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ちなみに、馬鹿は死んだら治るかどうかという結論としては、実際問題として直らなかったわけで。個人の感想となります。
頭もうったのに、それでも書きたい気持ちは残ってるってなんなのよ!?
けれど、字は教わったといえど紙は貴重なのでそう簡単に使う訳にはいかない。使うとしても書き間違っても簡単に直すことも出来ないから更に気楽にとは行かないし……小説、書きたくても書けない。ちょっとしたものなら地面とか木の板とか大きな葉っぱとかに書いてもいいんだけど、保存の問題が。筆記用具も書きやすいとはお世辞にも言えないというか、あるだけでも贅沢だし。
文明って有り難い物だったよなぁ、ホント。水道とかそういうところで先に実感しろって感じだろうけど。
それでもちまちまと紙を集め、前世で未完だった遺作をややダイジェスト化と文章の簡易化とこっちに合うようアレンジをしたものをコツコツと隙を見て結局書いた。
その原稿は束ねて、よかったら使って下さいとの書き置きとともに匿名でコイツの家の貸本屋にこっそり置いてきた。いやだから家に置いとけないし、紙をたくさん持ってるから財産隠し持ってるとか思われたらたまらない。
それでもちゃんと注意書きもつけたよ、この物語は架空であり、実際に貴族に口説かれた場合もてあそばれる可能性が高く、成就したとしても見合うだけの苦労はあります、ご了承ください。って。前世で小説とはいえ何周か回ってたから違う意味でそれは分かるもん。
そして写しが簡素ながら製本されて店頭に置かれたわけだけど。……この紙の高いご時世に原本そのまま使い回そうとしないのって立派よね。
で、それが流行った。人口が少ないはずなのに読者数は前世を超えた。これだけ読まれてたら前世に書籍化出来たんじゃないかってぐらい。
そりゃしたかったに決まってるでしょ、当たり前じゃない。仕事ってことなら書いてる時に「一円にもならないことをやってる暇があるなら他にするべき事があるでしょう? ほらこっち手伝って」とか言われなくなるかもしれなかったんだよ!? あたしノってるとこ中断させられるの嫌いなの。だから寝静まった夜中に書いてて、それをしょっちゅうやってたものだから慢性的に寝不足だったの。ちなみにドリンク剤はお湯割り派。
デビューしたらしたで苦労するといわれそうだけど、そんな事デビューできてから考えりゃいいじゃん。できなかったわけだけど。
……もっとも前世だとこんなのありふれた話だからここまで人気は出ずにデビューは無理だっただろうけど。
なのでまぁ今回はそれでもこれで終わらせる決心したんだよ。連続した執筆時間とか取れないし、夜更かししようにも油代も馬鹿にならないし、そもそも睡眠削れるだけの体力残るような仕事量じゃあんまないし、まだ若いからそれで済んでるけど将来はもっとなくなるし、ホント金喰う趣味なんだよ現世だと。ああバックライト的な意味でも文明が懐かしい。
けれどこの人気っぷり。もしかしたら現世ならいけたんじゃないかと匿名で出したのをただいま後悔しております。
で、流行れば類似品やら粗悪品やらが出てくるのはこちらでも変わりなく。
似たような話が貸本屋には増え、その分隅に追いやられたのがコイツの書いた話だったと。
そもそもあたしが書いたのは女性向けだから、男性向けというか前世でいういわゆる少年マンガポジなので一部女性読者はとにかく競合はしないはずなんだけど、あまりにも女性客が増えたので男性客が入りづらくなったそうで。あと男性向けの面積も縮小されて、エロいのは裏に片付けられたらしい。……それはそれで背徳感があっていいとか店の隅でひそひそしてた輩もいたけど。近くの女性客がさりげなく距離取ってた。
で、自称看板作家さんはそんな現状に自身の存在価値に危機感を覚えたものの、あいにくと女性向けを書く想像力はなかったらしく。
それでこんな莫迦な話を腐れ縁のあたしに持ってきたのだろう。
虚構が考えつかないなら現実を観察すればいいじゃない……ってアホか。捏造してる時点でそもそもリアルじゃないし。
てかさ、自分のジャンルで人気になりそうなの書く方がいいんじゃ。
「付き合いが長いのでおわかりかと思っておりましたが」
どれくらい長いかというと、文字が読めるようになる前から貸本屋に行こうとして迷子になってコイツに保護してもらったくらいの昔からの付き合いなので、幼なじみといっても過言ではない。
「あたしには婚約者も婚約してくれそうな恋人もいません」
無駄に言葉遣いが丁寧になる。
「よって破棄をさせたければ、まずはあたしと婚約してもいいという人を見つけて下さい」
……いや破棄するの前提で、紹介されるとかしてもあれだけど。
「えーっと……」
さすがに機嫌が降下してきたことに気づいたらしく、どこか顔色をうかがうような態度になった。
「………………怒ってる?」
「怒るか、相手にされないかが一般的な反応だと思うよそれ。いる人相手に言ってもまずいけど」
自分の言ってる事が何かおかしいとは思わないのだろうか? 他人の婚約を破棄させようってのもおかしいし、あたしにそれが出来ると思うこともおかしい。
「いやけどなんつーか俺も恋人も婚約者いないし」
知ってるけど。
てかいても本当の婚約者には言わないだろそんなこと。
執筆のためにそこまで言う男なら婚約解消した方が相手幸せだろうから、言うのなら言ってもいいとおもうけど。芸のためなら云々はそれでもはた迷惑だと思う……自分にも跳ね返って来るけど。
頭もうったのに、それでも書きたい気持ちは残ってるってなんなのよ!?
けれど、字は教わったといえど紙は貴重なのでそう簡単に使う訳にはいかない。使うとしても書き間違っても簡単に直すことも出来ないから更に気楽にとは行かないし……小説、書きたくても書けない。ちょっとしたものなら地面とか木の板とか大きな葉っぱとかに書いてもいいんだけど、保存の問題が。筆記用具も書きやすいとはお世辞にも言えないというか、あるだけでも贅沢だし。
文明って有り難い物だったよなぁ、ホント。水道とかそういうところで先に実感しろって感じだろうけど。
それでもちまちまと紙を集め、前世で未完だった遺作をややダイジェスト化と文章の簡易化とこっちに合うようアレンジをしたものをコツコツと隙を見て結局書いた。
その原稿は束ねて、よかったら使って下さいとの書き置きとともに匿名でコイツの家の貸本屋にこっそり置いてきた。いやだから家に置いとけないし、紙をたくさん持ってるから財産隠し持ってるとか思われたらたまらない。
それでもちゃんと注意書きもつけたよ、この物語は架空であり、実際に貴族に口説かれた場合もてあそばれる可能性が高く、成就したとしても見合うだけの苦労はあります、ご了承ください。って。前世で小説とはいえ何周か回ってたから違う意味でそれは分かるもん。
そして写しが簡素ながら製本されて店頭に置かれたわけだけど。……この紙の高いご時世に原本そのまま使い回そうとしないのって立派よね。
で、それが流行った。人口が少ないはずなのに読者数は前世を超えた。これだけ読まれてたら前世に書籍化出来たんじゃないかってぐらい。
そりゃしたかったに決まってるでしょ、当たり前じゃない。仕事ってことなら書いてる時に「一円にもならないことをやってる暇があるなら他にするべき事があるでしょう? ほらこっち手伝って」とか言われなくなるかもしれなかったんだよ!? あたしノってるとこ中断させられるの嫌いなの。だから寝静まった夜中に書いてて、それをしょっちゅうやってたものだから慢性的に寝不足だったの。ちなみにドリンク剤はお湯割り派。
デビューしたらしたで苦労するといわれそうだけど、そんな事デビューできてから考えりゃいいじゃん。できなかったわけだけど。
……もっとも前世だとこんなのありふれた話だからここまで人気は出ずにデビューは無理だっただろうけど。
なのでまぁ今回はそれでもこれで終わらせる決心したんだよ。連続した執筆時間とか取れないし、夜更かししようにも油代も馬鹿にならないし、そもそも睡眠削れるだけの体力残るような仕事量じゃあんまないし、まだ若いからそれで済んでるけど将来はもっとなくなるし、ホント金喰う趣味なんだよ現世だと。ああバックライト的な意味でも文明が懐かしい。
けれどこの人気っぷり。もしかしたら現世ならいけたんじゃないかと匿名で出したのをただいま後悔しております。
で、流行れば類似品やら粗悪品やらが出てくるのはこちらでも変わりなく。
似たような話が貸本屋には増え、その分隅に追いやられたのがコイツの書いた話だったと。
そもそもあたしが書いたのは女性向けだから、男性向けというか前世でいういわゆる少年マンガポジなので一部女性読者はとにかく競合はしないはずなんだけど、あまりにも女性客が増えたので男性客が入りづらくなったそうで。あと男性向けの面積も縮小されて、エロいのは裏に片付けられたらしい。……それはそれで背徳感があっていいとか店の隅でひそひそしてた輩もいたけど。近くの女性客がさりげなく距離取ってた。
で、自称看板作家さんはそんな現状に自身の存在価値に危機感を覚えたものの、あいにくと女性向けを書く想像力はなかったらしく。
それでこんな莫迦な話を腐れ縁のあたしに持ってきたのだろう。
虚構が考えつかないなら現実を観察すればいいじゃない……ってアホか。捏造してる時点でそもそもリアルじゃないし。
てかさ、自分のジャンルで人気になりそうなの書く方がいいんじゃ。
「付き合いが長いのでおわかりかと思っておりましたが」
どれくらい長いかというと、文字が読めるようになる前から貸本屋に行こうとして迷子になってコイツに保護してもらったくらいの昔からの付き合いなので、幼なじみといっても過言ではない。
「あたしには婚約者も婚約してくれそうな恋人もいません」
無駄に言葉遣いが丁寧になる。
「よって破棄をさせたければ、まずはあたしと婚約してもいいという人を見つけて下さい」
……いや破棄するの前提で、紹介されるとかしてもあれだけど。
「えーっと……」
さすがに機嫌が降下してきたことに気づいたらしく、どこか顔色をうかがうような態度になった。
「………………怒ってる?」
「怒るか、相手にされないかが一般的な反応だと思うよそれ。いる人相手に言ってもまずいけど」
自分の言ってる事が何かおかしいとは思わないのだろうか? 他人の婚約を破棄させようってのもおかしいし、あたしにそれが出来ると思うこともおかしい。
「いやけどなんつーか俺も恋人も婚約者いないし」
知ってるけど。
てかいても本当の婚約者には言わないだろそんなこと。
執筆のためにそこまで言う男なら婚約解消した方が相手幸せだろうから、言うのなら言ってもいいとおもうけど。芸のためなら云々はそれでもはた迷惑だと思う……自分にも跳ね返って来るけど。
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