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交流の序章

佐藤の口車

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 ある日、どうしても会ってほしい人がいるということで、佐藤から知り合いを紹介されることに。でも、佐藤曰く、その知り合いに私が誰であるかは伝えていないみたいである。
「いやあ、悪いねえ、高級料理店とかじゃなくて」
「個室ってやばくね?高級じゃないんか?」
「まあ、俺と神崎は一般人みたいなもんだけど、これから来るのは違うから、ちょっとは良い店かな。あ、でも、由羅じゃないよ?」
「何だよ、一瞬期待したじゃん」
「だから、早めに砕いてやったじゃん」
「最悪。それにしても遅いね」
「んー、忙しいからね」
「そんなに忙しいなら、わざわざ今日じゃなくても。ていうか、マネージャーしなくて良いの?」
「何?マネージャーはマネージャーでしてるっつの。まあ、今日は、ちょっと代わりに行ってもらったけど」
「は?だめじゃん」
「良いんだよ、この予定のが大事だから、俺が話し振るまで話すなよ、声出すな」
どういう意味?なんて、聞く前に人が入って来た。
「すんません、遅れました。仕事巻けんくて、悔しいっす」
 現れたのは、伊永くん。
「いや、みんな忙しいから平気だよ」
「佐藤さん。ありがとうございます」
「伊永、今日はどうだった?」
「あー、あかんくて、全然、上手く出来ひんかった」
「ほう、俺、良いこと思いついてさあ」
「というか、自己紹介してへんから、してもええですか?」
「ん?良いよ、しなくても」
「え?何でですか?佐藤さんは良くてもそうはいかんでしょ」
「いいって、お互い知ってる人だし?」
「はい?」
「まあまあ、それよりさあ、良いこと聞いてよ」
「何ですか?」
「伊永の表情を豊かにしたいなあって思って、特訓しよかって」
「ん?」
訳わかってない伊永くんを無視して、私に目配せした佐藤。
 多分、次は、私に振る。それに気づいた。
「手伝ってよ、神崎」
「いや、私、役に立つかな」
「え?蘇雨先生?」
「ん。いかにも。神崎蘇雨です」
いかにもって何なん。とか自分で自分に突っ込む。
「さて、神崎、ちょっと伊永のこと鍛えてやってよ」
「絶対、面白がってますよね」
「んー?違うよ、伊永の色んな顔が見てえんだわ」
「私は何すれば良いの?」
「お、さすが、神崎、話が早いな。こんなところに、漫画が」
あからさまに、芝居モードに入っている佐藤。
「ちょ、それって」
伊永くんが焦っているのが分かる。
「この漫画の、このシーンを神崎と伊永にまじでやって欲しくて」
 こいつバカなのかな。
「いや、私と伊永くんでできるわけないじゃん」
「やれる。神崎には神崎の世界があんだろ?ちょっとやってみ?」
「しょうがないなあ、やってみっか」
上手いこと口車に乗せられた私は、単純馬鹿だと思う。
「えと」
 このやりとりに、伊永くんが、わたわたしている。
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