追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第14話

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 街の門が近づいてきたころ、ライトはふと立ち止まって深呼吸した。
 森から帰ってくるだけなのに、胸の奥が少しだけ熱くなる気がした。

(今日も……ちゃんと戻って来れた)

 あたりまえのようで、今のライトにとってはまっすぐ心に響くことだった。
 誰かに守られながら戦っていた頃には、こんな実感は得られなかった。

(俺ひとりでも、できることはある)

 その気づきがじんわりと胸を満たしていく。

 門兵が軽く会釈し、ライトも頭を下げた。
 街へ戻ると、昼の喧騒が心地よく耳に広がる。

 走る子どもたち、露店の呼び声、石畳を行き交う冒険者たち。
 そのすべてが、どこか昨日よりも鮮やかに見えた。

(ギルドに行こう)

 スライム討伐と巣の発見。
 依頼としては十分な成果だ。
 報告すればきっと喜んでもらえる。

 自然と歩幅が少しだけ早くなる。

 ギルドの扉を開けると、ちょうど受付前に人だかりができていた。
 依頼を受けようとしているのか、少し騒がしい。

 ライトが入り口で様子を見ていると、ミィナが受付台の奥から勢いよく手を振った。

「ライトさん! おかえりなさい!」

 その声に、周囲の冒険者たちが視線を向ける。
 ライトは少し恥ずかしくなりながらも返事をした。

「ただいま戻りました」

「帰ってきてよかった……本当に」

 ミィナの目があたたかかった。
 その表情を見るだけで、疲れがすっと和らぐようだった。

「依頼の報告で……スライムの巣を見つけました。あと二体、倒しました」

 ライトが報告書を差し出すと、ミィナの顔がぱっと明るくなった。

「巣の場所まで……! すごいです、ライトさん。こんなにきちんとした報告、冒険者の方でもなかなかできませんよ」

「そうなんですか?」

「はい。地形のメモと特徴の記録なんて……ギルドでも喜ばれます」

 ミィナはじっとライトの顔を見る。
 その視線にライトは少し戸惑った。

「……ライトさんって、やっぱり優しい人ですね」

「えっ……?」

「行動にそれが出てる気がします。丁寧で、ちゃんと周りのことも見ていて……すごく、応援したくなる人です」

 そう言ったあと、ミィナは小さく笑った。
 ライトの胸に、ふっと温かい風が吹いたような感覚が広がる。

「ありがとうございます。そう言ってもらえると……嬉しいです」

「私のほうこそ。あ、報酬の計算しますね。少しお待ちください!」

 ミィナが奥へ戻ると、近くにいた二人の冒険者がこちらに歩いてきた。
 昨日声をかけてくれたガルドとセインだ。

「よう、ライト。無事だったみたいだな!」

「今日の巣の発見は……大きな成果だよ。あれはなかなか見つけられないって評判だ」

「いえ……運が良かっただけです」

「運だけで二体倒して、巣まで見つけられるわけねぇだろ」

 ガルドが笑いながらライトの肩を叩く。
 その手の温もりが、今のライトには力強く感じた。

「それに……《記録》のスキル、やっぱりただの雑魚スキルじゃないんじゃないか?」

「俺もそう思ってた。ライトの使い方が上手いんだ。観察の仕方が丁寧で、戦いも慎重だし」

 ライトは少し戸惑いながらも、心の中で何かがじんと響いた。

(俺の戦い方を……認めてもらえてる)

 そんな当たり前のようで、信じられないような言葉が胸を満たす。

 やがて戻ってきたミィナが、笑顔で袋を差し出した。

「こちらが報酬になります。スライム二体の討伐分と、巣の発見の追加報酬もあります。ライトさん、本当にお疲れさまでした!」

「ありがとうございます」

「それと……これは個人的なものなんですけど」

 ミィナは小さな包みをライトに差し出した。

「……?」

「甘いパンです。焼きたてですよ。お昼、まだでしたよね?」

「えっ……」

「無理にとは言いませんけど……ライトさん、今日すごく頑張ったので。少しでも元気出してほしくて」

 ライトは少しだけ目を細めた。
 胸の奥にあたたかい感情が広がっていく。

「受け取ります。ありがとうございます。……嬉しいです」

「本当ですかっ?」

 ミィナのほっとしたような笑顔が、自然とライトの心にもやわらかな色を落としていった。

 ギルドを出て、街を歩く。
 手には報酬の袋と、ミィナからもらったパンの包み。

(俺……こんなふうに誰かから何かをもらうのって、いつ以来だろ)

 勇者パーティにいた頃、そんな経験はほぼなかった。
 役に立たないと決めつけられ、声をかけられることすら少なかった。

(あの頃とは……もう違うんだ)

 胸の奥で、そっと小さな火が灯る。

(ちゃんと、前に進めてる)

 その実感が、歩く足取りをいつもより軽くしてくれた。

 宿に戻る途中、ふと空を見上げると、光が雲の隙間から差し込み、街を優しく照らしていた。

(明日も……頑張ろう)

 パンの包みを抱え、ライトは穏やかな気持ちで宿へと歩き出した。
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