悪役を終えさせて

こうやさい

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 その日は唐突に訪れた。

 あるいは単純に彼女にたぶらかされたのかもしれない。
 ただそこまで私が殿下に嫌われていただけなのかもしれない。
 皆のいる前で「民の気持ちが解らないものは王妃にふさわしくない」と婚約破棄を突きつけられた。
 それから退学、追放まであっという間で。
 気がつくと町の隅にある貴族にしてはではないあばら屋で貴族にしてはではない粗末な格好をしてわずかな荷物とともに座り込んでいた。

 民の気持ちは解らないとはいわれたが、このまま呆然としていてもまともに生きていけないことはそれでも分かっていた。
 とりあえず食事は毎日必要で、それを手に入れるためにはお金が必要で、お金を得るためには働かなければならない事は分かる。換金できそうなものはほぼ取り上げられているわけだし。
 なので仕事を探すことにする。
 最初に当たったのは貴族としての知識が役に立ちそうな業種だった。
 けれどみすぼらしい身なりのどこの誰とも分からない女を雇うようなところはなかった。
 考えてみれば当たり前だ、私も逆の立場なら絶対に雇わない。下働きならまだしも貴族の作法を知っているとはとても思えないから。
 ならばその下働きならどうだろうとあちこち当たってみたが、何故かすでに私がどこの誰でどういう経緯でここにいて未だ庶民を見下しているという話が広がっていて、どこも雇ってくれるところはなかった。
 あの場にふさわしいとは思えなかっただけで別に見下したつもりは昔も今もないと弁解しても無駄だった。

 それにしても迅速に話が広まりすぎている。しかも顔まで知られているなんて人相書きでも出回ったのだろうか?
 その予想は正しかったらしく、名乗ってもいないのに道を歩いていると石を投げつけられたりした。
 どうも私は殿下をだまし国家予算を使い込んでいた希代の悪女にされたらしい。殿下から個人的に贈り物をされたことなどここ数年ないというのに。
 どこまでが尾ひれなのかが分からないがとても嗤える。私に貢いでいたように思われては殿下もさぞ不本意だろう。
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