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俺の明日はまだ来ない
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手を伸ばしもがく。
けれどつかめるものは何もない。
背中から水にたたきつけられ沈む。
体の中から空気が抜ける。
そして意識は真っ白になり――。
VRから現実に戻る。
現実にそれを体験したのは彼女のはずだ。
そこは立ち入りを禁止されている海辺の崖で、だからこそ俺たちはそこで不貞を繰り返した。
なぜ立ち入り禁止になっているのか考えたことはなかった。
そろそろ彼女を邪魔に思い始めたことは否定しない。
けれどもあれは事故だった。彼女の足下が崩れ、伸ばした手は届かなかった。俺が突き落とした訳じゃない。
恐らく死んでしまったのだと思った。
確認はしていない。俺は彼女とは会っていないはずなのだから
ところが彼女は三ヶ月後に怪我も溺れた様子もなく俺のところにやってきた。
無事でよかったとは思えなかった。
それでも彼女であるはずなのに違和感がまとわりつく。
そもそもあの状況で生きていられるとは思えない。
科学の進歩でクローンが作れるようになったと聞いている。記憶もバックアップをとっていればその時点までは戻せると。
そうなのかとそれとなく探ったら違うという。
ならばこの違和感は何なんだ?
あの状況で生きているとはどうしても思えないから?
それとも何事もなかったかのように接してくるから?
それからはあの状況で彼女がどうやったら生きて助かるのか考えた。
最初は二次元上のシミュレーションで。
次にそのプログラムをVR化し、俺が彼女の中に入ってコントロールし、助かるよう試行錯誤した。
けれど未だ助かったことはない。無傷でというわけでなく命自体が。
なのに目の前には結果がある。
俺の現実は彼女来て以来戻っていない。
現状に確信がもてるまで納得が出来ない。
あの日だけをただ繰り返す。
仮に彼女が助かる方法があったなら、それは破滅だと分かっていてさえも。
俺の明日はまだまだ来ない。
けれどつかめるものは何もない。
背中から水にたたきつけられ沈む。
体の中から空気が抜ける。
そして意識は真っ白になり――。
VRから現実に戻る。
現実にそれを体験したのは彼女のはずだ。
そこは立ち入りを禁止されている海辺の崖で、だからこそ俺たちはそこで不貞を繰り返した。
なぜ立ち入り禁止になっているのか考えたことはなかった。
そろそろ彼女を邪魔に思い始めたことは否定しない。
けれどもあれは事故だった。彼女の足下が崩れ、伸ばした手は届かなかった。俺が突き落とした訳じゃない。
恐らく死んでしまったのだと思った。
確認はしていない。俺は彼女とは会っていないはずなのだから
ところが彼女は三ヶ月後に怪我も溺れた様子もなく俺のところにやってきた。
無事でよかったとは思えなかった。
それでも彼女であるはずなのに違和感がまとわりつく。
そもそもあの状況で生きていられるとは思えない。
科学の進歩でクローンが作れるようになったと聞いている。記憶もバックアップをとっていればその時点までは戻せると。
そうなのかとそれとなく探ったら違うという。
ならばこの違和感は何なんだ?
あの状況で生きているとはどうしても思えないから?
それとも何事もなかったかのように接してくるから?
それからはあの状況で彼女がどうやったら生きて助かるのか考えた。
最初は二次元上のシミュレーションで。
次にそのプログラムをVR化し、俺が彼女の中に入ってコントロールし、助かるよう試行錯誤した。
けれど未だ助かったことはない。無傷でというわけでなく命自体が。
なのに目の前には結果がある。
俺の現実は彼女来て以来戻っていない。
現状に確信がもてるまで納得が出来ない。
あの日だけをただ繰り返す。
仮に彼女が助かる方法があったなら、それは破滅だと分かっていてさえも。
俺の明日はまだまだ来ない。
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