王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第3章

日頃のお礼

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運ばれてきた料理は、美味しい物ばかり。


特に柔らかく肉汁をたんまり含んだ肉団子は絶品だった。




もぐもぐと食べながら向かいでご飯を食べているヒュー様を視界に捉え、そう言えばっと質問を投げかける。



「ヒュー様も領地のことで忙しいはずでは?」


「今更聞くかぁ?まぁ俺はアドルファスと違って領地運営より騎士職に重点を置くからな。チルが育てば領地運営はチルに任せるつもりだ。」




にぃ様が忙しいように、ヒュー様も忙しくされているという噂を耳にしていたのに…突然の外出にヒュー様がアーバスノイヤー領へ来れたのは何故?暇なの?と不思議に思ったのだが、同じ時期領主でも色々違うんだと知る。

確かにヒュー様はペンを握るよりも剣を握っている方が似合う。







「もちろん領地について学んでいるし、暇なわけじゃないがな。本来の予定は動かせるものばかりだったし、偶には息抜きしてもいいだろってことで護衛を引き受けたのだが……まさか口封じをされるとはな。」


分厚いお肉に噛り付きながら隣で静かに食事をしているノヴァを睨むヒュー様。

ノヴァは睨まれていることに気が付いているけれど無視。




「ヒュー様は護衛でしょ?護衛対象とぺちゃくちゃお喋りする必要ないじゃん。」


「おまえなぁ、偶にしか会わないんだぞ?話すことがあるだろ?」



「今日はないです。にぃ様とのお出かけの日なので。ノヴァ美味しい?」


「美味しいです。」




顔を顰めるヒュー様をさらっと流して、黙々と食事をしているノヴァに声をかければ丁寧な言葉で返ってくる。

外ではノヴァはこのスタイルを崩さない。


以前聞いた時にはノヴァが砕けた喋り方をアーバスノイヤー家にすることでアーバスノイヤー家が軽んじられてはいけないからだと言っていたが、そんなことで軽んじる人はいないと思うのだけど…




まぁ、二人の時やお家なんかでは普通にお話してくれるんだし、無理に喋り方を指定する必要はないかと思い気にしないことにしている。

にぃ様もノヴァの話し方に何も言わないし、僕が分からないだけでノヴァの判断が正しいのだろう。













食事が終わって次は僕がにぃ様の手を引く。


事前にヨハネスから雲飴の売り場が何処にあるかを聞いていたし、さりげなくヨハネスが道を示してくれるので迷わず目的の場所に来ることができた。




「にぃ様!何味がいいですか?」


お店の前で張り切ってにぃ様に尋ねるとにぃ様は驚いた様子で、僕と僕の手に握られている袋を見た。



「お小遣い…あんまり使い道がないので、にぃ様に雲飴を買って差し上げたいのですが…もしかして雲飴、もうあんまり好きじゃないですか?」


固まったまま動かないにぃ様に上がっていた気持ちが落ち着いてきて、はしゃいでいた自分が恥ずかしくなってきた。





そうか。

にぃ様が今も雲飴が好きだとは限らなかった。


早とちりした自分に頬が熱くなる。







「アドルファスがいらねーなら俺がっぐ!!」


気まずい空気が流れだしたところにヒュー様が声を上げたけれど、固まっていたにぃ様が突如俊敏に動かれて、近寄ってきたヒュー様のみぞおちに肘を突き立てた。



「ありがとうルナイス。あまりの感動に思考が停止していた。雷味が食べたい。」


「!!はい!すみません、雷味をひとつ!それから嵐味と雪味と雨味と晴れ味をふたつ!」




にぃ様の言葉に落ちていた気持ちが一気に浮上し、慌てて店員さんに注文をすればすっごく微笑ましそうにニコニコ笑いながら注文を受けてくれた。





雷味をにぃ様に渡し、嵐味はヒュー様に。


雪味はノヴァで雨味は僕。



晴れ味はヨハネスとどこかにいるコルダへ。






にぃ様だけに買うと思っていたのだろう、皆が雲飴を渡されて驚いた顔をしていた。

ヒュー様もあんな風に言っていたけど、本気で僕に買ってもらおうなんて思ってなくて僕の為に動いてくれていたので、いざ雲飴を僕から受け取ると驚いていて、受け取り方もぎこちなくて面白かった。



ヨハネスは護衛中だからって首を横に振ったけど、にぃ様がヒュー様が食べ終わったら食べればいいと促してくれたので無駄にならずにすんだ。







いつも僕を大切にしてくれようとしている人達にお礼がしたかったので、皆が驚きながらも笑って食べてくれて嬉しかった。








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