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7.眠れない夜に
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少しぎこちなくなった雰囲気で夜を迎えた。
顔を合わせて食事をして、湯浴みを済ませてベッドに潜り込んだ。
いつも通りにしようと努めたが、目を合わせることが難しくて。会話もままならなくてもどかしい時間だった。
発作が起きると、薬を飲んで落ち着けばいつも通りの日常に戻った。
今までは、そうだった。
だけど今までどう過ごしていたのか忘れてしまったようで、わからなくなって戸惑って、ベッドの中で並んでもただ静かに目を閉じるだけだった。
ギルバートは目を閉じると、昼間の出来事を振り返った。
発作が起きた瞬間、目の前が真っ暗になった。
息が吸えなくて、吐けなくて、痙攣する心臓で胸が苦しくて、藻掻いてどうすることもできないまま意識が遠のいていく。
死がやってくる。そう感じた。
彼女と同じ時を過ごして、同じ景色を見て、隣にいる彼女の姿を見つめて、彼女の名を口ずさんでいたかった。ずっと。
最後に伝えたいことを何一つ言えなくて、別れの挨拶もできないことが悲しくて、後悔が津波のように押し寄せると、それまで絶え絶えだった息が止まった。
息をしたくても、その通り道である唇を塞がれて難しくなったから。
息をしたくて微かに動いていた喉の奥に、舌を伝って甘い液体が流れ込んでくる。それを、こくりと飲み込んだ。
甘く感じた。いつも飲んでる薬はとても苦い。さきほども喉を通ったばかりの苦味を思い出したけれど、甘味で上書きされた。
美味しい、と思った。もっと味わいたい。飲みたい。体が欲した。
口に入ってきたそれに吸い付いて、舐めた。
食事をしていても、こんなに美味しく感じたことはなかった。ひどく飢えた状態のときもそうだった。
夢中で舐めていると唾液が溢れて、それを飲み込んでまた舐めた。
アリシアの藻掻く声が聞こえて、我に返るまで。
目を開けると、これ以上はくっつけない距離にあるアリシアの顔。繋がった唇の間でねっとりと絡み合う舌の感触に、ビクリと腰が跳ねた。
今している行為に気付いた途端、頭に熱が上った。
あの甘美な味を知ってしまった。
思い出して、喉の奥からよみがえる甘い味が口の中を蕩けさせると、下腹部に欲望が渦巻くのを感じて耐え切れずに熱い息を大きく、一息吐いた。
(眠れない……)
悶々とした気持ちを振り払うように、アリシアが横たわる方向に寝返りを打って目を開けた。
眠る彼女を見つめて、唇に触れて指先から熱を感じたかった。いつものように。
「……あ」
菫色の瞳と目が合った。
アリシアも思いがけない状況だったのか、ギルバートと同時に声が出て、気まずくなった雰囲気に瞳を伏せて、ぽつりと零した。
「……眠れ、ないの」
眠れないことの何が恥ずかしいのか、もぞもぞとシーツを指先で撫でていた。
その指先の仕草を見てから、いつもの癖でアリシアの唇に視線を流すと、冷めない熱が喉に渇きを感じさせた。
「……シア」
呼ぶと、彼女はこちらを見てくれる。いつもそうだから。
だけど今日はそれを躊躇して、戸惑いながら伏せた目をゆっくりと上げた。
月明かりの中で、アリシアの瞳の色を見ることは困難だけど、揺れた眼差しが昼間に交わした視線と同じことに気付くと、ギルバートの胸が震えた。
「ギル……」
何度も聞いて慣れているはずの声が、ギルバートの欲望を刺激した。
毎晩、寝息を立てて静かに眠る彼女の熱を感じたくて、手を伸ばした。アリシアの唇は、小さくて、柔らかくて、撫でながら想像した。口の中にこの指を入れたら、もっと熱いのだろうか。どれだけ、甘美な感触と味がするのか……。
密かに過ごした欲望の渦を巻いた夜のように、今も体が疼いている。
アリシアの唇に指先を持って行って、触れると小さい口がぴくりと動いて、物言いたげな顔で見つめてくるアリシアに渇きを覚えた喉が、ごくりと唾を飲んだ。
「シア」
ずっと望んでいた触れ合い。
儚い夢だと諦めていたその望みが今日叶って、それ以上を望んでしまう。
味を知ってしまったから、止まらなかった。
「キスを……したい」
それと、もっと深いところまで――。
「……うん」
アリシアも、昼間の熱に魘されていた。
目を瞑ると、ギルバートが倒れた場面が思い出されて、彼が死んでしまうと思った恐怖がよみがえって目を開けた。
目を開けていると、彼に吸われた舌の痺れを思い出して胸が震えた。
あの熱を忘れられない。もっとして欲しくて、快感を覚えた体が疼いて、頭の中が忙しなくて眠れなかったので、横を向いてギルバートを見つめていた。
手を伸ばして、彼のシャツを掴んで、強請れば望みを叶えてくれるだろうか。
そう思っていた矢先にこちらを向いたギルバートと目が合った。
自分がそんなことを考えていたことを覚られたと思って、目が合った瞬間恥ずかしさが込み上げた。
ギルバートを求めて疼くこの体に慣れていなくて眠れなかったのだと伝えたくて、どう言葉にすればいいのかわからなくて、もどかしかった。
そして今、ギルバートが欲してくれた。
同じ気持ちだったから、嬉しくてアリシアは素直に聞き入れた。
彼の望みを受け入れるために、身を寄せる。
互いの視線がぶつかると、揺れる瞳を絡ませた。
熱い吐息が混ざって、口を合わせた。
感触を確かめるように唇をぶつけて、一度離して今度はアリシアの下唇を吸ってみた。
アリシアもギルバートの唇を吸ってみたくて、口をぱくぱくさせて迫った。
何度か吸って吸われてを繰り返して、口を合わせる音と感触を堪能していると、ギルバートがアリシアの唇を舐めた。
ぞくぞくと肩が震えると、その肩を抱き締めて距離を詰めたギルバートの舌がアリシアの口の中にぬるりと入ってくる。
ぶつかった舌を舐め合っていると、溢れた唾液が絡み合ってくちゅくちゅと音を立てた。
「はあ……ん」
舌を吸われて、ビリビリと痺れを感じた。
感じているのは口の中なのに、全身に熱が広がって、特に下腹部が熱くて、足をもじもじと動かした。
そこに脚の間に硬いものが当たってきて、敏感になった下半身が跳ねたことに驚いて口を離した。
「ギ、ル……?」
ギルバートがアリシアの腰を引き寄せて、自分の欲望で反り起ったそれを押し当てていた。
ただ、それだけの行為なのにアリシアの背中がゾクゾクと震えた。
体の向きが仰向けに変わったアリシアを見下ろすギルバートの顔が高騰して耳まで赤くなっていたが、月明かりだけの部屋の中でそれを確認することはできなかった。
代わりに、熱い息を吐いて漏れる声が興奮している彼を明確にしてくれた。
「あ……!」
押し当てたところをぐりぐりと擦り合わせると、アリシアの腰がビクビクと揺れた。
着衣の上からの行為で、これが露わになった状態であったなら……ギルバートは卑猥な行為を望む欲望に思考が奪われていた。
繋がりたい。彼女の深いところまで。
求める気持ちが強くなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって、アリシアの首にかぶりついた。
「ああ!」
強めに噛まれたから、痛みで体が捩れて、瞑った瞼に涙が滲んだ。
痛みを与えられたそこを今度は、舐めて、吸われる。
「あぁ……っ」
痛みと快感が交互に襲う。痛いのに、気持ちがいい。よくわからない感覚に頭がおかしくなりそうで、アリシアの呼吸が荒くなって漏れる声が抑えられなかった。
腰を浮かして悶えるアリシアを追い詰めるように、ギルバートの口が今度は肩を噛んだ。
聴覚を刺激するアリシアの喘ぐ声が、ギルバートの渦巻く欲望を際立たせる。
手のひらで彼女の腹を撫でると、ビクリと腰が跳ねた。
撫でながら移動して、膨らんで柔らかい胸を撫でると、指先に硬くなった突起が触れた。
「うぅ!」
アリシアの体の反応を見るに、ここは敏感な箇所で、それも嫌ではないのだろう。
擦ったり、指で摘まんでみると、アリシアの声が激しくなっていって、腰を揺らしていた。
弄っていたのを止めると、声が止んだ。
乱れた呼吸を整えるアリシアの着衣の肩紐をずらして、彼女の胸を露わにした。
眺める余裕もないので、すぐに柔らかい肉を口に含むと、またアリシアの声が吐き出された。
甘い香りが鼻をくすぐった。特に谷間辺りが強く香った。
火照ったアリシアの体から滲む汗を舐め取って、甘い味が口の中に広がって、飲み込んで喉の奥で味わった。もっと味わいたいから、噛んで刺激した。
アリシアの体のあちこちでそれを繰り返した。
アリシアの甘い声に蕩けて、快楽に溺れていた。
夢中になって貪ったアリシアの肌から唇を離すと、呼吸が乱れて眩暈がする。
目を開けているのがつらい。
だけど、もっと触れたい。もっと……。
「……ギル?」
アリシアの胸に顔を埋めて動きを止めたままのギルバートの様子に気が付いて、声を掛けた。
ギルバートの返事はなくて、呼吸を整えようとする息だけが聞こえた。
ふと、昼間の恐怖が蘇って慌ててギルバートをベッドに横たわらせた。目を瞑ったままの顔に触れると、ひやりと冷たい。
血の気が引いていく。先程まで感じていた熱が一瞬にして冷めてしまった。
(なんで?血が足りなかった?)
アリシアは焦った。もっと飲ませないと。次はどこを斬り付けようか、刃物……何か、どこに。
おろおろとするアリシアの手がギルバートの顔に触れたまま、震えていた。
「シア……」
ほとんど息と変わらない声でアリシアを呼んだ。
これは発作じゃない。大丈夫だと安心させたくて、力が入らない手を彼女の手に重ねた。
胸が苦しい。だけど、発作のときのそれとは違った。
「……疲れた、だけ」
話す力も弱くて、声が小さくなる。
「ごめん……」
体力の無さに嫌気が差す。
中途半端に欲望をぶつけただけのみっともない姿……情けない姿を、アリシアに見せたことが恥ずかしくて申し訳なくなった。
「……ごめんね」
もう一度、小さく言うと意識が遠のいた。
顔を合わせて食事をして、湯浴みを済ませてベッドに潜り込んだ。
いつも通りにしようと努めたが、目を合わせることが難しくて。会話もままならなくてもどかしい時間だった。
発作が起きると、薬を飲んで落ち着けばいつも通りの日常に戻った。
今までは、そうだった。
だけど今までどう過ごしていたのか忘れてしまったようで、わからなくなって戸惑って、ベッドの中で並んでもただ静かに目を閉じるだけだった。
ギルバートは目を閉じると、昼間の出来事を振り返った。
発作が起きた瞬間、目の前が真っ暗になった。
息が吸えなくて、吐けなくて、痙攣する心臓で胸が苦しくて、藻掻いてどうすることもできないまま意識が遠のいていく。
死がやってくる。そう感じた。
彼女と同じ時を過ごして、同じ景色を見て、隣にいる彼女の姿を見つめて、彼女の名を口ずさんでいたかった。ずっと。
最後に伝えたいことを何一つ言えなくて、別れの挨拶もできないことが悲しくて、後悔が津波のように押し寄せると、それまで絶え絶えだった息が止まった。
息をしたくても、その通り道である唇を塞がれて難しくなったから。
息をしたくて微かに動いていた喉の奥に、舌を伝って甘い液体が流れ込んでくる。それを、こくりと飲み込んだ。
甘く感じた。いつも飲んでる薬はとても苦い。さきほども喉を通ったばかりの苦味を思い出したけれど、甘味で上書きされた。
美味しい、と思った。もっと味わいたい。飲みたい。体が欲した。
口に入ってきたそれに吸い付いて、舐めた。
食事をしていても、こんなに美味しく感じたことはなかった。ひどく飢えた状態のときもそうだった。
夢中で舐めていると唾液が溢れて、それを飲み込んでまた舐めた。
アリシアの藻掻く声が聞こえて、我に返るまで。
目を開けると、これ以上はくっつけない距離にあるアリシアの顔。繋がった唇の間でねっとりと絡み合う舌の感触に、ビクリと腰が跳ねた。
今している行為に気付いた途端、頭に熱が上った。
あの甘美な味を知ってしまった。
思い出して、喉の奥からよみがえる甘い味が口の中を蕩けさせると、下腹部に欲望が渦巻くのを感じて耐え切れずに熱い息を大きく、一息吐いた。
(眠れない……)
悶々とした気持ちを振り払うように、アリシアが横たわる方向に寝返りを打って目を開けた。
眠る彼女を見つめて、唇に触れて指先から熱を感じたかった。いつものように。
「……あ」
菫色の瞳と目が合った。
アリシアも思いがけない状況だったのか、ギルバートと同時に声が出て、気まずくなった雰囲気に瞳を伏せて、ぽつりと零した。
「……眠れ、ないの」
眠れないことの何が恥ずかしいのか、もぞもぞとシーツを指先で撫でていた。
その指先の仕草を見てから、いつもの癖でアリシアの唇に視線を流すと、冷めない熱が喉に渇きを感じさせた。
「……シア」
呼ぶと、彼女はこちらを見てくれる。いつもそうだから。
だけど今日はそれを躊躇して、戸惑いながら伏せた目をゆっくりと上げた。
月明かりの中で、アリシアの瞳の色を見ることは困難だけど、揺れた眼差しが昼間に交わした視線と同じことに気付くと、ギルバートの胸が震えた。
「ギル……」
何度も聞いて慣れているはずの声が、ギルバートの欲望を刺激した。
毎晩、寝息を立てて静かに眠る彼女の熱を感じたくて、手を伸ばした。アリシアの唇は、小さくて、柔らかくて、撫でながら想像した。口の中にこの指を入れたら、もっと熱いのだろうか。どれだけ、甘美な感触と味がするのか……。
密かに過ごした欲望の渦を巻いた夜のように、今も体が疼いている。
アリシアの唇に指先を持って行って、触れると小さい口がぴくりと動いて、物言いたげな顔で見つめてくるアリシアに渇きを覚えた喉が、ごくりと唾を飲んだ。
「シア」
ずっと望んでいた触れ合い。
儚い夢だと諦めていたその望みが今日叶って、それ以上を望んでしまう。
味を知ってしまったから、止まらなかった。
「キスを……したい」
それと、もっと深いところまで――。
「……うん」
アリシアも、昼間の熱に魘されていた。
目を瞑ると、ギルバートが倒れた場面が思い出されて、彼が死んでしまうと思った恐怖がよみがえって目を開けた。
目を開けていると、彼に吸われた舌の痺れを思い出して胸が震えた。
あの熱を忘れられない。もっとして欲しくて、快感を覚えた体が疼いて、頭の中が忙しなくて眠れなかったので、横を向いてギルバートを見つめていた。
手を伸ばして、彼のシャツを掴んで、強請れば望みを叶えてくれるだろうか。
そう思っていた矢先にこちらを向いたギルバートと目が合った。
自分がそんなことを考えていたことを覚られたと思って、目が合った瞬間恥ずかしさが込み上げた。
ギルバートを求めて疼くこの体に慣れていなくて眠れなかったのだと伝えたくて、どう言葉にすればいいのかわからなくて、もどかしかった。
そして今、ギルバートが欲してくれた。
同じ気持ちだったから、嬉しくてアリシアは素直に聞き入れた。
彼の望みを受け入れるために、身を寄せる。
互いの視線がぶつかると、揺れる瞳を絡ませた。
熱い吐息が混ざって、口を合わせた。
感触を確かめるように唇をぶつけて、一度離して今度はアリシアの下唇を吸ってみた。
アリシアもギルバートの唇を吸ってみたくて、口をぱくぱくさせて迫った。
何度か吸って吸われてを繰り返して、口を合わせる音と感触を堪能していると、ギルバートがアリシアの唇を舐めた。
ぞくぞくと肩が震えると、その肩を抱き締めて距離を詰めたギルバートの舌がアリシアの口の中にぬるりと入ってくる。
ぶつかった舌を舐め合っていると、溢れた唾液が絡み合ってくちゅくちゅと音を立てた。
「はあ……ん」
舌を吸われて、ビリビリと痺れを感じた。
感じているのは口の中なのに、全身に熱が広がって、特に下腹部が熱くて、足をもじもじと動かした。
そこに脚の間に硬いものが当たってきて、敏感になった下半身が跳ねたことに驚いて口を離した。
「ギ、ル……?」
ギルバートがアリシアの腰を引き寄せて、自分の欲望で反り起ったそれを押し当てていた。
ただ、それだけの行為なのにアリシアの背中がゾクゾクと震えた。
体の向きが仰向けに変わったアリシアを見下ろすギルバートの顔が高騰して耳まで赤くなっていたが、月明かりだけの部屋の中でそれを確認することはできなかった。
代わりに、熱い息を吐いて漏れる声が興奮している彼を明確にしてくれた。
「あ……!」
押し当てたところをぐりぐりと擦り合わせると、アリシアの腰がビクビクと揺れた。
着衣の上からの行為で、これが露わになった状態であったなら……ギルバートは卑猥な行為を望む欲望に思考が奪われていた。
繋がりたい。彼女の深いところまで。
求める気持ちが強くなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって、アリシアの首にかぶりついた。
「ああ!」
強めに噛まれたから、痛みで体が捩れて、瞑った瞼に涙が滲んだ。
痛みを与えられたそこを今度は、舐めて、吸われる。
「あぁ……っ」
痛みと快感が交互に襲う。痛いのに、気持ちがいい。よくわからない感覚に頭がおかしくなりそうで、アリシアの呼吸が荒くなって漏れる声が抑えられなかった。
腰を浮かして悶えるアリシアを追い詰めるように、ギルバートの口が今度は肩を噛んだ。
聴覚を刺激するアリシアの喘ぐ声が、ギルバートの渦巻く欲望を際立たせる。
手のひらで彼女の腹を撫でると、ビクリと腰が跳ねた。
撫でながら移動して、膨らんで柔らかい胸を撫でると、指先に硬くなった突起が触れた。
「うぅ!」
アリシアの体の反応を見るに、ここは敏感な箇所で、それも嫌ではないのだろう。
擦ったり、指で摘まんでみると、アリシアの声が激しくなっていって、腰を揺らしていた。
弄っていたのを止めると、声が止んだ。
乱れた呼吸を整えるアリシアの着衣の肩紐をずらして、彼女の胸を露わにした。
眺める余裕もないので、すぐに柔らかい肉を口に含むと、またアリシアの声が吐き出された。
甘い香りが鼻をくすぐった。特に谷間辺りが強く香った。
火照ったアリシアの体から滲む汗を舐め取って、甘い味が口の中に広がって、飲み込んで喉の奥で味わった。もっと味わいたいから、噛んで刺激した。
アリシアの体のあちこちでそれを繰り返した。
アリシアの甘い声に蕩けて、快楽に溺れていた。
夢中になって貪ったアリシアの肌から唇を離すと、呼吸が乱れて眩暈がする。
目を開けているのがつらい。
だけど、もっと触れたい。もっと……。
「……ギル?」
アリシアの胸に顔を埋めて動きを止めたままのギルバートの様子に気が付いて、声を掛けた。
ギルバートの返事はなくて、呼吸を整えようとする息だけが聞こえた。
ふと、昼間の恐怖が蘇って慌ててギルバートをベッドに横たわらせた。目を瞑ったままの顔に触れると、ひやりと冷たい。
血の気が引いていく。先程まで感じていた熱が一瞬にして冷めてしまった。
(なんで?血が足りなかった?)
アリシアは焦った。もっと飲ませないと。次はどこを斬り付けようか、刃物……何か、どこに。
おろおろとするアリシアの手がギルバートの顔に触れたまま、震えていた。
「シア……」
ほとんど息と変わらない声でアリシアを呼んだ。
これは発作じゃない。大丈夫だと安心させたくて、力が入らない手を彼女の手に重ねた。
胸が苦しい。だけど、発作のときのそれとは違った。
「……疲れた、だけ」
話す力も弱くて、声が小さくなる。
「ごめん……」
体力の無さに嫌気が差す。
中途半端に欲望をぶつけただけのみっともない姿……情けない姿を、アリシアに見せたことが恥ずかしくて申し訳なくなった。
「……ごめんね」
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