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ビョルン・ダウナス・ドナウツェードルン
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【注意】子どもを虐待する表現があります。
外での仕事を終えたルンルンが邸に戻って来たのは深夜だった。
リスクィートの賊が邸侵入してからというもの、ルンルンは朝から晩まで領内を走り回り、ヴィルムバッハの兵士や部下達に指示を出して外敵の炙り出しや排除を続けた。
毎日クタクタになるまで邸に戻れないが、ケンヴィーの警護は将軍に任せきりにしてケンヴィーと顔を合わせる時間が減ったので、身体的疲労より精神的疲労の方が辛いと感じるルンルンとしては少なからず心穏やかで居られるとホッとしていた。
この日もルンルンは真っ暗な邸の裏口から、忍び込むように静かに邸内に入った。
ヴィーヴル国で隠密行動を身に着けたルンルンは夜目が利き、明かりを使わずとも暗い中で物音を立てずに行動が出来る。
ルンルンはいつものように、皆が寝静まり真っ暗になった邸の廊下を歩いて食堂に向かった。
食堂の奥にある厨房に行き、食品棚の隣に置かれた自分用のバスケットを手に取り食堂を出る。
バスケットの中にはパンと水の入った瓶、蓋のされた容器に入ったガルバンゾーのトマト煮が入っており、ルンルンはバスケットから取り出したパンを口に咥えながら暗い廊下を歩き、自室に向かった。
自室のドアの前に立った瞬間、ルンルンの顔が曇る。
部屋の中に居るであろう人物の気配を察知したルンルンは、思わず咥えたパンを風船のように膨らます勢いで、「はぁ~」と大きな溜め息をパンの中に吐き出した。
パンの咥えた部分だけを食いちぎると無理矢理飲み込み、パンの残りはバスケットに入れてから、ゆっくりとドアを開く。
暗い廊下に部屋の小さなランプの薄明かりが漏れ、廊下の壁には入り口に立つルンルンの影がぼんやりと滲むように浮かんだ。
「……ヴィー……もう勘弁して下さいよ……。」
部屋に入って閉めたドアに背を寄りかからせたルンルンは再び大きな溜め息をつき、憔悴しきった様子を見せながらベッドに腰掛けたケンヴィーにそう訴え掛けた。
だがケンヴィーはルンルンの訴えには何も答えず、薄明かりの中でコテンと首だけを傾げる。
その仕草が、よりルンルンを苛立たせた。
「ルンルンおかえり。最近凄く忙しいみたいだよね、お邸に居ない事が多いし。」
「ええ、忙しいんですよ。
だから凄く疲れてまして、早く休みたいんで…。」
「僕たち最近、あまり話せてないじゃない?
もっとちゃんと、ルンルンと話しをしたかったんだ。
僕達の今後についてとかさ。」
返事をしたルンルンの言葉を遮り、自身の意見を通す。
そんなケンヴィーに対してルンルンの苛立ちはとうとう限界を迎えた。
━━━━疲れてるから休みたいって言ってるのに、それを無視した上に話をしたいって?
僕達の今後?恋人とやらになる話の事か?
辛い過去は忘れて明るい未来を見ろとか、恋愛をしたら幸せになれるとか、また、そういうくだらない話?
確かに…俺が経験した地獄のような日々はもう遠い過去の話で、今の俺は苦痛を味わう事も無く日々を安穏と過ごせている。
だから、平凡な日常を送れるようになった今は幸せで、未来にはさらに幸せが待ってるとでも言うつもりか…。
俺の事を何も知らないから貴方はそうやって、過去は忘れたらいいとか簡単に思ってしまえるんだな。
傷口に塩を塗り込む様な事を平気で言えるんだよな。
あぁ本当に……イライラする。━━━━
ルンルンの頭の中は、ケンヴィーに対する不満と苛立ちからの文句でいっぱいになった。
こちらが懸命に訴えても聞く耳を持たないケンヴィーに、もう何を言ってもムダなんだなとルンルンが小さく嗤う。
「はは……今後ー……ですかー……
えーと恋人同士になって、試しに肌を重ねてみようとかでしたっけ?
………でしたら、お望み通りに。」
ルンルンはベッドに腰掛けるケンヴィーの正面に立つと、ケンヴィーの両腕を掴んで乱暴に後ろに押し倒した。ケンヴィーの身体がベッドに沈むほど強く上から肩を押さえ込み、仰向けになったケンヴィーを冷めた目で見下ろす。
「ッえ…!?ルンルン?」
突然の事にルンルンを見上げるケンヴィーから驚きの声が上がる。
が、その声に焦りや不安な様子は無く、薄暗がりで見たケンヴィーの表情も普段通りなままだった。
━━俺に自分が傷付けられるなんて、思いもしないんだろうな━━
ケンヴィーが楽観主義者だと理解はしているが、警戒心も無い、その甘い考えにも腹が立つ。
ルンルンはケンヴィーが着ているネグリジェの裾を捲り上げて素足を出すと、ベッド縁に座った状態のまま揃えて曲げられたケンヴィーの膝を割り、脚間に身体をねじ込むようにして下肢を密着させる。
ケンヴィーからの抵抗は一切無かった。
「男を受け入れる側は願い下げなんで、ヴィーが俺を受け入れて下さい。
ヴィーはどちらもイケそうなんでしょ。」
「確かに言ったけど、ルンルン、あのね……ンッ」
「優しくしてくれなんて言わないで下さいねー。
優しい触れ方なんて……俺は知らないんで。」
何かを言い掛けたケンヴィーの口を片手で塞ぎ、ルンルンがしーっと指を一本立てた。
困り顔のケンヴィーが小さく頷くと、ルンルンはケンヴィーの口から手を離し、自身が身に着けている衣服を脱いで床に落とし始めた。
上半身が裸になったルンルンの肌には、薄暗がりでも見えるほどに大きく痛々しい傷痕が無数にあった。
表面が光沢のあるツルツルした状態の古い傷痕は、薄明かりを取り込んで鈍く光って見える。
流星の様にルンルンの身体を走る、一見切り傷に見えるいくつもの白い線は、全て肌を深く抉り削られた痕であり、溝のように肌より沈んだ位置にある。
それらはルンルンが幼い頃に受けた『酷い目』の凄惨さを語っていた。
ケンヴィーは思わず目を背けたくなる様相のルンルンの身体を、目を逸らさずにただジッと見続けている。
━━そんなに俺の傷だらけの身体が物珍しいのか。
だったら、もっと面白いモノを見せてやるよ。━━
ルンルンはケンヴィーの手を掴み、ケンヴィーの下肢に密着させているトラウザーズを履いたままの自身の股の間へとケンヴィーの手を運んだ。
「これが貴方の中に入るモノです。
…ほら…ちゃんと握って…愛でてやって下さい…。」
自身の最後の行動と言葉に、冷静さを欠くほどルンルンを支配していた苛立ちがスーッと消えていった。
ルンルンの言葉が詰まり、声が消え入りそうになる。
これ以上何も言える事は無く、そして自分はケンヴィーに対してこれ以上何も出来ない。
苛立ちから始まったケンヴィーに思い知らせてやるはずの行為は、結局は自身の後悔と、自虐的な行為でしかないのだと自分自身が思い知る事になる行為でしか無かった。
ルンルンは仰向けになったケンヴィーの両脇に手を置いてケンヴィーの顔を見下ろした態勢のまま、無言で動きを止めた。
まるで罪状が読み上げられるのを待つ罪人になったような気分になる。
ケンヴィーは言われるがままに、ルンルンの脚間にまで運ばれた手でトラウザーズの上からそっとその箇所に触れた。
軽く触れてから考えるかのように動きを止め、少し間を置いてからケンヴィーがルンルンのトラウザーズの内側に手を入れ、ルンルンの性器を探す。
ケンヴィーの手には何も握られる事が無かった。
その場に在るべき物は何も無く、ただ木を切り倒された後の切り株の様な、断面にも似たツルりとした皮膚があるだけ。
ケンヴィーは何かを言おうとしてルンルンと視線を合わせたが、何を言われるにしろ言葉を待つ事に耐えられなかったルンルンが、ケンヴィーより先に口を開いた。
「…………これで、分かったでしょう。
俺は人として身体も心も…欠けている……
だから人を愛せないし、愛される事もないのだと。」
ぬくぬく温室育ちの皇子サマに、『可哀想、辛かったよね』とか上っ面だけの憐憫の情を持たれるのは御免だと先に言葉を発したルンルンだったが、ケンヴィーの反応は意外だった。
「分かったでしょう?何を?
僕、全然分かんないんだけど。
これが、なんで人を愛せないし愛されない理由に?」
暗がりでも夜目の利くルンルンには、全く普段と変わらないキョトンとしたケンヴィーの顔がハッキリと見えた。
あまりにも通常通り過ぎて、ルンルンの方が面食らった感じになる。
「全然分かんない……なんで?…なんでって……
ヴィーは、頭が弱いんでしたっけ…?」
『可哀想』どころか『これでは性行為が出来ないね』と納得の言葉も無い。
「頭が弱いって。ヒドいなァ。
あのね、ルンルンが『それ』を理由にして愛せないだとか愛されないだとか言って人と打ち解ける事から逃げているのは分かったよ。」
逃げている━━確かにそうかも知れないが、他人に指摘されると腹立たしく感じてしまう。
だが個人的な人との関わりを持ちたくないだけで、ルンルンは殻に閉じこもって人と全く関わらないワケではない。
それなのに恋愛を拒否しただけでこの言われよう。
思わず一瞬だけ、ムッとした表情をしてしまった。
「僕が分からないのはね、ルンルンが身体が欠けているから自分は人としては不完全みたいな考え方をしているトコ。
戦争や事故で、身体の一部を失った人達に対して「愛される資格が無い」なんて思ったりしないよね。
なのに自分だけは、そうだと思ってるんだ。
性器が無くて性行為が出来ないからってだけじゃないよね。」
ルンルンの下で仰向けになっていたケンヴィーが上半身を起こしかけ、顔をグンとルンルンの間近に近付けた。
ケンヴィーに覆いかぶさるようにベッドに手を付いていたルンルンも、距離感を無視するケンヴィーを避けるようにガバっと反射的に身体を起こす。
逃げるように身体を起こしたルンルンはケンヴィーから少し距離を空けてベッドの隣に腰を下ろした。
「それも…ありますねぇ…
性器が無いから人を抱く事は勿論出来やしませんし…
受け入れ側は絶対に御免です。
だから自分は誰かと恋愛関係になるとか無理なんですよ。」
ルンルンは『特にヴィーと恋愛関係は絶対に無理』と言いたいのを堪えた。
言うだけ無駄だと思い知らされる事に疲れていた。
「何言ってるの。性行為が出来なくったって恋愛は出来るでしょ。
それに僕を、いつでもヤりたがりな性欲の権化みたいな兄上と一緒にしないでよね。」
身体を起こしたケンヴィーは、距離を空けて座るルンルンとの距離を詰めて太腿をピッタリ寄せ、上半身裸のままのルンルンに腕を絡ませ密着した。
抵抗する気力も無くなったルンルンは項垂れたように一度小さく頷くと、少し間を置いて何かに気付いたように顔を上げてボソッと呟く。
「……………さらっと聞き流すつもりでしたが、キリアン皇帝陛下は性欲の権化なんですか。
ヴィーの話では、陛下がお付き合いなさっているのがガイン様だと…。」
「兄上は有り余るほどの精力を持った性欲の権化だよ。
兄上の情欲はガインにしか受け止められないし、毎度受け入れなきゃならないガインは大変だよね。」
━━あまりにも信じがたいが…
あの熊みたいなガイン様の方が陛下にヤら…???━━
普段と変わらないケンヴィーの態度に毒気を抜かれ、苛立ちも臨界点を突き抜け過ぎて、呆れと諦めにも似た平常心を取り戻していたルンルンは、ぼんやりとキリアン皇帝とガインの情事を頭に描く。
そちらの方に意識を取られ、ルンルンはケンヴィーの顔が再び間近に迫っている事に気付かなかった。
「僕はルンルンが大好きだよ。
あの暗い森で、初めて会った時から大好きだった。
一目惚れってのかな?」
「は?それは恐怖から解放された安堵感を恋愛感情と勘違いした………ッヴィー!」
抵抗を忘れたままのルンルンの唇の端に、ケンヴィーの唇が柔らかく押し付けられた。
ルンルンは慌てて顔を離し、唇を離されたケンヴィーはベッドから立ち上がってルンルンの前に立つとルンルンの頭を胸に抱き締めて頭を何度も撫で始めた。
「………ヴィー?…今度はナニしてるんですか…。」
「ルンルンが可愛いなぁって。
恐怖心なんて最初から全く無かったよ。
あの森で僕がルンルンを初めて見た時に感じたのは安堵感ではなかったよ。
あれは…なんだろ…理由とか理屈とか関係無くルンルンと一生離れたくないって、側に居て欲しいって思った。
なんでなんだろうね。一目惚れってなんだと思う?」
「俺が知るわけ無いでしょ。」
ルンルンはケンヴィーの胸に顔を埋めるようにして、頭をグリグリと撫で回される。
先ほどまでの身体を重ね合わせた行為とは打って変わって、今度は子どもが慰められたり褒められているような行為。
ルンルンにはケンヴィーが言う、何の根拠も無い愛(?)の告白もよく分からない。
「ヴィーが言う事は、いつも根拠が無く突飛過ぎて…。
俺には毎度、理解出来ませんしね。」
「別に僕を理解しなくてもいいよ。無理して僕を愛さなくてもいい。僕が勝手にルンルンを愛し続けるから。
いつか無理してじゃなく、ルンルンが自然と僕を愛する日が来るのを諦めないから。」
━━うっわ、めんどくせぇ!━━
口には出さなかったが本音が小さな溜め息として漏れ出た。
ルンルンは一瞬「ヤベ」と僅かに焦り、漏らした溜め息を誤魔化すようにフンフンと鼻を鳴らして音を出す。
「だからルンルンはさ、自分を許してあげなよね。
ルンルンは自分だけが助かった事を、亡くなった兄弟に悪いと思ってるのかも知れないけど。
ルンルンは何にも悪くないんだから。」
「………別に…死んだ兄弟に対して罪悪感なんか…感じちゃいませんよ。………何にも…。」
死んだ兄弟に対する罪悪感なんて本当に無い━━
20年以上前の侵略戦争において、セレスティーヌ皇妃率いるベルゼルト国軍らがドナウツェードルンの王宮に攻め入り、城を陥落させた。
その際、王宮の庭園に隠された地下牢を見つけたヴィルムバッハ将軍が唯一生きていたルンルンを保護した。
━━あそこは地獄だった━━とヴィルムバッハ将軍は言う。
ベルゼルト国軍が王都まで攻め入って来た時点で、王の玩具とされた子ども達は地下牢に放置される事となった。
食事を与える事はおろか酷い怪我も傷も治療される事は無く、王の血を引く少年達は不衛生な場所で朽ちていった。
片腕を肩のすぐ下から失った者、足を太腿から失った者、この少年らは既に事切れており腐敗が進んでいた。
他にも、既に白骨化した子どもの遺骨が方々に散らばっており、そんな中でルンルンだけが唯一かろうじて息をしていた。
痩せ細ったルンルンを抱きかかえた将軍が牢を出ようとした時に、石壁に書かれた落書きのような物を見つけた。
あみだくじのように書かれたそれは、切り落とす箇所を決めるための、国王が最後にした『遊び』の跡だった。
くじの結果、切断場所が性器となったルンルンだけが、傷口の範囲が小さかった為か何とか数日生きながらえる事が出来た。
それでも、救出があと1日遅れていたら生きてはいなかっただろう。
「うおおおぉ!!殺しても…!殺しても殺し足りん!
こんなにも強い殺意をもって人を殺したいと思ったのは初めてだ!
今すぐ!今すぐわしが国王を殺してやる!!」
ルンルンは、自分を抱きかかえた将軍の怒り狂った様な咆哮を間近で聞いた。
恐ろしい声だったが、それがルンルンが生まれて初めて聞いた、自分に向けられた優しさの言葉だった。
安堵したように、ルンルンは将軍の腕の中で眠りについた。
目が覚めると治療が施されており、ベルゼルトに連れて来られたのちにヴィルムバッハ将軍の息子として迎え入れて貰った。
後日聞いた話では、激昂した将軍がドナウツェードルン王を見つけた時、王は既に首だけになっており、セレスティーヌ皇妃の剣先に刺さって掲げられている状態だったそうだ。
「死んだ兄弟に対する罪悪感なんて…これっぽっちも無いですねぇ。
ただ俺は、苦痛から解放され死んでゆく兄弟を見ていつも羨ましいと思っていた。
いつも自分が先に死にたいと思っていた。
死を望んでいたそんな俺が…今も生きている事があまりにも皮肉で。」
今でも、死に対する憧れのような感情が湧く事がある。
自分の生命を軽んじる癖がある。
自分は身体の一部と共に、人としての感情も何処か欠落しているのだろう。
「ふぅん。そうなんだ?
でも僕は恋人のルンルンが生きててくれて嬉しいし、この先もルンルンを死なせるつもりはないよ。」
━━ふぅんって。随分軽く言われたな……………
いつの間にか本人の承諾も無しに恋人に認定されてしまっているし。━━
「なんで俺なんすか……ヴィーだったら、もっと他にも良い相手が……」
「は?他?他って誰?
僕の恋人はルンルンでしょ。」
恋人認定が決定したら、ますます話が通用しなくなった。
そしてこの呼び方が覆る事は無いらしい。
もう「側近」って呼び方が「恋人」に変わっただけと思い込むしかない。
「勝手に言ってろ。…………ですね。」
頭が弱いケンヴィーの言う事をいちいち真に受けていたら精神が持たないとルンルンは諦めた。
自分は人を愛せないし愛される事も無いと思い続けてはいるが、逃げる事の出来ない執着にも似た一方的な好意を向けられたのならば仕方がない…のか?
拒否の姿勢だけは取り続けるつもりだが。
「いつまでも側に居てね!愛してるよ、ルンルン!」
「…………俺はヴィーを愛してはいませんけどね。」
勝手に言ってろ━━
この言葉をあれほど後悔する事になるとは…………
朝には早くもケンヴィーの恋人が自分だと将軍に報告がされており、翌日には邸に出入りする者たち全てに『ケンヴィー皇子殿下の恋人ルンルン』という立場が確立されていた。
その日から、邸のバルコニーで寄り添うようにくっついてガルバンゾー畑を眺める二人の姿が頻繁に見られるようになった。
「僕はルンルンの過去を可哀想だなんて言わないよ。
言ったって何も変わらないし、その過去を経てこそ今のルンルンがいるんだから。」
「過ぎた過去を可哀想だと同情する意味は無い。
それには俺も同意します。
言ってしまえば、ヴィーという変人に捕まった今の俺の方が余程可哀想です。」
━━あぁ……今日も空が青い…━━
外での仕事を終えたルンルンが邸に戻って来たのは深夜だった。
リスクィートの賊が邸侵入してからというもの、ルンルンは朝から晩まで領内を走り回り、ヴィルムバッハの兵士や部下達に指示を出して外敵の炙り出しや排除を続けた。
毎日クタクタになるまで邸に戻れないが、ケンヴィーの警護は将軍に任せきりにしてケンヴィーと顔を合わせる時間が減ったので、身体的疲労より精神的疲労の方が辛いと感じるルンルンとしては少なからず心穏やかで居られるとホッとしていた。
この日もルンルンは真っ暗な邸の裏口から、忍び込むように静かに邸内に入った。
ヴィーヴル国で隠密行動を身に着けたルンルンは夜目が利き、明かりを使わずとも暗い中で物音を立てずに行動が出来る。
ルンルンはいつものように、皆が寝静まり真っ暗になった邸の廊下を歩いて食堂に向かった。
食堂の奥にある厨房に行き、食品棚の隣に置かれた自分用のバスケットを手に取り食堂を出る。
バスケットの中にはパンと水の入った瓶、蓋のされた容器に入ったガルバンゾーのトマト煮が入っており、ルンルンはバスケットから取り出したパンを口に咥えながら暗い廊下を歩き、自室に向かった。
自室のドアの前に立った瞬間、ルンルンの顔が曇る。
部屋の中に居るであろう人物の気配を察知したルンルンは、思わず咥えたパンを風船のように膨らます勢いで、「はぁ~」と大きな溜め息をパンの中に吐き出した。
パンの咥えた部分だけを食いちぎると無理矢理飲み込み、パンの残りはバスケットに入れてから、ゆっくりとドアを開く。
暗い廊下に部屋の小さなランプの薄明かりが漏れ、廊下の壁には入り口に立つルンルンの影がぼんやりと滲むように浮かんだ。
「……ヴィー……もう勘弁して下さいよ……。」
部屋に入って閉めたドアに背を寄りかからせたルンルンは再び大きな溜め息をつき、憔悴しきった様子を見せながらベッドに腰掛けたケンヴィーにそう訴え掛けた。
だがケンヴィーはルンルンの訴えには何も答えず、薄明かりの中でコテンと首だけを傾げる。
その仕草が、よりルンルンを苛立たせた。
「ルンルンおかえり。最近凄く忙しいみたいだよね、お邸に居ない事が多いし。」
「ええ、忙しいんですよ。
だから凄く疲れてまして、早く休みたいんで…。」
「僕たち最近、あまり話せてないじゃない?
もっとちゃんと、ルンルンと話しをしたかったんだ。
僕達の今後についてとかさ。」
返事をしたルンルンの言葉を遮り、自身の意見を通す。
そんなケンヴィーに対してルンルンの苛立ちはとうとう限界を迎えた。
━━━━疲れてるから休みたいって言ってるのに、それを無視した上に話をしたいって?
僕達の今後?恋人とやらになる話の事か?
辛い過去は忘れて明るい未来を見ろとか、恋愛をしたら幸せになれるとか、また、そういうくだらない話?
確かに…俺が経験した地獄のような日々はもう遠い過去の話で、今の俺は苦痛を味わう事も無く日々を安穏と過ごせている。
だから、平凡な日常を送れるようになった今は幸せで、未来にはさらに幸せが待ってるとでも言うつもりか…。
俺の事を何も知らないから貴方はそうやって、過去は忘れたらいいとか簡単に思ってしまえるんだな。
傷口に塩を塗り込む様な事を平気で言えるんだよな。
あぁ本当に……イライラする。━━━━
ルンルンの頭の中は、ケンヴィーに対する不満と苛立ちからの文句でいっぱいになった。
こちらが懸命に訴えても聞く耳を持たないケンヴィーに、もう何を言ってもムダなんだなとルンルンが小さく嗤う。
「はは……今後ー……ですかー……
えーと恋人同士になって、試しに肌を重ねてみようとかでしたっけ?
………でしたら、お望み通りに。」
ルンルンはベッドに腰掛けるケンヴィーの正面に立つと、ケンヴィーの両腕を掴んで乱暴に後ろに押し倒した。ケンヴィーの身体がベッドに沈むほど強く上から肩を押さえ込み、仰向けになったケンヴィーを冷めた目で見下ろす。
「ッえ…!?ルンルン?」
突然の事にルンルンを見上げるケンヴィーから驚きの声が上がる。
が、その声に焦りや不安な様子は無く、薄暗がりで見たケンヴィーの表情も普段通りなままだった。
━━俺に自分が傷付けられるなんて、思いもしないんだろうな━━
ケンヴィーが楽観主義者だと理解はしているが、警戒心も無い、その甘い考えにも腹が立つ。
ルンルンはケンヴィーが着ているネグリジェの裾を捲り上げて素足を出すと、ベッド縁に座った状態のまま揃えて曲げられたケンヴィーの膝を割り、脚間に身体をねじ込むようにして下肢を密着させる。
ケンヴィーからの抵抗は一切無かった。
「男を受け入れる側は願い下げなんで、ヴィーが俺を受け入れて下さい。
ヴィーはどちらもイケそうなんでしょ。」
「確かに言ったけど、ルンルン、あのね……ンッ」
「優しくしてくれなんて言わないで下さいねー。
優しい触れ方なんて……俺は知らないんで。」
何かを言い掛けたケンヴィーの口を片手で塞ぎ、ルンルンがしーっと指を一本立てた。
困り顔のケンヴィーが小さく頷くと、ルンルンはケンヴィーの口から手を離し、自身が身に着けている衣服を脱いで床に落とし始めた。
上半身が裸になったルンルンの肌には、薄暗がりでも見えるほどに大きく痛々しい傷痕が無数にあった。
表面が光沢のあるツルツルした状態の古い傷痕は、薄明かりを取り込んで鈍く光って見える。
流星の様にルンルンの身体を走る、一見切り傷に見えるいくつもの白い線は、全て肌を深く抉り削られた痕であり、溝のように肌より沈んだ位置にある。
それらはルンルンが幼い頃に受けた『酷い目』の凄惨さを語っていた。
ケンヴィーは思わず目を背けたくなる様相のルンルンの身体を、目を逸らさずにただジッと見続けている。
━━そんなに俺の傷だらけの身体が物珍しいのか。
だったら、もっと面白いモノを見せてやるよ。━━
ルンルンはケンヴィーの手を掴み、ケンヴィーの下肢に密着させているトラウザーズを履いたままの自身の股の間へとケンヴィーの手を運んだ。
「これが貴方の中に入るモノです。
…ほら…ちゃんと握って…愛でてやって下さい…。」
自身の最後の行動と言葉に、冷静さを欠くほどルンルンを支配していた苛立ちがスーッと消えていった。
ルンルンの言葉が詰まり、声が消え入りそうになる。
これ以上何も言える事は無く、そして自分はケンヴィーに対してこれ以上何も出来ない。
苛立ちから始まったケンヴィーに思い知らせてやるはずの行為は、結局は自身の後悔と、自虐的な行為でしかないのだと自分自身が思い知る事になる行為でしか無かった。
ルンルンは仰向けになったケンヴィーの両脇に手を置いてケンヴィーの顔を見下ろした態勢のまま、無言で動きを止めた。
まるで罪状が読み上げられるのを待つ罪人になったような気分になる。
ケンヴィーは言われるがままに、ルンルンの脚間にまで運ばれた手でトラウザーズの上からそっとその箇所に触れた。
軽く触れてから考えるかのように動きを止め、少し間を置いてからケンヴィーがルンルンのトラウザーズの内側に手を入れ、ルンルンの性器を探す。
ケンヴィーの手には何も握られる事が無かった。
その場に在るべき物は何も無く、ただ木を切り倒された後の切り株の様な、断面にも似たツルりとした皮膚があるだけ。
ケンヴィーは何かを言おうとしてルンルンと視線を合わせたが、何を言われるにしろ言葉を待つ事に耐えられなかったルンルンが、ケンヴィーより先に口を開いた。
「…………これで、分かったでしょう。
俺は人として身体も心も…欠けている……
だから人を愛せないし、愛される事もないのだと。」
ぬくぬく温室育ちの皇子サマに、『可哀想、辛かったよね』とか上っ面だけの憐憫の情を持たれるのは御免だと先に言葉を発したルンルンだったが、ケンヴィーの反応は意外だった。
「分かったでしょう?何を?
僕、全然分かんないんだけど。
これが、なんで人を愛せないし愛されない理由に?」
暗がりでも夜目の利くルンルンには、全く普段と変わらないキョトンとしたケンヴィーの顔がハッキリと見えた。
あまりにも通常通り過ぎて、ルンルンの方が面食らった感じになる。
「全然分かんない……なんで?…なんでって……
ヴィーは、頭が弱いんでしたっけ…?」
『可哀想』どころか『これでは性行為が出来ないね』と納得の言葉も無い。
「頭が弱いって。ヒドいなァ。
あのね、ルンルンが『それ』を理由にして愛せないだとか愛されないだとか言って人と打ち解ける事から逃げているのは分かったよ。」
逃げている━━確かにそうかも知れないが、他人に指摘されると腹立たしく感じてしまう。
だが個人的な人との関わりを持ちたくないだけで、ルンルンは殻に閉じこもって人と全く関わらないワケではない。
それなのに恋愛を拒否しただけでこの言われよう。
思わず一瞬だけ、ムッとした表情をしてしまった。
「僕が分からないのはね、ルンルンが身体が欠けているから自分は人としては不完全みたいな考え方をしているトコ。
戦争や事故で、身体の一部を失った人達に対して「愛される資格が無い」なんて思ったりしないよね。
なのに自分だけは、そうだと思ってるんだ。
性器が無くて性行為が出来ないからってだけじゃないよね。」
ルンルンの下で仰向けになっていたケンヴィーが上半身を起こしかけ、顔をグンとルンルンの間近に近付けた。
ケンヴィーに覆いかぶさるようにベッドに手を付いていたルンルンも、距離感を無視するケンヴィーを避けるようにガバっと反射的に身体を起こす。
逃げるように身体を起こしたルンルンはケンヴィーから少し距離を空けてベッドの隣に腰を下ろした。
「それも…ありますねぇ…
性器が無いから人を抱く事は勿論出来やしませんし…
受け入れ側は絶対に御免です。
だから自分は誰かと恋愛関係になるとか無理なんですよ。」
ルンルンは『特にヴィーと恋愛関係は絶対に無理』と言いたいのを堪えた。
言うだけ無駄だと思い知らされる事に疲れていた。
「何言ってるの。性行為が出来なくったって恋愛は出来るでしょ。
それに僕を、いつでもヤりたがりな性欲の権化みたいな兄上と一緒にしないでよね。」
身体を起こしたケンヴィーは、距離を空けて座るルンルンとの距離を詰めて太腿をピッタリ寄せ、上半身裸のままのルンルンに腕を絡ませ密着した。
抵抗する気力も無くなったルンルンは項垂れたように一度小さく頷くと、少し間を置いて何かに気付いたように顔を上げてボソッと呟く。
「……………さらっと聞き流すつもりでしたが、キリアン皇帝陛下は性欲の権化なんですか。
ヴィーの話では、陛下がお付き合いなさっているのがガイン様だと…。」
「兄上は有り余るほどの精力を持った性欲の権化だよ。
兄上の情欲はガインにしか受け止められないし、毎度受け入れなきゃならないガインは大変だよね。」
━━あまりにも信じがたいが…
あの熊みたいなガイン様の方が陛下にヤら…???━━
普段と変わらないケンヴィーの態度に毒気を抜かれ、苛立ちも臨界点を突き抜け過ぎて、呆れと諦めにも似た平常心を取り戻していたルンルンは、ぼんやりとキリアン皇帝とガインの情事を頭に描く。
そちらの方に意識を取られ、ルンルンはケンヴィーの顔が再び間近に迫っている事に気付かなかった。
「僕はルンルンが大好きだよ。
あの暗い森で、初めて会った時から大好きだった。
一目惚れってのかな?」
「は?それは恐怖から解放された安堵感を恋愛感情と勘違いした………ッヴィー!」
抵抗を忘れたままのルンルンの唇の端に、ケンヴィーの唇が柔らかく押し付けられた。
ルンルンは慌てて顔を離し、唇を離されたケンヴィーはベッドから立ち上がってルンルンの前に立つとルンルンの頭を胸に抱き締めて頭を何度も撫で始めた。
「………ヴィー?…今度はナニしてるんですか…。」
「ルンルンが可愛いなぁって。
恐怖心なんて最初から全く無かったよ。
あの森で僕がルンルンを初めて見た時に感じたのは安堵感ではなかったよ。
あれは…なんだろ…理由とか理屈とか関係無くルンルンと一生離れたくないって、側に居て欲しいって思った。
なんでなんだろうね。一目惚れってなんだと思う?」
「俺が知るわけ無いでしょ。」
ルンルンはケンヴィーの胸に顔を埋めるようにして、頭をグリグリと撫で回される。
先ほどまでの身体を重ね合わせた行為とは打って変わって、今度は子どもが慰められたり褒められているような行為。
ルンルンにはケンヴィーが言う、何の根拠も無い愛(?)の告白もよく分からない。
「ヴィーが言う事は、いつも根拠が無く突飛過ぎて…。
俺には毎度、理解出来ませんしね。」
「別に僕を理解しなくてもいいよ。無理して僕を愛さなくてもいい。僕が勝手にルンルンを愛し続けるから。
いつか無理してじゃなく、ルンルンが自然と僕を愛する日が来るのを諦めないから。」
━━うっわ、めんどくせぇ!━━
口には出さなかったが本音が小さな溜め息として漏れ出た。
ルンルンは一瞬「ヤベ」と僅かに焦り、漏らした溜め息を誤魔化すようにフンフンと鼻を鳴らして音を出す。
「だからルンルンはさ、自分を許してあげなよね。
ルンルンは自分だけが助かった事を、亡くなった兄弟に悪いと思ってるのかも知れないけど。
ルンルンは何にも悪くないんだから。」
「………別に…死んだ兄弟に対して罪悪感なんか…感じちゃいませんよ。………何にも…。」
死んだ兄弟に対する罪悪感なんて本当に無い━━
20年以上前の侵略戦争において、セレスティーヌ皇妃率いるベルゼルト国軍らがドナウツェードルンの王宮に攻め入り、城を陥落させた。
その際、王宮の庭園に隠された地下牢を見つけたヴィルムバッハ将軍が唯一生きていたルンルンを保護した。
━━あそこは地獄だった━━とヴィルムバッハ将軍は言う。
ベルゼルト国軍が王都まで攻め入って来た時点で、王の玩具とされた子ども達は地下牢に放置される事となった。
食事を与える事はおろか酷い怪我も傷も治療される事は無く、王の血を引く少年達は不衛生な場所で朽ちていった。
片腕を肩のすぐ下から失った者、足を太腿から失った者、この少年らは既に事切れており腐敗が進んでいた。
他にも、既に白骨化した子どもの遺骨が方々に散らばっており、そんな中でルンルンだけが唯一かろうじて息をしていた。
痩せ細ったルンルンを抱きかかえた将軍が牢を出ようとした時に、石壁に書かれた落書きのような物を見つけた。
あみだくじのように書かれたそれは、切り落とす箇所を決めるための、国王が最後にした『遊び』の跡だった。
くじの結果、切断場所が性器となったルンルンだけが、傷口の範囲が小さかった為か何とか数日生きながらえる事が出来た。
それでも、救出があと1日遅れていたら生きてはいなかっただろう。
「うおおおぉ!!殺しても…!殺しても殺し足りん!
こんなにも強い殺意をもって人を殺したいと思ったのは初めてだ!
今すぐ!今すぐわしが国王を殺してやる!!」
ルンルンは、自分を抱きかかえた将軍の怒り狂った様な咆哮を間近で聞いた。
恐ろしい声だったが、それがルンルンが生まれて初めて聞いた、自分に向けられた優しさの言葉だった。
安堵したように、ルンルンは将軍の腕の中で眠りについた。
目が覚めると治療が施されており、ベルゼルトに連れて来られたのちにヴィルムバッハ将軍の息子として迎え入れて貰った。
後日聞いた話では、激昂した将軍がドナウツェードルン王を見つけた時、王は既に首だけになっており、セレスティーヌ皇妃の剣先に刺さって掲げられている状態だったそうだ。
「死んだ兄弟に対する罪悪感なんて…これっぽっちも無いですねぇ。
ただ俺は、苦痛から解放され死んでゆく兄弟を見ていつも羨ましいと思っていた。
いつも自分が先に死にたいと思っていた。
死を望んでいたそんな俺が…今も生きている事があまりにも皮肉で。」
今でも、死に対する憧れのような感情が湧く事がある。
自分の生命を軽んじる癖がある。
自分は身体の一部と共に、人としての感情も何処か欠落しているのだろう。
「ふぅん。そうなんだ?
でも僕は恋人のルンルンが生きててくれて嬉しいし、この先もルンルンを死なせるつもりはないよ。」
━━ふぅんって。随分軽く言われたな……………
いつの間にか本人の承諾も無しに恋人に認定されてしまっているし。━━
「なんで俺なんすか……ヴィーだったら、もっと他にも良い相手が……」
「は?他?他って誰?
僕の恋人はルンルンでしょ。」
恋人認定が決定したら、ますます話が通用しなくなった。
そしてこの呼び方が覆る事は無いらしい。
もう「側近」って呼び方が「恋人」に変わっただけと思い込むしかない。
「勝手に言ってろ。…………ですね。」
頭が弱いケンヴィーの言う事をいちいち真に受けていたら精神が持たないとルンルンは諦めた。
自分は人を愛せないし愛される事も無いと思い続けてはいるが、逃げる事の出来ない執着にも似た一方的な好意を向けられたのならば仕方がない…のか?
拒否の姿勢だけは取り続けるつもりだが。
「いつまでも側に居てね!愛してるよ、ルンルン!」
「…………俺はヴィーを愛してはいませんけどね。」
勝手に言ってろ━━
この言葉をあれほど後悔する事になるとは…………
朝には早くもケンヴィーの恋人が自分だと将軍に報告がされており、翌日には邸に出入りする者たち全てに『ケンヴィー皇子殿下の恋人ルンルン』という立場が確立されていた。
その日から、邸のバルコニーで寄り添うようにくっついてガルバンゾー畑を眺める二人の姿が頻繁に見られるようになった。
「僕はルンルンの過去を可哀想だなんて言わないよ。
言ったって何も変わらないし、その過去を経てこそ今のルンルンがいるんだから。」
「過ぎた過去を可哀想だと同情する意味は無い。
それには俺も同意します。
言ってしまえば、ヴィーという変人に捕まった今の俺の方が余程可哀想です。」
━━あぁ……今日も空が青い…━━
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