追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第47話

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 街道を外れて森へ入ると、空気が一段冷えた。
 木々の葉が擦れる音が、わずかな風に乗って途切れ途切れに届く。

 ライトは歩きながら、周囲の気配を拾っていた。
 リオナが後方、アリアが少し先行する位置を取る。無言のままでも、距離感は自然に噛み合っていた。

「足跡、ここで二手に分かれてる」

 アリアが低く言う。
 湿った土の上、わずかに乱れた草。

「一つは囮。軽い」

「本命は?」

「こっち」

 迷いのない判断だった。

 ミリュウが肩の上で身じろぎする。

「ミリュ」

「静かに」

 ライトは短く声を落とし、剣に手をかけた。

 森の奥、木立の間に人影が見える。
 外套ではない。軽装だが、動きに無駄がない。

 次の瞬間、空気が裂けた。

 鋭い音。
 風切り音とともに、細い刃が飛ぶ。

 ライトは半歩横へずれ、剣で弾いた。

「来たな」

 同時に左右から動きがあった。
 数は三。距離を詰めてくる二人と、後方で魔導具を構える一人。

 リオナが杖を構える。

「ファイアランス」

 細く収束した火が直線で走り、前に出た男の動きを止める。

 だが後方の男が即座に対応する。
 杖を振り、地面の砂利を巻き上げた。

 視界が揺れる。

 ライトは足を踏み出した。

「《ウィンドLv1》」

 前方へ流れる風を叩きつける。
 砂埃が散り、視界が一瞬で開けた。

 アリアが、その隙を逃さない。

 地面を蹴り、距離を詰める。
 剣閃が走り、相手の武器を弾き飛ばした。

「遅い」

 短く言い捨て、膝を叩き込む。

 残る一人が後退する。
 だが、逃げ道は塞がれていた。

 ライトが前に出る。

「《斬撃強化(中)》」

 剣が横に走り、外套を裂く。
 男は地面に転がり、動かなくなった。

 一瞬の静寂。

 リオナが息を整えながら周囲を見る。

「……まだ、いる」

 その言葉と同時に、森の奥から気配が立ち上がった。
 今度は、重い。

 足音が揃っている。

「数、増えたな」

 アリアが歯を鳴らす。

「引く?」

「いや」

 ライトは剣を下ろさない。

「ここで見せる」

 ミリュウが、はっきりと鳴いた。

「ミリュ!」

 次の瞬間、木々の間から現れたのは五人。
 先ほどより統制が取れている。

 だが、その動きが止まった。

 風が、逆流した。

 ライトの足元から、空気が巻き上がる。

「《ウィンドLv1》」

 今度は横薙ぎではない。
 地面すれすれに風を走らせ、足を払う。

 体勢を崩したところへ、リオナが重ねる。

「アイスランス」

 氷の槍が突き刺さり、動きを完全に止めた。

 アリアは息を吐く。

「……連携、悪くない」

「即席だ」

「それにしては上出来」

 だが、敵は全滅しなかった。
 最後尾の一人が、合図を出すように笛を鳴らす。

 高く、短い音。

 直後、全員が一斉に引いた。

「撤退か」

 ライトは追わない。
 深追いはしないと、すでに決めている。

 森に静けさが戻る。

 アリアが剣を収め、ライトを見る。

「……これで分かった。連中、完全に組織だね」

「ああ」

「しかも、あんたを測ってる」

 リオナが肩をすくめる。

「勇者パーティも動いてるし、派手になってきたわね」

 ライトは森の奥を一度だけ見た。

「だから、先に動く」

 ミリュウが小さく鳴く。

「ミリュ」

 その声は、不安よりも期待に近かった。

 三人は、街へ戻る道を選ぶ。
 背後で、木々が静かに揺れた。

 誰かが、確かに見ていた。

 それが敵か、別の思惑か。
 まだ、判断するには早い。

 だが一つだけ確かなことがあった。

 この戦いは、もう隠れて進む段階を越えている。

 表に出る覚悟をした者から、前へ進む。

 ライトは歩みを止めなかった。
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