追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第83話

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ギルドの扉を押し開けた瞬間、空気が一段重くなった。

昼の喧騒はある。酒の匂いも、依頼板の前で言い争う声も、いつもと変わらない。
だが、視線の向きだけが違っていた。
ライトたちが足を踏み入れた瞬間、何人もの冒険者が言葉を切り、動きを止める。

ミリュウが肩で身じろぎした。

「ミリュ……」

「大丈夫だ」

短く言って、ライトは歩みを止めない。

カウンターの向こうで、ミィナがすぐに気づいた。
一瞬だけ目を見開き、それから表情を引き締める。

「ライトさん。皆さんも……」

「ギルドマスターに会いたい。今すぐ」

声を潜める必要はなかった。
隠す段階は、もう終わっている。

ミィナは頷き、余計なことを聞かなかった。

「奥へどうぞ。……すでに、話は上がっています」

その一言で、状況が一段進んでいることが分かる。

ギルドマスター室の扉は開いていた。
中にいたのは、グランだけではない。

重鎧を脱いだ中堅冒険者。
斥候崩れの情報屋。
そして、国の印章を胸に下げた男。

グランが先に口を開いた。

「戻ったか」

「はい」

ライトは簡潔に話した。
川沿いの動き。
人を運ぶ馬車。
戦う意思のない配置。

余計な解釈は入れない。
見たことだけを、順に並べる。

話し終えると、部屋に沈黙が落ちた。

最初に口を開いたのは、国の男だった。

「……確認する。君たちは、止めなかったのだな」

「止められませんでした」

「違う」

ライトは目を逸らさない。

「止めなかった。あの場で手を出せば、連中は別の形で続ける。今は、それを選ばなかった」

男は眉をひそめたが、否定はしなかった。

グランが机を軽く叩く。

「結論から言う。動いているのは盗賊団でも、魔導結社でもない」

部屋の空気が張りつめる。

「もっと単純で、もっと厄介だ」

情報屋が続けた。

「人を集めてる。選別してる。
使えるかどうかじゃない。壊れるか、壊れないかだ」

アリアが低く唸る。

「胸糞悪ぃ話だな」

グランは頷いた。

「勇者パーティも、この件を追っている」

リオナが顔を上げる。

「……やっぱり」

「ただし、方向が違う」

グランの視線がライトに向く。

「連中は“結果”を追う。異変を消す。原因を潰す。
だが……」

言葉が途切れる。

「その過程で、何が起きるかまでは見ていない」

フィーナが静かに言った。

「だから、残る」

グランは頷く。

「残る者が出る。拾われなかった者。選ばれなかった者」

部屋の隅で、誰かが舌打ちした。

ライトは一歩前に出た。

「……俺たちは、どう動く」

グランは即答しなかった。
だが、机の上に一枚の地図を広げる。

街道。
川沿い。
そして、山へ続く古い道。

「次は、ここだ」

「集落じゃない」

「拠点でもない」

グランはライトを見る。

「戻れなくなる場所だ」

その言葉に、誰も軽口を叩かなかった。

「止める必要はない」
グランは続ける。
「だが、放ってもおけない。だから――」

視線が集まる。

「公式の依頼にはしない。勇者パーティも動かさない」

リオナが息を呑む。

「じゃあ……」

「お前たちだ」

ライトは頷いた。

理由を聞く必要はない。
向いている。
それだけで十分だった。

ミリュウが肩で鳴く。

「ミリュ」

「行くぞ」

短い言葉で、決まった。

部屋を出るとき、ミィナが小さく声をかけた。

「……お気をつけて」

「はい」

ギルドの外は、いつも通りの街だった。
人の声も、店の灯りも変わらない。

ライトは剣の柄に触れ、歩き出す。
進む方向だけが、はっきりしていた。
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