追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

文字の大きさ
80 / 93

第80話

しおりを挟む
 川上へ向かう道は、思っていたよりも荒れていた。

 舗装は途切れ、轍が深く刻まれている。荷車が通るにしては数が合わない。人為的に踏み固められた跡だ。ライトは歩調を落とさず、足元だけを見て進んだ。

「運び屋の往復だな」

 アリアが低く言う。

「数は多くないけど、継続してる」

 リオナは周囲を見回し、杖を軽く握り直した。

「魔獣被害の割に、逃げた形跡が整理されすぎてる。普通なら、もっと散らかる」

 フィーナは川の流れに目を向けている。指先で空気を撫でるような仕草をし、首を振った。

「上流、少し先。水の流れが乱れてる。自然じゃない」

 ライトは頷いた。

「行く」

 進むにつれて、川幅が狭くなる。岩が増え、水音が高くなる。視界が開けた場所で、簡易的な柵が見えた。木と縄を組んだだけのものだが、川沿いの獣道を塞ぐには十分だ。

 その向こうに、人影が二つ。

 逃げる素振りはない。こちらを待っていた。

 ライトは足を止めない。剣を抜き、間合いを測る。

 最初に動いたのは相手だった。短剣が飛ぶ。直線的だが、角度が鋭い。

「《斬撃強化(大)》」

 弾く。返す刃で距離を詰める。相手は退くが、背後から水が弾けた。地面が濡れ、足場が滑る。

 アリアが前に出た。

「邪魔だ」

 低く踏み込み、刃を振る。重装ではない。軽装の肩口が裂け、相手は体勢を崩す。

 もう一人が杖を掲げる。水が集まる速度が速い。道具だ。

 ライトは一歩横にずれ、掌を向けた。

「《ウォーターLv2》」

 流れをぶつける。量は少ないが、芯を外すには十分だった。水が散り、杖の軌道が乱れる。

 同時に、背後から熱が走る。

「フレイムボール」

 リオナの火球が足元を抉り、相手の動きを止める。

 フィーナが一歩前に出た。地面に触れる。

 草が絡み、逃げ道を塞ぐ。拘束は短いが、その隙で十分だった。

 ライトは踏み込み、刃を走らせる。外套が裂け、相手は倒れた。

 残る一人は即座に距離を取り、川へ飛び込む。追う前に、ライトは手を上げた。

「いい」

 深追いはしない。目的は別だ。

 倒れた二人の装備を確認する。簡素だが、刻印がある。見覚えのない紋。

「これ、街の工房のじゃないわね」リオナが言う。

「外から持ち込まれてる」アリアが続ける。「しかも定期的に」

 フィーナが川の上流を見た。

「ここは中継点。運ぶ前の仮置き」

 ライトは周囲を見渡した。確かに、痕跡は新しい。長く使われてはいないが、繰り返されている。

「壊す」

 短く言うと、全員が動いた。

 柵を倒し、縄を切る。簡易の倉庫代わりに使われていた岩陰を潰す。道具を川に流す必要はない。使えなくすれば十分だ。

 作業が終わる頃、足音が聞こえた。

 今度は冒険者だ。三人。装備は正規。警戒しながら近づいてくる。

「何をしている」

 先頭の男が声をかけた。

 ライトは剣を収めたまま答える。

「川沿いの不審な拠点を潰した」

 男は一瞬だけ周囲を見回し、頷いた。

「勇者パーティから連絡が来ている。この一帯を重点的に押さえると」

 その言葉に、リオナが一瞬だけ目を細めた。

「もう動いてるのね」

 ライトは何も言わなかった。

 必要な情報は揃った。勇者パーティは、こちらを追ってはいない。周囲を締めている。

 それはつまり、逃げ場が減るということでもある。

 だが同時に、相手にとっても同じだった。

 冒険者たちと別れ、再び歩き出す。

 ミリュウが肩で小さく鳴いた。

「ミリュ」

「分かってる」

 ライトは川を背にし、森へ向かう。

 水も、風も、火も、すでに道具として身体に馴染んでいる。斬撃も、踏み込みも、以前とは違う。

 そして何より、相手の動きがはっきりしてきた。

 次に接触するのは、現場じゃない。

 もっと近い場所だ。

 ライトは歩みを止めず、進路を変えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...