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4:公爵家
しおりを挟む朝食の席に、初めて家族が揃った。
他の三人が席に着いてから、使用人がアメリアを呼びに行った。
家長である公爵より後に、アメリアが呼ばれるのは普通の家ではおかしい事である。
しかし公爵家では、アメリアは公爵令嬢ではなく、将来の王妃といて扱われていた。
「おはようございます、公女様」
父親である公爵が、食堂へ入って来たアメリアに声を掛ける。
それに合わせて、公爵夫人とロバーツも無言で頭を下げる。
「おはようございます、公爵」
挨拶を返してから、アメリアは席に座る。
「どうぞ楽になさって」
アメリアに声を掛けられて、やっと三人は顔を上げた。
両親の目を盗み、ロバーツが口パクで「アメリア、おはよう」と挨拶をする。
それに対し、アメリアはいつもより少し口端を持ち上げた。
一切の会話が無く、黙々と食事がされた。
食事が終わると、アメリアが一足先に退出する。
扉が閉まり、こちらの声が聞こえないだろう程度時間を置いて、夫人は溜め息を吐いた。
「息が詰まるわ。せっかくの家族団欒が台無し」
公爵も自分の肩に手を置いて、解すように首を動かす。
「今更一緒になど食わんでも良いだろうに」
「何言ってんだよ。大体何で一言も口を利いちゃいけないんだよ」
ロバーツだけが異を唱える。
「王宮からのマナー講師に、食事中に話をする癖を付けるなと言われている」
公爵の言葉に、ロバーツが呆れた顔をする。
「それにしても限度があるだろう?挨拶もしちゃいけないのかよ」
ロバーツの台詞に、今度は逆に公爵が呆れた表情を返す。
「お前は、陛下や王妃陛下に自分から声を掛けるのか?食事中に話し掛けるのか?」
公爵の質問に、ロバーツは「は?」と返す。
なぜいきなり王家に話が飛ぶのかと。
「公女様は王妃になる方よ」
夫人も公爵に同意を示す。
「それは、将来の話だろ?今は公爵家の娘で僕の妹だ」
ロバーツは訴えたが、両親は首を横に振った。
彼女は、生まれながらに王妃になる事が決まっている、公爵家の娘ではなく公女様だと。
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