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【番外編⑤】Happy Christmas(終)
【番外編】Happy Christmas ⑩
気がつくともうお昼をすぎていて、遅いランチを食べてから簡単に部屋の飾りつけをした。流風はこういうことに張りきるところがある。節約クリスマスなので百円ショップで購入したガーランドだけれど、充分可愛くて華やかだ。カラフルなスターにLEDで光る小さなクリスマスツリー。最近は忙しくてこうやってのんびりしている時間もなかなか取れなかったから、なおさら心が弾む。思い返してみると十二月に入ってからずっとわくわくしていて、そんな自分がどれだけ幸せかをしみじみと感じる。
「そろそろ行ってくるよ」
藍流が立ちあがってコートを取る。奏も料理に取りかかったほうがいいからキッチンに行き、流風も飾りつけを終えて奏のあとについてきた。
ミネストローネ用の野菜を切り、奏が炒めてしんなりとさせているあいだに、流風がサラダ用の野菜を切ってくれる。シーザーサラダに粉チーズを振りかけると雪が降ったみたいだから、今夜はこれを選んだ。
「奏、次は?」
「じゃあお鍋でお湯沸かしてくれる? パスタ茹でる用の」
「オーケー」
藍流が帰ってくる時間を考えて、流風にお湯を沸かしてもらう。その隣で奏はしめじとしいたけ、えのきたけを耐熱容器に入れてしょうゆを絡める。
「ただいま」
「おかえり。早かったね」
「チキンは予約でも並んだけど、ケーキはすぐに受け取れたから」
パスタを茹でていると、藍流がフライドチキンの入った箱とケーキの箱をキッチンに持ってきた。
「ケーキは冷蔵庫だよね。チキンは俺がお皿に移すよ」
「ありがとう」
食器棚から大皿を取った藍流はチキンの箱を開けた。いいにおいがして奏のお腹が鳴る。今さら恥ずかしがることでもないのだけれど、と思うがやはり恥ずかしい。頬が熱くなるのをごまかそうと思ったら、ちょうどよくキッチンタイマーが電子音を鳴らしたので顔を背けた。
「奏はあれでごまかしてるつもりなんだよね」
「可愛いなあ」
「――」
ばれている。藍流も流風も、気がつかないふりをしてくれてもいいのに。
「外寒かったでしょ。なにか温かいもの飲む?」
「もう食事になるし、大丈夫」
藍流と流風がお皿をテーブルに運んでくれて、奏はパスタにソースを絡めてお皿に盛り、「できた」とひとつ息をついた。
「お疲れさま。おいしそうだね」
「奏の手料理があるのが、俺と藍流の最高のクリスマスだよ」
「おおげさだね」
少し照れくさくて頬を手の甲でこすると、ふたりは柔らかく目を細めた。
食事にする前に、冷蔵庫で冷やしておいたノンアルコールシャンパンを出す。桜弥からもらったものだ。
「ロゼだね」
藍流がコルクをまわしながらピンクのラベルを確認した。フルートグラスに注がれていくシャンパンのピンク色が綺麗だ。
「うん。知りあいの人のところに持っていくつもりだったって言ってた」
「御園くんはその人とクリスマスをすごすんだよね? 大事な人なのかな」
流風がグラスをそれぞれの前に置く。
「『持ってくるならアルコールにしろ』って言われたからってくれたんだ。桜弥くんがまだお酒買えないのわかっててそういうこと言うんだって」
藍流も流風もおかしそうに肩を揺らしている。穏やかな時間があって、本当に幸せだなと思う。
「チキンおいしいね」
フライドチキンと一緒に幸せも噛み締める。ノンアルコールシャンパンのほどよい酸味とフルーティーな香りがとてもいい。手前味噌だがパスタもミネストローネもおいしいし、流風が作ってくれたサラダももちろんおいしい。
「毎日クリスマスでもいいのにな」
欲張りすぎかもしれないけれど、ついそんなことを思う。それにはさすがに藍流と流風も苦笑した。
「毎日だとありがたみがなくなるよ」
「藍流の言うとおり。一年に一回だからこんなに楽しいの」
「そっか。……そうだよね」
ふたりが言うとすんなりと納得できて、自分の発言が子どもじみて感じた。幼い子が口にするような願いだったな、と反省する。
「でも、奏が望むなら毎日クリスマスパーティしてもいいよ」
流風が手を伸ばして奏の手の甲をつつく。
「毎日かあ」
楽しいかも。
でも、毎日フライドチキンとケーキと華やかな飾り、と想像したら、それは少し違うと感じた。やはり一年に一回だから特別感があるのだ。
「やっぱりいい。クリスマスは年に一回」
藍流も流風も表情を崩して頷いた。こういう理解力がふたりは深く、奏を導いてくれる。それがとても嬉しくて、情けなくもある。もっと成長しなければいけない。
「来年のクリスマスも楽しみだね」
フライドチキンにかぶりつくと、ふたりは目尻をさげて奏を見つめる。
「来年の前に、今日を楽しもうね」
「俺と流風も、楽しんでるから。奏もいっぱい楽しんで?」
本当に成長しないといけない、とつくづく思った。
「そろそろ行ってくるよ」
藍流が立ちあがってコートを取る。奏も料理に取りかかったほうがいいからキッチンに行き、流風も飾りつけを終えて奏のあとについてきた。
ミネストローネ用の野菜を切り、奏が炒めてしんなりとさせているあいだに、流風がサラダ用の野菜を切ってくれる。シーザーサラダに粉チーズを振りかけると雪が降ったみたいだから、今夜はこれを選んだ。
「奏、次は?」
「じゃあお鍋でお湯沸かしてくれる? パスタ茹でる用の」
「オーケー」
藍流が帰ってくる時間を考えて、流風にお湯を沸かしてもらう。その隣で奏はしめじとしいたけ、えのきたけを耐熱容器に入れてしょうゆを絡める。
「ただいま」
「おかえり。早かったね」
「チキンは予約でも並んだけど、ケーキはすぐに受け取れたから」
パスタを茹でていると、藍流がフライドチキンの入った箱とケーキの箱をキッチンに持ってきた。
「ケーキは冷蔵庫だよね。チキンは俺がお皿に移すよ」
「ありがとう」
食器棚から大皿を取った藍流はチキンの箱を開けた。いいにおいがして奏のお腹が鳴る。今さら恥ずかしがることでもないのだけれど、と思うがやはり恥ずかしい。頬が熱くなるのをごまかそうと思ったら、ちょうどよくキッチンタイマーが電子音を鳴らしたので顔を背けた。
「奏はあれでごまかしてるつもりなんだよね」
「可愛いなあ」
「――」
ばれている。藍流も流風も、気がつかないふりをしてくれてもいいのに。
「外寒かったでしょ。なにか温かいもの飲む?」
「もう食事になるし、大丈夫」
藍流と流風がお皿をテーブルに運んでくれて、奏はパスタにソースを絡めてお皿に盛り、「できた」とひとつ息をついた。
「お疲れさま。おいしそうだね」
「奏の手料理があるのが、俺と藍流の最高のクリスマスだよ」
「おおげさだね」
少し照れくさくて頬を手の甲でこすると、ふたりは柔らかく目を細めた。
食事にする前に、冷蔵庫で冷やしておいたノンアルコールシャンパンを出す。桜弥からもらったものだ。
「ロゼだね」
藍流がコルクをまわしながらピンクのラベルを確認した。フルートグラスに注がれていくシャンパンのピンク色が綺麗だ。
「うん。知りあいの人のところに持っていくつもりだったって言ってた」
「御園くんはその人とクリスマスをすごすんだよね? 大事な人なのかな」
流風がグラスをそれぞれの前に置く。
「『持ってくるならアルコールにしろ』って言われたからってくれたんだ。桜弥くんがまだお酒買えないのわかっててそういうこと言うんだって」
藍流も流風もおかしそうに肩を揺らしている。穏やかな時間があって、本当に幸せだなと思う。
「チキンおいしいね」
フライドチキンと一緒に幸せも噛み締める。ノンアルコールシャンパンのほどよい酸味とフルーティーな香りがとてもいい。手前味噌だがパスタもミネストローネもおいしいし、流風が作ってくれたサラダももちろんおいしい。
「毎日クリスマスでもいいのにな」
欲張りすぎかもしれないけれど、ついそんなことを思う。それにはさすがに藍流と流風も苦笑した。
「毎日だとありがたみがなくなるよ」
「藍流の言うとおり。一年に一回だからこんなに楽しいの」
「そっか。……そうだよね」
ふたりが言うとすんなりと納得できて、自分の発言が子どもじみて感じた。幼い子が口にするような願いだったな、と反省する。
「でも、奏が望むなら毎日クリスマスパーティしてもいいよ」
流風が手を伸ばして奏の手の甲をつつく。
「毎日かあ」
楽しいかも。
でも、毎日フライドチキンとケーキと華やかな飾り、と想像したら、それは少し違うと感じた。やはり一年に一回だから特別感があるのだ。
「やっぱりいい。クリスマスは年に一回」
藍流も流風も表情を崩して頷いた。こういう理解力がふたりは深く、奏を導いてくれる。それがとても嬉しくて、情けなくもある。もっと成長しなければいけない。
「来年のクリスマスも楽しみだね」
フライドチキンにかぶりつくと、ふたりは目尻をさげて奏を見つめる。
「来年の前に、今日を楽しもうね」
「俺と流風も、楽しんでるから。奏もいっぱい楽しんで?」
本当に成長しないといけない、とつくづく思った。
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