上 下
5 / 31

5:ミアとロバーツ

しおりを挟む



 アメリアの学校入学まで後半年となった時、突然生活が変わる事になった。
 公爵の弟夫婦が事故に遭い、この世を去ったのだ。
 子爵位を継いだ弟夫婦は、治める土地もなく典型的な宮廷貴族だった。
 多少の貯えはあったが、娘一人が一生何不自由無く過ごせる程では無かった。

「弟の一人娘であるミアを引き取ろうと思う」
 公爵の提案に、夫人が顔を輝かす。
「まぁ!私、可愛い娘が欲しかったの。娘と一緒に買い物したり、お茶をしたりしたかったのよ」
 まるで自分には娘が居ないかのような言い方に、ロバーツは眉を吊り上げる。

「アメリアが居るだろうが!」
 ロバーツが怒りを口にするが、夫人はキョトンとする。
「彼女は公女様であって、娘じゃ無いわ」
 相変わらずの主張に、ロバーツは意味が解らなかった。


 1週間後、ミアが公爵家に引き取られた。
 公爵と夫人は養子縁組をして実の娘としたかったようだが、ロバーツが認めなかった。
 ミアを養子にするなら、自分は成人と同時に籍を抜けるとまで言い出した為、公爵夫妻は養子を諦めた。

「初めまして、おにい様!ミアです」
 ミアの挨拶に、ロバーツはあからさまな不快を示した。
 葬儀には公爵夫妻だけが出席したので、初めて会うのは間違いでは無い。
 だが根本的に勘違いしているのか、ロバーツを兄と呼ぶのだ。

「僕の妹はアメリアだけだ」
 冷たく言い放ったロバーツ。
 ミアの瞳に見る見る涙が溜まっていく。
「まぁ!ロバーツ、そんな言い方はないでしょう?」
 夫人はミアの間違いを指摘せず、ロバーツを責めた。

 その様子をチラリと見ただけで、ロバーツは自室へ戻ってしまった。
 勝手に勘違いしても、困るのは自分では無いと、成人したら子爵位を継ぎ公爵家を出るのだから、その時に気付くだろうと放置した。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

限界集落で暮らす専業主婦のお仕事は『今も』あやかし退治なのです

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:2,186pt お気に入り:1

ある国の王の後悔

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,754pt お気に入り:102

本当はあなたを愛してました

m
恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,962pt お気に入り:218

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,406pt お気に入り:2,229

いっぱいの豚汁

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:0

ちーちゃんのランドセルには白黒のお肉がつまっていた。

ホラー / 完結 24h.ポイント:2,087pt お気に入り:15

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,873pt お気に入り:3,370

処理中です...