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第5章
拷問のスペシャリスト
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僕が毒にやられて眠り、そして目を覚ました日から3日目。
やっと病室から出ることができた僕は今、リェチーチさんとお茶をしている。
暇人同士のんびりお茶を飲みながら他愛もない話をしている…わけではない。
刺客が矢に塗り込んでいた毒について真剣に話している。
今の僕にはコルダという最強の護衛がついていないので、ヨハネスも一緒。
部屋の外で待っとくことはできませんっと強く言われた。
僕が弱くないのだからっと言いたいところだが、つい3日前に刺客にやられてしまっているので大人しく受け入れるしかない僕である。
「使われていた毒はアーナンダ国ではあまり見ない花から得られるものでした。アーナンダ国であるとすれば東の地の森の深くでしょう。そこから採取されたということは考えられにくいんだ。あそこには僕達何て遠く及ばない種族達が数多く住んでいて、その花が毒になることも彼等は知っていると思う。そう簡単に外から来た者にその花を摘ませるとは思えないからね」
「ホルス様…東の地に詳しいドラゴンも東の地のその花が摘まれた形跡はないと言っていました。東の地で採取されたものでないとするとやはり他国の刺客でしょうか」
「その可能性が高いね。だけど、他国の仕業と思わせたい者がいる可能性も捨てきれない。何にしても捕縛した者達から情報を少しでも聞き出せないことには何も掴めないだろうね…ま!大丈夫だよ。なんせ今日から奴等の拷問を担当するのはこの国一番の拷問官だからね!」
リェチーチさんは「あいつに拷問される何て、敵ながら同情するよ」とわざとらしく目尻を拭う動作を見せた。
この国一番の拷問官だなんて、僕は耳にしたことがなかったので首を傾げればリェチーチさんが「会いにいく?」と楽しそうに聞いて来たので僕は迷いなく頷いた。
背後でヨハネスがわざとらしくゴホン!と咳払いして止めようとしてくるが無視だ無視。
リェチーチさんに案内されて辿り着いた拷問部屋からはくぐもった人の叫び声が微かに聞こえてくる。
ある程度の防音魔法が施されていると聞いているから、その防音魔法で防げないほどの絶叫なのだと予測する。
生で聞いたら耳がいかれてしまいそうだ。
「お疲れ様です。ヴァールハイト殿はいらっしゃいますか?」
「デュボワ様!お疲れ様です!今呼んでまいりますので少々お待ちください」
拷問部屋の管理人らしき人物にリェチーチさんが声を掛けると顔馴染みなのかすぐに目的の人物を呼んできてくれることになった。
少し待って、先程の管理人が細身の綺麗な人物を連れて戻ってくる。
「リェチーチ殿、今私は仕事中なのだが?」
「丁度休憩時間でしょ?いいじゃない。それより今回の被害者であのアーバスノイヤー公爵の次男ルナイス・ウォード君を連れてきたんだ」
やはり二人は親しい間柄のようで、気安いやり取りの後唐突に僕の紹介がされ、慌ててお辞儀をする。
「紹介に与りましたルナイス・ウォードにございます」
「初めましてウォード殿。私はここのしがない隊員のヴァールハイトです」
愛想の良い人ではないけれど、ヴァールハイトさんはとても拷問などできなさそうな儚い美人さんで…苗字がないようだけど、根っからの平民って感じはしない。
もしかしたら仕事柄家の名前は言わないようにしているのかもしれない。
「奴らは何か吐いたかい?」
「まだ全員の拷問が完了したわけじゃないが…分かったことは後に報告があった通り、二属性適合者だったってことくらいだ。雇い主を口にしようとすると錯乱状態に陥ったり、嘔吐したりと騒がしいばかりでな…あぁ、そうだ二属性適合者だって気が付いたのは君だったようだねウォード殿」
「あ、はい。気配を消す魔道具らしきものは見当たらないし、付与魔法が施されたのであれば捕縛してからすぐに行った検査で少なからず闇属性が検出されるはずです。それもない、ということはそれぞれが闇属性の魔法が使え、それを隠蔽するだけの適合性があるという考えに至りました」
「うん。まさしく君の予想通りだった。先程雇い主を口にしようとすると騒がしくなると言ったことから察しているとは思うが、奴等には呪いがかけられている。唯一静かなのはウォード殿が捕らえた刺客のみ。何をしても痛覚を遮断しているのか顔色ひとつ変えないし口も開かない」
「……あの、脳をいじることはできますか?」
「脳?」
声を小さくしてこそっとヴァールハイトさんに尋ねると、何故そんな質問を?と不思議そうな顔をされた。
「脳、というか記憶です。記憶から黒幕が分かりませんか?」
もしできるなら早めにしておいた方が良い。
あとやるなら厳重に阻止されたり、先に記憶を壊されることを防ぐ措置をしておかないと。
「あー…それは人道的に最終手段ってことになっている。高い確率で相手の脳を壊し人格を破壊するから」
「人道的…」
拷問してる時点で人道って?って疑問が浮かぶが、そういうところって何かデリケートなんだろうな。
やる側も精神的にきついんだろうし…
「んー…それ人格壊す心配がなかったらやってもいいですか?」
「え?」
「は?」
やっと病室から出ることができた僕は今、リェチーチさんとお茶をしている。
暇人同士のんびりお茶を飲みながら他愛もない話をしている…わけではない。
刺客が矢に塗り込んでいた毒について真剣に話している。
今の僕にはコルダという最強の護衛がついていないので、ヨハネスも一緒。
部屋の外で待っとくことはできませんっと強く言われた。
僕が弱くないのだからっと言いたいところだが、つい3日前に刺客にやられてしまっているので大人しく受け入れるしかない僕である。
「使われていた毒はアーナンダ国ではあまり見ない花から得られるものでした。アーナンダ国であるとすれば東の地の森の深くでしょう。そこから採取されたということは考えられにくいんだ。あそこには僕達何て遠く及ばない種族達が数多く住んでいて、その花が毒になることも彼等は知っていると思う。そう簡単に外から来た者にその花を摘ませるとは思えないからね」
「ホルス様…東の地に詳しいドラゴンも東の地のその花が摘まれた形跡はないと言っていました。東の地で採取されたものでないとするとやはり他国の刺客でしょうか」
「その可能性が高いね。だけど、他国の仕業と思わせたい者がいる可能性も捨てきれない。何にしても捕縛した者達から情報を少しでも聞き出せないことには何も掴めないだろうね…ま!大丈夫だよ。なんせ今日から奴等の拷問を担当するのはこの国一番の拷問官だからね!」
リェチーチさんは「あいつに拷問される何て、敵ながら同情するよ」とわざとらしく目尻を拭う動作を見せた。
この国一番の拷問官だなんて、僕は耳にしたことがなかったので首を傾げればリェチーチさんが「会いにいく?」と楽しそうに聞いて来たので僕は迷いなく頷いた。
背後でヨハネスがわざとらしくゴホン!と咳払いして止めようとしてくるが無視だ無視。
リェチーチさんに案内されて辿り着いた拷問部屋からはくぐもった人の叫び声が微かに聞こえてくる。
ある程度の防音魔法が施されていると聞いているから、その防音魔法で防げないほどの絶叫なのだと予測する。
生で聞いたら耳がいかれてしまいそうだ。
「お疲れ様です。ヴァールハイト殿はいらっしゃいますか?」
「デュボワ様!お疲れ様です!今呼んでまいりますので少々お待ちください」
拷問部屋の管理人らしき人物にリェチーチさんが声を掛けると顔馴染みなのかすぐに目的の人物を呼んできてくれることになった。
少し待って、先程の管理人が細身の綺麗な人物を連れて戻ってくる。
「リェチーチ殿、今私は仕事中なのだが?」
「丁度休憩時間でしょ?いいじゃない。それより今回の被害者であのアーバスノイヤー公爵の次男ルナイス・ウォード君を連れてきたんだ」
やはり二人は親しい間柄のようで、気安いやり取りの後唐突に僕の紹介がされ、慌ててお辞儀をする。
「紹介に与りましたルナイス・ウォードにございます」
「初めましてウォード殿。私はここのしがない隊員のヴァールハイトです」
愛想の良い人ではないけれど、ヴァールハイトさんはとても拷問などできなさそうな儚い美人さんで…苗字がないようだけど、根っからの平民って感じはしない。
もしかしたら仕事柄家の名前は言わないようにしているのかもしれない。
「奴らは何か吐いたかい?」
「まだ全員の拷問が完了したわけじゃないが…分かったことは後に報告があった通り、二属性適合者だったってことくらいだ。雇い主を口にしようとすると錯乱状態に陥ったり、嘔吐したりと騒がしいばかりでな…あぁ、そうだ二属性適合者だって気が付いたのは君だったようだねウォード殿」
「あ、はい。気配を消す魔道具らしきものは見当たらないし、付与魔法が施されたのであれば捕縛してからすぐに行った検査で少なからず闇属性が検出されるはずです。それもない、ということはそれぞれが闇属性の魔法が使え、それを隠蔽するだけの適合性があるという考えに至りました」
「うん。まさしく君の予想通りだった。先程雇い主を口にしようとすると騒がしくなると言ったことから察しているとは思うが、奴等には呪いがかけられている。唯一静かなのはウォード殿が捕らえた刺客のみ。何をしても痛覚を遮断しているのか顔色ひとつ変えないし口も開かない」
「……あの、脳をいじることはできますか?」
「脳?」
声を小さくしてこそっとヴァールハイトさんに尋ねると、何故そんな質問を?と不思議そうな顔をされた。
「脳、というか記憶です。記憶から黒幕が分かりませんか?」
もしできるなら早めにしておいた方が良い。
あとやるなら厳重に阻止されたり、先に記憶を壊されることを防ぐ措置をしておかないと。
「あー…それは人道的に最終手段ってことになっている。高い確率で相手の脳を壊し人格を破壊するから」
「人道的…」
拷問してる時点で人道って?って疑問が浮かぶが、そういうところって何かデリケートなんだろうな。
やる側も精神的にきついんだろうし…
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「え?」
「は?」
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