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第6話
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草原を吹き抜ける風は、汗ばんだ肌をそっと冷やしてくれた。
狼型魔獣に囲まれた緊張感がまだ胸に残っているものの、足取りは軽かった。
腕に抱えた薬草の束は、依頼に必要な量を十分に満たしている。
(これで……ちゃんと仕事を果たせたな)
その実感が胸の奥にじんわり広がり、自然と表情がやわらぐ。
昨日の自分では考えられなかった。
誰かの後ろを追いかけるのではなく、自分の力で依頼を達成する日が来るなんて。
勇者パーティでは“お荷物”として扱われ、評価という言葉から最も遠い場所にいた。
だからこそ、この小さな成功が心に深く響いていた。
街の門が見えてくると、門番が声を上げた。
「無事に戻ったな! 初依頼だったんだろ?」
「はい。なんとか……終わらせました」
「そうか。それは良かった」
軽く頷いてくれただけの短いやり取りだったが、胸の奥が温かくなる。
誰からも認められなかった自分に向けられた、ほんの小さな好意。
それが嬉しかった。
門をくぐると、街特有の匂いと喧騒が身体に染み込んでくる。
鍛冶場の金属音、露店の呼び声、焼きたてのパンの香り。
すべてが昨日より鮮やかに感じられた。
(俺……生きてる。ちゃんと、この街の中にいるんだ)
そんなささやかな実感が、心の奥の傷を少しだけ癒してくれる。
ギルドへ向かう道の途中で、ライトはふと剣の柄を握り直した。
その瞬間、ほんのわずかだが力の入り方が違う気がした。
(……さっき記録したスキルのせいか)
狼との戦闘で記録した「斬撃強化(小)」。
使ったことはないのに、剣を扱うと手の中に“馴染む”ような感覚が生まれていた。
数値に表れるような変化はないが、確かに力がそこにある。
「これが……《超記録》の力か」
呟く声が草原に溶けていく。
昨日までの自分ではあり得なかった感覚だ。
胸の奥に静かな火が灯る。
(俺でも……強くなれるんだ)
その感情は、小さな希望となって身体の中心に残り続けていた。
ギルドの扉を押し開けると、中は朝とは違った活気が満ちていた。
依頼を終えた冒険者たちが談笑し、酒場のカウンターでは早くもグラスが鳴っている。
そんな中、ライトの姿を見つけた受付嬢のミィナがぱっと顔を明るくした。
「ライトさん、おかえりなさい!」
その一言が、帰ってくる場所があるように感じさせた。
「薬草……採ってきました」
「確認しますね!」
ミィナは机に薬草を広げ、一つ一つ手に取りながら丁寧に状態を見ていく。
表情がみるみるうちに明るくなった。
「すごいです! とても綺麗に採ってありますし、量もちょうどいいです! 完璧ですよ、ライトさん!」
「よかった……」
胸の奥がほっと緩む。
たった一度の依頼だとしても、誰かに評価されるのはこんなにも嬉しいものなのか。
「おい、新人。やるじゃねぇか」
声の方向を見ると、ガルドが腕を組んで立っていた。
隣には、相棒のセインも静かな笑みを浮かべている。
「初めての依頼でこの早さ。それに怪我もほとんどない。大したもんだ」
「おめでとう、ライト。帰ってきたときの顔を見れば分かったよ」
「ありがとうございます。まだまだですけど……」
「何言ってんだ。冒険者として一番大事なのは生きて帰ることだ。お前はそれをちゃんとやったんだから胸張れ」
ガルドの言葉は豪快な声に対して不思議と優しく、胸にすとんと落ちた。
(……こんなふうに言われたこと、なかったな)
勇者パーティの誰からも、一度も。
胸の奥に温かいものが広がる。
「ライトさん、報酬はこちらになります!」
ミィナが両手で差し出してくれた袋の中には、硬貨がいくつか入っていた。
そこまで多い金額ではないが、自分で稼いだ初めての報酬だった。
「……ありがとうございます」
「こちらこそ、依頼を受けてくださってありがとうございました!」
ミィナの笑顔が眩しく、ライトは思わず視線をそらした。
褒められ慣れていないため、嬉しさの処理がうまくできない。
「次の依頼も受けるのか?」
ガルドが訊いてきた。
「はい。少し街を見たあとに」
「いい心がけだ。焦るなよ。冒険者ってのは続ければ続くほど強くなるもんだ」
セインも軽く頷く。
「ライトの動きは悪くなかった。もっと経験を積めばすぐに形になるよ」
「……ありがとうございます」
本当に、心の底から嬉しかった。
(俺……ここでなら、やり直せる)
そう思えた。
ギルドを出ると、外の空気は少し暖かく、街の賑わいが遠くまで響いていた。
通りではパン屋の香ばしい匂いが広がり、子どもたちが笑いながら走っていく。
そんな日常の景色が胸に優しく入り込んでくる。
(こんな景色が……こんなにも心地いいなんて)
昨日は絶望しか見えなかったのに。
ライトは深く息を吸い込んだ。
新しい力が体の奥でゆっくりと動き始めている感覚がする。
(俺は……もっと強くなれる)
空を見上げたライトの瞳は、昨日よりずっと強い光を宿していた。
小さな一歩が、大きな未来へつながっていく。
そんな予感を胸に抱きながら、ライトは静かに歩き出した。
狼型魔獣に囲まれた緊張感がまだ胸に残っているものの、足取りは軽かった。
腕に抱えた薬草の束は、依頼に必要な量を十分に満たしている。
(これで……ちゃんと仕事を果たせたな)
その実感が胸の奥にじんわり広がり、自然と表情がやわらぐ。
昨日の自分では考えられなかった。
誰かの後ろを追いかけるのではなく、自分の力で依頼を達成する日が来るなんて。
勇者パーティでは“お荷物”として扱われ、評価という言葉から最も遠い場所にいた。
だからこそ、この小さな成功が心に深く響いていた。
街の門が見えてくると、門番が声を上げた。
「無事に戻ったな! 初依頼だったんだろ?」
「はい。なんとか……終わらせました」
「そうか。それは良かった」
軽く頷いてくれただけの短いやり取りだったが、胸の奥が温かくなる。
誰からも認められなかった自分に向けられた、ほんの小さな好意。
それが嬉しかった。
門をくぐると、街特有の匂いと喧騒が身体に染み込んでくる。
鍛冶場の金属音、露店の呼び声、焼きたてのパンの香り。
すべてが昨日より鮮やかに感じられた。
(俺……生きてる。ちゃんと、この街の中にいるんだ)
そんなささやかな実感が、心の奥の傷を少しだけ癒してくれる。
ギルドへ向かう道の途中で、ライトはふと剣の柄を握り直した。
その瞬間、ほんのわずかだが力の入り方が違う気がした。
(……さっき記録したスキルのせいか)
狼との戦闘で記録した「斬撃強化(小)」。
使ったことはないのに、剣を扱うと手の中に“馴染む”ような感覚が生まれていた。
数値に表れるような変化はないが、確かに力がそこにある。
「これが……《超記録》の力か」
呟く声が草原に溶けていく。
昨日までの自分ではあり得なかった感覚だ。
胸の奥に静かな火が灯る。
(俺でも……強くなれるんだ)
その感情は、小さな希望となって身体の中心に残り続けていた。
ギルドの扉を押し開けると、中は朝とは違った活気が満ちていた。
依頼を終えた冒険者たちが談笑し、酒場のカウンターでは早くもグラスが鳴っている。
そんな中、ライトの姿を見つけた受付嬢のミィナがぱっと顔を明るくした。
「ライトさん、おかえりなさい!」
その一言が、帰ってくる場所があるように感じさせた。
「薬草……採ってきました」
「確認しますね!」
ミィナは机に薬草を広げ、一つ一つ手に取りながら丁寧に状態を見ていく。
表情がみるみるうちに明るくなった。
「すごいです! とても綺麗に採ってありますし、量もちょうどいいです! 完璧ですよ、ライトさん!」
「よかった……」
胸の奥がほっと緩む。
たった一度の依頼だとしても、誰かに評価されるのはこんなにも嬉しいものなのか。
「おい、新人。やるじゃねぇか」
声の方向を見ると、ガルドが腕を組んで立っていた。
隣には、相棒のセインも静かな笑みを浮かべている。
「初めての依頼でこの早さ。それに怪我もほとんどない。大したもんだ」
「おめでとう、ライト。帰ってきたときの顔を見れば分かったよ」
「ありがとうございます。まだまだですけど……」
「何言ってんだ。冒険者として一番大事なのは生きて帰ることだ。お前はそれをちゃんとやったんだから胸張れ」
ガルドの言葉は豪快な声に対して不思議と優しく、胸にすとんと落ちた。
(……こんなふうに言われたこと、なかったな)
勇者パーティの誰からも、一度も。
胸の奥に温かいものが広がる。
「ライトさん、報酬はこちらになります!」
ミィナが両手で差し出してくれた袋の中には、硬貨がいくつか入っていた。
そこまで多い金額ではないが、自分で稼いだ初めての報酬だった。
「……ありがとうございます」
「こちらこそ、依頼を受けてくださってありがとうございました!」
ミィナの笑顔が眩しく、ライトは思わず視線をそらした。
褒められ慣れていないため、嬉しさの処理がうまくできない。
「次の依頼も受けるのか?」
ガルドが訊いてきた。
「はい。少し街を見たあとに」
「いい心がけだ。焦るなよ。冒険者ってのは続ければ続くほど強くなるもんだ」
セインも軽く頷く。
「ライトの動きは悪くなかった。もっと経験を積めばすぐに形になるよ」
「……ありがとうございます」
本当に、心の底から嬉しかった。
(俺……ここでなら、やり直せる)
そう思えた。
ギルドを出ると、外の空気は少し暖かく、街の賑わいが遠くまで響いていた。
通りではパン屋の香ばしい匂いが広がり、子どもたちが笑いながら走っていく。
そんな日常の景色が胸に優しく入り込んでくる。
(こんな景色が……こんなにも心地いいなんて)
昨日は絶望しか見えなかったのに。
ライトは深く息を吸い込んだ。
新しい力が体の奥でゆっくりと動き始めている感覚がする。
(俺は……もっと強くなれる)
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