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21:夜会が始まるよ!
しおりを挟む国王夫妻が入場し、第一王子が一人で入場した。
「王太子の婚約者は?」
『茜』が隣のダニエルに小声で質問すると、「シッ」と口を塞がれた。
「兄上はまだ王太子になっていない。滅多な事を口にしないように」
ダニエルの答えに頷きながらも、『茜』は首を傾げる。
ゲームのファンブックのifストーリーとして【主人公が第二王子を選んでいたら】として、婚約者のいる王太子と婚約者を捨てた第二王子の恋のバトル話が載っていたのだ。
王太子の婚約者は、隣国の王女だったか隣国の王家の血を引く令嬢だったか。
ダニエルとエリザベス、セザールとシャーロットが呼ばれた。
「シャーロットは、本当に婚約者では無いのですよね?」
ダニエルに『茜』がコッソリと質問する。
どう見ても揃えたとしか思えないデザインの服装を、二人がしているからだ。
「それがセザールの狙いだろうな」
『茜』が勘違いしたように、他の貴族も誤解するようにセザールは画策したようだ。
「私の為と言うのは建前か~」
「いや、それは本当だ」
小声で会話しながら会場内に入る。
全員が頭を下げている。
「これが日本なら黒山の人だかりって表現がピッタリのはずなのに」
カラフルな会場内を見ながら『茜』は呟く。
そして、ソレを見つけた。
会場の中程にあるフワフワのピンク色を。
「皆の者、面を上げよ」
宰相の声が会場に響き渡り、皆が顔を上げる。
視線は第二王子ダニエルと婚約者のエリザベスを確認して、その隣の第三王子セザールと並び立つシャーロットを見た。
「揃いの服?」
「いや微妙に違う……?でも、あれは」
落ち着かない会場。
これが外堀を埋めるってやつなのね!と『茜』が思ってコッソリと笑ったところで、射るような視線を感じた。
見なくても判る。
今さっき確認したばかりの場所だからだ。
「何で公爵家嫡男で満足しないのよ」
思わず『茜』が呟くと、ダニエルもその意図に気付いたようだ。
「最近ジョナタンに会いに3年の教室に来た時に、私へと近付こうとしていたな」
護衛に阻まれていたけれどな、とダニエルが口端を持ち上げる。
そう。漫画と違って、王子達には常に護衛が付いており、おいそれと一般生徒は近付けないのだ。
セザール側から近付いたからシャーロット達は話を出来たのであって、逆であれば侯爵令嬢のシャーロットでもセザールの許可無く近付けない。
平民のドリーなど、ダニエルの半径2メートルにも近付けないだろう。
今は伯爵令嬢になったようだが、王子達から見たら、今までと何ら変わりは無い。
伯爵家はギリ高位貴族だが、人数も多く、王家が伯爵家から正妻を迎えた前例は無かった。
特に王位継承権を争っているような者には、後ろ盾にもならない存在だ。
「身の程知らずが、イライザを睨むなど」
ダニエルがポツリと呟く。
「百歩、いえ一万歩譲ってダニーの側妃を探してるとしても、正妃のエリザベスを仇のように睨んでる女は選ばれないわね」
『茜』がのほほんと応えると、ダニエルは一瞬情けない顔をする。
「イライザの顔と声で、側妃の話は止めてくれ」
思わず言ってしまったという雰囲気のダニエルに、『茜』は「あら、ごめんなさい」と口元を手で覆って謝る。
絶対に悪いと思っていないよね?
横で聞いていたシャーロットとセザールも、心の中でツッコミを入れていた。
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