悪役を終えさせて

こうやさい

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 とうとう投げてくる人が周りを囲むようになった。
 どこから逃げていいのか分からない。とりあえず頭をかばいうずくまる。

 どれくらいそうしていただろうか。
 甲高い音が鳴り響き、辺りから慌てたように見物人も含めた人がいなくなる気配がする。
「大丈夫ですか?」
 恐る恐る頭を上げると、警邏の格好をした男性がこちらをのぞき込んでいた。
 この人も顔を見れば石を投げる方に回るのだろう――そう思っていたけれど、その人はどこかほっとしたような笑顔を浮かべただけだった。
「意識はあるようですし、見たところ大きな怪我もないようですね」
 確かに血が出るような怪我はしていない。
 伸ばされた手に支えられるように立ち上がる。
「あの、ありがとうございました」
「いえ、仕事ですから」
 けれど今仕事といえど私に手を差し出してくれる人がどれだけいるだろうか?
 うっかり殿下にすら感じたことのないときめきを感じてしまった。

 それからなんとか働くところを見つけたが、正直辛かった。
 そんな事を言うとまたこれだから貴族はと言われそうだが、市井の仕事というのは四六時中隠していない影口をきかされることも入っているのだろうか?
 確かに貴族も陰険だったけれども、当時はこちらにも誇りも背負うものもあった。
 だから耐えられた。
 今はもうそれはない。家が取り潰れてなかったことはまだ小さな弟にとって幸いだと思うが、すでに私が心配することではないだろう。
 なので仕事内容以上にそれが辛い。
 私はもしかして貴族を使ってやっているという優越感を得るために雇われているのではないだろうか?

 なんでもあの特待生は殿下と婚約したらしい。
 あんたと違ってさぞやこちらの味方になってくれるだろうよと言われたが、正直疑わしいと思う。
 私が注意すれば殿下とのがたにすり寄るような人だ。元の生活を振り返ることなんてないだろう。

 ほぼ唯一の楽しみは、外で酷いことをされているときに助けに来てくれる警邏のお兄さんの存在だった。
 違う人が来た日には正直がっかりした。だって態度が本当にいやいやだったから。
 けれどお兄さんは微笑ってくれる。仕事でもそうしてくれない人の中に彼がいれば惹かれていくのも仕方がないと思う。
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