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第六章 【二つの世界】
6-503 お別れ
しおりを挟む「あらあら……」
久々に会えた冬美の姿に、陽菜と小夜はその傍を誰にも譲らなかった。
エレーナやマーホンも、そんな陽菜の姿を優しい笑顔で見守っている。
『じゃあ……私、そろそろ行くね』
「どこに行くの?フーちゃん?」
『他の世界も見て回らないといけないん……こことは関係ない所もあるから、今度はまたいつ会えるかわからないけど……でも、楽しかった。私もハル姉ちゃんたちのように、人として一緒に過ごしてみたかった』
「フーちゃん……」
『えへへへ……でもね、最後にもう一度ハル姉ちゃんと会えて本当に良かったよ!だから……私のこと……忘れないでね……』
「フーちゃんも……私のこと……忘れないでね」
『うん、ハル姉ちゃん……あ、そうだ!』
陽菜との別れを寂しく感じていたフウカは、何かを思いついた。
そして、陽菜に近付いて胸のあたりに手を当てると、その間で光が発せられる。
その光は痛みや熱感もなく、ただ何かが光っただけだと陽菜は感じていた。
「フーちゃん、これ……?」
『私のことを忘れないように、ハル姉ちゃんの中に少しだけ私の痕跡を残させてもらったの……きっと生まれ変わったときに一度忘れてしまうかもしれないけど、ここに戻ってきた時にはまた私のこと呼んでね』
「ねぇ、これ……また”死ねない”とかそういうことにならないよね?」
『うん、大丈夫だよ。特別な能力は付与してないから……でも、ハル姉ちゃんが怖い目にあったときには、その身を守れるようにはしてある』
「え!?なにそれ!!」
『えへへへ、いたずら……っていうか、私の感謝の気持ち。普通は発動しないから、平気よ!……たぶん』
「もう!フーちゃんったら……ありがとね」
そう言ってハルナは、フウカのことを抱き寄せた。
『またね……ハル姉ちゃん』
「……うん、またね。フーちゃん」
そういって二人はお互いの相手の身体から離れ、その手に触れられなくなる。
そしてにっこりと笑ったフウカは、陽菜の前からゆっくりと光の粒となって消えていった。
「それじゃあ……私もそろそろ行くね」
「え?エレーナもいっちゃうの!?」
「うん、結構長い間待ってたんだよ?あなたのことを……ずっとフーちゃんが教えてくれてたから、あなたがこっちに来ることがわかったんだけどね」
「私も、身体がなまってきているので、エレンと一緒に行きます」
「アルベルトさん……」
「また、付いて来るつもりなの?」
「もちろんだ、そういう”約束”だっただろ?」
「……ん、もう」
そのやり取りに対して、陽菜は今までも一緒だったのかと聞くと、どうやらハルナがこの世界に戻ってくる前に数回一緒に元の世界へと戻ったことがあるらしい。
向こうの世界で離れていても、いつかは二人は巡り合えていたようだった。
二人の間には強い絆があり、必ずその世界で出会えて、出会った瞬間に”運命の人”だと感じているようだった。
これも、フウカの力によって行われているらしいが、二人は陽菜の大切な友人であるため二人の願いをフウカが叶えてくれたと言っていた。
「ふん、飽きないもんかねぇ」
小夜のその言葉にも、エレーナは笑顔で応えた。
「サヤさまも、いつかそういう方と出会えるといいですね?」
「……ふんっ!」
こうして二人は陽菜とまた会う約束をして、元の世界へと旅立っていった。
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