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第10話 磨術祭③ 初戦
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歓声が響く会場に入り舞台に登ると、周囲はなにもない平野になった。 観客の声も聞こえない。
(結界に入ったのか、なにもない隠れる場所も何も、でも感知で近くにいるのはわかる)
いる場所をじっと見てると、土の中から人が出てきた。
「どうやら、ばれていたようですね。 神無様」
「僕を知ってるんですか?」
メガネの少年は、もちろん、というと、
「当然ですよ。 僕は、大学二年の牛砂 沙京《うしずな さきょう》牛砂家は、土光薙家の分家ですから、ではどうしましょうか?」
「どうしましょうか?」
「だから、僕がどう負けるかですよ、できるだけ派手に負けましょうか」
「言ってる意味が分かりませんけど......」
「僕達分家が本家のあなたに勝つわけにはいかないんですよ。 他の家と当たれば削り切る。 運悪く自分達が当たれば本家や上位者にわざと負ける。 そうやって、他の家に勝ち優位性を確保する。 この磨術祭はそういう為のものなのです」
「やめてください」
「!?」
「僕はそういうのはやりたくない、友達とも正々堂々戦うと約束したんです」
「なんですかそれは、まさかやっても、どうせ勝てるからとでも......」
「いいえ負けてもです。 家とかそういうのは関係ない、本当に術士が強さを重視するなら、強い人が勝たないとおかしいでしょう」
フッフッフッ、と沙京さんは、笑いメガネを外し握り潰した。
「いいでしょう、僕もいい加減この序列制度にはうんざりしてたんですよ......その代わりあなたを血祭りにあげることになりますがいいですか......」
その目には敵意すら宿っていた。 でも僕は、
「かまいません」
沙京さんか動いた。 術式を唱えると地面の土がどんどん砂に変わっていく。
「土行、沙漠牢楼《さばくろうろう》!!」
足元の砂が渦を巻いて動けなくなった。
「降参するなら今ですよ、このままならすぐに砂の中に埋まり窒息します。 まあすぐ助けがくるでしょうがね」
そうニヤリと笑った。
僕は、なにも言わず砂の中に沈んでいった。
「やはりこの程度か、所詮は飾りの当主......もう霊力も感じ......」
僕は、雅の使った霊境を回転させ砂の中から出た。
「何!? あれは結界か!! 球の回転で砂の渦から出たのか、だが!」
沙京さんは、何か術式を唱えると、僕の入った球は止まった。
「これは......回転が止められてる......」
僕は球に、霊力を感じ黒い点が付いてるのを見つけた。
「あれは......そうか」
僕は霊力を上げ球を回転させた。 僕の影が回転する球の中に揺らめく、
「させるか! 金行、三叉黒爪《さんさこくそう》!」
三本の巨大な黒い爪が、僕の影ごと、霊球を砕いた。
「死んではいないだろうが、これで戦えはしまい」
沙京さんは球を見るが、僕の姿はなかった。
「馬鹿な! どこに」
そう混乱する沙京さんに、僕が後ろから霊刃を突きつけると、
「......参った......」
沙京さんは、諦め負けを認めた。
「だが、どうやって......僕の三叉黒爪をなんでかわせたんです」
「僕の霊球を止めた時に黒いものが付いていた。 あれは砂鉄、それを砂の中で集めようとしていたから、おそらく球ごと攻撃されると思ったんです。 だから、球を回転させ始めるのと同時に、身代わりの霊力で作った人形をおいて、小さな球で地中を進んであなたの背後に回りました」
はあと、沙京さんはため息を付いて、
「読まれてたのか......腐っても土光薙家の当主というわけですね。 処罰は覚悟してはいるが、家ではなく僕自身だけにしていただきたい」
「処罰なんて与える気はありません。 僕は当主とかどうでもいいんです。 でも、あなたと戦えて良かった。」
沙京さんはその言葉に驚くと、
「そうか......完敗だな、少し君に偏見を持っていたようだ、すまない」
そう言って握手をかわした。
それから僕達は、二回戦、三回戦、四回戦と勝ち上がって、残り16人にまで残り、いままで四試合ずつだったのが二試合ずつになった。 そして雅は準々決勝にまで進んだ。 残りは12人となった。
「これに勝てば、準々決勝か、いや雅だけはもう準々決勝にいったね」
「ありがとうございます......」
雅は照れながら答えた。
「それより、あの麟って子供、居なくなってんだけど、まあいいか。 次の次に勝てば、お前と当たる。 必ず倒してやるよ」
灰がそう言うと、雅が、
「次は私が相手になると言うのに、ずいぶん余裕ですね」
「もちろんお前から倒してやるよ」
二人がにらみ合い、灰は舞台に向かった。
「神無様、私が次に鬼灯さんを倒しますから、心配なさらないでください」
「いや......あの灰の相手」
「二年の甲 蕈留《きのえ たける》という人ですね」
「あいつの術厄介だぞ......」
麟がそう口を挟んだ。
「あなた、どこから!? 木行使いで戦い方は普通ですよ......でも五行家、東北の木導院家《きどういん》家の分家のひとつ、甲《きのえ》家ですから、何かを隠し持ってるかも知りませんけど......」
雅が眉をひそめた。
モニターに灰と対峙する甲の姿が映る。 舞台は山のようだ。
灰はすぐ火金《かごん》行、灼銅甲《しゃくどうこう》を使って体を燃やした。
「あんなすぐあの術式を使って、大丈夫なんでしょうか......」
「多分、相手が危険だと判断したんだ。 でも、あの術そんなに長くもたないはず......」
「どうして、霊力的にかなり持つのでは」
雅の疑問に、
「いいや、あの金属銅だよ。 あの熱量を維持すれば熱電導率が高いから長く戦うと大火傷するよ」
麟が答えた。 灰はそれを考えてか詰めて攻撃を行っている。 甲は回避と防御に徹しこれをいなしているようだ。 時間をかけると不利な灰は何か術式を唱えた。 すると、灰の体から二本の炎の腕が生え爆発してるかのような怒涛の攻撃を見せた。
「神無様これなら......」
「いや、何かおかしい......」
押していたはずだった灰が次の瞬間、爆発し、倒れた灰は起き上がらなかった。
(結界に入ったのか、なにもない隠れる場所も何も、でも感知で近くにいるのはわかる)
いる場所をじっと見てると、土の中から人が出てきた。
「どうやら、ばれていたようですね。 神無様」
「僕を知ってるんですか?」
メガネの少年は、もちろん、というと、
「当然ですよ。 僕は、大学二年の牛砂 沙京《うしずな さきょう》牛砂家は、土光薙家の分家ですから、ではどうしましょうか?」
「どうしましょうか?」
「だから、僕がどう負けるかですよ、できるだけ派手に負けましょうか」
「言ってる意味が分かりませんけど......」
「僕達分家が本家のあなたに勝つわけにはいかないんですよ。 他の家と当たれば削り切る。 運悪く自分達が当たれば本家や上位者にわざと負ける。 そうやって、他の家に勝ち優位性を確保する。 この磨術祭はそういう為のものなのです」
「やめてください」
「!?」
「僕はそういうのはやりたくない、友達とも正々堂々戦うと約束したんです」
「なんですかそれは、まさかやっても、どうせ勝てるからとでも......」
「いいえ負けてもです。 家とかそういうのは関係ない、本当に術士が強さを重視するなら、強い人が勝たないとおかしいでしょう」
フッフッフッ、と沙京さんは、笑いメガネを外し握り潰した。
「いいでしょう、僕もいい加減この序列制度にはうんざりしてたんですよ......その代わりあなたを血祭りにあげることになりますがいいですか......」
その目には敵意すら宿っていた。 でも僕は、
「かまいません」
沙京さんか動いた。 術式を唱えると地面の土がどんどん砂に変わっていく。
「土行、沙漠牢楼《さばくろうろう》!!」
足元の砂が渦を巻いて動けなくなった。
「降参するなら今ですよ、このままならすぐに砂の中に埋まり窒息します。 まあすぐ助けがくるでしょうがね」
そうニヤリと笑った。
僕は、なにも言わず砂の中に沈んでいった。
「やはりこの程度か、所詮は飾りの当主......もう霊力も感じ......」
僕は、雅の使った霊境を回転させ砂の中から出た。
「何!? あれは結界か!! 球の回転で砂の渦から出たのか、だが!」
沙京さんは、何か術式を唱えると、僕の入った球は止まった。
「これは......回転が止められてる......」
僕は球に、霊力を感じ黒い点が付いてるのを見つけた。
「あれは......そうか」
僕は霊力を上げ球を回転させた。 僕の影が回転する球の中に揺らめく、
「させるか! 金行、三叉黒爪《さんさこくそう》!」
三本の巨大な黒い爪が、僕の影ごと、霊球を砕いた。
「死んではいないだろうが、これで戦えはしまい」
沙京さんは球を見るが、僕の姿はなかった。
「馬鹿な! どこに」
そう混乱する沙京さんに、僕が後ろから霊刃を突きつけると、
「......参った......」
沙京さんは、諦め負けを認めた。
「だが、どうやって......僕の三叉黒爪をなんでかわせたんです」
「僕の霊球を止めた時に黒いものが付いていた。 あれは砂鉄、それを砂の中で集めようとしていたから、おそらく球ごと攻撃されると思ったんです。 だから、球を回転させ始めるのと同時に、身代わりの霊力で作った人形をおいて、小さな球で地中を進んであなたの背後に回りました」
はあと、沙京さんはため息を付いて、
「読まれてたのか......腐っても土光薙家の当主というわけですね。 処罰は覚悟してはいるが、家ではなく僕自身だけにしていただきたい」
「処罰なんて与える気はありません。 僕は当主とかどうでもいいんです。 でも、あなたと戦えて良かった。」
沙京さんはその言葉に驚くと、
「そうか......完敗だな、少し君に偏見を持っていたようだ、すまない」
そう言って握手をかわした。
それから僕達は、二回戦、三回戦、四回戦と勝ち上がって、残り16人にまで残り、いままで四試合ずつだったのが二試合ずつになった。 そして雅は準々決勝にまで進んだ。 残りは12人となった。
「これに勝てば、準々決勝か、いや雅だけはもう準々決勝にいったね」
「ありがとうございます......」
雅は照れながら答えた。
「それより、あの麟って子供、居なくなってんだけど、まあいいか。 次の次に勝てば、お前と当たる。 必ず倒してやるよ」
灰がそう言うと、雅が、
「次は私が相手になると言うのに、ずいぶん余裕ですね」
「もちろんお前から倒してやるよ」
二人がにらみ合い、灰は舞台に向かった。
「神無様、私が次に鬼灯さんを倒しますから、心配なさらないでください」
「いや......あの灰の相手」
「二年の甲 蕈留《きのえ たける》という人ですね」
「あいつの術厄介だぞ......」
麟がそう口を挟んだ。
「あなた、どこから!? 木行使いで戦い方は普通ですよ......でも五行家、東北の木導院家《きどういん》家の分家のひとつ、甲《きのえ》家ですから、何かを隠し持ってるかも知りませんけど......」
雅が眉をひそめた。
モニターに灰と対峙する甲の姿が映る。 舞台は山のようだ。
灰はすぐ火金《かごん》行、灼銅甲《しゃくどうこう》を使って体を燃やした。
「あんなすぐあの術式を使って、大丈夫なんでしょうか......」
「多分、相手が危険だと判断したんだ。 でも、あの術そんなに長くもたないはず......」
「どうして、霊力的にかなり持つのでは」
雅の疑問に、
「いいや、あの金属銅だよ。 あの熱量を維持すれば熱電導率が高いから長く戦うと大火傷するよ」
麟が答えた。 灰はそれを考えてか詰めて攻撃を行っている。 甲は回避と防御に徹しこれをいなしているようだ。 時間をかけると不利な灰は何か術式を唱えた。 すると、灰の体から二本の炎の腕が生え爆発してるかのような怒涛の攻撃を見せた。
「神無様これなら......」
「いや、何かおかしい......」
押していたはずだった灰が次の瞬間、爆発し、倒れた灰は起き上がらなかった。
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