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第六章 【二つの世界】

6-349 サヤとハルナと1

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「あぁ、悪かったね。いろんな意味で」


「ううん……いいのよ、”サヤちゃん”?」



ハルナからの答えに、サヤの顔には不快感を示す表情が浮かんでいた。
ただ名前を呼ばれただけに過ぎなかったが、サヤにはその言葉が気に食わなかった。


「アンタ……”盾”の方だろ?気安く名前を呼ぶんじゃねーよ」



「あら?わたしハルナよ?そんなこと言うなんて……傷付いちゃうわね」



――ボッ!



サヤは、瘴気の塊をハルナに向かって投げつける。だが、その攻撃はハルナの目の前で、見えない壁に衝突したように散霧した。
その攻撃は傷付けるという意味ではなく、ただその口を黙らせたいだけの勢いでしかなかったが、ハルナもそれを見抜いていた。




「怖いわねー、なんてことするの?」


「ちょっといい加減にしてくんない?本気でいくよ?」



そう言うと、サヤは背中にかけていた剣の柄に手をやった。そして触れた途端に剣は黒い光を帯びた。
その光景をみたハルナの表情は、少しだけ硬くなった。



「ふーん……よくわからないけど、それ怪しそうね?」


サヤはその言葉に反応せずに、腕の力を少しだけ入れた。



『あぁ……わかったわよ。もう、止めるからその手を離してくれない?』



サヤは剣の柄から手を離し、上げた腕を下ろしてもう片側の腕で組む格好を取る。



「アンタの本当の目的って……一体何なのよ?」



『それをあなた達に伝えると、阻止するつもりでしょ?そんなこと言うはずがないじゃない……』


「はぁ……なら今すぐそれを止めてるよ」



そう告げるとサヤは組んでいた腕を解き、背中に手を伸ばそうとした。
それと同時に、この周囲の魔素が先ほどと同じようにサヤの周囲に集まり力が集まっているのを感じた。



『あ、あら。怒らせてしまったようね?仕方がないわ、”あなた達”に私の考えを聞かせてあげましょう
か』


そうして、盾の創造者はハルナの声で今回の行動の意図を語った。

最初に語った内容は、今まで認識していたものと何ら変化のない内容だった。
盾の創造者は、この世界を一度崩壊させ自分の望む世界を創るために今の行動をとっていると語った。
しかし、ここから先はサヤたちが想像をしていない範囲の情報を聞くことができた。


「だとしたら、なんでアンタはこの世界の生き物を個別に襲ってるわけ?崩壊させるなら一気にやっちゃった方がよくない?」

『さすが……サヤ。その通りですよ、できる事なら一瞬にして消し去ってしまうことの方が楽ですよ?しかしなぜ、そうしないのだと思いますか?……まぁ、少しあなた方にも思い当たるところがあるのではないかしら?』


サヤは、こちらから投げかけた質問に対して、盾の創造者からの質問で返す言い方に不機嫌になる。
だが、ここはまずは相手の”手”に乗ってみた方がよいと判断してその答えを考えてみた。


(まさか……)


サヤは、すぐに思い当たることがあった。
実は生き物たちが消えるたびに、剣の創造者から送られてくる力が増えてきているということに。










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