追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第68話

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川上へ向かう道は細く、ところどころ獣道と見分けがつかなくなっていた。
水音は近いが、流れは見えない。岩と木々に挟まれ、視界が制限される地形だ。

ライトは先頭を歩かない。
アリアが半歩前、ライトは中央、リオナとフィーナが後方。
昨夜から自然にそうなっていた配置だった。

ミリュウはライトの肩で静かだ。鳴かない。
それが逆に、警戒が必要な合図だった。

フィーナが足を止める。

「……ここ」

声は小さいが、全員に届いた。
アリアが即座に片膝をつき、前方を睨む。

「罠、だな」

地面に不自然な切れ目がある。
踏めば崩れる。落とし穴ではない。足止め用だ。

「追撃じゃない。迎撃でもない」

ライトが低く言う。

「待ち伏せでもないわね」

リオナが視線を上げる。
周囲の木々、岩陰、川の流れ。
どこにも決定的な“殺し”の位置がない。

「補給線を見に来た、ってのは正解みたいだ」

アリアが口元だけで笑う。

「だったら……」

ライトは一歩、前へ出た。

罠の縁を踏み越える。
崩れない。
わざと軽く踏んだだけだ。

その瞬間、川上から矢が飛んだ。

速い。
狙いはライトの足。

「《斬撃強化(大)》」

剣が低く走り、矢を叩き落とす。
同時に、左右の林が動いた。

人数は多くない。五、いや六。
だが装備が統一されていない。
傭兵混じりだ。

「来たぞ」

アリアが前へ出る。

重装が二、軽装が三、後方に弓が一。
魔導具は見えない。
代わりに、動きが揃っている。

「囲い込みだ」

ライトは即座に判断した。

「リオナ、後ろの弓を潰せ」

「了解」

詠唱は一言だけ。

「フレイムボール」

火球が放たれ、弓兵の足元を抉る。
殺さない。
逃げ場を奪うための撃ち方だ。

同時に、軽装が左右から距離を詰める。
アリアが一人を叩き落とし、もう一人がライトへ来る。

刃が交差した。

速い。
だが浅い。

ライトは踏み込み、肩で押す。

「《身体強化Lv1》」

力任せではない。
体勢を崩すための一瞬の加速。
相手がよろけた。

「《ウォーターLv1》」

水が足元に走り、地面を滑らせる。
軽装は踏ん張れず、倒れた。

後方から別の矢。

フィーナが一歩、前に出る。

「……ここまで」

地面から伸びた蔦が、矢を絡め取る。
自然な動き。
戦闘に無理がない。

残る重装が前へ出た。
盾持ちだ。

「面倒だな」

アリアが舌打ちし、正面から叩く。

ライトは横へ回る。
盾の死角。

「《ウィンドLv2》」

風が刃に沿って走る。
押すためじゃない。
刃の“通り”を良くするだけ。

鎧の継ぎ目に、確実に刃が入った。

「撤退!」

誰かが叫ぶ。

判断が早い。
連中は深追いを許さない距離で引いた。

数分後、川音だけが残る。

アリアが剣を振り、血を払う。

「完全に様子見だな」

「しかも、無駄がない」

ライトは周囲を見渡す。

「補給線を断つ前に、戦力を測ってる」

リオナが息を整えながら言った。

「つまり……」

「次は、もっと本気で来る」

フィーナが静かに頷く。

「森じゃない場所を、選ぶ」

その言葉に、全員が同時に同じ方向を見た。

街道。
川と森の間。
人が通る場所。

ミリュウが、初めて短く鳴いた。

「ミリュ」

ライトは剣を収める。

「戻る。準備を変える」
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