あの時くれた名前~諏訪あやかし記: 神の柱と狐の器

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第2章 諏訪に棲むお稲荷様

上諏訪へ

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 長い汽笛を鳴らしながら、列車は上諏訪駅へ滑り込んだ。

 窓の外に広がる景色を眺めながら、私は笑みが広がっているのがわかる。心が勝手に先に駅に降りてしまったような、そんな感覚を覚えるのだ。

「着きましたね、お嬢」

 銀色の尾が私の肩でさっと動く。

「まあ、実のところ、あっしには見慣れた景色なんですけどね。あっしはこの諏訪にはちょいと因縁がありまして――まあ、今は任務優先、話すことではありやせん」

「え、そうなの?何で言ってくれないの、てっきり初めてだと思ってた」

 駅を出ると、雑多で人が行きかう光景が目に飛び込むと同時に、かすかに湯気を含んだ温泉の香りが鼻をくすぐる。だけど、その香りには、香ばしい焼き菓子の匂い、甘い線香のような匂い、そしてどこか湿った人いきれが混じる。

 ――想像していたより、ずっと活気がある。私は少し驚いた。信州と聞くと、高い山に囲まれた静謐な場所という印象があったけれど、実際の上諏訪は全く違っていたのだ。湯の町の穏やかさと、街の熱気がひとつの通りの中に同居している感じ。木造の商店が並び、看板を掲げた宿屋、呉服屋、薬屋、そして女中らしき女性たちの明るい声。人力車夫が活気のある掛け声で客を呼び込み、通りの先からは三味線と太鼓が重なるように聞こえてくる。

 私は白手袋を脱ぎ捨てると、優しい風が頬をなでる。

「お嬢、お顔がちいと緩みすぎでやんすよ」

「気分転換くらい、いいんじゃない?どうせこれから嫌というほど仕事することになるんだし」

 白い猫が尾を揺らしながら通り過ぎ、地元の子供たちはお茶屋の前で団子をほおばっている。私は日傘をくるくると回しながら軽くなっていく足取りを抑えられずに軽快に歩いた。

 「厄災の王」?あやかし?少なくとも、そんなもの今は忘れていたい。私は警視庁職員であるのかもしれないけれど、旅を楽しみに来た一人の女としてでもありたかった。みんな同じでしょう?出張を命じられて仕事だけして帰る人の方が珍しいんだもの。

「でもまあ、お嬢が楽しそうなら、あっしはそれでいいでやんす。未熟なご主人ほど、よく遊び、よく悩みってね」

「うるさい」

 様々な店が並ぶ緩やかな坂を下る中、突然、景色が開けた。目の前に広がるのは、壮大な水の風景。

 諏訪湖。

 私は考えるのをやめ、足取りを止めた。

 湖面はそっと波打ち、春の陽光を受けてきらきらと銀色の輝きを放つ。まるで、小さな星々が水の上にちりばめられているよう。各々の輝きはどこか懐かしく、私の中にすっと入り込んでいく。湖の向こうには、まだ雪を残した山々がなだらかに連なり、その稜線が空に溶けていた。湖岸には木々の若葉が風にそよぎ、白鳥が穏やかな円を描いて泳いでいる。

 なんて美しい光景。私は思わず息をのんだ。温泉街の喧騒が霞んでいくと同時に、優しいさざ波の音が耳に残り、蒼々とした草原が風のささやきに揺れている。

 しばらく静寂に身を任せて立ち尽くしていたけれど、はっと行くべき場所を思い出してようやく歩みを進めた。私たちは宿に荷を預け、諏訪大社のある方角へと足を向けたのだ。この地と言えば、まずは諏訪湖と諏訪大社。諏訪湖についてはさっきその光景を実際に確認、その美しさと壮大さは圧巻のものだとわかった。そしてもう一つ行くべきところ、それは諏訪大社。あやかし退治の仕事であろうとなかろうと、この地を訪れて諏訪大社に見ないなどという選択肢あまりにも愚かしいからだ。
 そうして湖から離れて内陸へ足を進めていくと、不意に人々の声が大きくなっているのを感じた。どうしたのだろう、そう思って振り返ると、大きな人だかりができているのだ。その先を覗き込むと、私は目を見張った。

 ――屈強な男たちが巨木を引いているのだ。

 私がまだ状況が理解できない中でそれを眺めていると、引いている男性たちは屈託なのない笑顔を浮かべていた。声を張り上げ、力を合わせて巨木を運ぶに姿に、何とも言えない高揚感がこみあげる。

 久しぶりだった。あやかし対策本部に入りたての頃は、明るい未来を疑わず、すべてがまぶしく輝いて見えた。それが今や、どこかすれた役人になり果てている自分がいる。

 多分、無意識にあの時の自分に戻ろうとしたのだと思う。気づけば、私は袖をまくり上げて列の中に飛び込んでいた。

「ちょ、ちょいとお嬢!?仕事で来ているのに、いきなり祭りに飛び込みやして大丈夫でやんすか!?」

 私はお銀の忠告を無視して綱を握る。予想通り、列の男たちは仰天していた。目という目が私の方へ向く。

「おいコラそこの女、勝手に入るな」

 でもそんな反応は想定済み。私は綱を握りながら男たちとともに綱を引くと、

「まあまあいいじゃねえか。ここはみんなで楽しまなきゃな。一緒に引こうぜお姉さん」

「妙な女だが、面白れえじゃねえか」

 そんな声が次第に流れていき、笑いが溢れていた。肩でお銀が息を吐く。

「はあ――若い衆が許してくれたからいいようなもんの――。ほんと、お嬢は仕事と遊びの境目が薄いでやんすね」

 私は男たちとともにこの柱を引くことを楽しんだ。ある程度の距離を引いていったん休憩となった今このとき、私の体は心地よい疲労と爽快感で満ちている。風にあおられて流れていく雲を、この晴れやかな気分のままぼんやりと眺めているうちに、ようやく私は、自分がなぜここにいるのかを意識し始めた。単に仕事を忘れて遊んでいたから業務に引き戻されて嫌な気分になったとかそういうことではなくて、この不思議なお祭りに参加して、自らの役割との関連が、ふっと頭によぎったのだ。

 そもそも、私が上諏訪にはるばる来ることになった発端――それは、「銀色の狐のようなあやかしが諏訪に出没している」という通報があやかし対策本部にあったからだった。しかもそのあやかし、ちょっとした怪異というレベルの存在ではなく、あやかし対策本部が集めている記録の上でも全国屈指の力を持つ可能性があるとされ、人々は「厄災の王」とまで呼ぶのだと言う。

 にわかには信じがたい話なのだけれど、裏付けらしき話があった。それが警部が私に出張命令書を渡すときに語った話だ。近年、人々が多く行方不明となっており、大きな人の流れが上諏訪に向かっていたというのが確認できたという。そして不思議なことに、ぱったりと、上諏訪を最後にその人たちは消息を絶ってしまうというのだ。しかも、それに呼応するかのように、全国からあやかしまでもが次々に諏訪へと集まっているとの報告まである。そこであやかし対策本部が出した結論。おそらく、その妖狐が人々やあやかしを強大な妖気で諏訪へ引きつけた挙句、人々に関してはその妖狐が餌として喰らってしまったのではないか、ということだった。

 でも、正直に言えば、私は最初からこの話をまともに信じていたわけではない。今まで私が東京で相手にしてきたあやかしなんて私が御幣を振れば簡単に消すことができたし、そもそも強大な妖気で人やらあやかしやらを引き付けるなんて常識では考えられなかったからだ。

 ただまあ、何の縁か知らないけど、今回の出張命令が出た先は、私の家である九条家が勝手に主張している、古の時代に先祖が活躍していたという出身地。正直、そんな話、私はまともに信じていなかったけれど、仮に嘘でもなんとなく親近感をこの地には感じていたし、この地で有名な温泉と地酒は素直に楽しみだった。出張を体裁にしてこの地を楽しみ、あとは少しくらい地方伝承の聞き取りでもして仕事らしいことをしたらはいおしまい、そんな程度の出張だと考えていた。

「お主――神職じゃな」

 突然、背後からかかった声に、私は思わず振り返った。

 小柄な老女が立っている。彼女の背は曲がっていたものの、眼光は鋭く、視線は私を突きさすようだった。自分の呼吸が荒くなっているのを感じる。確かに私は神職だけれど、それを見抜いたとでも言うの?老女の視線はそれることなく、お銀は彼女に気付かれないよう、知らない間に私の背中に潜り込んでいた。

「この神事を肌で感じたのであろう?」

 彼女がそう続けると、すぐそばにいた若い娘さんが、苦笑交じりに言葉をかけてくる。

「ごめんなさい。祖母は最近耳が遠くなってきていまして。多分頭の方も――。あなたが御柱を引いて目立っていたから、おそらく声をかけたんじゃないかと思います」

 もしかしたら耳は遠くなっているのかもしれない。けれど、私にはわかる。老女の頭の方はまだ冴えわたっていると。おそらくだけど――かつて諏訪大社で巫女を務めていた方ではないかしら。もしそうなら、神職独自のあやかしを退治する力を、肌で知っている人。私の血の匂いを、感じ取ったとしても不思議ではない。

 老女は再び口を開いた。

「これは『御柱』といってな。この諏訪に伝わる、最も大切な神事なんじゃ」

  老女はしばらく目を閉じ、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

 「この柱は神さまの『依代(よりしろ)』、いわば神霊の宿る柱じゃ。諏訪大社の社殿の四隅に立てられ、そこに神を迎えるための柱なんじゃよ。七年に一度、古い柱を抜き、新しい柱を立てる。それが御柱祭。神を新たに迎えるということは、社そのものが再び生きるということ。つまりは、再生の神事なんじゃ」

  私は思わず、引いていたその柱に目を向けた。

「山から柱を切り出し、川を越え、社へと引く。その一連の道のりもまた、意味を持っとる。山は自然の世界、川はこの世とあの世の境界、そして社は神の住まう場所。つまり、命が巡り、魂が浄められ、新たに迎え入れられる。これはな、神と人と自然とが結び直す、契りの儀でもあるんじゃよ」

 契り。

 なぜだろう。その言葉は私の中をかき回すような感覚を呼び起こす。

「依代というものは限りのある物体じゃ。雨に打たれ、風にさらされ、いずれは朽ちていく。だからこそ七年という刻が満ちれば、柱はその役割を終え、あえて抜かれる。だが、それは終わりではないんじゃ。新たな御柱が立つことで、神はまた新しい器に宿る。壊れたあとにこそ、再び神が宿る。それが、御柱のいちばん大切な意味じゃ」

 私はこの老女の話の内容をすべて理解したわけではなかった。けれど感じた。この土地に脈打つ、神事の重みと、時を超えて受け継がれてきた信仰の気配を。

  老女は私のそんな気配を知ってなのか、もっと話を深く進めてきた。

 「諏訪大社という大神社のおかげで、ここ諏訪は、古より神々が住まう地とされておる。それは知っておろう?」

  もちろん知っている。けれど、老女はそこで言葉を切らず、その先を語った。

 「それに加えてな、諏訪大社から少し離れた川沿いに、『白狐稲荷神社』という小さな社があるんじゃ。格式では大社に及ばんが、古くからこの地の者は、そこにも黙って手を合わせてきた。忘れちゃならん神様が住んでおるからじゃ。その白狐の社にはな、昔から、ちょっと変わった話が残っとるのよ」

  その名を聞いた瞬間、肩の上でお銀の耳がぴくりと立った。でもその割には、私の肌に爪を軽く立てたまま、特に何も言わずに妙に静かである。老女はそれから、その白狐稲荷神社の由来となるおとぎ話を話してくれた。

 私は老女の話を聞き終えると彼女と娘に礼を述べ、その場を立ち去った。人混みから少し離れた木陰で足を止めると、私はお銀に話しかける。

「気になる話ね――『厄災の王』と呼ばれる妖狐に、古くから住民に信仰されている白狐稲荷。同じ狐という共通点があるわけだから、何か関係があるとしか思えないわ。ねえお銀。諏訪大社は後で訪れるとして、まずはここへ行ってみることにしましょうよ」

  しかし、私がそうして老女から聞いた白狐稲荷神社の場所に足を進めようとした瞬間、お銀が急に落ち着かない様子を見せた。服の中のむずむずと動き、外に飛び出てしまう。何事かと思って見てみると、なんとそそくさとその場を離れようとしているのだ。

 「お嬢、申し訳ねえけどそこへは一人で行ってくれやせんか。あっしはどうも居心地が悪いもんでして――」

「え?」

  私が状況を掴めずに思わず声を上げると、お銀はさっそうと駆け出し、姿をくらましてしまった。

 お銀はいろいろと小言を言うものの、いつも私の言うことを聞いてくれていた。それなのに、自分から私の命も聞かずにどこかに消えるなんて、今まで一度もなかったこと。私としては驚いて呆然とせざるを得なかった。

 私はしぶしぶ一人で白狐稲荷神社へ行くしかなくなったのだけれど、気づけば日は傾き始め、夜の闇が昼の光を覆うまでになる。そこで、ふと私はある考えにたどり着く。

「そう言えば――お銀も狐だった。もしかして、あの子もあの神社に関係がある?」

 そう思って私は思わず神社への足を速めた。より一層、この神社が気になって仕方がないのだ。

 ただその途中、妙な人間に会った。明らかに私と同じ方向を進んでいて振り返った男がいたのだ。帝国陸軍人。

 正直私は陸軍の人間は好きではない。意味もなく声は大きいし、酒を飲んではバカ騒ぎはするし、横柄だし。ただ、今そこにいる彼は少し印象が違う。彼は顔立ちが美しいということもあってあまり危険な印象は受けなかった。

「何の用?」

「こっちのセリフよ。私は警視庁の捜査でここへ来ているの。あやかし対策本部、知ってるでしょう?」

「警視庁?長野県警じゃないのか。ああ、あの怪しいオカルト部署のことね――おっと失礼した」

 棘があるような言い方だけれど、軍人なんてそんなもの。むしろその中では割とまともな受け答えだし、さらに言えば、確かに東京の警察である警視庁がこんなところに来るなんていうのは訝しまれてもしかたない話であることも理解できる。ただ――

「あなたもこうやって現地入りしてるじゃない?本当はそちらも気づいてるんじゃないの、ここ一帯は普通じゃないって」

 彼は言葉に詰まったように沈黙すると、ため息混じりに夕焼け空を見上げる。急に日が落ちたように感じられ、その上逆光に映る彼の表情ははっきりとは見えなくなってしまった。ただ、その中でもうっすら見える顔は、少し疲れたように見えた。

「俺はこういう者だ」

 彼は懐から名刺を取り出すと、「帝国陸軍 憲兵少佐 葛城直輝」と書かれていた。

 そう言って彼は黙って広がりゆく闇とともに消える。特に何か大きな出来事があったわけでもないし、彼に何かされたわけでもない。けれど、どういうわけか、彼の印象はとても強く私の頭に残った。

 

※※AIが描いたものなので挿絵の御柱は端を立てておりますが、やや不正確です。実際の御柱祭では柱を立てるのは一時期だけしかなく、祭りのほとんどでは地面を擦るように引いていきます。
 また、本文中に御柱祭は「七年に一度」開催されると表記しておりますが、これは旧暦での扱いとなりまして、現代の暦においては六年に一度となります。ただし、公式の表現も旧暦に合わせて「七年に一度」となっており、文字媒体でもそのように表記されることが多い状況です。
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