王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第1章

哀れな魔物

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【お知らせ】
転職活動でしばらく更新が出来ておりませんでしたが一段落つきましたので、更新頑張ります!

これからもよろしくお願いします!

本編
↓↓↓
ーーーーーーーーーーーー


どれくらいの時間を暗闇で過ごしたのか、不意に重苦しい雰囲気が晴れた感覚がした。

「確認してまいります。」

ヨハネスがそう言って僕を降ろそうとするから慌ててしがみつく。


「ルナイス様。」

「うぅ…ばぁや手にぎってー。」

「勿論です。」


ヨハネスの困った声に傍に居るばぁやに手を握ってもらって無事ヨハネスから離れる。

暗闇にも目が慣れて、今では薄ら周りが見えているけど闇に溶けてしまいそうな不安は消えないので。



ヨハネスが部屋を出て行ってからわりとすぐに複数の足音とギィッと扉が開く音が聞こえた。


「ルナイス!」


 そして聞こえてきたのはヨハネスの声ではなくて、にぃ様の声だった。

ボワッと部屋がほんのり明るくなって、しっかりとにぃ様の顔が見えた。
隣にはヨハネスもちゃんと居る。


どうやらにぃ様の魔法のようだ。
ほんのり明るいから暗闇に慣れた僕でもうってならずに済んだ。

にぃ様はやっぱり優秀である。



「にぃ様!」

少し明るくなった部屋に闇に沈む心配のなくなった僕はにぃ様に思いっきり抱きつく。

にぃ様もしっかりと僕を抱きしめてくれて、スタスタと歩き出し無事に僕は明るい地上へと戻ってきた。






「眩しくないか?」

明るいところに出てにぃ様は僕に確認してくれるので大丈夫だと頷く。

いつも歩いている屋敷の廊下を進んでにぃ様と共にたどり着いたのは2階のバルコニー。


そこからは門前が見下ろせて、見下ろした先には大きな動かない物体を取り囲む使用人達の姿と指示をしているとーさまの姿が見えた。



「どうやら何者かが家にデスコラプションを解き放った様だ。」

いつもより低い声でにぃ様が何があったのか教えてくれた。


「デス、コラプション?」

聞き覚えのない言葉に首を傾げる。


「戦場などで腐敗した穢れた魂が集まって生まれる#_ unusual_アンユージュアル__#と言われる魔物だ。通常こんな所に出現する魔物ではない。」


にぃ様は眉間に深い皺を作って低い声で説明してくれる。

ぱっと見る限り使用人の中に何名か怪我を負った者がいる様で、門から玄関までの道の地面やお花、木々の多くが悲惨な状態になってしまっている。



使用人すら強いと言われているらしいアーバスノイヤー家でこの有様。

他の下級貴族や戦闘向きでない貴族の敷地内に現れていたらもっと酷いことになっていたに違いない。

国民が住む下街であったならもっと惨い。


そう考えたらアレが解き放たれたのがアーバスノイヤー家でよかった…と思わないではない。





「アレどーするの?」

グチャっとしてるデスコラプション。

此処までは距離があるから微かに腐臭が漂ってくるだけだけど、近くにいたら絶対鼻がひん曲がる。



なるべく早めに処分して欲しい。



「魔力の痕跡を調べた後、神殿の者に浄化を行って頂く。あの様な醜怪しゅうかいなモノになったとは言え、戦場で散った魂達だ。」


にぃ様の言葉にもう一度デスコラプションの方に視線を向ける。

ドロドロで臭くて醜いあの魔物は、生前どんな人間であったにしろ国や家族の為に命を落とした人の魂であったのだと思うと何だか切ない。


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