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交流の深まり

お酒とアイドルと絡み

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 さて、なぜか、佐藤に付き合わされて、私は、伊永くんと一緒にいる。その張本人の佐藤が急に呼び出されて二人取り残された。
「先生、俺、お酒飲んでみたいです」
現在、そんな無茶振りをされているのだ。正直、行きたい。
 いや、待てよ?この可愛いキラキラお目目に騙されて飲みに行ったら、週刊誌に撮られて、この子の人生をめちゃくちゃにしてしまうかもしれない。
 でも、飲みに行ったら、この子の初めてを貰えるということに。天秤にかけても重さが変わらないという事態。
「初めては全部、先生にあげたいです。それくらいは許してほしい」
真剣な瞳、少し震える声。こんなの、拒否れる人間がいるわけがない。
「ほんと、ずるいよね、駿くんは」
「そうでしょうか、俺もただ、卑怯で弱い人間なだけですよ」
 そんなセリフをこの人が言うと、重みが感じられるし、本当に魅力的なキャラクターになってしまう。私は、この人を私のキャラにしようとしてしまっている。
 だめだめ。そんなの。伊永くんは、駿くんは、そんな風に扱ってはいけない。
「先生?だめですか?」
「だめ、じゃない」
「やった。ほな、行きましょ」
自然に、あまりに、ナチュラルすぎるほど、普通に息をするみたいに、彼の手に私の手は絡めとられた。
 慣れてる人は羨ましいな。今もきっと、何とも思ってない。繋がれた手の先に力を込めるか悩んでいたら、あっという間に、お店に到着してしまった。
 こんな機会、もう無いんなら、ちょっとくらい。そう思って、店に入る直前、手がすり抜ける瞬間、あまりに馬鹿すぎるタイミングで手に力を込めた。
 抜け出そうとした手は、動きを止めてそのまま、ぎゅっと、握り返して離れなかった。そして、振り返った伊永くん。
「先生、ほんまにかわええことしてくれますね」
愛おしい、そう書いてあるような瞳に見つめられて、柔らかくて、大事なものに笑いかけるように微笑まれる。
 おかしい。私の馬鹿なフィルターは、ここまで限界レベルのシーンを作り出せるのだろうか。私は、そこまで馬鹿に拍車をかけていたのだろうか。焦りを覚えて、ただ、俯くことしか出来ないまま、店に入った。
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