追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.

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第86話

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古道は谷を抜け、山腹へと這い上がっていく。岩肌が露出し、踏み外せば下まで転げ落ちるような細道だ。明かりはない。だが、進むほどに人の手が入った痕跡が増えていく。削られた岩、均された足場、そして一定間隔で残る目印。

「……誘導路だな」

アリアが呟く。罠は見当たらないが、油断はできない。

フィーナが足を止め、掌を地面に当てた。「先に、空間がある。広い。人が集まる場所」

ライトは頷いた。ミリュウが肩で身を低くする。

道が開け、古い石段に出る。崩れかけた門柱が左右に残り、その奥に半地下の構造物が口を開けていた。外見は廃墟だが、内部には灯りがある。動線は整っている。

「正面は捨ててるな」リオナが低く言う。「裏が生きてる」

迂回する。岩棚を伝い、側面の裂け目から侵入。中は湿った空気と金属の匂い。遠くで人の声が反響している。

通路の先で、二人組が荷を運んでいた。顔色が悪い。武装はない。視線が合った瞬間、片方が息を呑む。

「……助けに来たの?」

フィーナが一歩出る。「静かに。今は動かないで」

二人は頷き、壁際に寄る。帳場の先から足音。規則正しい。見張りだ。

ライトは合図を出す。アリアが前、リオナは後衛。距離が詰まる。

「《ウィンドLv2》」

風が灯りを揺らし、影が伸びる。視線が逸れた瞬間、アリアが入った。短く、確実に。倒れる音は抑えた。

奥へ。広間だ。十数人。作業台。檻。中央に台座があり、魔導具が組まれている。水と火の刻印が混じる。粗いが量産向きだ。

重装の男が振り向く。「侵入者――」

言い切る前に、ライトが踏み込む。

「《斬撃強化(大)》」

距離が消える。刃が台座の支柱を断ち、火花が散る。リオナが詠唱を切る。

「ファイアランス」

線が走り、退路を焼く。周囲がざわつく。檻の中の人々が身を縮めた。

水圧が来る。横薙ぎ。

「《ウォーターLv2》」

流れを外す。霧が広がる。視界が割れ、アリアが重装の側面を叩く。フィーナの拘束が決まり、動きが止まる。

残りは散る。追わない。ライトは檻へ向かった。

「鍵は?」

震える手が指す。アリアが一振りで外す。人々が息を吐く。

「外へ。今すぐ」

崩れる音。台座が傾く。リオナが叫ぶ。「時間がない!」

全員で撤退。外に出た瞬間、内部が崩落した。粉塵が舞い、夜風がそれを散らす。

静けさが戻る。助け出した人々が地に座り込む。

「……終わった?」

ライトは首を横に振る。「ここは通過点だ」

フィーナが頷く。「上がある」

ミリュウが鳴いた。「ミリュ」

山の上。闇の向こうに、さらに深い気配が待っている。
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