1,064 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-291 戸惑い
しおりを挟む切れた服の切れ目から、ハルナの肌と胸に巻いた下着の一部がさらけ出されていた。
あんなにも軽快に、しかも何かを試しながら踊るように避けていたハルナに動揺が見られ動きが止まっていた。
「サヤちゃん……それって……」
目の前にいるハルナの動揺が、明らかに先ほどの自分の発言の精だとサヤは気付いた。
ハルナが動揺し、逃げる行為や警戒を解いていることから、先ほどの言葉と最初に確認した言葉をハルナが関連付けて考えているのだとわかった。
サヤが確認した”繋がっている”という言葉を、ハルナは契約の一種ではないかと考えていた。
それ以前にサヤは、ハルナのことを敵としてみていることから、繋がることが今回の対立に何らかの影響を及ぼすものだと判断した。
――危険なものか、それとも加護を得て能力が上がるためか
ハルナの中で、繋がることに対しての結果が取り返しのつかなくなるものであるような気がして、盾の創造者から何か言われた時には注意しようと考えていた。
しかしサヤは、あの引き延ばされた時間の中で動くことができたのは”繋がっていたため”だと言った。
そこから考えても、新しい能力が得られるというのは間違ってはいないだろう……だが、それ以上にハルナが最初に聞いたあの言葉は、自らの能力が向上されてしまうは困るといった感情のものではないと警戒していた。
(だとしたら……繋がることは、危険な行為?でも、サヤちゃんはどうして……っ!?)
「ぼーっとしてんじゃないよ!ハルナ!!」
サヤはハルナの隙をみて、再び先ほどと同じように何度も何度も執拗に切り付けてくる。
一度間をおいた後のサヤの攻撃は、以前と変わり映えしない攻撃が続いてくる。
ハルナは再び、サヤに反撃するわけでもなく、作業のような避けるだけの防御が始まった。
『ハルナ、どうして反撃をしないのですか?そうしなければいつまで経ってもサヤを倒すことはできませんよ!?』
(だ……だって、サヤちゃんが何で私のことを攻撃しているかわからないんですよ!?)
ハルナは、頭の中で盾の創造者に対して反論する。
だが、このままでは何も変わらず、何の解決にならないことも判っていた。
そしてハルナは決意して、ある行動に出た。
ハルナは先ほどと同じように、足元を土の精霊の力で突きあげて高い位置からサヤを見下ろす。
その高さは、周囲に生えている木と同じ高さまでの位置に達した。
ここまでくれば例えあの長い槍であっても、サヤの攻撃は自分には届かない。
もしも攻撃するならば、槍を手放して投げるかサヤ自身がこの高さまで昇ってこなければならない。
サヤもこの足場から少し離れた場所で、ハルナの姿を見上げている。
そして、何の行動も起こさないサヤを見て、ハルナはようやく話しかけられる状態になったと判断した。
そして上からサヤに声をかけようとしたが、いざとなると聞きたいことがあり過ぎて中々言葉を発することができなかった。
そしてハルナは、まず一番気になっていることをサヤに伝えた。
「サヤちゃん……どうして、あの時離れていったの?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
370
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる