7 / 52
第一章•帝国編
6話◆ 偽りの聖女たち。月の女神なんて居やしない。
しおりを挟む
バクスガハーツ帝国の城から少し離れた小高い山の中腹に、この国の城よりも大きく要塞の様な造りの教会がある。
この教会は五年前に、この場に建造物として完成された形でいきなり現れたのだ。
そして、同じ時期に皇太后の命と引き換えに彼女から生まれた美しい少年。
「僕は聖女ディアナンネ様の御子です。
聖女ディアナンネ様を、この世にお喚びするために皇太后は天に命を捧げ、僕は生まれたのです。
そして皆さまの信仰を集める為に、この教会を僕に与えられたのです。」
唐突に現れた巨大な教会、この国の行く末を憂いた皇太后が命を捧げて天に祈った事により現れた美しい聖女の御子。
自身を犠牲にした皇太后の死を美談とした奇跡は国民の心を容易く掴み、ロージアは聖女の御子として教会の主となった。
「で、兄上何の用?」
広い教会の内部は天井が高く、大きな祭壇がある。
その祭壇の前に玉座のような椅子を置き、そこに座る美しい少年が尋ねる。
「城の離れにすら滅多に来ないのに、教会に来るなんて珍しいねー。僕の顔を見たくないんでしょ?」
レオンハルト皇帝はロージアを前に、グッと拳を握る。
「俺は…母を、ワケの分からない美談の主人公にして殺したお前の顔も見たくないし、この教会も嫌いだ…。」
祭壇には巨大な聖女ディアナンネの像がある。
色も塗られており美しい造りだが、その表情は悲しげに見え、聖女と言うよりは生け贄に差し出された乙女のように見えてしまう。
何か痛々しく、もともとが聖女ディアナンネを崇拝していたレオンハルト皇帝には、この教会の語るディアナンネに違和感しかない。
「母?あー皇太后ね……みんなに誉められてるからいーじゃん…
それよりさぁ、兄上ー最近、娘達の質落ちてるよ?
あんなんじゃ、ディアナンネ様を造れないよー。」
ロージアは、床に落ちた長い髪の毛を拾いあげる。
長い金色の髪は、途中から不自然に青く染められている。
「……お前が何をしているかを知るつもりはない……
知りたくもない……俺が今日、ここに来たのは……」
「でも、兄上!今回は誉めてあげる!
あのディアーナって子は最高だよ!
初めて見たよ、藍色の髪に金色の瞳の子!
あの子、くれるんだよね?」
「それを許さんと言いに来たのだ!!」
レオンハルト皇帝は剣を抜いてロージアに向ける。
脅すつもりで抜いた剣だったが、向けた剣先をヌルリと人の手が掴んだのを見て息を飲んだ。
「許さん?あはは、許さん?あはは!!
許さんからナニ?」
剣を抜いたレオンハルト皇帝は、気付かぬ間に多くの裸体の少女達に絡み付かれるように抱き締められていた。
生気の無い少女達は、藍色に近い色合いに染め上げられた髪の者や、そんな髪を無理矢理頭皮に縫い付けられている者もいる。
そして、どの少女も眼窩が空洞だ。
「お…お前は何を造っていたんだ!」
生者を求める屍鬼の群れのようにレオンハルト皇帝に群がる少女達は、レオンハルトに危害を加えようとはしないが、縋り付いたまま離れない。
「金の瞳だけは、どうしても手に入らなくてさー。
でも、良かったよ!兄上、ディアーナをありがとう!
お礼に、僕が造ったディアナンネ達をあげる!
しばらく、彼女達に愛して貰いなよ。」
ロージアは笑いながら椅子から立ち上がると、傍に現れた聖職者の衣に身を包んだ男に指示をする。
「アレまだ、殺さないでね?教皇。」
「はい、ロージア様…ところで、城の離れの方に村の少女達が来ておりますが…。」
「えー…ミーナとビスケだっけ?あの二人鬱陶しいんだよね。
たいした素材にもならないのに…」
「ディアーナ嬢は別として、リリーとかいう娘も美しいと思いますが…?…まったく…旨そうで…」
教皇と呼ばれた男は唇の端から蛇のように長い舌先を垂らし、ニヤリと笑む。
「……見た目はね……
だけど僕には、すごく不気味な女だよ、アイツ。」
ロージアは転移魔法を使い、城の離れに飛んだ。
彼は病弱で、離れに幽閉された悲劇の王子様。
この国の城に連れて来られた少女達の前では、常にそう演じて来た。
温室の死角に転移したロージアは、弱々しく青い顔を見せながらテーブルに向かって歩いて来た。
「また、会いに来てくれたの…?ありがとう、ミーナ、ビスケ、リリー、ディアーナ………ッ!?」
テーブルに着くなり、ロージアはいきなりディアーナに胸ぐらを掴まれる。
「ディアーナ様!」「ロージア様はお身体が!」
ミーナとビスケが青くなって騒ぐのを無視して、ディアーナはロージアに顔を寄せる。
間近でガンを飛ばす。もう、ただのヤンキーのように。
「あんたの兄さんが、余りにも役立たずでね!
この、わたくしを放置して、どっか行ったきりだし!」
「あ、兄上が…?
ど、どうして兄上が居なくなって、僕が、こんな目に……?」
ロージアの目が、一瞬ディアーナの真意を探ろうとする。
自分がレオンハルト皇帝を教会に捕らえている事を知っているのではないかと。
「兄貴の不始末、弟の責任!
あんた、あいつを退位させて、この国の皇帝になっちゃいなさいよ!めんどくさいから!!」
「………え?」
胸ぐらを掴まれたままのロージア、そしてディアーナを止めようとしているミーナとビスケの目が点になっている。
「めんどくさいのよ、本当に!
あんな顎の割れたオッサンより、あんたみたいな見てくれの皇帝の方が人気出そうじゃない?
後押ししてあげるわよ、月の女神ディアーナがね!
言いたいのは、それだけよ。」
ロージアの胸ぐらを離し、言いたい事だけ言ったディアーナは、さっさ温室を出て行った。
「そうですよ、ロージア様!」
「暴君と呼ばれたレオンハルト皇帝より、お優しいロージア様の方が皇帝に相応しいです!」
ディアーナの背後でミーナとビスケがロージアを後押しするように言うのを聞きながらディアーナは離れから出た。
その隣にはリリーが立っている。
「リリーは、ロージアのそばに居なくていいの?」
「今は…ええ。」
ディアーナは小さく笑むと、城に向かった。
「そうね、まだ大丈夫かしら」
▼
▼
▼
「兄上聞いて聞いて!僕ね!ディアーナにね!皇帝になればって言われたの!」
大教会の地下深く。
床一面に大きな魔方陣が描かれた巨大なホールがある。
レオンハルト皇帝はその場に捕らわれており、ディアナンネのなりそこないの少女達に群がられたまま身動きが取れなくなっていた。
「僕ね、今、悩んでるんだぁ…
ディアーナを使ってディアナンネ様を造ろうか…
それとも皇帝になって、ディアーナを妻にしようか!
兄上、ディアーナの事を好きだよね?
兄上の好きなディアーナを僕が哭かせてみたいなぁ!
あはは!どんな風に乱れるのかな!」
興奮気味に声を上げ笑うロージアに、憔悴したレオンハルト皇帝が呟く。
「やめろ…あの方は…そのように扱って良い方ではない…
本物の…月の女神なんだ…。」
ロージアの美しい顔が嘲りを含んで醜く歪む。
「月の女神?バッカじゃない?
強いだけの、ただの勘違い女だよ!
女神があんな口悪くて乱暴者なワケ無いじゃん!
それにね、あの子強いけど魔力が一切無いしね!」
レオンハルト皇帝に群がっていた一人の少女が、レオンハルト皇帝に近付いたロージアに縋り付こうと手をのばす。
「触るな!汚い!」
少女の手を振り払ったロージアは、少女を一瞬で消し炭にした。
「ロージア!!やめろ!」
「何だよ…言っとくけど、このディアナンネのなりそこない達は、元に戻らないよ?
消し炭にしてやるのも優しさじゃない?」
━━ロージアが人間でない事は、生まれた時から知っていた。
彼の存在を神秘だと感じる者が多い中、彼を禍々しい者だと感じ、災いが大きくなる前に、と命を狙った者たちも少なからず居た。
その者達すべてが首から下が消失し、床に転がる首だけになって発見されたのだが…。━━
「お前……一体…何者なんだ……?」
ロージアに意見出来る者が居なくなり、見て見ぬ振りをしてきたレオンハルト皇帝も、ずっと胸にしまい込んで無理矢理考えないようにしていた疑問を改めてロージアに投げ掛けた。
ロージアは少女のように美しい顔を歪ませ笑う。
「僕は、聖女ディアナンネの御子で、次期バクスガハーツ帝国皇帝、ロージアさ…。」
「ああああ!もおおお!めんどくさい!」
暗い森の中を、金髪に翡翠の目をした美しい少女が、複数の男達に追われていた。
少女の口からは、「きゃー」だとか、「助けて!」なんて言葉は出ない。
「めんどくさい!あークソめんどくさい!くそ親父死ね!」
オフィーリアは、まとまって追って来た男達をまいて森の中に姿を隠す様に身を潜める。
男達が手分けしてオフィーリアを探し始めると、オフィーリアは一人ずつ背後を取るように現れた。
「まず、一人目…こんばんは、おじ様。
…ねぇ、おじ様は、私を捕らえてどうなさりたいの?」
背後から剣の刃を男の喉仏に当て、耳元で囁く。
「し、城に連れてって…皇帝に見せ…皇帝が寵姫にすれば…俺の手柄に…」
「はい!ただの馬鹿!よって特別免罪!」
オフィーリアは剣を男の頭部にゾリリっと走らせ頭頂部をハゲにし、髪型をカッパの様なトンスラにすると、泡を吹いて気絶した男を解放した。
二人目の男に忍び寄るオフィーリア。
「二人目…おじ様、あなたは私をどうなさりたいの?
嘘ついても分かりますからね?」
オフィーリアは背後から、剣の刃を男の頚動脈に当て尋ねる。
「あら、聞くまでも無いわね…もう人ではないわ。」
男の口と、落ち窪んだ眼窩から黒い巨大な蛭のようなモノがズルリとはみ出す。オフィーリアは剣を振り上げ、男の顔面を正面から貫いた。
「はぁい、魔獣化~!プチりまぁす!」
刺し貫いた剣に青白い高温の炎を纏わせると、オフィーリアは男を一瞬で蒸発させてしまった。
「イチイチイチイチ!一人一人チマチマチマチマ!めんどくせぇ!!あーくそ、この森ごと燃やしてやろうかしら!」
オフィーリアはキレかけていた。
「もう魔物や魔獣でなくても、この美しい俺を拐おうとしているだけで万死に値すると思う!
全員プチっサクっと行きたい!」
「ディアナンネ…様…」
足元で気絶している、トンスラにするだけで許した男がうなされるように呟く。
呼ばれた名前に、だらだら冷や汗をかいたオフィーリアは小さく頷く。
「うん、頑張る…
お父様からディアーナに、レオンは頑張ったから叱らないでやってと言って貰わないと…。」
オフィーリアは三人目を探して森に戻って行った。
「うふふ…出来れば、お会いするのは魔獣さんがいいわ…
会話も無く即プチ出来ますものね…うふふ…。」
この日の晩から、バクスガハーツと隣国の国境付近の森には、笑いながら頭を変な髪型に刈る恐ろしい美少女が出ると噂が立った。
この教会は五年前に、この場に建造物として完成された形でいきなり現れたのだ。
そして、同じ時期に皇太后の命と引き換えに彼女から生まれた美しい少年。
「僕は聖女ディアナンネ様の御子です。
聖女ディアナンネ様を、この世にお喚びするために皇太后は天に命を捧げ、僕は生まれたのです。
そして皆さまの信仰を集める為に、この教会を僕に与えられたのです。」
唐突に現れた巨大な教会、この国の行く末を憂いた皇太后が命を捧げて天に祈った事により現れた美しい聖女の御子。
自身を犠牲にした皇太后の死を美談とした奇跡は国民の心を容易く掴み、ロージアは聖女の御子として教会の主となった。
「で、兄上何の用?」
広い教会の内部は天井が高く、大きな祭壇がある。
その祭壇の前に玉座のような椅子を置き、そこに座る美しい少年が尋ねる。
「城の離れにすら滅多に来ないのに、教会に来るなんて珍しいねー。僕の顔を見たくないんでしょ?」
レオンハルト皇帝はロージアを前に、グッと拳を握る。
「俺は…母を、ワケの分からない美談の主人公にして殺したお前の顔も見たくないし、この教会も嫌いだ…。」
祭壇には巨大な聖女ディアナンネの像がある。
色も塗られており美しい造りだが、その表情は悲しげに見え、聖女と言うよりは生け贄に差し出された乙女のように見えてしまう。
何か痛々しく、もともとが聖女ディアナンネを崇拝していたレオンハルト皇帝には、この教会の語るディアナンネに違和感しかない。
「母?あー皇太后ね……みんなに誉められてるからいーじゃん…
それよりさぁ、兄上ー最近、娘達の質落ちてるよ?
あんなんじゃ、ディアナンネ様を造れないよー。」
ロージアは、床に落ちた長い髪の毛を拾いあげる。
長い金色の髪は、途中から不自然に青く染められている。
「……お前が何をしているかを知るつもりはない……
知りたくもない……俺が今日、ここに来たのは……」
「でも、兄上!今回は誉めてあげる!
あのディアーナって子は最高だよ!
初めて見たよ、藍色の髪に金色の瞳の子!
あの子、くれるんだよね?」
「それを許さんと言いに来たのだ!!」
レオンハルト皇帝は剣を抜いてロージアに向ける。
脅すつもりで抜いた剣だったが、向けた剣先をヌルリと人の手が掴んだのを見て息を飲んだ。
「許さん?あはは、許さん?あはは!!
許さんからナニ?」
剣を抜いたレオンハルト皇帝は、気付かぬ間に多くの裸体の少女達に絡み付かれるように抱き締められていた。
生気の無い少女達は、藍色に近い色合いに染め上げられた髪の者や、そんな髪を無理矢理頭皮に縫い付けられている者もいる。
そして、どの少女も眼窩が空洞だ。
「お…お前は何を造っていたんだ!」
生者を求める屍鬼の群れのようにレオンハルト皇帝に群がる少女達は、レオンハルトに危害を加えようとはしないが、縋り付いたまま離れない。
「金の瞳だけは、どうしても手に入らなくてさー。
でも、良かったよ!兄上、ディアーナをありがとう!
お礼に、僕が造ったディアナンネ達をあげる!
しばらく、彼女達に愛して貰いなよ。」
ロージアは笑いながら椅子から立ち上がると、傍に現れた聖職者の衣に身を包んだ男に指示をする。
「アレまだ、殺さないでね?教皇。」
「はい、ロージア様…ところで、城の離れの方に村の少女達が来ておりますが…。」
「えー…ミーナとビスケだっけ?あの二人鬱陶しいんだよね。
たいした素材にもならないのに…」
「ディアーナ嬢は別として、リリーとかいう娘も美しいと思いますが…?…まったく…旨そうで…」
教皇と呼ばれた男は唇の端から蛇のように長い舌先を垂らし、ニヤリと笑む。
「……見た目はね……
だけど僕には、すごく不気味な女だよ、アイツ。」
ロージアは転移魔法を使い、城の離れに飛んだ。
彼は病弱で、離れに幽閉された悲劇の王子様。
この国の城に連れて来られた少女達の前では、常にそう演じて来た。
温室の死角に転移したロージアは、弱々しく青い顔を見せながらテーブルに向かって歩いて来た。
「また、会いに来てくれたの…?ありがとう、ミーナ、ビスケ、リリー、ディアーナ………ッ!?」
テーブルに着くなり、ロージアはいきなりディアーナに胸ぐらを掴まれる。
「ディアーナ様!」「ロージア様はお身体が!」
ミーナとビスケが青くなって騒ぐのを無視して、ディアーナはロージアに顔を寄せる。
間近でガンを飛ばす。もう、ただのヤンキーのように。
「あんたの兄さんが、余りにも役立たずでね!
この、わたくしを放置して、どっか行ったきりだし!」
「あ、兄上が…?
ど、どうして兄上が居なくなって、僕が、こんな目に……?」
ロージアの目が、一瞬ディアーナの真意を探ろうとする。
自分がレオンハルト皇帝を教会に捕らえている事を知っているのではないかと。
「兄貴の不始末、弟の責任!
あんた、あいつを退位させて、この国の皇帝になっちゃいなさいよ!めんどくさいから!!」
「………え?」
胸ぐらを掴まれたままのロージア、そしてディアーナを止めようとしているミーナとビスケの目が点になっている。
「めんどくさいのよ、本当に!
あんな顎の割れたオッサンより、あんたみたいな見てくれの皇帝の方が人気出そうじゃない?
後押ししてあげるわよ、月の女神ディアーナがね!
言いたいのは、それだけよ。」
ロージアの胸ぐらを離し、言いたい事だけ言ったディアーナは、さっさ温室を出て行った。
「そうですよ、ロージア様!」
「暴君と呼ばれたレオンハルト皇帝より、お優しいロージア様の方が皇帝に相応しいです!」
ディアーナの背後でミーナとビスケがロージアを後押しするように言うのを聞きながらディアーナは離れから出た。
その隣にはリリーが立っている。
「リリーは、ロージアのそばに居なくていいの?」
「今は…ええ。」
ディアーナは小さく笑むと、城に向かった。
「そうね、まだ大丈夫かしら」
▼
▼
▼
「兄上聞いて聞いて!僕ね!ディアーナにね!皇帝になればって言われたの!」
大教会の地下深く。
床一面に大きな魔方陣が描かれた巨大なホールがある。
レオンハルト皇帝はその場に捕らわれており、ディアナンネのなりそこないの少女達に群がられたまま身動きが取れなくなっていた。
「僕ね、今、悩んでるんだぁ…
ディアーナを使ってディアナンネ様を造ろうか…
それとも皇帝になって、ディアーナを妻にしようか!
兄上、ディアーナの事を好きだよね?
兄上の好きなディアーナを僕が哭かせてみたいなぁ!
あはは!どんな風に乱れるのかな!」
興奮気味に声を上げ笑うロージアに、憔悴したレオンハルト皇帝が呟く。
「やめろ…あの方は…そのように扱って良い方ではない…
本物の…月の女神なんだ…。」
ロージアの美しい顔が嘲りを含んで醜く歪む。
「月の女神?バッカじゃない?
強いだけの、ただの勘違い女だよ!
女神があんな口悪くて乱暴者なワケ無いじゃん!
それにね、あの子強いけど魔力が一切無いしね!」
レオンハルト皇帝に群がっていた一人の少女が、レオンハルト皇帝に近付いたロージアに縋り付こうと手をのばす。
「触るな!汚い!」
少女の手を振り払ったロージアは、少女を一瞬で消し炭にした。
「ロージア!!やめろ!」
「何だよ…言っとくけど、このディアナンネのなりそこない達は、元に戻らないよ?
消し炭にしてやるのも優しさじゃない?」
━━ロージアが人間でない事は、生まれた時から知っていた。
彼の存在を神秘だと感じる者が多い中、彼を禍々しい者だと感じ、災いが大きくなる前に、と命を狙った者たちも少なからず居た。
その者達すべてが首から下が消失し、床に転がる首だけになって発見されたのだが…。━━
「お前……一体…何者なんだ……?」
ロージアに意見出来る者が居なくなり、見て見ぬ振りをしてきたレオンハルト皇帝も、ずっと胸にしまい込んで無理矢理考えないようにしていた疑問を改めてロージアに投げ掛けた。
ロージアは少女のように美しい顔を歪ませ笑う。
「僕は、聖女ディアナンネの御子で、次期バクスガハーツ帝国皇帝、ロージアさ…。」
「ああああ!もおおお!めんどくさい!」
暗い森の中を、金髪に翡翠の目をした美しい少女が、複数の男達に追われていた。
少女の口からは、「きゃー」だとか、「助けて!」なんて言葉は出ない。
「めんどくさい!あークソめんどくさい!くそ親父死ね!」
オフィーリアは、まとまって追って来た男達をまいて森の中に姿を隠す様に身を潜める。
男達が手分けしてオフィーリアを探し始めると、オフィーリアは一人ずつ背後を取るように現れた。
「まず、一人目…こんばんは、おじ様。
…ねぇ、おじ様は、私を捕らえてどうなさりたいの?」
背後から剣の刃を男の喉仏に当て、耳元で囁く。
「し、城に連れてって…皇帝に見せ…皇帝が寵姫にすれば…俺の手柄に…」
「はい!ただの馬鹿!よって特別免罪!」
オフィーリアは剣を男の頭部にゾリリっと走らせ頭頂部をハゲにし、髪型をカッパの様なトンスラにすると、泡を吹いて気絶した男を解放した。
二人目の男に忍び寄るオフィーリア。
「二人目…おじ様、あなたは私をどうなさりたいの?
嘘ついても分かりますからね?」
オフィーリアは背後から、剣の刃を男の頚動脈に当て尋ねる。
「あら、聞くまでも無いわね…もう人ではないわ。」
男の口と、落ち窪んだ眼窩から黒い巨大な蛭のようなモノがズルリとはみ出す。オフィーリアは剣を振り上げ、男の顔面を正面から貫いた。
「はぁい、魔獣化~!プチりまぁす!」
刺し貫いた剣に青白い高温の炎を纏わせると、オフィーリアは男を一瞬で蒸発させてしまった。
「イチイチイチイチ!一人一人チマチマチマチマ!めんどくせぇ!!あーくそ、この森ごと燃やしてやろうかしら!」
オフィーリアはキレかけていた。
「もう魔物や魔獣でなくても、この美しい俺を拐おうとしているだけで万死に値すると思う!
全員プチっサクっと行きたい!」
「ディアナンネ…様…」
足元で気絶している、トンスラにするだけで許した男がうなされるように呟く。
呼ばれた名前に、だらだら冷や汗をかいたオフィーリアは小さく頷く。
「うん、頑張る…
お父様からディアーナに、レオンは頑張ったから叱らないでやってと言って貰わないと…。」
オフィーリアは三人目を探して森に戻って行った。
「うふふ…出来れば、お会いするのは魔獣さんがいいわ…
会話も無く即プチ出来ますものね…うふふ…。」
この日の晩から、バクスガハーツと隣国の国境付近の森には、笑いながら頭を変な髪型に刈る恐ろしい美少女が出ると噂が立った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる