追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第67話

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 夜明け前の空は薄く青みを帯び、森の輪郭だけが静かに浮かび上がっていた。
 焚き火はすでに消され、灰だけが残っている。
 ライトは腰を上げ、剣を握ったまま周囲を見渡した。夜の間に気配は戻らなかった。
 だが、それは安全を意味しない。相手は引き際を選んだだけだ。

「移動する」

 短く言うと、アリアが即座に立ち上がる。迷いがない。リオナは杖を背負い直し、フィーナは周囲の草木に触れてから頷いた。

「南東。川沿いに人の流れがある」

 フィーナの言葉に、ライトは進路を決めた。夜の戦闘は終わったが、状況は変わっていない。むしろはっきりした。こちらを試す動き。撤退の速さ。連携の精度。洞窟や集落の連中とは別系統だ。

 歩き始めて間もなく、川霧が視界を薄く覆った。水音が近い。地形が開ける分、奇襲は減るが、遠距離からの干渉は増える。

アリアが前に出る。

「来るなら、正面だな」

 その通りだった。川向こうの林が揺れ、複数の影が姿を見せる。数は四。軽装が二、重装が一、後方に魔導具持ちが一。距離を測っている。

 ライトは止まらない。間合いに入る前に、剣を低く構えた。

「《斬撃強化(大)》」

 踏み込みが鋭くなる。最初に出てきた軽装が距離を詰めるより早く、ライトは川原の石を蹴った。刃が横に走り、相手の得物を弾き飛ばす。返す刃で肩口を裂いた。倒れない。だが動きは鈍る。

 アリアが続く。獣人の跳躍は低く速い。重装の側面に入り、刃を叩き込む。鎧が鳴り、相手が体勢を崩す。

後方から火球が飛ぶ。

「フレイムボール」

 リオナの詠唱は短い。狙いは足元。爆ぜた熱で地面が荒れ、魔導具持ちが位置を変える。その瞬間を逃さず、ライトは川霧を切り裂くように前へ出た。

水の刃が飛ぶ。直線。読みやすい。

「《ウォーターLv1》」

 放った水で芯をずらす。衝突はしない。流れだけを崩す。刃は霧に散った。

 軽装の二人目が背後を狙う。フィーナが一歩踏み出し、地面に手を当てた。草が絡み、足首を取る。拘束は一瞬。だが十分だ。

 ライトは振り向きざまに踏み込み、刃を走らせた。外套が裂け、相手は距離を取る。撤退の合図が飛ぶ。連中は散った。深追いはしない。

「確認できた」

ライトは剣を収める。

「水と風。道具は粗いが、使い手は慣れてる」

リオナが川向こうを見る。

「街道を跨いで動いてる。依頼を装って、人を測ってる」

アリアが短く笑う。

「だったら、次は向こうが踏み込んでくる」

フィーナは首を振った。

「違う。踏み込む前に、切り分ける。孤立を作る」

 その言葉に、ライトは視線を上げた。確かにそうだ。昨夜も今朝も、狙いは分断だった。陣形を崩し、対応を測る。

「戻る」

街へではない。ギルドでもない。

「川上だ。補給線を探る」

全員が頷く。短い合意。説明は不要だった。

ミリュウが肩で小さく鳴く。

「ミリュ」

「大丈夫だ。行く」

 歩き出すと、川霧が背後で薄れた。戦いは続くが、同じ場所には留まらない。相手が測るなら、こちらは先に触る。

この先で、状況は動く。
それだけは、全員が理解していた。
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