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第六章 【二つの世界】
6-290 サヤと剣
しおりを挟む『ハルナは私と能力を共有させることにより、今の能力を格段に向上させることができます』
ハルナの頭の中に、盾の創造者の声が響く。
ハルナはそんな時ではないと思っていたが、不思議なことにサヤが追い打ちをかけてくる様子はない。
周りの時間はゆっくりと流れており、周囲の音も先ほどとは違い、時間が引き延ばされたように何も聞こえなくなっていた。
そんな様子を確認し、ハルナはこれも盾の創造者の能力であると考え、安心してその言葉に反応する。
「……能力の向上?どうやってですか?」
『ハルナは特に気にする必要はありません。元素の取り込みが私から経由され、ハルナへと流れていきます。その際に私の能力が付与されるので、普段通りに能力を使ってもらえれば……』
「――え!?」
盾の創造者が言葉を終えることができずに、ゆっくりと流れている時間の中をサヤは黒い瘴気で創り出した槍を構え突進してくる。
「うおおおぉおぉおお!!せやっ!!!」
走り込んできたサヤは、槍の先が目標物まで届く距離にまで来ると、自分の走ってきた速度に載上乗せして槍をハルナに突き出した。
ゆっくりとした時間の中、ハルナが出していた土の壁が消えていないうちの攻撃だったため、その反応が遅れてしまった。
「――っ!?」
しかし、ハルナは紙一重で胸元に向かって突き刺した槍の先を、身体をひねることでそれを交わした。
そのひねりを加えた回転のまま、ハルナはサヤと距離を取り次の攻撃に備えた。
ゆっくりと流れていた時間は元に戻り、普段の森が周囲に戻ってくる。
サヤはハルナの胸元を狙い、突き刺したり槍を払うように切り付けたりする。
その攻撃をハルナは、必死に精霊の力を使いながら、サヤの攻撃を避けていく。
「ちょっと……おとなしくしてなって!!」
「そんなことできるわけないじゃない!!それより止めてよ!!!」
「うるさい!!」
サヤは自分の攻撃がハルナに当たらないことに苛立ちながら、何度も何度も槍を振り回す。しかし、その攻撃はハルナを捉えることができなかった。
ハルナ自身もこの状況に慣れてきたのか、サヤが繰り出す攻撃のパターンを覚えたため、精霊の力を試しながら効率の良い防御も取れるようになってきていた。
必死に攻撃をするサヤは、そんなハルナの余裕の出てきた対応に苛立ち始めて、身体に力が入っていき更にその動きは読まれやすくなっていった。
ハルナの余裕は、言葉を発せられるまでになっていた。
「ねぇサヤちゃん?」
「余裕があるのもムカつくけど……なに?」
話しかけられたサヤは、攻撃の手を休めることはせずに、ハルナの言葉に返事をした。
「さっき槍で向かってきたことなんだけど……」
「なんで、あの空間の中を動けたのかってことか?」
「え?なんでわかるの!?」
そうしながらもサヤは手を休めないが、動揺を与えて当てようとした作戦も無駄に終わっていた。
「……ったく。あれはアンタの力じゃないだろうけど、アタシだってあの力は使えるからね。この剣と繋がってるから」
「え?」
驚いたハルナは動きが一瞬止まった。
サヤの攻撃はハルナに届き、左の脇を掠めて少しだけ服が切れた。
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