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第2章:人形を辞めて人間として
12.永遠の絆
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「サラさん、これまでお世話になりました」
「えぇ、これからも元気でいるのよ」
サラさんに看病されてから数日が経ち、私は今日セントリア家に戻ろうとしていた。
足もいつも通り動かせるようになったし、完全に元通りだ。
「帰りに少し街でも寄ろうかしら」
そういえばランの事件の日、街に出かけようとしていたんだった。
あの日は色々とあって結局お出かけどころじゃなくなってしまったし……日が暮れるまでにセントリア家に着けば問題は無いだろう。
「それじゃあ、お出かけしに行きますか」
自分で自分を誘い、サラさんの薬屋から出て歩みを進める。
気持ちいい風が吹き、辺りに軽快な音楽が奏でられる。なんだか新しい街に来たような気分のまま、ナルは目的も決めずに街に出る。
まるで独り立ちした子供のように──
◇◇◇
目的を決めていないが、たまにはこのようなお出かけも良いかもしれない。
適当に街をさまよって、気になったお店に入る。
自分で自分の好きなように行動ができることは、人生の中でも僅かな時間しか出来ていなかったからか、この時間はとても楽しい。
「あそこは……?」
店と店の間の狭い裏路地の先に、この街に合わない古い木製のお店が開かれていた。
──コツコツコツ
ナルはそのお店へと歩みを進める。
その裏路地を通り抜けると、少し開けた場所にそのお店一つだけがポツンと建っていた。
──ガラガラ
「ここは……宝石屋?」
今どき珍しい形の扉を開けると、思わず目が奪われるほど美しい輝きを放っている宝石が、辺りに並んでいた。
宝石だけの物もあるが、ほとんどが指輪やネックレス、アンクレットなどのアクセサリー系の物が多い。
隠れた場所にある割にはこのお店は広く、客もぼちぼち集まっている。
ナルは品物に目を通しながら、そのアクセサリーを見て楽しむ。
「何か、欲しいものはありますか?」
いつの間にか隣に立っていた、綺麗なネックレスを首につけた女性が、ナルに話しかける。
「いえ、たまたま通りかかって、惹き付けられるように来たんです」
先程まで見ていたブレスレットから目を離したナルは、その女性と目を合わせてそう言葉をつく。
「そうですか、ゆっくりと見てくださいね」
そう言いながら女性はクルリと振り返り、店の裏側へと戻ろうとする。
「少し……よろしいですか?」
気がつけばナルは、その女性を呼びとめていた。
「はい、どうしました?」
愛想の良いニコッとした笑顔のまま、女性は上半身だけ捻り伺う。
「その……どうしてここにお店を建てられたのですか?」
このお店の品物を見た限り、どれも美しく、加工された宝石はまるで一等星のように光り輝いていた。
こんなに綺麗に細工ができる人は、私が見た事がない。ここレイフェル王国でも、フォルティア王国でも。
こんなに素晴らしいお店なのに、こんな街の裏に建てているのはなぜか……そう思うことは、そんなに不思議な事でもない。
「……少し長くなりますが、聞いてくれますか?」
「はい、私が聞いた話ですから」
「それでは……」と言いながら、その女性は別室へと私を案内し、椅子に腰をかけてから話し始めてくれた。
◇
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私はハルと申します。好きに呼んでもらって構いません」
それに呼応するようにナルも自己紹介をし、ハルはナルさんですね、と口に出して確認する。
「それでは本題に入りますが……このお店、私のお店ではないんです」
「……え?」
思わずその素っ頓狂な声が出た。
「あ、でも全く無関係な訳ではなく、私の祖父のお店なんです」
そういう事か……と少し力が抜けたナルを見ながら、その女性は話の続きを話す。
「このお店の宝石の細工、加工から何まで、祖父が一人で行っていたんです。けれど先日祖父が病で倒れてしまって、今は働けない状況で……」
少し声に力が無くなっていくハルの声を、ナルは静かに聞いていた。
「祖父は小さい頃に両親を亡くした私を、一人でここまで育ててくれんです。それに思い入れのあるこのお店を潰したくなくて、今は私が切り盛りしているのですが……やっぱり私には祖父のように上手く細工も加工も出来ないですし、お客さんとの上手な接し方も分からなくて……祖父にも、そんなに頑張らなくてもいいと言われてしまって……」
目尻に涙を浮かべながら、ハルさんは「長々と話してすみません」と頭を下げた。
もう、このお店は潰れてしまうのだろうか?
ハルさんが全力で頑張っていることは分かる。だけど、それにもいつかは限界が来るは確か。
このお店を失くすのは、民にとって、国にとって、とても惜しいことだと私は思う。
この素晴らしい宝石が、それを決定づけている。
◇
話が終わった後、私はお店を出る前にハルさんに話しかける。
「このブレスレット、買ってもいいですか?」
「は、はい」
その後、私はその透き通るダイヤモンドが埋め込まれたブレスレットを買って、店を出た。
セントリア家に戻ろう。
そしてカイル様に、一つだけお願いをしてみよう──
◇◇◇
お店を出ていくナルを見ながら、ハルは一つ疑問に思う。
ナルさんが買ったのは、ダイヤモンドのブレスレット。
ダイヤモンドの石言葉には『永遠の絆』というものがある。ナルさんは、そのことを知っているのだろうか?
その疑問の正解は、思ったよりもすぐに、ハルは気がつくことになる──────
「えぇ、これからも元気でいるのよ」
サラさんに看病されてから数日が経ち、私は今日セントリア家に戻ろうとしていた。
足もいつも通り動かせるようになったし、完全に元通りだ。
「帰りに少し街でも寄ろうかしら」
そういえばランの事件の日、街に出かけようとしていたんだった。
あの日は色々とあって結局お出かけどころじゃなくなってしまったし……日が暮れるまでにセントリア家に着けば問題は無いだろう。
「それじゃあ、お出かけしに行きますか」
自分で自分を誘い、サラさんの薬屋から出て歩みを進める。
気持ちいい風が吹き、辺りに軽快な音楽が奏でられる。なんだか新しい街に来たような気分のまま、ナルは目的も決めずに街に出る。
まるで独り立ちした子供のように──
◇◇◇
目的を決めていないが、たまにはこのようなお出かけも良いかもしれない。
適当に街をさまよって、気になったお店に入る。
自分で自分の好きなように行動ができることは、人生の中でも僅かな時間しか出来ていなかったからか、この時間はとても楽しい。
「あそこは……?」
店と店の間の狭い裏路地の先に、この街に合わない古い木製のお店が開かれていた。
──コツコツコツ
ナルはそのお店へと歩みを進める。
その裏路地を通り抜けると、少し開けた場所にそのお店一つだけがポツンと建っていた。
──ガラガラ
「ここは……宝石屋?」
今どき珍しい形の扉を開けると、思わず目が奪われるほど美しい輝きを放っている宝石が、辺りに並んでいた。
宝石だけの物もあるが、ほとんどが指輪やネックレス、アンクレットなどのアクセサリー系の物が多い。
隠れた場所にある割にはこのお店は広く、客もぼちぼち集まっている。
ナルは品物に目を通しながら、そのアクセサリーを見て楽しむ。
「何か、欲しいものはありますか?」
いつの間にか隣に立っていた、綺麗なネックレスを首につけた女性が、ナルに話しかける。
「いえ、たまたま通りかかって、惹き付けられるように来たんです」
先程まで見ていたブレスレットから目を離したナルは、その女性と目を合わせてそう言葉をつく。
「そうですか、ゆっくりと見てくださいね」
そう言いながら女性はクルリと振り返り、店の裏側へと戻ろうとする。
「少し……よろしいですか?」
気がつけばナルは、その女性を呼びとめていた。
「はい、どうしました?」
愛想の良いニコッとした笑顔のまま、女性は上半身だけ捻り伺う。
「その……どうしてここにお店を建てられたのですか?」
このお店の品物を見た限り、どれも美しく、加工された宝石はまるで一等星のように光り輝いていた。
こんなに綺麗に細工ができる人は、私が見た事がない。ここレイフェル王国でも、フォルティア王国でも。
こんなに素晴らしいお店なのに、こんな街の裏に建てているのはなぜか……そう思うことは、そんなに不思議な事でもない。
「……少し長くなりますが、聞いてくれますか?」
「はい、私が聞いた話ですから」
「それでは……」と言いながら、その女性は別室へと私を案内し、椅子に腰をかけてから話し始めてくれた。
◇
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私はハルと申します。好きに呼んでもらって構いません」
それに呼応するようにナルも自己紹介をし、ハルはナルさんですね、と口に出して確認する。
「それでは本題に入りますが……このお店、私のお店ではないんです」
「……え?」
思わずその素っ頓狂な声が出た。
「あ、でも全く無関係な訳ではなく、私の祖父のお店なんです」
そういう事か……と少し力が抜けたナルを見ながら、その女性は話の続きを話す。
「このお店の宝石の細工、加工から何まで、祖父が一人で行っていたんです。けれど先日祖父が病で倒れてしまって、今は働けない状況で……」
少し声に力が無くなっていくハルの声を、ナルは静かに聞いていた。
「祖父は小さい頃に両親を亡くした私を、一人でここまで育ててくれんです。それに思い入れのあるこのお店を潰したくなくて、今は私が切り盛りしているのですが……やっぱり私には祖父のように上手く細工も加工も出来ないですし、お客さんとの上手な接し方も分からなくて……祖父にも、そんなに頑張らなくてもいいと言われてしまって……」
目尻に涙を浮かべながら、ハルさんは「長々と話してすみません」と頭を下げた。
もう、このお店は潰れてしまうのだろうか?
ハルさんが全力で頑張っていることは分かる。だけど、それにもいつかは限界が来るは確か。
このお店を失くすのは、民にとって、国にとって、とても惜しいことだと私は思う。
この素晴らしい宝石が、それを決定づけている。
◇
話が終わった後、私はお店を出る前にハルさんに話しかける。
「このブレスレット、買ってもいいですか?」
「は、はい」
その後、私はその透き通るダイヤモンドが埋め込まれたブレスレットを買って、店を出た。
セントリア家に戻ろう。
そしてカイル様に、一つだけお願いをしてみよう──
◇◇◇
お店を出ていくナルを見ながら、ハルは一つ疑問に思う。
ナルさんが買ったのは、ダイヤモンドのブレスレット。
ダイヤモンドの石言葉には『永遠の絆』というものがある。ナルさんは、そのことを知っているのだろうか?
その疑問の正解は、思ったよりもすぐに、ハルは気がつくことになる──────
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