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「あと婚約破棄を言い出すのは男性の方だと思ってたんだけど」
とりあえずそこは突っ込まずに話を変えることにする。
「今まで女性からっての見かけなかったから斬新かなって」
あ、小説の方は勉強はしたんだ。違うところがあさってに飛んでるけど。
そりゃあ見かけないだろう。なんだいってもこの社会は男尊女卑だ。
日常過ごす分にはそこまで感じないし、私的な場所では女性の尻に敷かれていたり、一見男性を立てているようでしっかり手綱を握って操ってるなんて話も嘘かホントか知らないけれど前世と同じく聞きはする。
けれど公のいろいろはほぼ男性からしか出来ない。結婚関係以外もそうなんだけど、表に出るのはその手の話題が多い。
恋を告白するのは女性からでもいいが、婚姻関係の成立や、婚約の破棄などは、口約束口喧嘩程度ならとにかく男性からやらなければ公にはなかったことに出来る。
嫌なら断ることは可能なんだけど、一度了承しまうと女性からは解消出来ない。
たとえば昔三軒隣に住んでたおしゃれなおねーさん、誠実そうに見えたダンナが結婚してみたら実はロクデナシだったとかで、離婚したかったんだけど、これも男性からしか出来ないからって教会に駆け込んだとかいう、なんか前世の歴史の時間に似たような話を聞いたようなことをやらないと女性からはどうにも出来ない。
あと父親や兄弟がまっとうに健在な場合はそっちに泣きつくこともあるらしい。当人より家族の方が対等ってなんなのよ!?
ちなみに赤の他人の男性がしゃしゃり出てきた場合は当然のように不貞を疑われる。貴族には弁護士みたいな職業と付き合いがあるらしいからそういう人が間に入った場合は別だとホントか嘘か知らないけど聞いたから例外はあるんだろうけど、そんなもの庶民にはほぼ縁はない。
とかいろいろ無駄に手間がかかる。
まぁそういう理由もあって、なじみがないを通り越して突拍子もなさ過ぎると受けなくなるとでも考えたのか、類似品も婚約破棄は男性から行われている。
……うん、なんだいいつつ読める範囲で読んでる。
けれどそんな美しくない現実は物語には必要ないので言わない。
「斬新かもしれないけど、個人的意見としては好ましいと思える男性が自分を見つけてくれてきっちり相手よりも自分を選んでくれるって状況に憧れたりする訳なんだけど」
まだヒロインの方が実質悪役で婚約者の令嬢が無実って展開までは行ってないのよね、こっち。それでも消費がゆっくりな分、変化が緩やかなようで。そもそも同じ変化を辿るとは限らないわけだし。
「お前もか?」
「……あたしをなんだと」
……いや、確かに前世の記憶のせいで、多少変わり者な自覚はあるけど、その辺はそんな変わんないと思うんだけど。
「てか、『個人的意見』って言ってるんだから、その場合尋ねるなら『他の人もか?』が正しいと思うんだけど?」
あたしが書いたのがあれだけうけたんだから、少なくても読んでる人はたぶんそうだと思うけど。
「……それはそうかもしれないけど」
そんなので大丈夫か、自称看板作家。
「じゃあ、女性から婚約破棄はやめた方が無難か?」
「ちょーっと時代が追いついてないかもねぇ」
流行作ったあたしが言うなって感じだろうけど。ホントタイミングがよかったんだろうな、あれは。
「少なくとも恋に恋してるようなお嬢さんが読んで面白くはないと思う」
ある程度歳喰うと今付き合ってる男と別れられたらいいなぁ的な違う意味での逃避で読むかもしれないけど。
……いやごめん、前世も含めて男女交際の経験はないです。
「じゃあ、もうちょっと普通の考えてみる」
諦めはしないんだ。そこまでうけたいか。
「相談乗ってくれてありがとな」
頭をなでられ複雑な気分になる。年下なのは変えられなくてももう小さな子供じゃないのに、そういうなで方だ。
「婚約破棄を勧められたのかと思ってたけど?」
なのでちょっとすねた風に言ってみる。
「それはまた機会があったらな」
ないよふつー。
「あたしでよければ相談乗るからあんま馬鹿な事やらかさないようにね」
他の子にやって誤解されたらどーする!?
「はいはい」
いかにもおざなりな返事をされる。
「……あと、あたしはアンタが普段書く話も結構好きだから」
正直言えば前世のせいで無駄に数こなしてるのでつたない部分もそれなりに分かるから、文句をつける気になればいくらでもつけられるシロモノではあるんだけど。
それでも。
それを聞いて嬉しそうに微笑われる。
その笑顔は卑怯だ。
『なんだオマエ見かけない顔だな? 迷子か?』
――結局、そういうことだった。
婚約者も恋人もいないけれど、好きな人までいないとは言っていない。
結構自分でもなんでと思うこともあるけれど、惚れてしまった以上しょうがない。
女の子は自分を見つけてくれる人に弱いのだから。
……この場合、本来は見初められたとかそういう意味で発見ではないのだけれど。
まだ前世の記憶もおぼろげにしか戻っていない幼い頃。
迷子になって心細いところに、声をかけてくれた男の子は、誘拐犯でなければ王子様だろう。
『婚約破棄をしてみないか?』
もし諦めて誰かと婚約した後に、同じ言葉を言わていたら。
そんなニュアンスは欠片もないと分かっていても。
きっとあたしは平静ではいられないに違いない。
だからこの先、どうにもならなかったとしても。
どんな理由でも。
軽々しく、口にしてほしくなかった。
それでも書こうとするのは。
自分が書いた恋愛物を読ませたい人でもいるのだろうか?
……好きな人が出来たのだろうか?
とりあえずそこは突っ込まずに話を変えることにする。
「今まで女性からっての見かけなかったから斬新かなって」
あ、小説の方は勉強はしたんだ。違うところがあさってに飛んでるけど。
そりゃあ見かけないだろう。なんだいってもこの社会は男尊女卑だ。
日常過ごす分にはそこまで感じないし、私的な場所では女性の尻に敷かれていたり、一見男性を立てているようでしっかり手綱を握って操ってるなんて話も嘘かホントか知らないけれど前世と同じく聞きはする。
けれど公のいろいろはほぼ男性からしか出来ない。結婚関係以外もそうなんだけど、表に出るのはその手の話題が多い。
恋を告白するのは女性からでもいいが、婚姻関係の成立や、婚約の破棄などは、口約束口喧嘩程度ならとにかく男性からやらなければ公にはなかったことに出来る。
嫌なら断ることは可能なんだけど、一度了承しまうと女性からは解消出来ない。
たとえば昔三軒隣に住んでたおしゃれなおねーさん、誠実そうに見えたダンナが結婚してみたら実はロクデナシだったとかで、離婚したかったんだけど、これも男性からしか出来ないからって教会に駆け込んだとかいう、なんか前世の歴史の時間に似たような話を聞いたようなことをやらないと女性からはどうにも出来ない。
あと父親や兄弟がまっとうに健在な場合はそっちに泣きつくこともあるらしい。当人より家族の方が対等ってなんなのよ!?
ちなみに赤の他人の男性がしゃしゃり出てきた場合は当然のように不貞を疑われる。貴族には弁護士みたいな職業と付き合いがあるらしいからそういう人が間に入った場合は別だとホントか嘘か知らないけど聞いたから例外はあるんだろうけど、そんなもの庶民にはほぼ縁はない。
とかいろいろ無駄に手間がかかる。
まぁそういう理由もあって、なじみがないを通り越して突拍子もなさ過ぎると受けなくなるとでも考えたのか、類似品も婚約破棄は男性から行われている。
……うん、なんだいいつつ読める範囲で読んでる。
けれどそんな美しくない現実は物語には必要ないので言わない。
「斬新かもしれないけど、個人的意見としては好ましいと思える男性が自分を見つけてくれてきっちり相手よりも自分を選んでくれるって状況に憧れたりする訳なんだけど」
まだヒロインの方が実質悪役で婚約者の令嬢が無実って展開までは行ってないのよね、こっち。それでも消費がゆっくりな分、変化が緩やかなようで。そもそも同じ変化を辿るとは限らないわけだし。
「お前もか?」
「……あたしをなんだと」
……いや、確かに前世の記憶のせいで、多少変わり者な自覚はあるけど、その辺はそんな変わんないと思うんだけど。
「てか、『個人的意見』って言ってるんだから、その場合尋ねるなら『他の人もか?』が正しいと思うんだけど?」
あたしが書いたのがあれだけうけたんだから、少なくても読んでる人はたぶんそうだと思うけど。
「……それはそうかもしれないけど」
そんなので大丈夫か、自称看板作家。
「じゃあ、女性から婚約破棄はやめた方が無難か?」
「ちょーっと時代が追いついてないかもねぇ」
流行作ったあたしが言うなって感じだろうけど。ホントタイミングがよかったんだろうな、あれは。
「少なくとも恋に恋してるようなお嬢さんが読んで面白くはないと思う」
ある程度歳喰うと今付き合ってる男と別れられたらいいなぁ的な違う意味での逃避で読むかもしれないけど。
……いやごめん、前世も含めて男女交際の経験はないです。
「じゃあ、もうちょっと普通の考えてみる」
諦めはしないんだ。そこまでうけたいか。
「相談乗ってくれてありがとな」
頭をなでられ複雑な気分になる。年下なのは変えられなくてももう小さな子供じゃないのに、そういうなで方だ。
「婚約破棄を勧められたのかと思ってたけど?」
なのでちょっとすねた風に言ってみる。
「それはまた機会があったらな」
ないよふつー。
「あたしでよければ相談乗るからあんま馬鹿な事やらかさないようにね」
他の子にやって誤解されたらどーする!?
「はいはい」
いかにもおざなりな返事をされる。
「……あと、あたしはアンタが普段書く話も結構好きだから」
正直言えば前世のせいで無駄に数こなしてるのでつたない部分もそれなりに分かるから、文句をつける気になればいくらでもつけられるシロモノではあるんだけど。
それでも。
それを聞いて嬉しそうに微笑われる。
その笑顔は卑怯だ。
『なんだオマエ見かけない顔だな? 迷子か?』
――結局、そういうことだった。
婚約者も恋人もいないけれど、好きな人までいないとは言っていない。
結構自分でもなんでと思うこともあるけれど、惚れてしまった以上しょうがない。
女の子は自分を見つけてくれる人に弱いのだから。
……この場合、本来は見初められたとかそういう意味で発見ではないのだけれど。
まだ前世の記憶もおぼろげにしか戻っていない幼い頃。
迷子になって心細いところに、声をかけてくれた男の子は、誘拐犯でなければ王子様だろう。
『婚約破棄をしてみないか?』
もし諦めて誰かと婚約した後に、同じ言葉を言わていたら。
そんなニュアンスは欠片もないと分かっていても。
きっとあたしは平静ではいられないに違いない。
だからこの先、どうにもならなかったとしても。
どんな理由でも。
軽々しく、口にしてほしくなかった。
それでも書こうとするのは。
自分が書いた恋愛物を読ませたい人でもいるのだろうか?
……好きな人が出来たのだろうか?
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