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国王直属部隊のエリートとセドリック部隊の精鋭。
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━━━━ぼんやりと……暗い中で「私」は無の状態から意識を取り戻した。
これは現実なのか……夢なのか……分からない。
今、こんな風に思考を巡らせている「私」は生きているのか死んでいるのか……
これは、肉体から離れて魂だけとなった「私」の意識なのだろうか━━━━
ズキンと身体が悲鳴を上げる様な強い痛みを一瞬だけ感じ、自身がまだ生き永らえていると知ったテンソは、重い瞼をゆっくりと開いた。
仰向けに寝かせられたテンソの目が最初に捉えたのは、枯れた草や枝を重ねただけの、あばら家の様な粗末な造りの低い天井だった。
━━これは…意外だ…━━
リスクィート王の放った矢を受けた左腕を斬り落とし、リスクィート城の兵士に追われながら逃走したテンソは川に飛び込んで意識を失った。
意識を失う直前に、目が覚めたならば次に目にするのはリスクィートの拷問部屋か、地獄の亡者達だろうと思っていた。
━━生きている…しかも城の兵士に捕らえられてもいない…━━
「目が覚めたみたいだね。」
寝ている頭の方から若い男の声が聞こえた。
姿を確認すべく、テンソはそちらに顔を向けようとするが、全身に力が行き渡らず動作がままならない。
「…貴方が…たすけて、くれたの……ぁりがと…」
「まだ痛みを和らげる薬が効いてる。無理して喋らなくていい。」
思考は鮮明なのに、声を出す為に唇を動かす事すらも鈍い。
左腕の傷口は一瞬だけ激しく痛む時があるが、その痛みが継続する事は無く、全身を覆う気怠さが痛覚を麻痺させている様だ。
━━たまたま私を助けた一般人…では無さそうだな。
この様な痛みを緩和する強い効果を持つ薬を所持しているなど。一体何者なのだろう…━━
身体同様に思考もトロンとまどろんでいる無警戒な様子を装いながら、テンソはクリアな思考をフル回転させて状況を把握しようと必死だった。
医学の有識者で、たまたま良薬を持っていただけのお人好しであるならば、礼を述べて関わりが薄い内にこの場を離れようと考えた。
だが、この男が懐柔を目的としたリスクィート王の手の者であるならば、自分がヴィーヴルの者だと知れる前に、男か自分どちらかの命を早々に絶った方が良い。
「この女は、城の敷地内から流れ出て来たんだろ?
兵士に追われているんじゃないのか?
この場を嗅ぎつけられたら、女を匿った我々もただでは済まないぞ!」
頭側からもう一人、老いた男の声が聞こえた。
姿は見えないが、あばら家には若者と年老いた男の2人が居る様だ。
話から察するに、2人はリスクィート城の者ではないらしいが…。
ホッと安堵すると共に、年老いた男の言う通り兵士に見付かれば自分はもとより自分を助け匿った2人にも咎が及ぶ。
「大丈夫大丈夫、ここは水鳥を捕まえる為の葦造りのボロ小屋で、外からは枯れた葦の群生にしか見えない。
お城勤めの坊っちゃん兵士らは存在も知らないさ。」
若い男が緊張感の無い軽い口調で答えれば、年老いた男が「だが!しかし!」と反論する。
年老いた男の意見はもっともだ。
若い男には危機感というものが無いのだろうか。
リスクィートの兵士に見付かれば自分の仲間だと思われ、酷い拷問を受けるかも知れないと言うのに。
そう考えたテンソは、いまだ重い身体に喝を入れるように、右手だけで身体を支えて何とか上体を起こした。
「そちらの方の…仰る通りです…私を庇えば、貴方がたも兵士に捕らえられてしまう。
今すぐ…出て行きますから。」
身体を起こしたテンソは薬の効果が薄れてきたのか、鈍かった身体が動きやすくなっていると気付いた。
改めて自身の姿を見れば、濡れた服は脱がされており全裸にされている。
切断した左腕は止血処置がされ真新しいキレイな布で巻かれており、適切な治療が成された様だと感じた。
この様な行為が出来る者が一般人である訳が無い。
救って貰った恩も無くはないが、男達の素性に不安も感じずには居られない。
一刻も早く男達のもとを去りたいとテンソは立ち上がり、振り返って後ろに居る2人の男に目を向けた。
2人の男は深いフード付きのマントを身につけ旅人風な装いをしており、若い男が裸のテンソに真新しい男物のシャツを渡しながら尋ねて来た。
「出て行くって何処へ?
その身体では1人で逃亡するのは難しいだろ。
さっき、仲間を呼んだから共に行動するといい。」
「仲間を呼んだだと!?」
若い男の言葉に、テンソは警戒レベルを一気に最大にまで引き上げた。
リスクィートの者ではないらしいが、それでも素性の知れない男達の言う仲間が、どんな危険な輩か分からない。
テンソは男の手からシャツを奪うと虚を突く様に振り拡げ、男達の視界を一瞬遮った。
瞬時にダンっと床を蹴って後方に飛び、男達から距離を取って狭い部屋の隅に移動した。
武器となる物は無く、素手の右手一本では男2人に立ち向かう事は出来ない。
かと言って逃げ出そうにも、この小さなあばら家の出入り口が何処にあるか見当たらない。
━━城から逃げた私を捕らえて、リスクィートの内情を吐かせたいのか?
何にせよ、私が持つ情報はヴィーヴル国だけのものだ。
他の国にくれてやるつもりなど無い。
もう、潮時か……━━
自死を覚悟したテンはあばら家の一部となっていた枯れ枝を掴み、その尖端を自身に向けた。
若者は慌てた様に被っていたフードを捲って顔を出し、テンソを宥める様にゆっくりと言葉を続けた。
「ああ、待ってくれ、早まらないで……
俺達は敵じゃない、俺は君と同じくヴィーヴルの者だ。
キミ、セドリック様のトコの子だろ?」
セドリックの名を聞いたテンソの手がピタリと止まる。
ヴィーヴルの特殊な部隊を預かる隊長の名を知る者など、そうザラには居ない。
しかも、テンソがその部隊の者だと知っている…この若者がヴィーヴルの者である可能性は高い。
そう考えてもテンソは簡単に警戒を解く事は出来なかった。
それはヴィーヴルの教えでもあり、若者もそれを知っている。
ゆえに、警戒するテンソを刺激しない様に若者は離れた場所からテンソに自分を語る言葉を掛け続ける。
「セドリック様が新しい依頼を受けてリスクィートに居るって話は聞いていた。
だから川を流れて来たキミを見付けた時に、前に城内で見掛けたセドリック様の部下のコだとすぐに気付いたんだよ。」
全裸のテンソは恥じらう様子を見せる事無く、右手に持った枝を自身の喉に向けたまま訝る様に険しい表情で男に尋ねた。
「私は竜乙女の国生まれの者ではなく、部隊の正規のメンバーではない。
城に赴く際には私は常に顔を隠し、はるか後方に控えていた。
お前が誰なのか分からないが、道端の石の様な私を覚えているワケが無いだろう!」
ヴィーヴル城内ではテンソは顔を常に隠しており、声を出した事もほぼ無い。
セドリック部隊のメンバーは100人以上おり、テンソでさえメンバー全員を把握しきれていない。
それなのに、この男はテンソを知っていると言う。
怪しい事この上ない、この男は一体何者なのだとの気味の悪さから、自身を人質として喉に枝の切っ先を当てたテンソが声を荒げた。
「俺さぁ…人の顔も名前も覚えらんないんだけど、女のコのおっぱいだけは絶対に忘れないんだよね。
濡れた服を脱がせた時に確信したよ。
この類を見ないほどの貧乳は、セドリック様んトコのあの子だって。」
「最低な男だな、お前は!!!」
テンソと若者の緊迫したやり取りを、怯えながら離れた場所で縮こまって見ていた老人の男が思わず横から口を突っ込んだ。
「なんで?
余計なリスクは背負いたくないから、見知らぬ人間だったら気の毒だけど助けなかったと思う。
見た事のあるペタンコのおっぱいだったからこそ助けようと………」
「形状を口に出すな!女性を胸で認識するな!
なんとデリカシーの無い男なんだ!お前は!」
男2人のやり取りを尻目に、テンソは投げ捨てたシャツを拾って身につけ、右手で胸を隠す様に押さえて無言で虚無顔になっていた。
テンソはヴィーヴル国の為に働くと決めた時、任務の遂行の障害となり得る自身の感情を捨てたつもりだった。
すべての行動や思考は国を機軸としており、個人的な怒りや悲しみも忘れ、女である事も捨てた。
羞恥心も忘れ、裸体を見られる事でも感情を揺り動かした事など無かったのだが……
「……………サイっっテー…………」
恥ずかしいと言うよりはイラッと。
胸を庇う様に隠したテンソは、恥じらうより先に腹立たしさが募り、苛立ちから男をキッと強く睨んだ。
そして思い出した。
ヴィーヴル国の国王陛下直属のエリート部隊の中に、巨乳好きで有名な変態がいるという噂を前に聞いた事を。
落ち着きを取り戻したテンソは若い男の素性を知り、敵ではない事での警戒を解いたが、今度は変態に対する警戒を強め、軽蔑の眼差しでギャリーを見る様になってしまった。
国王直属部隊に所属するギャリーは、任務遂行中はテンソの上官のセドリックよりも上の発言力、行動権利を持ち、テンソは本来ギャリーには絶対服従の姿勢で居なければならない。
━━ギャリー様はセドリック様より偉い人だと分かっている。
分かっているけど阿呆にしか思えない。
とんでもなく阿呆の変態にしか見えない。
行動基準がおっぱいって、バッカじゃないの!?━━
長く蓋をしていた自身の素の感情を解放したテンソは、思考も自我を取り戻し、若い女性さながらの考えや感情が顔に出る様になった。
「貧乳ちゃん、元気出た?
表情が豊かになってきたね。」
ヘラっと笑ってギャリーが言えば、不機嫌そうなテンソの眉間に更に深い皺が刻まれる。
「ギャリー様!名前を覚えないにも程があります!
私の名はテンソだと!
何回言わせて、何回貧乳って呼ぶんですか!」
テンソはバンバンと右手で床を叩いて苛立ちを露わにし、そんなテンソを見てギャリーは、相変わらずヘラっと緊張感も無く笑う。
「ハハハ、ゴメンねーホントに名前覚えらんないんだって、女のコは特に。
でもまぁ…貧乳ちゃんは、もう引退だな。
死なずに済んで良かったよ。
ヴィーヴルに帰ったら、何かしたい事はある?」
ギャリーの口から出た言葉を聞き、テンソは無くなった自身の左腕を撫で、改めて自身の今の状況を思い出した。
この身体ではテンソの特技である変装も、身軽さを用いての潜入なども出来ない。
死を覚悟しての日々だったが、身体の不便さと引き換えに命は失くさずに済んだ。
「……そうですね……
もう暗部の者としては、ヴィーヴル国のお役に立てる身ではありませんし…無事にリスクィートを脱出して国に帰れたならば…。
家族共にこのままヴィーヴル国に居させて欲しい…とは思います。」
ヴィーヴル国は功労者を蔑ろにはしない。
元々居た国を追われたテンソの民族は、自分達を受け入れてくれたヴィーヴルに感謝し、ヴィーヴルに尽くしたいと考えていた。
テンソはその思いが特に強く、家族に累が及ばぬ様にと家族との縁を切ってまで国の暗部に働きを申し出た。
「それは大丈夫だろ、貧乳ちゃんが国の為に頑張ってくれた事は皆知ってるし。
それに貧乳ちゃんの父君は小さな料理屋をしているだろ?
結構人気あるみたいだし、誰も国から出て行けなんて言わないさ。
暗部を辞めて、家族の元に戻って穏やかに過ごすのもいいんじゃない?」
━━胸以外、名前も顔も覚えられ無いとか言ってたくせに…縁を切った私の家族の事も把握しているのね。
こんな末端の私の事を……
ホントに……これだからエリートって嫌いなのよ。
涼しい顔をして……変態のクセに……━━
この緊張感も無くヘラヘラとしている男が溺れかけていたテンソを見付けたのも偶然では無いのだろう。
ヴィーヴルは上に行けば行く程に、ありとあらゆる情報を把握、共有し、強い連携を取って、下の者の為に動くと聞いた事がある。
国を優先し切り捨てる事もあるが、救えるなら尽力する。
だからヴィーヴルは人の繋がりや愛国心が強いのだと。
緊張感の無い涼しい顔しか見せないその裏で、ギャリーやリスクィートに潜むヴィーヴルの仲間達はテンソを窮地から救う為に奔走したのだろう。
「あ、迎えが来たみたいだ、貧乳ちゃんは彼らと共にヴィーヴルへ戻って、ちゃんと治療しなきゃね。」
あばら家の外から人の気配を感じたギャリーが顔を上げ、テンソに向かって笑った。
テンソはギャリーの治療と言う言葉にハッと、ある人物の事を思い出した。
「あの!もうひとつ、お願いしたい事がございます。
私に…フォアン様のお世話をお任せして頂けないでしょうか。」
ギャリーが「え?」と疑問の表情を見せるより先に、ギャリーの後ろに居た老人がテンソに掴み掛かろうとした。
ギャリーは咄嗟に、テンソと老人の間に腕を入れて興奮した老人の動きを制する。
「貧乳ちゃん、大怪我してんだから触れたら駄目でしょ。」
「フォアンは…!フォアンはまだ生きているのか!
私の孫は……!!」
ギャリーに押さえられながらも必死で問い掛けてくるその言葉で、テンソは目の前に居るくたびれた老人がフォアン王子の祖父で、ベルゼルトの宰相補佐をしていたマンダンだと知り、口を閉ざした。
気が緩んだからとは言え、この場で情報を吐露する様に誰かの名前を口にすべきでは無かったと後悔する。
ギャリーは唇を噛み口をつぐんだテンソを見て、代わりに口を開いた。
「ケンヴィー皇子が、どんな状態でリスクィートに保護されたか…は、聞いてるよな。
全身大火傷で、意識を取り戻す事無く亡くなったと。
だが本物のケンヴィー皇子は依然行方不明なままだ。
フォアン王子は、そのケンヴィー皇子の身代わりにされ全身を焼かれ、死亡したと伝えられた。
だが、ケンヴィー皇子として殺されたフォアン王子もまた、身代わりを立てた偽物だ。」
「ならば…本物のフォアンは……生きて…?」
「死んではいない。」
テンソの代わりに答えたギャリーは、初めて真剣な険しい顔を見せた。
ギャリーの答えは、マンダンにフォアンの「今」を理解させた。
生きてはいる…だがそれは、かろうじて…なのだと。
「………………テンソ…と言ったか………
フォアンを頼む……」
マンダンは力無く、そう呟くと俯いたまま黙り込んだ。
マンダンは、自分が尽くして来たリスクィートに命を狙われている話をギャリーに聞かされ、半信半疑なままギャリーに引っ張られてベルゼルトを発ちリスクィートに来たが、今まで疑いながら聞いていた話が頭の中で繋がり、その残酷な現実が全て真実だと認めざるを得なくなった。
━━ケンヴィー皇子の身代わりにする為にフォアン王子は焼かれ、母としてそれを止めようとしたマンダンの娘は不義の罪をなすりつけられて処刑された。
家族が処刑された事がマンダンに伝わる前に、国王はマンダンを煩わしいからと殺害しようとした。━━
テンソはブツブツと声にならない呪言の様な呟きを漏らし始めたマンダンを見て目を逸らした。
ギャリーが今、マンダンを連れてこの国に居るのは偶然ではない。
カリーナ以外の誰かからの依頼を受け、ヴィーヴル国王直属部隊が動いている。
戦線離脱を余儀なくされたテンソは、自身の失くなった左腕を撫でながら、腕を奪った国王と戦い続けるカリーナ皇妃とセドリックの無事を強く願った。
「皆さま……どうか、御武運を。」
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「陛下、皆が噂しております、あの話は本当ですかな?
陛下と、ガイン殿が恋仲だという…その…陛下が、ガイン殿を妻だと公言してらっしゃると……。」
玉座前の広い廊下へと続く、細く長い廊下を歩くキリアンの背後から、爺やが声を掛けた。
小柄で口うるさい爺やは、キリアンが生まれた時から側におり、皇族の世話係として古くはキリアンの祖父の時代から城に仕えている。
キリアンにとってはガインの後にはなるが、無礼な小言も聞き流せる程に信用を置くに値する人物だ。
「ああ本当だ。やっと、皆にガインは私だけのものだと知らしめる事が出来た。
そして私もまた、ガインだけのものなのだと。」
納得がいかないと言う声も聞く事はあるが、表立って言って来る者は居ない。いや、言えないのだろう。
最近のキリアンは終始機嫌が良い様子で、誰もその機嫌を損ねたくは無い。
そんな上機嫌なキリアンの背後を歩く爺やからの質問に、普段より高めの声音に弾んだ口調でキリアンが答えた。
あまりにも嬉々として答えられた爺やは、やれやれと小声で呟いた後に、小さな溜息と共に数回頷く。
「なるほど…それであの頑強なガイン殿が、熱が出たからと部屋にこもってしまったんですな。
周囲からの好奇の視線に耐えられなくなった上での仮病でしょうな…。」
「いや…ガインが珍しく発熱したのは本当だ。
恥ずかしい気持ちもあるだろうけど…ガインの場合、皆や愛娘に対して、自分はどんな顔をしていたら良いかを考え過ぎた上での知恵熱みたいなもんだと思う。」
「知恵熱って…赤ん坊ですか。」
少し呆れ気味な態度を見せる爺やに、キリアンは「ハハハ」と笑って返した。
実際、キリアンはガインの、そんな赤ん坊みたいな所でさえも純真無垢で可愛いと思ってしまう。
「可愛いだろ?私の后は。」
自慢げに語るキリアンの背後に居た爺やは足を止め、重い口調でキリアンに声を掛けた。
「……恋愛は自由ですので、陛下がガイン殿と情を交わすのに物申したりはしませんが…。
陛下にはベルゼルトの皇帝の血を引く、お世継ぎを設ける義務がございます。」
キリアンは立ち止まって振り返ると顎先を上げ、冷たい目で睨めつける様に爺やを見下ろした。
「ガインを后と呼ぶのは不服だと。
皇帝の血を引く私の子を身籠れる女を后にしろと。」
上機嫌だったキリアンからスゥっと熱が消え、冷たい表情を見せたかと思えば、直ぐに口角を上げて微笑んだ。
笑顔につられ細められた目だがそこに熱は無く、凍てつく様な視線を爺やに向ける。
「そうだね…爺やの言ってる事は正しいよ。」
キリアンは仄暗い微笑みを浮かべたままポツリと、呟いた。
これは現実なのか……夢なのか……分からない。
今、こんな風に思考を巡らせている「私」は生きているのか死んでいるのか……
これは、肉体から離れて魂だけとなった「私」の意識なのだろうか━━━━
ズキンと身体が悲鳴を上げる様な強い痛みを一瞬だけ感じ、自身がまだ生き永らえていると知ったテンソは、重い瞼をゆっくりと開いた。
仰向けに寝かせられたテンソの目が最初に捉えたのは、枯れた草や枝を重ねただけの、あばら家の様な粗末な造りの低い天井だった。
━━これは…意外だ…━━
リスクィート王の放った矢を受けた左腕を斬り落とし、リスクィート城の兵士に追われながら逃走したテンソは川に飛び込んで意識を失った。
意識を失う直前に、目が覚めたならば次に目にするのはリスクィートの拷問部屋か、地獄の亡者達だろうと思っていた。
━━生きている…しかも城の兵士に捕らえられてもいない…━━
「目が覚めたみたいだね。」
寝ている頭の方から若い男の声が聞こえた。
姿を確認すべく、テンソはそちらに顔を向けようとするが、全身に力が行き渡らず動作がままならない。
「…貴方が…たすけて、くれたの……ぁりがと…」
「まだ痛みを和らげる薬が効いてる。無理して喋らなくていい。」
思考は鮮明なのに、声を出す為に唇を動かす事すらも鈍い。
左腕の傷口は一瞬だけ激しく痛む時があるが、その痛みが継続する事は無く、全身を覆う気怠さが痛覚を麻痺させている様だ。
━━たまたま私を助けた一般人…では無さそうだな。
この様な痛みを緩和する強い効果を持つ薬を所持しているなど。一体何者なのだろう…━━
身体同様に思考もトロンとまどろんでいる無警戒な様子を装いながら、テンソはクリアな思考をフル回転させて状況を把握しようと必死だった。
医学の有識者で、たまたま良薬を持っていただけのお人好しであるならば、礼を述べて関わりが薄い内にこの場を離れようと考えた。
だが、この男が懐柔を目的としたリスクィート王の手の者であるならば、自分がヴィーヴルの者だと知れる前に、男か自分どちらかの命を早々に絶った方が良い。
「この女は、城の敷地内から流れ出て来たんだろ?
兵士に追われているんじゃないのか?
この場を嗅ぎつけられたら、女を匿った我々もただでは済まないぞ!」
頭側からもう一人、老いた男の声が聞こえた。
姿は見えないが、あばら家には若者と年老いた男の2人が居る様だ。
話から察するに、2人はリスクィート城の者ではないらしいが…。
ホッと安堵すると共に、年老いた男の言う通り兵士に見付かれば自分はもとより自分を助け匿った2人にも咎が及ぶ。
「大丈夫大丈夫、ここは水鳥を捕まえる為の葦造りのボロ小屋で、外からは枯れた葦の群生にしか見えない。
お城勤めの坊っちゃん兵士らは存在も知らないさ。」
若い男が緊張感の無い軽い口調で答えれば、年老いた男が「だが!しかし!」と反論する。
年老いた男の意見はもっともだ。
若い男には危機感というものが無いのだろうか。
リスクィートの兵士に見付かれば自分の仲間だと思われ、酷い拷問を受けるかも知れないと言うのに。
そう考えたテンソは、いまだ重い身体に喝を入れるように、右手だけで身体を支えて何とか上体を起こした。
「そちらの方の…仰る通りです…私を庇えば、貴方がたも兵士に捕らえられてしまう。
今すぐ…出て行きますから。」
身体を起こしたテンソは薬の効果が薄れてきたのか、鈍かった身体が動きやすくなっていると気付いた。
改めて自身の姿を見れば、濡れた服は脱がされており全裸にされている。
切断した左腕は止血処置がされ真新しいキレイな布で巻かれており、適切な治療が成された様だと感じた。
この様な行為が出来る者が一般人である訳が無い。
救って貰った恩も無くはないが、男達の素性に不安も感じずには居られない。
一刻も早く男達のもとを去りたいとテンソは立ち上がり、振り返って後ろに居る2人の男に目を向けた。
2人の男は深いフード付きのマントを身につけ旅人風な装いをしており、若い男が裸のテンソに真新しい男物のシャツを渡しながら尋ねて来た。
「出て行くって何処へ?
その身体では1人で逃亡するのは難しいだろ。
さっき、仲間を呼んだから共に行動するといい。」
「仲間を呼んだだと!?」
若い男の言葉に、テンソは警戒レベルを一気に最大にまで引き上げた。
リスクィートの者ではないらしいが、それでも素性の知れない男達の言う仲間が、どんな危険な輩か分からない。
テンソは男の手からシャツを奪うと虚を突く様に振り拡げ、男達の視界を一瞬遮った。
瞬時にダンっと床を蹴って後方に飛び、男達から距離を取って狭い部屋の隅に移動した。
武器となる物は無く、素手の右手一本では男2人に立ち向かう事は出来ない。
かと言って逃げ出そうにも、この小さなあばら家の出入り口が何処にあるか見当たらない。
━━城から逃げた私を捕らえて、リスクィートの内情を吐かせたいのか?
何にせよ、私が持つ情報はヴィーヴル国だけのものだ。
他の国にくれてやるつもりなど無い。
もう、潮時か……━━
自死を覚悟したテンはあばら家の一部となっていた枯れ枝を掴み、その尖端を自身に向けた。
若者は慌てた様に被っていたフードを捲って顔を出し、テンソを宥める様にゆっくりと言葉を続けた。
「ああ、待ってくれ、早まらないで……
俺達は敵じゃない、俺は君と同じくヴィーヴルの者だ。
キミ、セドリック様のトコの子だろ?」
セドリックの名を聞いたテンソの手がピタリと止まる。
ヴィーヴルの特殊な部隊を預かる隊長の名を知る者など、そうザラには居ない。
しかも、テンソがその部隊の者だと知っている…この若者がヴィーヴルの者である可能性は高い。
そう考えてもテンソは簡単に警戒を解く事は出来なかった。
それはヴィーヴルの教えでもあり、若者もそれを知っている。
ゆえに、警戒するテンソを刺激しない様に若者は離れた場所からテンソに自分を語る言葉を掛け続ける。
「セドリック様が新しい依頼を受けてリスクィートに居るって話は聞いていた。
だから川を流れて来たキミを見付けた時に、前に城内で見掛けたセドリック様の部下のコだとすぐに気付いたんだよ。」
全裸のテンソは恥じらう様子を見せる事無く、右手に持った枝を自身の喉に向けたまま訝る様に険しい表情で男に尋ねた。
「私は竜乙女の国生まれの者ではなく、部隊の正規のメンバーではない。
城に赴く際には私は常に顔を隠し、はるか後方に控えていた。
お前が誰なのか分からないが、道端の石の様な私を覚えているワケが無いだろう!」
ヴィーヴル城内ではテンソは顔を常に隠しており、声を出した事もほぼ無い。
セドリック部隊のメンバーは100人以上おり、テンソでさえメンバー全員を把握しきれていない。
それなのに、この男はテンソを知っていると言う。
怪しい事この上ない、この男は一体何者なのだとの気味の悪さから、自身を人質として喉に枝の切っ先を当てたテンソが声を荒げた。
「俺さぁ…人の顔も名前も覚えらんないんだけど、女のコのおっぱいだけは絶対に忘れないんだよね。
濡れた服を脱がせた時に確信したよ。
この類を見ないほどの貧乳は、セドリック様んトコのあの子だって。」
「最低な男だな、お前は!!!」
テンソと若者の緊迫したやり取りを、怯えながら離れた場所で縮こまって見ていた老人の男が思わず横から口を突っ込んだ。
「なんで?
余計なリスクは背負いたくないから、見知らぬ人間だったら気の毒だけど助けなかったと思う。
見た事のあるペタンコのおっぱいだったからこそ助けようと………」
「形状を口に出すな!女性を胸で認識するな!
なんとデリカシーの無い男なんだ!お前は!」
男2人のやり取りを尻目に、テンソは投げ捨てたシャツを拾って身につけ、右手で胸を隠す様に押さえて無言で虚無顔になっていた。
テンソはヴィーヴル国の為に働くと決めた時、任務の遂行の障害となり得る自身の感情を捨てたつもりだった。
すべての行動や思考は国を機軸としており、個人的な怒りや悲しみも忘れ、女である事も捨てた。
羞恥心も忘れ、裸体を見られる事でも感情を揺り動かした事など無かったのだが……
「……………サイっっテー…………」
恥ずかしいと言うよりはイラッと。
胸を庇う様に隠したテンソは、恥じらうより先に腹立たしさが募り、苛立ちから男をキッと強く睨んだ。
そして思い出した。
ヴィーヴル国の国王陛下直属のエリート部隊の中に、巨乳好きで有名な変態がいるという噂を前に聞いた事を。
落ち着きを取り戻したテンソは若い男の素性を知り、敵ではない事での警戒を解いたが、今度は変態に対する警戒を強め、軽蔑の眼差しでギャリーを見る様になってしまった。
国王直属部隊に所属するギャリーは、任務遂行中はテンソの上官のセドリックよりも上の発言力、行動権利を持ち、テンソは本来ギャリーには絶対服従の姿勢で居なければならない。
━━ギャリー様はセドリック様より偉い人だと分かっている。
分かっているけど阿呆にしか思えない。
とんでもなく阿呆の変態にしか見えない。
行動基準がおっぱいって、バッカじゃないの!?━━
長く蓋をしていた自身の素の感情を解放したテンソは、思考も自我を取り戻し、若い女性さながらの考えや感情が顔に出る様になった。
「貧乳ちゃん、元気出た?
表情が豊かになってきたね。」
ヘラっと笑ってギャリーが言えば、不機嫌そうなテンソの眉間に更に深い皺が刻まれる。
「ギャリー様!名前を覚えないにも程があります!
私の名はテンソだと!
何回言わせて、何回貧乳って呼ぶんですか!」
テンソはバンバンと右手で床を叩いて苛立ちを露わにし、そんなテンソを見てギャリーは、相変わらずヘラっと緊張感も無く笑う。
「ハハハ、ゴメンねーホントに名前覚えらんないんだって、女のコは特に。
でもまぁ…貧乳ちゃんは、もう引退だな。
死なずに済んで良かったよ。
ヴィーヴルに帰ったら、何かしたい事はある?」
ギャリーの口から出た言葉を聞き、テンソは無くなった自身の左腕を撫で、改めて自身の今の状況を思い出した。
この身体ではテンソの特技である変装も、身軽さを用いての潜入なども出来ない。
死を覚悟しての日々だったが、身体の不便さと引き換えに命は失くさずに済んだ。
「……そうですね……
もう暗部の者としては、ヴィーヴル国のお役に立てる身ではありませんし…無事にリスクィートを脱出して国に帰れたならば…。
家族共にこのままヴィーヴル国に居させて欲しい…とは思います。」
ヴィーヴル国は功労者を蔑ろにはしない。
元々居た国を追われたテンソの民族は、自分達を受け入れてくれたヴィーヴルに感謝し、ヴィーヴルに尽くしたいと考えていた。
テンソはその思いが特に強く、家族に累が及ばぬ様にと家族との縁を切ってまで国の暗部に働きを申し出た。
「それは大丈夫だろ、貧乳ちゃんが国の為に頑張ってくれた事は皆知ってるし。
それに貧乳ちゃんの父君は小さな料理屋をしているだろ?
結構人気あるみたいだし、誰も国から出て行けなんて言わないさ。
暗部を辞めて、家族の元に戻って穏やかに過ごすのもいいんじゃない?」
━━胸以外、名前も顔も覚えられ無いとか言ってたくせに…縁を切った私の家族の事も把握しているのね。
こんな末端の私の事を……
ホントに……これだからエリートって嫌いなのよ。
涼しい顔をして……変態のクセに……━━
この緊張感も無くヘラヘラとしている男が溺れかけていたテンソを見付けたのも偶然では無いのだろう。
ヴィーヴルは上に行けば行く程に、ありとあらゆる情報を把握、共有し、強い連携を取って、下の者の為に動くと聞いた事がある。
国を優先し切り捨てる事もあるが、救えるなら尽力する。
だからヴィーヴルは人の繋がりや愛国心が強いのだと。
緊張感の無い涼しい顔しか見せないその裏で、ギャリーやリスクィートに潜むヴィーヴルの仲間達はテンソを窮地から救う為に奔走したのだろう。
「あ、迎えが来たみたいだ、貧乳ちゃんは彼らと共にヴィーヴルへ戻って、ちゃんと治療しなきゃね。」
あばら家の外から人の気配を感じたギャリーが顔を上げ、テンソに向かって笑った。
テンソはギャリーの治療と言う言葉にハッと、ある人物の事を思い出した。
「あの!もうひとつ、お願いしたい事がございます。
私に…フォアン様のお世話をお任せして頂けないでしょうか。」
ギャリーが「え?」と疑問の表情を見せるより先に、ギャリーの後ろに居た老人がテンソに掴み掛かろうとした。
ギャリーは咄嗟に、テンソと老人の間に腕を入れて興奮した老人の動きを制する。
「貧乳ちゃん、大怪我してんだから触れたら駄目でしょ。」
「フォアンは…!フォアンはまだ生きているのか!
私の孫は……!!」
ギャリーに押さえられながらも必死で問い掛けてくるその言葉で、テンソは目の前に居るくたびれた老人がフォアン王子の祖父で、ベルゼルトの宰相補佐をしていたマンダンだと知り、口を閉ざした。
気が緩んだからとは言え、この場で情報を吐露する様に誰かの名前を口にすべきでは無かったと後悔する。
ギャリーは唇を噛み口をつぐんだテンソを見て、代わりに口を開いた。
「ケンヴィー皇子が、どんな状態でリスクィートに保護されたか…は、聞いてるよな。
全身大火傷で、意識を取り戻す事無く亡くなったと。
だが本物のケンヴィー皇子は依然行方不明なままだ。
フォアン王子は、そのケンヴィー皇子の身代わりにされ全身を焼かれ、死亡したと伝えられた。
だが、ケンヴィー皇子として殺されたフォアン王子もまた、身代わりを立てた偽物だ。」
「ならば…本物のフォアンは……生きて…?」
「死んではいない。」
テンソの代わりに答えたギャリーは、初めて真剣な険しい顔を見せた。
ギャリーの答えは、マンダンにフォアンの「今」を理解させた。
生きてはいる…だがそれは、かろうじて…なのだと。
「………………テンソ…と言ったか………
フォアンを頼む……」
マンダンは力無く、そう呟くと俯いたまま黙り込んだ。
マンダンは、自分が尽くして来たリスクィートに命を狙われている話をギャリーに聞かされ、半信半疑なままギャリーに引っ張られてベルゼルトを発ちリスクィートに来たが、今まで疑いながら聞いていた話が頭の中で繋がり、その残酷な現実が全て真実だと認めざるを得なくなった。
━━ケンヴィー皇子の身代わりにする為にフォアン王子は焼かれ、母としてそれを止めようとしたマンダンの娘は不義の罪をなすりつけられて処刑された。
家族が処刑された事がマンダンに伝わる前に、国王はマンダンを煩わしいからと殺害しようとした。━━
テンソはブツブツと声にならない呪言の様な呟きを漏らし始めたマンダンを見て目を逸らした。
ギャリーが今、マンダンを連れてこの国に居るのは偶然ではない。
カリーナ以外の誰かからの依頼を受け、ヴィーヴル国王直属部隊が動いている。
戦線離脱を余儀なくされたテンソは、自身の失くなった左腕を撫でながら、腕を奪った国王と戦い続けるカリーナ皇妃とセドリックの無事を強く願った。
「皆さま……どうか、御武運を。」
▼
▼
▼
「陛下、皆が噂しております、あの話は本当ですかな?
陛下と、ガイン殿が恋仲だという…その…陛下が、ガイン殿を妻だと公言してらっしゃると……。」
玉座前の広い廊下へと続く、細く長い廊下を歩くキリアンの背後から、爺やが声を掛けた。
小柄で口うるさい爺やは、キリアンが生まれた時から側におり、皇族の世話係として古くはキリアンの祖父の時代から城に仕えている。
キリアンにとってはガインの後にはなるが、無礼な小言も聞き流せる程に信用を置くに値する人物だ。
「ああ本当だ。やっと、皆にガインは私だけのものだと知らしめる事が出来た。
そして私もまた、ガインだけのものなのだと。」
納得がいかないと言う声も聞く事はあるが、表立って言って来る者は居ない。いや、言えないのだろう。
最近のキリアンは終始機嫌が良い様子で、誰もその機嫌を損ねたくは無い。
そんな上機嫌なキリアンの背後を歩く爺やからの質問に、普段より高めの声音に弾んだ口調でキリアンが答えた。
あまりにも嬉々として答えられた爺やは、やれやれと小声で呟いた後に、小さな溜息と共に数回頷く。
「なるほど…それであの頑強なガイン殿が、熱が出たからと部屋にこもってしまったんですな。
周囲からの好奇の視線に耐えられなくなった上での仮病でしょうな…。」
「いや…ガインが珍しく発熱したのは本当だ。
恥ずかしい気持ちもあるだろうけど…ガインの場合、皆や愛娘に対して、自分はどんな顔をしていたら良いかを考え過ぎた上での知恵熱みたいなもんだと思う。」
「知恵熱って…赤ん坊ですか。」
少し呆れ気味な態度を見せる爺やに、キリアンは「ハハハ」と笑って返した。
実際、キリアンはガインの、そんな赤ん坊みたいな所でさえも純真無垢で可愛いと思ってしまう。
「可愛いだろ?私の后は。」
自慢げに語るキリアンの背後に居た爺やは足を止め、重い口調でキリアンに声を掛けた。
「……恋愛は自由ですので、陛下がガイン殿と情を交わすのに物申したりはしませんが…。
陛下にはベルゼルトの皇帝の血を引く、お世継ぎを設ける義務がございます。」
キリアンは立ち止まって振り返ると顎先を上げ、冷たい目で睨めつける様に爺やを見下ろした。
「ガインを后と呼ぶのは不服だと。
皇帝の血を引く私の子を身籠れる女を后にしろと。」
上機嫌だったキリアンからスゥっと熱が消え、冷たい表情を見せたかと思えば、直ぐに口角を上げて微笑んだ。
笑顔につられ細められた目だがそこに熱は無く、凍てつく様な視線を爺やに向ける。
「そうだね…爺やの言ってる事は正しいよ。」
キリアンは仄暗い微笑みを浮かべたままポツリと、呟いた。
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