王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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赤城 玲音 続篇

第8話

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▼「足、診せろ」
「...っ!」
渚は早速治療をはじめた。
▼「これは...」
◆「渚?」
▼「思った以上に酷いな。何無理させたんだ」
◆「それは、」
「私が悪いの!」
玲音が何かを言う前に、黒羽はそれを遮った。
「私がちょっと色々あって、それで...」
▼「言いたくないなら聞かない。ただ、恋人なら泣かさずちゃんと守ってやれ、玲音」
◆「...そう、だな」
玲音は瞳を潤ませた。
渚は玲音が何かを後悔していることを見抜いていた。
◇「お小言は私の役目」
♪「僕だっているんだし、そこまでにしてあげてよ」
▼「そうだな」
渚はそそくさと帰っていく。
四人はその背中を見送り、黒羽の足を見た。
赤くなったその足を見ながら、美音は少し怒り気味に言った。
◇「こんなに酷くなるまで堪えていたの?」
「ごめんなさい...」
♪「玲音、あのね...渚は何かに気づいてる。でも、安易に話せる内容じゃないから気をつけないと」
◆「頭が真っ白になっちまったんだ。どうしたらいいのか、分からなくなった。でも、ごめん!」
♪◇「二人とも目が離せないんだから...」
(美音にも錬にも心配かけちゃったな...。それにしても、今...)
「...二人とも、息ぴったりだね」
◆「...ほんとにな」
一瞬の沈黙が流れたあと、四人はお互いの顔を見あわせ笑った。
◆「美音も錬も、昔から面倒見がいいからな...」
「そうなの?」
◇「よく分からないけど、玲音がちょっと目を離したらすぐ危険なことばかりするからだと思う」
♪「僕も同感」
◆「学生の頃は錬の方がドジだったのに」
♪「それはなしでしょ!」
そんな三人の会話を、黒羽は微笑ましそうに...少し寂しそうに見ていた。
その視線に美音が気づいたことは、美音本人しか知らない。
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