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5:ミアとロバーツ
しおりを挟むアメリアの学校入学まで後半年となった時、突然生活が変わる事になった。
公爵の弟夫婦が事故に遭い、この世を去ったのだ。
子爵位を継いだ弟夫婦は、治める土地もなく典型的な宮廷貴族だった。
多少の貯えはあったが、娘一人が一生何不自由無く過ごせる程では無かった。
「弟の一人娘であるミアを引き取ろうと思う」
公爵の提案に、夫人が顔を輝かす。
「まぁ!私、可愛い娘が欲しかったの。娘と一緒に買い物したり、お茶をしたりしたかったのよ」
まるで自分には娘が居ないかのような言い方に、ロバーツは眉を吊り上げる。
「アメリアが居るだろうが!」
ロバーツが怒りを口にするが、夫人はキョトンとする。
「彼女は公女様であって、娘じゃ無いわ」
相変わらずの主張に、ロバーツは意味が解らなかった。
1週間後、ミアが公爵家に引き取られた。
公爵と夫人は養子縁組をして実の娘としたかったようだが、ロバーツが認めなかった。
ミアを養子にするなら、自分は成人と同時に籍を抜けるとまで言い出した為、公爵夫妻は養子を諦めた。
「初めまして、おにい様!ミアです」
ミアの挨拶に、ロバーツはあからさまな不快を示した。
葬儀には公爵夫妻だけが出席したので、初めて会うのは間違いでは無い。
だが根本的に勘違いしているのか、ロバーツを兄と呼ぶのだ。
「僕の妹はアメリアだけだ」
冷たく言い放ったロバーツ。
ミアの瞳に見る見る涙が溜まっていく。
「まぁ!ロバーツ、そんな言い方はないでしょう?」
夫人はミアの間違いを指摘せず、ロバーツを責めた。
その様子をチラリと見ただけで、ロバーツは自室へ戻ってしまった。
勝手に勘違いしても、困るのは自分では無いと、成人したら子爵位を継ぎ公爵家を出るのだから、その時に気付くだろうと放置した。
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