんから、ぜひご相伴に預かりましょう」
皆の『まだ食べるのかよ』な視線は気にしない。
だって、3人娘だけに食べさせるのは可哀想でしょう?
緊張して味も判らなくなるわよ、きっと。
ライジ殿下がいるからか、大人しくこちらを見ていたチョコアだが、3人娘が栗羊羹を食べて「美味しい」とか「初めて食べました」なんて、目をキラキラさせているのを見て、怒りが頂点に達したらしい。
「何アタシの事無視してモノ食べてんのよ!」
チョコアが一番近くにいた子の腕を掴んで引き摺り倒した。
「何をなさっているのです!」
叫んだのはサラだ。
言われたチョコアは、キョトンとしている。
まさか、こんな事が初級クラスでは罷り通っていたの!?
「人の事を無視するから悪いんじゃない」
はぁ~?何言ってんの?コイツ。
「クラス替えになったのであれば、彼女達と貴女はもう無関係ですわよね。
いくら学園内とはいえ、平民が貴族の令嬢に軽々しく声を掛けるのは如何なものでしょうか?」
努めて冷静に話す。
そうじゃないと、この女に罵詈雑言を浴びせてしまいそうだ。
「しかも暴力を振るうなど、学園に通う生徒としての自覚はおありなのですか?」
チョコア、ヒロインじゃなくて悪役令嬢化してるな。
でも悪役令嬢って、それが許される立場があってこそ許されるのであって、平民では無理がないか?
「別に来たくて来たわけじゃないわよ、こんな所。
それに私はマカ様のお気に入りなのよ?それだけで他の貴族より偉いに決まってるでしょ」
何言ってんだ、この馬鹿は……と皆が思ったであろうタイミングで、バッシャーンと水音がした。
頭から紅茶を被ったチョコアが、池の中にいた。
「うるさい。気分が悪い。視界に入るな」
真っ直ぐ腕を伸ばしたライジ殿下がハッキリとした口調で告げる。
従者が持っていたティーポットはひとつ残らず蓋が開いていた。よく見ると、ティーポットの蓋は、不自然に浮いている。
何かが持ち上げているようだ。
「ちょ、何?上がれないんだけど!」
池の中からチョコアの叫び声が聞こえる。
暴れるチョコアを、水が押さえ付けている。
まるで水から出さないように、羽交い締めにしているようだ。
「そろそろ授業が始まるな。戻ろうか」
チョコアなど見えていないかのように、ライジ殿下が振る舞う。
皆、それに倣って、教室に戻る準備を始める。
チョコアに引き摺り倒された女生徒は、ライジ殿下の従者があの後すぐに保健室へ連れて行ったので心配ない。
「そういえば、何かお話があったのではなかったの?」
教室のある建物に向かって歩きながら、3人娘に問い掛ける。
今は2人だけど。
「あ!そうなんです。私達、初級からBクラスになったんです」
「私達、クラスでも制御が下手な方だったので、あの授業がなければまだ初級にいたと思います」
うふふ、と和やかに皆で歩く。
助けなさいよ!って声が後ろでしてるけど、多分、気のせいね。
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